魔王がやって来たので

もち雪

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魔界の新たな闇

最善の方法ってなんだろう？

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　ここは魔界の魔王城、僕は光が差し込むダイニングルームに、ただ一人残っていた。

　フィーナが、ウンディーネとこの部屋を出た後、すぐにスフィンクスが僕のもとへやって来た。

「パパには、この僕が、一緒に魔王さんのところに行ってあげるね」

　そう、子どもの純真な瞳で彼は言った。

　スフィンクスはルナと一緒に生活しているおかげで、魔物らしさは抜け落ち、本来のエジプトの時代にファラオと同等とされていた頃の、素質を強く表しているように思う。

「ありがとうスフィンクス。でも、今回の出来事はフィーナに強く関係しているみたいだから、フィーナのパパ代わりの魔王と二人だけで、話を一度してみたいんだよ」

「わかった。でも……結婚式の祝辞の挨拶なら僕に任せて！　『お二人の未来に幸や実りが、ある事をお祈りしております』ってルナの横でちゃんと言えるよ！」

　そうスフィンクスは元気ハツラツに言った。

　僕は驚きルナを見る。

「教会で働いていると、結婚式は普通にある事なので、一般常識としてそう言っていて、出席を頼まれますとお祝いごとですので……断りにくいので……す……」

　そうルナは言いにくそうに言ったのだった。

「ルナ、やはり働くといろいろありますよね」

「そうなんです」と彼女は力強く言った後、照れながら「では、失礼します」と、少し恥ずかしそうに帰って行った。

　そしてぬいぬいからは「いいか、主導権はとって来いよ」と、力強い助言を貰う。

「でも、あのヤーグさん相手だと、なかなか難しいんじゃないかな？」

　さすが昨日の敵は、婚姻関係で今日の盟友を地でいく辺境出身の姫君であるオリエラは、魔王をさん付けで呼ぶようにしたようだ。

「駄目だ。若い二人の事に、一方的に相手の親族が介入するのは、後々面倒な事になりやすい。結婚を考えいるなら、お前たちの事の主導はお前たちが持て絶対に譲るな。いいな」

「ぬいぬい……わかった」
　僕らは、がっちり握手をした。

　そんな好きな女性との結婚生活に気を使う僕たち師弟を見て、オリエラが「もう師匠たら……」と、少し呆れたように言った。

「……オリエラすまん。貴族の結婚は多分、その限りではないだろうとしかわからん……」

　そう言う、ぬいぬい。オリエラに対しはやはりパパぽく言うが……。

「師匠、その話はまだいいよ。ハヤト頑張ってね」

　そう彼女は言い、ぬいぬいの背中を押して出ていった。

　そして僕は一人……。

　いや、ダイニングルームにはよしのさんがいた。しかし彼は何も言わず目を瞑っている。

　物語の中では探しても居なかった、幸せの青い鳥が目の前で目を瞑り眠っている。

　これが何かを暗示する比喩なら、僕はどうする事がベストなのか？　

　その答えも出ないまま、ダイニングルームの扉があきフィーナが、顔を出す。

「まだ、ここに居たんですね」

　そう言いながら、彼女は扉を抑えている。そして次に顔を出したのは、ウンディーネだった。

　彼女はフルーツを、3つ手に持っている。

「買収されちゃったか……」

「そうですね。魔王様がフルーツを3つだして、最初はいらないと断っていたのですが、『この中のひとつだけをやろう』と言われたら、ウンディーネは真剣に選びだして、ふふふ。でも、話が終わってもまだ悩んでいたので、魔王様は全部下さいました」

　フィーナの感じは、いつもと変わらないようだ。

　しかしきっと大切な事を決めてきたのだろう。僕は勇者であっても、いつも公私混同して考える。でも、それが僕なのだ。今さら変えられない。

　僕は彼女細い手をとり……。

「じゃあ、フィーナ行ってくる。あっ！！！！」

　僕は、大きな声でそういい、右斜め上を指差した。二人の視線がそちらにいっている内に、フィーナの頬にキスをした。

　彼女は、頬を抑えて僕の事を見たが、僕は手を振り扉から飛び出した。

　その後をウンディーネが、果物を抱えてついてくる。

「次は主様の番ね」

　ウンディーネは僕の時も、一緒に来る気らしい。それって僕の印象が悪くならない？　それに……。

「ウンディーネさすがに、次はフルーツくれないだろうし、最悪……そのフルーツを取り上げられるよ」

　そう言うと、彼女は焦って「ちょっと待っていて」と言う。そして宣言通りすぐ帰って来た。フルーツ1個だけ持って。

「後、2個はどうしたの？」

「ううん、そんな話じゃなくて、主様のお話に参加するために一つ返すの。ウンディーネがついて行ってあげるからね」

　僕は、ウンディーネを見た。

「たぶん、ウンディーネはよしのさんと同じ青い鳥枠かな？　系統が似ているし……」

　どうやら僕は、素直に思った事を口にだしていたようだ。いきなり服を彼女につかまれて「鳥になるのはいやーーーー！」と、服ごと彼女ににブンブン振り回された。

「じゃ、素直に待っておいで、果物は1個、悪くならないように誰かに剥きかた教わって食べているといいよ。後……そのフルーツはよしのさんや時治君の分からくれただろうと僕は君に伝えはする。じゃ、行って来る」

「いってらっしゃい」

　ウンディーネは、そう言った。ところで、僕は明るい大学生活を捨てて、異世界に来た。

　そして今の人類をゆうに越えた、年齢の魔王やよしのさんといる。

　若人や青年越えて、最近、僕から父兄ぽさが出ている気がするけど……気のせいだろうか？

　　　つづく

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