魔王がやって来たので

もち雪

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魔界の新たな闇

それぞれの正義

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 次の日の夜、幸子が迎えに来る時間になっても現れず、僕も行きたくないと渋った。

 だって、もし指先を触っただけで、あっ……。湊たちが、なったら僕は羨ま死するかもしれない。
 
 そんな僕に対しフィーナは、「この事件で、魔王様に認めて貰うんだから頑張りますよ!」と、いつのまにか高く上がっていた、結婚へのハードルを僕に伝えてくる。
 
 わかった。もしこの事件が、魔界を巻き込む壮大な事件だったと、わかったらその時点で結婚式と籍か、契約はかわそう、いいね。(キメ顔)

そんな事を言える様になりたいが、プロポーズや今後の見通したたなくては、結婚にいきつかなそうだ……。

 なんとなく「頑張るぞぉ」って感じの落ちと言うか、諦めで出発する事になった。

 渋る姿を隠して、 ふたたび湊の家へ行く。
 
 幸子は僕らを迎えには来なかったので、「こんばんは!」と、声をかけても誰もでない。
 
 扉に手をかけると今度は、扉がスルスルと開く。何かおかしい、中に声をかけつつ踏み込む。

 煙とハッカの混ざった様な匂いがただよい。舌にざらつく感覚が、危険信号を知らせる。
 
 奥に行くとちゃぶ台に腰をかけた、紺の着物を着込んだ白煙が居た。
 
 彼はこちらなどお構いしで、キセルをふかしている。ハッカの様な匂いが、辺りに漂い。いち早く、行動しなければいけないのがわかった。

 椅子は撤去されており、すぐさまルイスが玄関へと走ったが、扉はお約束に忠実で開かないようだ。

 そして最悪なことに、どんどん意識昧になってきている。

「貴方、何故そんなに邪魔なんですか?」

 やっとこっちを見たら、腹に響くような声でそんな事を言う。

「あの最期の白銀の狐の一人ある湊、その勤めをおろそかにする事を何故、私の孫に言ったのです。それさえなければ」

その言葉を聞きながら、僕らは曖昧な意識さえも保てずに倒れた。

夢を見る。誰かが僕の手足を触っている。目を覚ますとこぎつねたちがの人の姿を保ていないようで、狐の姿のまま僕の足を器用にしばっている。

 張り付けにされているようだ。

その紐の色は、白と赤。

白は儀式を表し、赤は血を表す。そう思ったりするのだが……。二色合わさると、めでたく感じてしまう気持ちが強い。

一番大きな狐が鈴を口に加え、リーーン、リーーンとその音を鳴らす。その音によって、景色が曖昧になる。


目を開けると、座敷牢に僕入れらていた。じめっとした空気に汗や、体臭を煮詰めたような匂いがする。それとは別に、身体中に這いずりまわる何かを感じる。

 檻の前に、白煙と知らない男がペットショップで、犬でも選ぶような目でこちらを見る。

「フィーナとルイスはどした!?」僕は檻を掴んで吠えた。

「フィーナ様は大丈夫です。貴方たちのよう牢屋に押し込んではいません。しかし貴方を盾に大人しくして貰っています。蛇足ですが、孫たちも元気です。逃がす事は出来ませんがね」

「逃がす?」

「危険があるかもしれない、この里を逃げる話をしていたようです。詳しくは、この男に聞くといいでしょう。私はもう疲れました……」


そう言って白煙は、行ってしまった。

どうやらここはやはり日本家屋の中のようだ。男の近くでは、ゆらゆらお香の煙が上がっている。

「おじいちゃんはもう長くないのに……お前のせいだぞ」

男は、ほっかむりをしている。彼が着ている服はムーンドイルで、遊牧民着ていた服に似ている。なら、この男が……。

「白煙が、長くない?」

「自分の娘は、死にそうだし、前当主は死ぬ事になるし、その娘はわけのわからない男連れてくるし、孫は逃げようとするし、なんでお前はあの狸爺の厄災でしかない。」

「フィーナの両親は白煙が殺したのではないのか?」

目の前の男は、檻につかまる僕を面白そうに見ている。

「お前は普通の子どものようだなぁ。俺は寡黙な男だから1だけ答えてやるが、それでいいのか?」

僕は檻を持ったまま下を向く。フィーナの事情は時間とともに変わるはず、変わらない過去を知るべきだと僕は思った。

「それでいい。フィーナの両親の、死の真相について教えてくれ」

 その時、謎の男はおもいっきり顔を歪めた

「お前、言葉遊びが過ぎるなあ……。まぁいい、教えてやろう。先代当主は、爺の命で俺の親父どのが殺し、そして俺の親父とお袋も死んだ。だから爺は化け物と言っていい」

「彼はいともあっさりと、そうのべた」

「では、何故、彼に従うのですか?」重すぎ過去を背負う彼に、ついつい敬語になる。

「あの爺の失態は、娘と孫可愛いさに死ななかった事だ。爺は何より白銀の血を尊んでいた。だから、どの子どもと分け隔てなく本家に呼びこみ、本能に抗う事を止めた当主に口酸っぱく進言していたが、ついに聞き入れらず、当主殺しの汚名を背負い朽ちていけば、次の当主は、よりそう白銀の毛皮を身に付けたお二人だったはず。本当にあの爺は生き方が不器用過ぎて、目も当てられないわな」
 
 今までと、180度違う証言にめまいがしそうだった。そして実際倒れそうで、思わず腰を降ろしたのだった。


     つづき
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