魔王がやって来たので

もち雪

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魔界の新たな闇

幽霊にいざなわれて

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 夜の街明かりの中を歩く。

 温泉街だからなのか夜の街も明るい。時折着飾った女性たちと、用心棒だろう男の組み合わせとすれ違う。

 僕たちの組み合わせは、僕、フィーナ、ルイス、そして案内の彼女。各世界に1人の組合わせだ。

 幸子、彼女の髪は、日本髪の様ではあるが後ろの高い位置で、1つにまとめられている。そして派手さはないが、多くの着物を着こんでいるようだ。
 
「幸子様、今、貴方は湊と一緒にいるのですか?」

「いないわ。私が憑いているのは白雪の方。その方があの子のためになるのよ、たぶんね」

「白雪さんは元気なんですか?」
 
 フィーナは、顔を上げて聞く。それに対し幸子は、少し間を置いて、少しずつ心の内を話始めてる。

「彼女はもうすぐ死ぬわ。いい意味でよ、勘違いしないでね。凄くうるさい娘が、覚悟を決めている。残念ながら私には先見の才はないけれど、あの子なら最悪の事態でも湊と一緒にいようと努力するはず。だから白雪はもう長くない。わかる?」

「そっか……」
 彼女は、涙を流してはいないが、たぶん泣いている。僕は彼女の手をだってつかみ、一緒に歩く。これからも変わらず。

「でも、湊は嫌みたい、自分の手で白雪を幸せにしたいみたい。それはすでに叶っているし、もうその機会はこの世では失われてしまったと言っていい。たぶん、そこが貴方たちの鍵となるから頑張りなさい」
 
 そう言って彼女は、手で後ろの家を差し示しなから振り返った。僕らは一度立ち止まり、そこからフィーナが一歩間に出て、すぐさま意を決したように。日本家屋の家の玄関の引戸に手をかける。

「……」
 玄関はびくともしない。

「鍵がかかってます……」

 ――さもあらん、夜だし、不用心だし。
 
「起こしちゃ悪いから、呼んでくるわ」
 
 そう言って、幸子様は玄関を通り抜けて行ってしまった。

 ――さすが幽霊。しかし誰か寝ている場所で、話しあいをして大丈夫なんだろうか?
 
 しばらくすると、玄関の扉は開き湊とが顔を覗かせた。
 
 彼は昼間とは違い厚手の着物を着こんでいた。

 胸の前には、赤ちゃんがすやすや寝ている。

「さぁ、どうぞ上がって」
「あら、可愛い赤ちゃんですね」

 そう言って、フィーナが赤ちゃんに話しかける。

 ……赤ちゃん? その時、赤ちゃんの狐の耳がピコッと動いた。
 
 僕は、鼻をつまみしがみこんだ。

「ハヤト!?」
「君!?」
「ハヤト、そんな所でしゃがみこんだら、お召し物が汚れますよ」
 
 僕を心配する声と、そうでない声のせいで赤ちゃんが起きてしまったようだ。
 
 ああぁ――! と、高い声が響く。
 
「あらあら」と、言うフィーナの笑顔と、軽いフットワークの足取りと、お尻当たりを湊がぽふぽふ叩く。

 そうすると赤ちゃんはふたたび眠りに落ちた。眠らせ技は、ベテランの域に達していた。

「ハヤトどうしたのですか?」
「狐の耳が可愛い過ぎてつい……」

「あぁ……」
 そう言うフィーナと声を押さえて、笑う湊。
 
「この子の母さんは、誰なんですか?」

「よしねぇちゃんだよ。旅館で遅番らしい、中津にぃちゃんは、まだみたい調理場が終わってないかもね?」

「あの二人喧嘩ばかりだったじゃないですか!?」
「でも、次の日は普通に話してただろう?」
 
 やはり、知り合いの子どもだったようだ。
 
 そしてまたもや、向日葵ちゃんがお茶を持ってやって来た。

「なんで、こんな寒い所で話ているんですか?!」

 そして彼女に仕切りで、僕らは部屋へと移動したのだった。

      つづく
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