魔王がやって来たので

もち雪

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魔界の新たな闇

四者面談

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 魔王城の音も逃がさない、ふかふかの黒い絨毯の上を、僕は一人歩く。
 
 時代が変われば事故物件確定のこの城に、おどおどしさや、恐ろしさは微塵もない。そして僕は実は学級委員や部活の部長もやった事はない。

 だからたぶん魔王に、任せておけば上手くいくだろう。そんな事を考えながら部屋の前の立つ。それでも……。

 心を落ち着け魔王の思いつく案を考えてみた。思い付くのは、どれも物騒過ぎる案であったので、僕は仕方ない、そう思ってやる気を出す。

 まだ何も始まっていない、会話くらい幾らでも応じてくれるだろう。

 僕は心を軽くあるように考えつつ、扉を開けよとするとが……。

「あれ? 取っ手がない」

 しかし取っ手を探していると、いきなり扉が開いた。
 
「わぁ?!」
 
 自動で開いた扉は、右の壁に入ったのち、ゆっくりと戻っていく。

 その時、僕は見た。魔王がゲーミングチェアーに、片ひじをついてこちらを見ていたのを……。

 そして僕は一歩後ろにさがり、扉は僕の前でゆっくり閉じた。
 
「魔王、お願いがあります。しばらくの間は僕の思考は読み取らないでください!」

「いいだろう。今、お前の思考まで読んでいたら、話しが進まぬ」

 良かった……。これでゲーミングチェアの事について、使われる時間は省かれた。

 扉を見ると、羽ばたく鳥の絵が描かれている。僕は試しにその鳥に手をかざしてみる。するとふたたび扉は開き、そこには魔王が立って僕を見下ろしている。

 やはり近くで見るとやはりが身長高い、黄金の髪と黄金の瞳、浅黒い肌、容姿も整っている方だし、何故この人は魔王をやっているのか?
 
 そう思いながら、僕は魔王の部屋へ入る。
 魔王の部屋は、先程ダイニングルームで見た映像の部屋とそのままだった。
 
 パッと見は、ぬいぬいの暮らした痕跡ある部屋に似ているが、しかしよく見ればきれいに仕分けされた部屋は、フィーナの片付け方によく似ているようだ。

 僕は大変不躾に見ているが、魔王は何も言わない。魔王も僕の部屋では、パソコンでニュースを勝手に見ていたし、お互いさまではあるって事を、魔王は覚えているのだろう。

 その時「待て!待て!」ゆっくり閉じる扉のあいだを縫う様に、よしのさんがすべり込んで来た。

 僕はこの時点で、面談の失敗を覚悟した。

 よしのさんが飛びこんで来たと言うことは、たぶん話し合いにならないだろうと……。

「どうしたよしの、落ち着かないか。お前の話しは、ハヤトの後に聞いてやろう」

「俺もフィーナの父親代わり、と言うより仕事ばかりで、外へ出歩いてばかりのお前の代わり俺が面倒をみてきたのに……大事な時はお前ばかりいいとこ取りなのか?」

 そう言ってよしのさんは、鳥の足を踏ん張っている。確かに魔王は出歩く事は多いはず。

「そこまで言うなら、好きにするがいい……」

 よしのさんの気持ちはわかる。しかし今、一緒に話す必要はないはず。

 何故、魔王よ。そこまでよしのさんに甘い……。

 その時、ふたたび扉は開き、ルイスが立っていた。

「教えてくれてありがな」

 よしのさんは、うちの執事にお礼を言った。裏で暗躍する、執事の姿があったか……。

「いいえ、執事として当然の事をしただけです。ですが……、2対1では大変こちらがぶか悪いようです。私とした事が……、では私もご一緒してもいいですか?」

 ルイスはそう言った。静かに、落ちついて。

 たぶん、アルトの直系に生まれ者なら、魔王の首を狙う事を一度は考えるだろ。だから魔王を出し抜く思考に容易なれるはず……。

 いや、ルイス独自の思考かもしれない。

 僕も何度も、度肝を抜かれたもん。

 魔王がよしのさんにだいぶあまいように、僕は彼という人材に執事をして貰うにあたって、彼に大体の事を一任している。

 何故なら彼の方が、多くの事に知識があるからだ。

 だからここでフィーナにとって、触れられたくない事実があっても、ルイスにこのまま居て貰う事にする。

 そんな事はありはしないだろうが、彼女が謝罪を求めるなら……僕は一生をかけてするつもりだ。

 そして僕らは席につく。僕は四角い感じの肘おきのある椅子に、魔王はさっきとは素材場違うが、先ほどのゲーミングチェアーによく似た椅子に座る。

 ルイスは椅子は辞退し、僕の後ろに立っている。

 そしてよしのさんは、ルイスと同じ目の高さくらいの棚の上のに乗っている。

「では、お前はどうしょうと考えているのだ」
 取られた時間を取り返すように、まず魔王がそう言って斬り込んできた。
     つづく

 
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