魔王がやって来たので

もち雪

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新しい若き王とともに

ご愁訴様な盗賊

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 ミッシェルから新しいクエストの依頼書には、ストーンマンの討伐と書かれていた。よし! なんのしがらみもない。

 しかし石男と言うと、何故か石をもぐもぐ食べちゃう系のモンスターが思い浮かぶ。けれど結局は普通に石で出来た魔物だろう。今回は魔物明細書が付いていない、うーんこの国のギルドなんだかおかしい。

 ウイッシュの即位のお披露目がまだなのは関係ないだろう。ハーピーの件といい頭が痛い事しか思いつかない。ルイスには情報は回したし、もうやるべき事はないだろうが、やはり自然に眉間に皺が寄るのを感じてしまう。

 とにかく次のギルドクエストに集中しなければ、場所は、地図から見て少し遠くの鉱山で現れているらしい。

 うーん行ける者全員で行くべきか? それを気軽に相談できるルイスは今、いないし、辺境の国だからか、やはり以前とかってが違いすぎる。と、僕は頭を悩ました。
 
           ☆
 
 そして次の日には、さっそく行動に移さねばならない。幌馬車を借り、ストーンマンの現れるという鉱山へ向かう。

 しかししばらくすると何者かの視線を感じたと思うと、僕らの馬車を取り囲むように、何頭もの馬が並走し出した。

 顔を覆面で隠している事から、盗賊か何かのたぐいのようた。そしていきなり車輪の攻撃を受けた。

 ドーォーーン!

「わぁっ、今のは魔法?」

「そうみたいです」

 御者席に乗っている、オリエラと、フィーナの声が聞こえて来た。

 当たらないまでも、前方の石が弾け飛んでのっている僕らの顔付近を目がけ、馬車の幌を突き破り飛んできた。

 僕らは以前も盗賊にあっている、あれはソイルドソレルの街に辿り着く手前だったはず。久しぶりで、懐かしいという感じではあるが、あの時は自警団の行った犯人の輸送を僕らが行うと思うと、凄い迷惑行為でしかない。しかしそんな勝った時の事を考えていると、足元をすくわれる事態になる恐れもある。気を引き締める。

 おい、なんか沢山の馬がついてくるが、アトラクションか?」
 
 隣で起きていたはずのぬいぬいが、今頃ウマに驚いている。
「いや、盗賊ですよ。そして現在進行形で攻撃を受けています」

「ここまで来て帰るのか?」

「大丈夫ですちょっとしか、走ってません。また、魔法について、何か考えていたんですか?」

「まぁ、いろいろな」

 そん事を大声で話している間に、今度矢が放たれて目の前をかする。こちらの大声と、荷馬車の車輪の音に負けぬように、盗賊も怒鳴り声をがなり立て始めた。
 
「女だ女が乗ってるぞ、しかも」って言ったところでツタに絡まれ、落馬していていった。

 ヴァァァーー!? 盗賊のダミ声がこだまする。

「これは……、このまま走らせていると、盗賊がやばい様なので馬車を一度止めてくださーい!!」

「お前はこっちへ来て長いのに、甘さが抜けないなぁ……。そのまま走れ。今後の被害者が、減っていいだろう」

 そして驚く事に馬車に並走して、オリエラが馬に乗って走って来た。
 
「お前、その馬の乗り手は?!」

「並走してから、蹴りを入れてたの。反撃が、来るかと思ったらそのまま落ちゃった」  
 僕とぬいぬいは顔を見合わせる。

「止めるか……」
「はい……」

「師匠、馬車止めるの? 一応、ウンディーネが死なない様に、水で受けとめているよ?」

「ならいいか……そのまま行くか?」

「ぬいぬい、犯人は野放しに出来ませんよ!」

 そう言って僕は前に出向き、小窓からフィーナに馬車をとめるよう頼んだ。

 馬車が止まるのを待ってましたとばかり、剣を持った男が、馬から降りて襲いかかってくる。なんで降りた?!
 
 それを槍で受けとめ、足をかけると盗賊はあっさり転んだ。体を打ちつけたらしく、剣を離したその隙に剣を蹴り飛ばして遠くへやる。

 そしてそのままツルで絡めていく。その間にぬいぬいを見た。
 彼は馬車の前方に居る盗賊を、何かの力で男を体を横からかかる力で押しつぶしていく。彼は馬車から降りその場で、杖を掲げ立っていただけだったのに。

「凄いですね……どうやってやるんですか?」

「まずは、考えろ。そうすれば新しい魔法を生み出せるようになる」

「それはそうですが……」
 
 教えて貰えた正解からの、応用でもいい気がするが。そう思いつつ辺りを見回す。もう追ってこないので、全員捕まえてたか、逃げたかした様だ。
 
 フィーナとオリエラとウンディーネは、そのまま御者席に座って貰う。犯人と同席させるわけにはいかないし、ウンディーネの場合は、盗賊から文句が出て揉めだすのを防ぐためだが。
 
「あら、私はこっちなの?」
 シルエットは僕を見つめそう言うが……。

「シルエットは、馬車の手綱たずな握らないでしょう」

「それは、そうね。馬車は乗るためのものだし」

「そうでしょうとも」
 
 僕はそう言い、「ほら、立って」盗賊の襟首を持って立たせ、荷台を開き「載せますよ、力を合わせてせーのー」と、力任せに支えなが乗らせる。

 男は始終無言だたった。ふたたび荷台を閉じて歩き出し、転がっている男が居ないか眺めた。

 そんな事を何度かやって進む。その何人目かの男を荷馬車へ押し込んだ後、その男が言った。

「こんなに強いなんて……、話しが違う!」
 ――は?

「どんな話しなの? 坊や、お姉さんに教えてくれない?」
「お兄さんにもだ」
 そう、シルエットとぬいぬいが盗賊を囲み出す。

 ――う……ん、ぬいぬいは、自分の事をお兄さん枠と思っているのか……。そして黒幕が登場するだろう流れに、正直めんどくせー! と、思わずにいられない。

   続く
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