魔王がやって来たので

もち雪

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女王のおさめる国にて

王座奪還作戦

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 ムーンドルイの城下町、塀に囲まれたこの町には多くの人々が住んでる。

 そのためやはり城下町だけで、食糧、資材をまかなう事は出来ずに城下町の外から、遊牧民の育てた羊などが、多くの場所から集められ売られている。
 
 そして今日も朝早く、集められた羊を乗せた幌馬車が市場にたどり着いた。
 
 羊は檻の中に出され、しばらく過ごす。

 羊の居なくった馬車に、遊牧民の男が飛び乗る。
「もういいですよ。出て来て下さい」

 そう言うと、横に長く、人間が一人くらい入れる位の木箱の蓋がゆっくりと開く。
 そこからオリエラとウイッシュが、それぞれ別の箱から出て来た。
 
「お仲間も、先に集まっているようです。誘導いたします」
           ☆

 城下町の外、王子達がそれぞれの荷馬車に乗って、城下町へ続く道へ向かったのを見届けて、ゾルトの連れた精鋭10人ばかりと僕、ルイス、ウンディーネ、スフィンクス、ルナ、シロスのこれ大所帯は、石像を動かし地下の通路を進んでいた。

 前日までに、ある程度は通れるか調べていたらしいが、兵たちに気づかれるのを恐れて、最後までは調べていないらしい。
 
 暗く、カビ臭い中、小さな炎の明かりに先導されながら、僕らは進む。

 そして行き止まりに辿り着く。
 
 マントのフードで顔を覆い、天井の壁を調べる。
 開けるための持ち手がある。

 それを持ちゆっくり横へスライドさせると、絨毯の赤色が見えた。

 それをどかすと、鎧の足があり、恐る恐る…しかし魔法の用意は、怠らず目線を上げると……。

「やぁ」

 ウェーブのかかった長髪の騎士が真っ直ぐ立ち、僕の顔を覗き込みながらそう言った。

「その声は、サイル副長」

 ウッリマリアが僕を押し退け、はしごを上がる。

 彼女に押されて、グエッ?! っとなったが、続けてはしごを登る。

「ウッリマリア殿は、相変わらずだな……、君は遠い未来で、勇者どの逸話に不埒な騎士と書かれるじゃない?」

「サイル副長、それどころでございません」

「時は来たか?」

「はい!」

「では、少し待っていて」

「いや、ダメだ。こいつが敵か味方かまだわかっていない」ゾルトがそう言う。もっともな意見だが、ルイスがそれを制した。
 
「サイル殿は、王子を助けるための、スパイと引き合わせてもらっている、会話も黙認してもらいました。ですから彼は味方ですよ」

 「なら行動のする前に、今後をしめし合わせをしてからにしろ、こちらはイベントが目白押しだからな」

「いいでしょう。デートも謀反も打ち合わせが大事です聞きましょうか、しかし少しだけです。誰が来るか、わかりませんから」

 そう言うと、サイルは僕らを念のため王座の後ろある、カーテンの後ろに隠した。
 
 僕らは女王暗殺部隊のゾルト。王が国民に顔を出す場所から、事の始まりを知らせるシロス、同じくそこから教会へと飛びたつルナ、スフィンクス。

 僕とルイスは演説したのちゾルトを見届けた後、まわりを見回りつつ、城下町へでるてはずになっている事を告げた。
 
「了解した」
 そう言うとサイルは小瓶を開ける。

 白に少し黄色がかった、ウイッシュの瞳と似た色の染料に頬につけた後、ルイスの顔にもつけようとして、ルイスに刀を抜かれそうになつたが、その鞘を片手でサイルは押し止めた。

「お前は私達によく似ているから、攻撃されないようにつけておけ、お前たちもこの染料は一応味方だからな。
 では、外からに顔を出して来る」
 
 そう言って彼は本当に顔を出しただけだった。しかしその後、走る音が城内に響く。

         ☆


 城下町で、野菜を売って15年、今年可愛い娘が1歳なるサイヤは、朝、開店の準備も終わり店で、客を待っていると城から緑の煙がいろいろな方向へ打ち上げられたのを見た。

 祭りではないはずなのに、おかしな事もあるものだ。

 そう考えていた目の前を、マントを被った少年、少女を通っていく。少女は剣を携えいる。物騒だが、ギルドのあるこの町ではよくある事だ。

 だが、二人が目の前の憩いの広場で、そのマントのフードを取ると事態は一変した。

「私は前王ハラトの血を引く者、真の王位を受け継ぐ者、お前たちの新たな王ウイッシュだ! 私は王座にいすわる簒奪者を倒すために、勇者一行と私たちの親愛なる民、遊牧民を連れて帰ってきた。現在、城では騎士たちが私のため戦っている。そして町を守って兵士たちよ! どうか武器をおさめ、この戦いを見守って欲しい!」

 彼がそう言う間にも、兵士が抜刀し彼に襲い掛かり、矢を放つ。

 それを隣りの少女が止め、どこからともなく草のツタが現れ兵に絡み拘束していく。

 魔法の土壁が彼をのまわりを覆い、矢を難む。

 サイヤは、思うもしやまた偽物か?、しかし偽物でも、いきなり切り掛かるまでするものか? 

 そして遊牧民が集結している。これらはとても、危うい事だ。

 遊牧民の援助は、侵略へ変わるかもしれない。目の前の王子は、若い、そして彼の母親は遊牧民の出だったはず……。
 
 そう思いながらも許せない光景覚悟を決める。
 しかし自分には何もありはしないと、思い悩んだ彼は大根を持った時、隣りの雑貨屋が飛び込んで来た!

「おい! 勇者て奴が城で演説していたぞ! 王子の即位を見届けるために来たらしい! なんと、王子は大怪我は女王の陰謀らしいぞ?!」

「わからん! わからんが、良くない。丸腰の子供に複数で、剣で切りかかるのは良くない!」

 そう言うって、サイヤは大根片手に今にも、切り掛かりそうだった奴を後ろから大根で殴り、大根はぽっきり折れた。

「売り物の大根がーー!?」

 助けられた少年は、「ありがとう」と、サイヤの大根を拾い、彼に手渡しながら言った。
 その白に黄色が少し混じった瞳は、掲示板に書かれていた肖像画に書かれた王の瞳の色と同じだった。我らの王……。

  「王子?……」

「はい」

「王子、良くご無事で……」

 彼の様子を見て、町の人々が彼らを中心にして立ち上がる。

 王子を守れ!」
 王子の守るべき民は、口々にそう言い出したのだった。

  つづく

 
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