277 / 292
魔界の新たな闇
体に宿る
しおりを挟む
座敷牢の中の明かりはなく、外の座敷の蝋燭の明かりだけが僕に与えられた光だった。
その光さえ消えてしまう事を考えると、僕はぞっとした。
だから目の前のこの男にでも、長く居て貰いたい。
そしてフィーナやルイスの事について、何か聞き出せるなら……。
「なんでそんな馬鹿げた事を、あの人のしたいままにさせておくんですか、哀れさをそのままにして」
「真相についての質問は、終わったみたいだな、じゃーな」
そう言って彼は、頭の上で手を振りながら、振り返えりもせず行ってしまう。
「あー本当に馬鹿らしい」
そういって顔を洗うようにごしごしするが、体調不良はとれない。お香のせいなのか?
檻に向かって魔法を使おうとするが、全然駄目だ。頭がぼっとするのと、同時に魔力の流れが切断されている。手に彩りが起きない。
手をとじたり、ひらいたりする。体力面でも今のところは大きな支障がないが、少々ながら障りを感じていた。
これは呪術的何かなのか? 経験か乏しいだけに確信は持てないが、十中八九そうだろう。夢も、それに関係性があるように思えた。
僕は座敷牢のど真ん中に座り込み、頭を抱えた。
悪人もそれぞれの正統性を持っている。彼らの理想を打ち砕く事になっても僕のはその手を緩めては駄目だ。打ち砕け、打ち砕け。
その時、僕しかいない座敷牢の中で見知った声がする。
「私が助けてやろうか? 異世界のくそったれよ」
その男が立っているのは、座敷牢でも光の当たらない部分。簡易的なかわやの前で、とても悪臭漂う場所。
シャーマン、呪術師、オリエラの父のアニス王を死の淵まで追いつめた彼は、彼の持ち物である短剣を、僕が破壊し打ち砕いたはず。
「貴方は……」
「貴方は? アハァハハハハハ、お前は本当にくそったれだ。我々は生死をわけて戦ったはずなのに、お前になら殺されてもいいと思うものが微塵もない」
彼はこっちへやって来ている。
「だが、お前には呪術の素質もあるようだ。私の精神のかけらがあるお前か、アニスなら、くそったれながら我々の知識の器としてお前の方がまだましだ。お前には出来るか? お前の理想とする使い方が、私は『お前は厄災だ』『薄汚い呪術師だ』、と罵られているところがみたい……」
そう言って彼は、彼の顔を覆う布の向こうから、座っている僕の目を覗き込んだ。
「えっ? 呪術の可能性がみたいのですか? もしかしたらあったかも知れない未来。呪術よって、敵とも手をたずさえた未来をですか?」
こっちは可愛い彼女と、こんな時どうやってるのか不明だが、可愛い女の子に助けられる、ちゃっかり執事の挙動が、いろいろな意味で心配なので煽るだけあおって目の前をチカチカさせていた。
ハッカの匂いに包まれて、吐き気までしてくる。
「ふふふ、では、見せて見るがいい」
そう言うと彼は僕のまわりの空を蹴った。リーン、リーンと赤と白の紐が現れ破壊される。次々蹴られて破壊されていく中。
「子狐たちは!?」
僕は男に食い入るように聞いた。
「子狐?」そう言った後、「あぁ……、こんな初歩的な呪術、跳ね返る力も弱いだろう。呪術はこうやるんだ!」
彼は僕の心臓を掴む。幽霊は限度を知らないらしい。
ヴゥゥ……。
心臓に重い熱さが、来たがすぐに消えた。
「呪術の素質あってもすぐに使えるものではない、しかし1度だけ撃てる様にはしてやった。お前の能力も合わさり、酷い姿を相手はさらすはずだ」
「ありがとう。たぶん使わないけど、実際はわからない。君の望む未来を作るよう頑張るよ」
「そうだ。死屍累々死体の山を作っていけ」
そうシャーマンは言い、そのまま消えていった。
「死ねばみんな仏様か……」
僕に宿る、仏様は過激思考らしい。僕はふたたび目をつぶり夜に備える様にする。一撃であのお香を、うち壊すために。
つづく
その光さえ消えてしまう事を考えると、僕はぞっとした。
だから目の前のこの男にでも、長く居て貰いたい。
そしてフィーナやルイスの事について、何か聞き出せるなら……。
「なんでそんな馬鹿げた事を、あの人のしたいままにさせておくんですか、哀れさをそのままにして」
「真相についての質問は、終わったみたいだな、じゃーな」
そう言って彼は、頭の上で手を振りながら、振り返えりもせず行ってしまう。
「あー本当に馬鹿らしい」
そういって顔を洗うようにごしごしするが、体調不良はとれない。お香のせいなのか?
檻に向かって魔法を使おうとするが、全然駄目だ。頭がぼっとするのと、同時に魔力の流れが切断されている。手に彩りが起きない。
手をとじたり、ひらいたりする。体力面でも今のところは大きな支障がないが、少々ながら障りを感じていた。
これは呪術的何かなのか? 経験か乏しいだけに確信は持てないが、十中八九そうだろう。夢も、それに関係性があるように思えた。
僕は座敷牢のど真ん中に座り込み、頭を抱えた。
悪人もそれぞれの正統性を持っている。彼らの理想を打ち砕く事になっても僕のはその手を緩めては駄目だ。打ち砕け、打ち砕け。
その時、僕しかいない座敷牢の中で見知った声がする。
「私が助けてやろうか? 異世界のくそったれよ」
その男が立っているのは、座敷牢でも光の当たらない部分。簡易的なかわやの前で、とても悪臭漂う場所。
シャーマン、呪術師、オリエラの父のアニス王を死の淵まで追いつめた彼は、彼の持ち物である短剣を、僕が破壊し打ち砕いたはず。
「貴方は……」
「貴方は? アハァハハハハハ、お前は本当にくそったれだ。我々は生死をわけて戦ったはずなのに、お前になら殺されてもいいと思うものが微塵もない」
彼はこっちへやって来ている。
「だが、お前には呪術の素質もあるようだ。私の精神のかけらがあるお前か、アニスなら、くそったれながら我々の知識の器としてお前の方がまだましだ。お前には出来るか? お前の理想とする使い方が、私は『お前は厄災だ』『薄汚い呪術師だ』、と罵られているところがみたい……」
そう言って彼は、彼の顔を覆う布の向こうから、座っている僕の目を覗き込んだ。
「えっ? 呪術の可能性がみたいのですか? もしかしたらあったかも知れない未来。呪術よって、敵とも手をたずさえた未来をですか?」
こっちは可愛い彼女と、こんな時どうやってるのか不明だが、可愛い女の子に助けられる、ちゃっかり執事の挙動が、いろいろな意味で心配なので煽るだけあおって目の前をチカチカさせていた。
ハッカの匂いに包まれて、吐き気までしてくる。
「ふふふ、では、見せて見るがいい」
そう言うと彼は僕のまわりの空を蹴った。リーン、リーンと赤と白の紐が現れ破壊される。次々蹴られて破壊されていく中。
「子狐たちは!?」
僕は男に食い入るように聞いた。
「子狐?」そう言った後、「あぁ……、こんな初歩的な呪術、跳ね返る力も弱いだろう。呪術はこうやるんだ!」
彼は僕の心臓を掴む。幽霊は限度を知らないらしい。
ヴゥゥ……。
心臓に重い熱さが、来たがすぐに消えた。
「呪術の素質あってもすぐに使えるものではない、しかし1度だけ撃てる様にはしてやった。お前の能力も合わさり、酷い姿を相手はさらすはずだ」
「ありがとう。たぶん使わないけど、実際はわからない。君の望む未来を作るよう頑張るよ」
「そうだ。死屍累々死体の山を作っていけ」
そうシャーマンは言い、そのまま消えていった。
「死ねばみんな仏様か……」
僕に宿る、仏様は過激思考らしい。僕はふたたび目をつぶり夜に備える様にする。一撃であのお香を、うち壊すために。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる