魔王がやって来たので

もち雪

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新しい若き王とともに

朝食をとるまでに

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 朝食が用意されているホールへと入ると、テーブルはは端に寄せてあり、ビュッフェ形式になっているようだった。

ユメラやゾイトと彼の家族の息子の姿も見える。それぞれ何人かで参加しているようだ。

「おはようございます」

「おはよう」
「よう! ここで食って行けと、言いたいところだが、生憎ここは満員になっちまった。すまんな」

 ゾイトの前の皿の上はダイナミック盛り付けになっていた。しかし横に二枚の食べ終わっただろう皿が置かれていた。

「ハヤト、魔界へ行くとは思っていたがいささか急てはあるな。行くならば、可愛いもの、美しいものにも注意をはらいなさい」

 ウィッシュの祖父のユメラは静かにそう言う。二人とも正装の様で、姿は勇ましくかっこよかった。そこにいつかウィッシュも並ぶと、思うと頼もしい限りだ。

「だが、それが儲かりそうなら持って帰って来いよ。そして魔界でもこちらと同じだ。強ければ帰ってこれる。無事に帰って来い」

「ふふふ。お前は本当に認めた奴には甘いな」

「モテる秘訣だからな」

「ありがとう二人とも、頑張って行って来ます」

 僕は手をあげ彼らの前から去る。

 僕とすれ違うように、ゾイト達のテーブルに髪を緩くまとめた美人で芯がありそうな女性と、5才くらい女の子が近づく。そうするとゾイトが女の子をひざにのせてご飯をたべだした。
 
 違うテーブルには、ウッリマリアやサイル副騎士団長、そしてだいぶ物腰の柔らかそうな初老の男性が深刻そうに話している。初老の男性が団長なのだろか?

「初めましてハヤトです」

「宜しく、騎士団団長のロードノイズだ。せっかくお近づきなれたのが、魔界への出発前だとは皮肉なものだが、君たちが帰って来たな話す事も出来るだろう。御武運を祈っているよ」

「ありがとうございます」
 僕が深く頭を下げていると、サイル、ウッリマリアが一斉に話しかけてくる。

「でも、すぐに帰って来るんだろう?」
「何かがあっても帰って来いよ!」
 
「早めに帰って来ようと思ってはいるけど、やはり僕らは頼まれ事を受ける事で、時間はかかりそうだけどね」

「そういう性分ならしかたないだろうね」

 そう副団長は笑い、「そうだね」と僕は言う。

 そして僕は場所を移動して、料理を手に取る事にする。料理の前に立つと正確には、ビュッフェ方式では無いようだ。

 机に置かれている料理をまず受け取り、それを持って椅子に座るなり、テーブル座るなりした後に、追加で好きなものを取りに行く感じのようだった。皿と温かい紅茶を持って、空いているウィッシュたちのテーブルにつく。
 
「おはよう、ハヤト」
「ウィッシュ、おはよう」
 
 この席は、ウイッシュ、セリフ、オリエラ、
 ルイス、僕、ぬいぬいという構成になっていた。

 そこではルイスの引き継ぎの最終チェックが行われており、僕はいたたまれない場の空気感じつつ食事をしたのだった。

 料理のクロワッサンみたい揚げパン、それにつけるための白く形の整っていない手作りだろうバター、煮込まれた羊肉は薄切りにされている。

 そして紅茶、どれも他国の人が気にせず食べられる見た目になっているが、どれも確かにこの国独自の味になっている。


 この料理を世界のどこかで食べたなら、この国の思い出を思い出すのだろうか?
  
 とても美味しかったが、ちょっと気まずかった朝食を終えて、そろそろ出発の時間だ。しかしまだ、探し物は見つからない。

        続く


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