魔王がやって来たので

新しい若き王とともに

謎の依頼人への尋問

　城につき、僕は馬車から降りると門番に、僕らが勇者パーティーである事を告げ、ギルドカードを見せる。

　彼は「何のご用件でしょうか？」と、聞くので、振り返り、後ろの荷馬車を親指で示す。

「あの荷馬車の中に、僕らを襲ったゴロツキと、それを依頼した謎の人物を入れて来ました。その件で僕らのパーティーのルイス卿か騎士のウッリマリア殿に話しを聞いて貰いたくて貰いたく来ました。どちらかに面会出来ますか？」

　それを聞いた門番は驚き一瞬、動きが止まる。
　しかしすぐさま「少々お待ち下さい」と、言って入り口に入って行く。その待っている間に別の門番が申し訳なさそうにやってくる。

「すみません。そこに馬車を置かれますと、通行の妨げになりますので……馬車置き場まで移動お願いできないでしょうか？」

　そう彼は言い、示された馬車置き場で兵士に誘導されて、その場に待っていると、騒がしい足音ともにウッリマリアが僕らの前に現れた。

　彼女はいつも通り全力で僕らのもとに駆けつけて来たのだろう、頬を上気させている。

「やぁ、ウッリマリア」

「ハヤト、元気そうだな。ところで、お前たちを襲ったと言う馬鹿はこの中か？」
　彼女は少し楽しそうに言う。

「そうなんだ。詳しくは中にいる、みんなに聞いて。君も仕事が立て込んでいるのに、仕事を増やしてしまってすまない」

「気にするな、書類の山に埋もれて、飽きあきしてたところだ。ゴロツキは牢屋に打ち込み、依頼人を尋問するとするか……」

「お願いします」
　
　彼女は後ろの兵士たちの方を見て「頼む」と、言って指示した。

　そして僕ら一同とゴロツキの依頼人は、ウッリマリア案内され移動して行く。

　移動中、城にあった豪華絢爛な、いろいろな装飾品が撤去されている事に気づく。ところどころに飾られた花々もなくなり、玄関や主要な場所に絞られ置かれる様になっているようだ。

「だいぶ変わっただろう。装飾品の数々は美術館に移動され、民衆にも楽しめるものとなったり、貴族に売られたりしている。この国は変わり始めているのだ」

　ウッリマリアは誇らしげに言う。しかし彼女は王族の事は全肯定するから、少し不安もある。

　僕らがまず案内されたのは、落ち着いたリビングだった。
「すぐに紅茶と菓子が来るくつろいでくれ」

　――わぁ……。本物のロイヤルティーだ！　城に住んでたけど、常駐してたのは別棟ばかりだったから、パーティー以外、初めて……。

　僕は笑顔で、ウッリマリアを見た。彼女も僕を笑顔をで見る
「お前はこっちだ」

　僕はウッリマリアはによって連れ去られようとする。

「私も行きます」そう、フィーナが声をあげ前に一歩踏み出す。

「主様あるじさま……」
　ウンディーネも……？

「お仕事、頑張って！」彼女は膝を少しまげ、手をグウにして声援してくれるといそいそと1番いい席を確保し座った。

「お前たちだけで、大丈夫だろう」そうぬいぬいが言った。僕は、その言葉に今日1番驚いた。

　――ぬいぬい！？　女子会に混ざる気！？　どんだけ鋼メンタルなんだ……。

「どうした？　鳩が豆鉄砲くらったような顔をして？」

「あっ……えっ……」

「大丈夫だよ？　ハヤト達の分は帰りに街で買おう！　もちろん、ルイスやミッシェルの分もね」

　オリエラがそう言うなら……思春期の女の子がそう言うならいいか……。

「ありがとう、でも、ヤトの料理にも甘いものがあるしいいよ。じゃー言ってくる」
　
　殺風景な部屋に、椅子2つと机しかない。

　兵士に先導され僕らが入った時、机の前に座らされ、小さくなっていた男には、まだ余裕があった。

　しかし騎士のウッリマリアが部屋に入った事で、依頼人の顔が明らかに動揺していた。目が泳ぎ、苦々しい視線をこちらへ向ける。事件が大きくなってしまった事への、焦りだろうか？

　依頼人は兵士に脱がされいたらしい、かぶってなかったフードをふたたびかぶろうとした。

「動くな！……お前は何者だ。言え」
　
　ウッリマリアが、机に両手をかけ男を右から左から見ている。僕らは彼女の後ろに立ち見ていた。

「俺は怖かっただけだ、勇者パーティーが魔界に行けば、魔王は必ず援軍を率いて反撃に来るはず」

「それは貴方の想像でしかありません」
　フィーナは遮るようにそう言った。

「聞いていなかったのか？」ウッリマリアが男のまわりを歩き威圧を与えつつそう言う。

　しかし依頼人の男は尚も続ける。
「騎士様もこいつらの仲間なのか！？　魔王が攻めて来たらここもただじゃ」「そんな事は聞いてない！！　私が聞きたいのは、お前はどこの誰だ？！って事だ！」

　ウッリマリアが、男の言葉を大きく遮り言った。

「お前の顔は見た事がある……ああ――らちがあかない！」
　
　そう言うと彼女は前髪をかきあげ、扉を開けて出て行くと「サイル副長を呼んで、今、すぐに！　見て貰いたい顔があると言って」

　そして彼女はゆっくり入って来た。
　
　そして僕らの横に並び立つ。男はとても青い顔をし、震えている、サイル副長はそんなに凶暴、残忍て風ではなかった。何に、怯えているのだろうか？

　そして男の震えが止まった時――。
　
「私でさえ、お前の顔を覚えているのに、今さら舌を噛んで死のうとしても無駄死にだぞ、お前の」

　ウッリマリアのその言葉で、男はうなだれ力尽きたようになってしまった。

　そして扉は、盛大に開いた。
　サイル副長が「やぁ！　ハヤト、フィーナ」と言って入って来た」

　そしてうなだれている男の顔を、手に顎を乗せて一目見ると、「ホクレル家の私兵だな。当主のマネヒックについてやって来たのを何度も見た。で、帰っていいか？」

「副長ありがとうごいました」
「「ありがとうございます」」

「いや、うちの領民が迷惑かけてすまない」
　サイル副長は、最後に扉から顔出しながら最後まで言い切ると、丁寧に扉を閉めて出て行った。

　――ホクレルやはりそこに行き着いてしまった様だ。

　僕はフィーナと顔を見合わせると、最近受けたギルドクエストハーピーをどうにかして欲しい。そのクエスト結果とその依頼主の住所が、ホクレル家である事をウッリマリアに話したのだった。

　つづく