魔王がやって来たので

もち雪

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魔界の新たな闇

いにしえの因縁

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 魔王の城で行われた魔界についての作戦会議は、無鉄砲な可愛い鳥さんによって頓挫しつつある。

 鳥さんの発言は魔王も同意の事なのか、可愛い鳥さんの紹介者の魔王の手前、僕の右手はツッコミを入れきれず、小刻みに動きツッコミ入れ待機中だった。

 しかしその手は静かに下におろされた。

 気付くと魔王が黒板の横に立っていたのだ。

 彼はかわいい鳥さんのよしのさんをただ見つめ、小さくため息をつく。

「ヤーグ様、コーヒーなどいかがですか?」

 うちの出来る執事はそう言う。一般的な人への労り方だが……大丈夫だろうか? 相手は魔王、労りは無礼ではないだろうか?

「頼む」

 魔王城なので、魔王ぽさがアップするかと思ったが、やはり魔王気さくだったようだ。

「俺は水……」

 思わぬ魔王の登場に、魔王やっぱすげぇ……って空気を感じとったのか? 虎の威を借りる狐といった具合に、魔王の肩に乗り威厳をアピールしているかのように、よしのさんは渋めな声でそう言った。

 そこでルイスが、出して来たのはムーンドイルで、彼が買ったテレビゲームの本体2台は買えるだろう最高級の鳥籠だった。

 鳥籠自体は、温かみのある自然素材で出来ている。しかしそれを支える素材は金属で出来ており、綺麗な曲線、そして美しいリーフやツタの金属の装飾もされている。

 彼がこんな綺麗な鳥籠を買うには、彼の家系が関係あるのだろう。

 彼の家系アルト家は勇者を支える家系であるが、よしのさんの代の勇者パーティーではいざこざを起こし、その間によしのさん含む当時の勇者パーティーの一行は出発し魔王討伐には失敗。

 復活はしたものの、王と聖女のむくろを晒すことなったのだ……、アルト家の面目は丸つぶれの過去がある。

 そんな前提があるので僕からあえて、よしのさんの全貌を伝えはしなかった。普通人間はそんなに生きないし、鳥と勇者を同一人物と考えるこちら側の世界の人間はいない。

 しかし彼が鳥籠を買った時、賢いルイスの事だからもしかして? とも思ったが魔王の愛鳥に対しての献上品の可能性も捨てきれなかった。

 しかしよしのさん自らばらしに、ばらしまくった自分が勇者だった過去を聞いて、今! 鳥籠を出してくるって事はやはりルイスは僕らの話だけで、僕とフィーナとシルエットの話にのぼる鳥が前勇者と気づいていたのか……。まあ、隠してなかったし、気づいて当たり前とも言えるが。

 ルイスは、きれいな皿にきれいな水をいれて、きれいな鳥籠にいれる。

 よしのさんが鳥籠の入り口に無言で飛び移り、いいの? 俺、こんなきれいな家、貰っていいの? 可愛い鳥として鳥の王さま並み暮しが手に入るようで、感無量になっている、彼。

「どうですか?」ルイスは優しく微笑み。

「夢みたい」よしのさんは、口ばしのところで羽をクロスさせて感激しているようだ。

「お部屋の扉を閉めましょうか?」 

「ああ頼む!」

「高い買い物でしたが、喜んでいただけて良かったです。ホントに可愛いらしいですね。よしのさんは」

 本人が喜んでいるし、これはセーフゾーンなのか? と、みんなから「可愛い! 可愛い!」と言われるよしのさんを見ていた後に、魔王を見ると彼が、ルイスとよしのさんを見てどんびーいていた。

 魔王は心が読めるからな……。

 ――僕とルイスの過去を思いだし、アルト家の出来事と照らし合わせよしのさんの喜びようを観察する。こんなに嬉しそうなら、過去を掘り起こしてもいいことないだろう。ルイスなら直接マシンガントークで勝利を勝ち取る事も出来るだろう、きっとこの状態は彼なりの譲歩の結果だろう。

 そう思い顔を上げると、「お前の順応性の高さは大概だぞ……」と、あきれた顔で、魔王は言うがそもそものその原因は魔王であると僕は強く思う。

 しかし過保護な幼稚園児の親のようになってしまった魔王に、今僕の気持ちはさっせないようだ。

「よしの、もういいだろう。そろそろ出ないか?」と魔王は言うが、よしのさんは「俺はここで今日はねる」と夢心地でいいだすし。

 ルイスの気が済んで貰わないと、よしのさん可愛い鳥さんに心からされちゃう。 ……かもしれない?

     つづく


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