魔王がやって来たので

もち雪

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女王のおさめる国にて

仮の宿に舞い戻る

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　荷馬車はガタガタと揺れ、雲のかかった暗い空と、草原のくすんだ緑が馬車の横に長く続いている。
　
　僕らはウィッシュの祖父の冬営地から、長い道のりかけやっと仮の宿にいる仲間たちのもとへ帰りつこうとしている。夏季、騎士練習場へは、もうすぐの距離らしい。
　
　朝早く、太陽は少し顔を出したところで、見えて来た屋敷の前で光を見つけた。
　魔法使いの正装を身につけたぬいぬいがランタンを持ち立っていた。そして彼に手を振った僕らの、たどり着いた馬車置き場の所まで、やって来て出迎えてくれた。
　
　御者ぎょしゃの席に座り馬を操るルイスの横に座り、今後相談をしていた僕らには、少し別れだったと思っていたが、彼の姿を見た時とても安心した気持ちになった。

　僕は改めて手を振りながら「ただいま」と言った。

「早く、お前の精霊に顔を見せてやれ、お前たちと気配に飛び起きて、みんな起こして回てい居たぞ」

　彼がそう言う。「そうなんですね」
　そう言った僕は、ウンディーネの瑠璃の瞳と、その幼さがわずかに残る顔立ちと、声を自分の中から深くから呼び起こし思い出す。
　
　僕らは玄関脇に荷物を運び、とりあえず荷物を積み上げて置いておく。

　それと共に、眠っているみんな起こす。4日ほどの旅であったが、精神的な疲れからか、皆の眠りはいつもより深く、起きても顔に疲れが出ているようだった。
　馬車から馬を外し、馬小屋へと移動させるルイスを眺めながら、僕は幌馬車の中から降りたばかりのシロスとクスキにぬいぬいに紹介する。

　シロスは穏やかに、ぬいぬい「お初におめにかかります魔法使い様、俺はシロスと言います」と何の問題も無かったが、クスキとぬいぬいは似たものどうしなので、最初の印象はお互いともよくなかったようで、馬車の中に僕自身の荷物を取りに行っているわずかな間に、バチバチの関係になってしまっていた。
　
　そんな2人に少し呆れ、そしてなだめながら室内に入る事になる。ウンディーネの事もあったが、長時間、馬の手綱を握り長くい時間の旅で疲れているだろうルイスをしばらく休ませる必要があった。

　だから調理場へ向かうルイスを「ルイス待って！　君は調理場へ入らないで」と言って止めた。

「ハヤト、どうしました？　お茶をいれるたけです」
「それなら、僕がやるよ。」

　彼は僕の気持ちに気づいたのか、「大丈夫つかれてなどいません」そういい肩をすくめる。
「でも、君が入れば調理場の片付けをしだして、疲れる事になりそうだから、僕にお茶を入れさせて、こんな時こそ習った成果をみんな見せるよ」

　そう言うと彼は、少し困った顔したのち、「実は少し前から眠かったので、お言葉甘えて少し休ませて下さい。そしてハヤトの成果を見るのはその後で」

「わかった。御者役ありがとう。おやすみ」と言って彼の背を見送る。

　そして調理場へ入ると、凄くは汚いってことはないけど、昨日使った皿がそのまま残っていた。それを眺め進みでる僕の横を、袖を上に上げながら「さあ、やりましょうか」と言いフィーナが調理場へと入ってきた。
　
　抱きしめてグルグルと回りたい気持ちもあったが、フィーナは普通にお湯を沸かすので、僕は残つている皿を洗い始めた。

　
　そして皿は洗えて、紅茶のポットで紅茶蒸らされ、保温用の布がかぶせられた。

　僕とフィーナはまだ眠っているメンバーを、起こさないよう一息つくために、
　リビングの長椅子に腰掛ける。

　そうするとパジャマ姿のウンディーネが、リビング入り口で覗いていた。久しぶりの彼女は相変わらずで僕は安心する。たぶん、フィーナも。

　それに僕らが気づいたとわかると、スタスタスタと歩いて来てる。その様子を眺めていた僕らの間に、彼女はふくれっらで割って入った。

　そして僕とフィーナの服を片方づつ掴む。ぎゅうーっと掴むから、服の生地が伸びそうであるが、そんなところも可愛らしいく見え、そんな彼女に――。

「「ただいま」」

　僕とフィーナはそう言った。

「おかえりなさい……。でも、主様もフィーナもすぐ帰って来ると思ったのに4日も帰って来ないなんて、ウンディーネ良くないと思うのー」最後の語尾に、彼女の可愛らしい怒りがこめられていた。

「まあまあ、ウンディーネ、君のような大精霊を連れて行った村人が驚いてしまうだろうし、仕方なかったんだよ」

「でも、二人は驚いてない」

　瑠璃の瞳に涙をためいるウンディーネの後ろにまわり、水色の髪を勝手に触るのは、…………クスキ?　

　その横で、大精霊様になんて事しているんだって顔で、双子の姉をどう止めようか考えあぐねている。シロス達の事を見てウンディーネは言った。

「主様、この二人は誰？　新しい子分？　それならウンディーネが先輩として人の髪の毛に、勝手に触ってはいけませんって教えるけど」

「彼女たちは、仲間であり、お客様だけど、君が嫌だったら叱ってもいいよ、叱り方も相手によっていろいろありそうだからそこは僕と一緒に、ルイスが起きた後に聞いていろいろ覚えていこう」

　そんな僕とウンディーネの会話に、青ざめたのはやっぱり弟のシロスの方だった。
　
「大精霊様すみません！ほら、クスキもちゃんと謝って！」「ごめんなさい、ウンディーネ様」
　
　二人は素直に謝り、ウンディーネはどう？　見た？　私は先輩だよ？　って顔をする。

　　　　　続く

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