魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
271 / 292
魔界の新たな闇

因縁の場外乱闘、ここに終結?

しおりを挟む
 昼間の温泉街は、日本家屋の情緒豊かな風景がひろがり、僕らはそこを気軽に散策していた。

 僕とルイス、その後ろにフィーナと、ウンディーネそして最後にぬいぬいとミッシェル、よしのさんそんな順番でなんとなしに歩いていた。
 
 僕らは黙々と歩き、温泉街を把握していく。

 すると後ろから走る足音がして、体を硬くし振り返る。
 
「ハヤトさん、ルイスさんなんでそんなに黙々と歩いて行っちゃうんですか?!」
 
 追いかけて来たのはミッシェルの様で、僕らの袖を引きながら、それだけ言って息を整えるために手を離した。

「あ……いつもの調子で安全そうなのを確認したら、全体確認してた……ごめん」

「そうじゃないかと思ってました」
 
 ルイスは、ミッションに引っ張られた浴衣を丁寧に整える。

 ――なら言おうよ!

「あれ? 他の皆は?」

「よしのさんとウンディーネがお土産屋で、止まってしまったのでぬいぬいがウンディーネに、よしのさんにフィーナがついてます」

「うん……そっか。じゃあ引き返す事にしょうか」
 
 ウンディーネはともかく、よしのさんはフィーナを見守る側なはずなのに……。人の事は言えないけれど。

 来た道を戻って行くと、呉服店の隣りに胡麻すりの道具の書かれた看板が掲げられた店がある。

 その軒先に、ぬいぬいとウンディーネがいた。

「おぉーーい」
 
 僕が手を振ると、ウンディーネが僕に向かって手を振り「主様ーー!」と、駆け寄って来た。


「見て、あそこのふくろう可愛いよーー」

 ウンディーネは、梟を指差す。

 バァ――ン、僕の心の中で銅鑼どらが鳴り響く、久しぶりの仇敵と出会った気分で、前に進みでた。

「あれ? 主様どうしたの?……」
 彼女は僕に寄り添い、僕の変化に驚いているようだ。

「何でもないんだ。ふくろうちゃんを見てみたいだけだよ」
 
 僕は勤めて笑顔で言うが、もう目の前となった梟に備えて頭がいっぱいだった。今度は人間様の心の余裕を見せてやるぜ!

 と、悪役しか思わない気持ちで、梟を見下ろす。

 その梟は全体的に白い色だが、水色が羽先に入ってオシャレ感を出している。今まで見た事ないタイプの梟だ。

「愛らしい梟ですね」
 
 戦闘的な梟に先制パンチの愛らしい発言をした。
 
 この後は、どんなリアクションにも「可愛い」と、連呼する予定だった。
 
「ルイス、この梟知っているか?」
 
 僕らが来たことに気付いた、ぬいぬいが振り返りルイスに聞く。

 すると、いきなりルイスが僕らをかき分け前に進み出た。
 
「虹の梟ですね。嘴の付け根に様々な色が、間違いありません……」

「しかし何でこんなとこに……」
 二人ても、頭を傾け考える仕草をしている。

 ここで頼るべきは、ミッシェル。
 僕は振り返り彼を見つめる。

 目が合ったミッシェルは、記憶を探るように腕組みをする。

「虹の梟と、お二人とも呼んでいますが、正式にはソルアット・リレゼロ梟です。オリエラの故郷にしか生息しない梟で、確か多くの梟が先の戦いで焼かれています」

 僕たちの出会いはふたたび果たされたが、梟はすでに主役級の過去の持ち主のようだ……。

「えっどう言う事? 何でそんな事に……」

「ソルアット・リレゼロって植物の花や実は、呪術や魔法の媒体、薬の原材料となるのですが、大量に必要ですが、開花時期が年単位で不明な植物です。しかしこの梟がその花や実が大好物らしく。この梟を追えば見つける事が出来らしいです。で、この梟を勝手に買うと給料の2か月分は飛んで行くので、発見した場合はすぐさま城に連絡後、連絡を受けた事務員はオリエラの祖父である現在の領主に連絡し、この梟を飼育出来る人物を派遣して貰わなくてはいけません。これは70%の確率で事務所の採用試験に出ます!」

「いや、僕は城へ務めるつもりはないから、でも、そんな梟を焼いてしまったの?」
 
「焼いたのは飼っていた魔物の呪術師たちらしいですけど……、そこまでテストに出ないので、調べてません」
 
「とにかく魔界から遠い我国のあんな辺境のにまで来ているのなら、他のどことつながっていてもおかしくない。そしてオリエラの故郷の話にしても、王の功績で、呪術を使う種族は倒れたといえ、まだまだ頭の回る魔族は少なからずいるはずだ」
 
「では、その魔族たちにある程度の資材は運びこまれてしまったと考えていいのですか?」

「あくまでも可能性にすぎないがな。そこまで力のある魔族ならギルドの情報網に、必ず引っかかるはずだ」

 その時、梟が僕の顔を見てホォーホォーと
 鳴く。
 
「かっ……可愛い……」

 僕が予定通りそう言うと、梟は首をかしげる。そして目をパチパチとしてからホォーホォーとふたたび言うのである。

「ハヤトさん、勇者はもしかして鳥語も理解できるんですか? もしそうなら儲かりますね!」

 ――もう、一周まわってミッシェルのその貪欲さは大好きではある。

「負けました……」

「ハヤトさん!? いきなり何言って……本当に負けちゃったんですか?……」

「わからない……。しかしこんな魔界に、1羽居てキーパーソンみたいな事されたら、負けを認めるしか……」

「は?」僕と梟の戦いは、ミッシェルにはわかって貰えないようだ。梟は満足げに僕を見ている。……気がする。
 
「そしてどうやらこの薬屋も、白煙に関係あるようですね。ほら、フィーナさんと同じ白銀の髪の青年が奥にいるようです」

 そしてルイスは、ガン無視である。って……えっ!?

 そうルイスが指差した先には、割烹着の様な白衣を脱ぐ青年が見える。彼の狐の耳はフィーナと同じく白銀色をしている。

 つづく
 
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

婚約破棄&濡れ衣で追放された聖女ですが、辺境で育成スキルの真価を発揮!無骨で不器用な最強騎士様からの溺愛が止まりません!

黒崎隼人
ファンタジー
「君は偽りの聖女だ」――。 地味な「育成」の力しか持たない伯爵令嬢エルナは、婚約者である王太子にそう断じられ、すべてを奪われた。聖女の地位、婚約者、そして濡れ衣を着せられ追放された先は、魔物が巣食う極寒の辺境の地。 しかし、絶望の淵で彼女は自身の力の本当の価値を知る。凍てついた大地を緑豊かな楽園へと変える「育成」の力。それは、飢えた人々の心と体を癒す、真の聖女の奇跡だった。 これは、役立たずと蔑まれた少女が、無骨で不器用な「氷壁の騎士」ガイオンの揺るぎない愛に支えられ、辺境の地でかけがえのない居場所と幸せを見つける、心温まる逆転スローライフ・ファンタジー。 王都が彼女の真価に気づいた時、もう遅い。最高のざまぁと、とろけるほど甘い溺愛が、ここにある。

処理中です...