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魔界の新たな闇
狐の里
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僕たちの借りていた部屋での、乱入者ありの少人数の話し合いから数日後、魔王の手引きにより狐の里に足を踏み入れる事が出来た。
僕の気持ちは、置き去りのままで。しかしその気持ちについて僕自身もてあまし気味だったりする。
今回も魔王の瞬間移動で移動した先は、温泉街の雰囲気のある街並みだった。観光用の植物と微かに香る硫黄の匂いがする街。
「最近、来たばかりだが、やはり落ち着く」
狐の里へ入ると、よしのさんはそう言った。
狐の里は温泉街になっているようでお土産や名物料理の店、そして貸衣裳屋に薬屋まで並んでいる。
魔界のレジャー施設のようになっているのか、魔物もだが、何者が化けただろう人間も多く、よしのさんの言うように今までになく馴染みのある風景だ。
「主様あれ買って!」
ウンディーネが指さしたのは、店先に置かれたお饅頭の置物だった。
その横には本物のお饅頭を蒸している、四角い蒸籠が白い湯気をもくもくとあげている。
「……よしのさんここのお金って、なんですか?」
「ヤーグが払ったからわかんねぇ――、アイツは俺の財布だからな」
よしのさんはキメ顔でそう言った。
二人がそれでいいなら、そういうのもありかも? 彼の立場は完全に可愛い小鳥さんポジションだけど。
ちょっとなげやりぎみに、僕は納得することにした。
地図を見つつ歩くと、観光案内所の横にお金の両替所あった。そこにて人間界のお金と、ここ独自の通貨へ変える事に成功した。
商人であるので、両替が出来る事についてハーピーの事件とのつながりの証拠にならない。難しい事だ。
目的地の旅館へ向かうと、美しくあれと、造られた自然が目につく。
その中を歩いていたらこじんまりとした旅館の建物が現れる。
赤色に縁取られた玄関の引き戸を開けると、濃紺の着物を着た恰幅の良い、初老の男性が正座で待ち構えていた。狐の耳としっぽがあるが、こちらは町で見かけた人々のように狐色をしている。
フィーナを見るや、いなや「お帰りなさいませフィーナ様、貴方様が帰って来るのを、皆、待ち望んでおりました」彼は土下座の如く、頭を深く下げる。
顔をあげたその人物は、布袋様のような笑顔であった。
「白煙さんご無沙汰しておりました。しばらくの間お世話になります」
「しばらくと言わず、ゆっくりしていってください。もちろんお金をとろうなどと考えておりません。何せ、ここは貴方様の居場所です。遠慮などご無用です」
「おぉ、それはありがたい!じゃー堪能させてもらおうぜ」
そう言って、よしのさんはどんどんと中へ入ってしまう。
「よしのさん、待ってください」
「おっと私とした事が、長話し過ぎましたな」
「加代、皆様を部屋へ案内してあげてください」
そうすると、白煙の後ろに控えていた仲居さんが「はい」と言って返事をする。
そして立ち上がり「フィーナ様、草薙様では、お部屋までご案内いたします」そう言って僕たちの前を歩く。
廊下を進み、中庭が見える所へ来ると、中庭へでられる石段の前でよしのさんが庭にある池の中の鯉をしゃがみこんで見ていた。
「なぁ、あれは鑑賞用なんだろう? しかも恐ろしく高い」
「そうですね。値段まではわかりませんが、旦那様が大事にしているものなので、決して食べないでくださいね」
「きれいね」
ウンディーネが廊下に腰掛けて座り、長いスカートの裾からから覗く白いソックスが前に後ろにゆらゆらしている。
「おーーい」
彼女は久しぶりの生きている魚にはしゃいだのか、そう言った。
そうすると鯉が凄い勢いで、こちら集まり口をパクパクさせる。
「キャーー!?」
驚いたウンディーネは、悲鳴をあげながら、4つん這いでよしのさんの後ろに隠れた。
「食べるなら鳥様で……」
「おい、ウンディーネ。お前、あの池にほおり投げるぞ」
「フィーナ! 鳥様がひどい事を言う」
フィーナはひたいに人差し指をあて、「うーーん、どっこい、どっこいですね。それより部屋へいきましょう。仲居さんを待たせてはいけませんよ」そう言ってウンディーネに手を貸し立たせると、仲居さんの後へと付いてく。
僕は試しに、よしのさんに手を差し出すと、「ほい!」と言って、僕の手のひらを叩き一人で、よしのさんは立った。
――どういう事?
僕が頭をひねり、手のひらをみる。
「おーーい、置いていくぞ――!」
「あ、はい」
僕は彼の後を追う。
部屋につくと、仲居さんの話しも半分聞きで、部屋の様子を確認する。
普通の家族用のスペースだった……。
もちろん、僕らはボディーガードだ。一緒じゃないと仕事にならない。そうか……、ふむふむと僕は物思いにふけるのであった。
続く
僕の気持ちは、置き去りのままで。しかしその気持ちについて僕自身もてあまし気味だったりする。
今回も魔王の瞬間移動で移動した先は、温泉街の雰囲気のある街並みだった。観光用の植物と微かに香る硫黄の匂いがする街。
「最近、来たばかりだが、やはり落ち着く」
狐の里へ入ると、よしのさんはそう言った。
狐の里は温泉街になっているようでお土産や名物料理の店、そして貸衣裳屋に薬屋まで並んでいる。
魔界のレジャー施設のようになっているのか、魔物もだが、何者が化けただろう人間も多く、よしのさんの言うように今までになく馴染みのある風景だ。
「主様あれ買って!」
ウンディーネが指さしたのは、店先に置かれたお饅頭の置物だった。
その横には本物のお饅頭を蒸している、四角い蒸籠が白い湯気をもくもくとあげている。
「……よしのさんここのお金って、なんですか?」
「ヤーグが払ったからわかんねぇ――、アイツは俺の財布だからな」
よしのさんはキメ顔でそう言った。
二人がそれでいいなら、そういうのもありかも? 彼の立場は完全に可愛い小鳥さんポジションだけど。
ちょっとなげやりぎみに、僕は納得することにした。
地図を見つつ歩くと、観光案内所の横にお金の両替所あった。そこにて人間界のお金と、ここ独自の通貨へ変える事に成功した。
商人であるので、両替が出来る事についてハーピーの事件とのつながりの証拠にならない。難しい事だ。
目的地の旅館へ向かうと、美しくあれと、造られた自然が目につく。
その中を歩いていたらこじんまりとした旅館の建物が現れる。
赤色に縁取られた玄関の引き戸を開けると、濃紺の着物を着た恰幅の良い、初老の男性が正座で待ち構えていた。狐の耳としっぽがあるが、こちらは町で見かけた人々のように狐色をしている。
フィーナを見るや、いなや「お帰りなさいませフィーナ様、貴方様が帰って来るのを、皆、待ち望んでおりました」彼は土下座の如く、頭を深く下げる。
顔をあげたその人物は、布袋様のような笑顔であった。
「白煙さんご無沙汰しておりました。しばらくの間お世話になります」
「しばらくと言わず、ゆっくりしていってください。もちろんお金をとろうなどと考えておりません。何せ、ここは貴方様の居場所です。遠慮などご無用です」
「おぉ、それはありがたい!じゃー堪能させてもらおうぜ」
そう言って、よしのさんはどんどんと中へ入ってしまう。
「よしのさん、待ってください」
「おっと私とした事が、長話し過ぎましたな」
「加代、皆様を部屋へ案内してあげてください」
そうすると、白煙の後ろに控えていた仲居さんが「はい」と言って返事をする。
そして立ち上がり「フィーナ様、草薙様では、お部屋までご案内いたします」そう言って僕たちの前を歩く。
廊下を進み、中庭が見える所へ来ると、中庭へでられる石段の前でよしのさんが庭にある池の中の鯉をしゃがみこんで見ていた。
「なぁ、あれは鑑賞用なんだろう? しかも恐ろしく高い」
「そうですね。値段まではわかりませんが、旦那様が大事にしているものなので、決して食べないでくださいね」
「きれいね」
ウンディーネが廊下に腰掛けて座り、長いスカートの裾からから覗く白いソックスが前に後ろにゆらゆらしている。
「おーーい」
彼女は久しぶりの生きている魚にはしゃいだのか、そう言った。
そうすると鯉が凄い勢いで、こちら集まり口をパクパクさせる。
「キャーー!?」
驚いたウンディーネは、悲鳴をあげながら、4つん這いでよしのさんの後ろに隠れた。
「食べるなら鳥様で……」
「おい、ウンディーネ。お前、あの池にほおり投げるぞ」
「フィーナ! 鳥様がひどい事を言う」
フィーナはひたいに人差し指をあて、「うーーん、どっこい、どっこいですね。それより部屋へいきましょう。仲居さんを待たせてはいけませんよ」そう言ってウンディーネに手を貸し立たせると、仲居さんの後へと付いてく。
僕は試しに、よしのさんに手を差し出すと、「ほい!」と言って、僕の手のひらを叩き一人で、よしのさんは立った。
――どういう事?
僕が頭をひねり、手のひらをみる。
「おーーい、置いていくぞ――!」
「あ、はい」
僕は彼の後を追う。
部屋につくと、仲居さんの話しも半分聞きで、部屋の様子を確認する。
普通の家族用のスペースだった……。
もちろん、僕らはボディーガードだ。一緒じゃないと仕事にならない。そうか……、ふむふむと僕は物思いにふけるのであった。
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