274 / 292
魔界の新たな闇
幽霊にいざなわれて
しおりを挟む
夜の街明かりの中を歩く。
温泉街だからなのか夜の街も明るい。時折着飾った女性たちと、用心棒だろう男の組み合わせとすれ違う。
僕たちの組み合わせは、僕、フィーナ、ルイス、そして案内の彼女。各世界に1人の組合わせだ。
幸子、彼女の髪は、日本髪の様ではあるが後ろの高い位置で、1つにまとめられている。そして派手さはないが、多くの着物を着こんでいるようだ。
「幸子様、今、貴方は湊と一緒にいるのですか?」
「いないわ。私が憑いているのは白雪の方。その方があの子のためになるのよ、たぶんね」
「白雪さんは元気なんですか?」
フィーナは、顔を上げて聞く。それに対し幸子は、少し間を置いて、少しずつ心の内を話始めてる。
「彼女はもうすぐ死ぬわ。いい意味でよ、勘違いしないでね。凄くうるさい娘が、覚悟を決めている。残念ながら私には先見の才はないけれど、あの子なら最悪の事態でも湊と一緒にいようと努力するはず。だから白雪はもう長くない。わかる?」
「そっか……」
彼女は、涙を流してはいないが、たぶん泣いている。僕は彼女の手をだってつかみ、一緒に歩く。これからも変わらず。
「でも、湊は嫌みたい、自分の手で白雪を幸せにしたいみたい。それはすでに叶っているし、もうその機会はこの世では失われてしまったと言っていい。たぶん、そこが貴方たちの鍵となるから頑張りなさい」
そう言って彼女は、手で後ろの家を差し示しなから振り返った。僕らは一度立ち止まり、そこからフィーナが一歩間に出て、すぐさま意を決したように。日本家屋の家の玄関の引戸に手をかける。
「……」
玄関はびくともしない。
「鍵がかかってます……」
――さもあらん、夜だし、不用心だし。
「起こしちゃ悪いから、呼んでくるわ」
そう言って、幸子様は玄関を通り抜けて行ってしまった。
――さすが幽霊。しかし誰か寝ている場所で、話しあいをして大丈夫なんだろうか?
しばらくすると、玄関の扉は開き湊とが顔を覗かせた。
彼は昼間とは違い厚手の着物を着こんでいた。
胸の前には、赤ちゃんがすやすや寝ている。
「さぁ、どうぞ上がって」
「あら、可愛い赤ちゃんですね」
そう言って、フィーナが赤ちゃんに話しかける。
……赤ちゃん? その時、赤ちゃんの狐の耳がピコッと動いた。
僕は、鼻をつまみしがみこんだ。
「ハヤト!?」
「君!?」
「ハヤト、そんな所でしゃがみこんだら、お召し物が汚れますよ」
僕を心配する声と、そうでない声のせいで赤ちゃんが起きてしまったようだ。
ああぁ――! と、高い声が響く。
「あらあら」と、言うフィーナの笑顔と、軽いフットワークの足取りと、お尻当たりを湊がぽふぽふ叩く。
そうすると赤ちゃんはふたたび眠りに落ちた。眠らせ技は、ベテランの域に達していた。
「ハヤトどうしたのですか?」
「狐の耳が可愛い過ぎてつい……」
「あぁ……」
そう言うフィーナと声を押さえて、笑う湊。
「この子の母さんは、誰なんですか?」
「よしねぇちゃんだよ。旅館で遅番らしい、中津にぃちゃんは、まだみたい調理場が終わってないかもね?」
「あの二人喧嘩ばかりだったじゃないですか!?」
「でも、次の日は普通に話してただろう?」
やはり、知り合いの子どもだったようだ。
そしてまたもや、向日葵ちゃんがお茶を持ってやって来た。
「なんで、こんな寒い所で話ているんですか?!」
そして彼女に仕切りで、僕らは部屋へと移動したのだった。
つづく
温泉街だからなのか夜の街も明るい。時折着飾った女性たちと、用心棒だろう男の組み合わせとすれ違う。
僕たちの組み合わせは、僕、フィーナ、ルイス、そして案内の彼女。各世界に1人の組合わせだ。
幸子、彼女の髪は、日本髪の様ではあるが後ろの高い位置で、1つにまとめられている。そして派手さはないが、多くの着物を着こんでいるようだ。
「幸子様、今、貴方は湊と一緒にいるのですか?」
「いないわ。私が憑いているのは白雪の方。その方があの子のためになるのよ、たぶんね」
「白雪さんは元気なんですか?」
フィーナは、顔を上げて聞く。それに対し幸子は、少し間を置いて、少しずつ心の内を話始めてる。
「彼女はもうすぐ死ぬわ。いい意味でよ、勘違いしないでね。凄くうるさい娘が、覚悟を決めている。残念ながら私には先見の才はないけれど、あの子なら最悪の事態でも湊と一緒にいようと努力するはず。だから白雪はもう長くない。わかる?」
「そっか……」
彼女は、涙を流してはいないが、たぶん泣いている。僕は彼女の手をだってつかみ、一緒に歩く。これからも変わらず。
「でも、湊は嫌みたい、自分の手で白雪を幸せにしたいみたい。それはすでに叶っているし、もうその機会はこの世では失われてしまったと言っていい。たぶん、そこが貴方たちの鍵となるから頑張りなさい」
そう言って彼女は、手で後ろの家を差し示しなから振り返った。僕らは一度立ち止まり、そこからフィーナが一歩間に出て、すぐさま意を決したように。日本家屋の家の玄関の引戸に手をかける。
「……」
玄関はびくともしない。
「鍵がかかってます……」
――さもあらん、夜だし、不用心だし。
「起こしちゃ悪いから、呼んでくるわ」
そう言って、幸子様は玄関を通り抜けて行ってしまった。
――さすが幽霊。しかし誰か寝ている場所で、話しあいをして大丈夫なんだろうか?
しばらくすると、玄関の扉は開き湊とが顔を覗かせた。
彼は昼間とは違い厚手の着物を着こんでいた。
胸の前には、赤ちゃんがすやすや寝ている。
「さぁ、どうぞ上がって」
「あら、可愛い赤ちゃんですね」
そう言って、フィーナが赤ちゃんに話しかける。
……赤ちゃん? その時、赤ちゃんの狐の耳がピコッと動いた。
僕は、鼻をつまみしがみこんだ。
「ハヤト!?」
「君!?」
「ハヤト、そんな所でしゃがみこんだら、お召し物が汚れますよ」
僕を心配する声と、そうでない声のせいで赤ちゃんが起きてしまったようだ。
ああぁ――! と、高い声が響く。
「あらあら」と、言うフィーナの笑顔と、軽いフットワークの足取りと、お尻当たりを湊がぽふぽふ叩く。
そうすると赤ちゃんはふたたび眠りに落ちた。眠らせ技は、ベテランの域に達していた。
「ハヤトどうしたのですか?」
「狐の耳が可愛い過ぎてつい……」
「あぁ……」
そう言うフィーナと声を押さえて、笑う湊。
「この子の母さんは、誰なんですか?」
「よしねぇちゃんだよ。旅館で遅番らしい、中津にぃちゃんは、まだみたい調理場が終わってないかもね?」
「あの二人喧嘩ばかりだったじゃないですか!?」
「でも、次の日は普通に話してただろう?」
やはり、知り合いの子どもだったようだ。
そしてまたもや、向日葵ちゃんがお茶を持ってやって来た。
「なんで、こんな寒い所で話ているんですか?!」
そして彼女に仕切りで、僕らは部屋へと移動したのだった。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる