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3章 砂漠の国の救世主物語
41話 私達の計画は完璧、あれは狙い通りなのですぅ
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「病み上がりだと思って優しくしてやれば付け上がりやがって!! いくぞ、ミュウッ!」
「がうぅ!」
アリアとスゥの攻撃も意にも介さない余裕の笑みを浮かべて避け続ける少年に特攻しようとした時、2人の肩に手を置く兄、テツが現れる。
「この子の相手をするの代わってくれるかい? 確認したい事があるんだ」
「えっ!? テツ兄が? 珍しい……いいけどさ?」
こんな風にレイア達が暴れていると止めるか、苦笑いを浮かべながら見守るというスタンスが普通のテツに代わってくれと言われた事が意外そうな表情を浮かべるレイア。
ミュウは偉そうに腕組みして、ガゥと頷いてみせるが、おそらくたいした考えはないだろう。
レイア達に「ありがとう」と告げたテツは少年に向かって力みを感じさせない自然体で近づいて行く。
近づいて行くとアリアとスゥが道を開ける。レイアとのやり取りを聞いていたのか、近づくテツに気付いたかは不明だがテツの様子を見た瞬間、ビックリしたように息を止める姿が見られた。
激昂していたアリア達を近づいただけで落ち着かせたテツに少々、挙動不審になった少年だったが、きかん坊のように鼻を鳴らす。
そんな少年に薄らと笑みを浮かべるテツが話しかける。
「君がどんな悪さをしたかは何となく想像出来なくもないけど……その技術を教えてくれた人はそんな事をする為に授けてくれたのかな?」
「――ッ!! な、何を言ってる!? お前は何者だ!」
テツから言い知れない圧力を感じ、虚勢の笑みすら出来ずに恐怖した少年は後ずさる。
それを背後で見ていたアリア達4人も背筋を伸ばして気を付けを思わずしてしまう。
テツは滅多に怒らない。
だから、知る者も少ないが、ホーラは相手が誰であれ、怒る時は激昂するが、テツは下の子を叱る時のもっともキツイ時の反応、そう、薄らと笑うのである。
アリア達もまた、少ない回数であるがテツを怒らせた経験はあった。その時の恐怖が忘れられないらしい。
テツが射程範囲に入るのを感じた少年は慌てて歩行で距離を取り始める。
しかし、同じだけ距離を詰めるテツに目を見開かされる。
距離、位置を誤認させるはずの歩行に寸分違わず、同じ距離感で逃げる少年にテツが付いてくるのだから……
「お前は何者だ! どうして、俺様と同じ動きが出来る!」
「相手に誰かと問う時は、まず名乗ると教わらなかったかい?」
そう言った瞬間、テツは一気に間合いを詰め、少年を覗きこむように瞳を見つめる。
テツの動きに焦った少年は飛び退くように離れようとするが「へっ?」と間抜けな声を洩らしながら地面に叩きつけられる。
何が起こったか分からない少年が驚いた表情をして身を起こすのを見ているテツが教える。
「何を驚いているんだい? ただ、足を払っただけだよ?」
「くぅぅ! だから、どうして俺様と同じ動き、歩行が出来るのだっ!」
少年が歩行、と言葉にした瞬間、テツの目が細まる。
そこから漏れた何かに反応した少年が飛び起きると同時に背後の出口に向かって逃げ出そうとする。
薄らと笑みを浮かべたテツが一瞬で少年の前に廻り込む。
「君にはどうしても確認したい事がある。ゆっくりしていくといい」
少年はテツの笑みに涙目にされ、直立したままのアリア達も古傷を抉られるように仲良く涙目にされていた。
1時間後。
少年は、テツの前でどこか慣れた仕草に感じられる土下座をしていた。
「俺様の名前はデングラ、デンと呼んでくださいな、兄さん!」
少年、デングラは落語家が扇子でチョンとコメカミを叩いてそうな笑みを浮かべテツを見上げてくる。
犬がお腹を見せるような態度をするデングラであるが、最初の印象通り、きかん坊だったので長くなってる鼻をへし折るのに少々、時間を要した。
その方法であるが体を痛めつけた、という訳ではない。
テツは、ただ、足払いをかけ続けたのである。しかも、一度も倒さずに。
絶妙な足払いをするテツの妙技はデングラに痛みどころか触れている事すら感じさせずに宙を浮かされる。
見た目、足は地面に着いているように見えるのだが、デングラの足裏には地面との接触を感じさせない。
当然、デングラは引き攣りながらではあるが口の端を上げて笑う。
「お前は何をしてる? 馬鹿じゃないのか?」
「そうかい?」
薄らとした笑みを止めないテツから身を仰け反る……仰け反らせようとしたデングラであったが出来ない事に驚き、テツを凝視する。
しかし、これ以上、驚くのはテツに主導権を取られると思ったらしいデングラはテツが疲れるのを待つ、とばかりに目を瞑って腕組みをする。
5分後
疲れを見せるどころか汗一つ掻かないテツに反して、両腕を振り回しているデングラという構図に変わっていた。
体重移動が出来ないデングラが必死にテツを掴もう、殴ろうとするが当然、そんな分かりやすい動きに捕まるテツではない。
「いい加減、降ろせ! 馬鹿者!!」
恐怖に歪んだ表情のデングラが叫ぶ。
考えて欲しい。飛び降りたと思ったら着地した感覚がないまま、そこから移動出来ない感覚を。
奈落の谷に突き落とされて、いつまでも地面に着かない感覚とも違い、五感の触感を失ったような恐怖である。
しばらく強気だったデングラであったが、15分もすると大人しくなり始める。
「うっぷ、気持ち悪い……」
ついには平衡感覚もおかしくなり、酔い始め、顔を真っ青にして口許を手で抑え始める。
更に30分後
「お、俺様が悪かったです! どうか許して下さい……吐いちゃうぅ!!」
形振り構わない泣き方をし出したデングラがテツに許しをついに請うたのでテツは足払いを止める。
降ろして貰ってホッとしたのも束の間、デングラはそこから出口に飛び出して色々とスッキリさせに疾走した。
という事があり、恭順を示したデングラが出来上がった。
「凄いですね? 兄さん! 俺様にしたのは魔法か何かですか?」
それにテツが答えようとした瞬間、テツの得物、梓が巫女装束の人の姿で現れる。
そして、チッチッチとするように人差し指を揺らしながら自分の事のように自慢するように言ってくる。
「只の足運びの応用、技術なのですよ!」
梓の登場に驚いた様子を見せるデングラが梓を凝視しながら問いかける。
「えっと……兄さん? 突然、現れた、この方は?」
少し困ったような顔をするテツが答えようとするが、またもや頼まれてもないのに鼻高々にする梓が自己紹介する。
「ウチは梓! テツ君の唯一無二の一振りの刀であり……妻です♪」
言い切った梓はキャンキャンと嬉しそうに飛び上がり「正式な式はまだなのにぃ!」と黄色い声を上げる。
目をパチパチさせて驚くデングラ。
しかし、驚いていたのはデングラだけではない。黙って見守っていたホーラ達も驚いていた。
「テツ、アンタ、テファから……はぁ……」
一瞬、テツを疑ったホーラであったが、テツも驚き過ぎて間抜け面を晒しているのを見て「アタイとした事がない可能性を疑ったさ」と溜息を零す。
アリア達もホーラと同じ結論に至ると梓の空回りだろう、と納得する。
驚きから最後に復帰したテツが首を傾げながら梓に問いかける。
「梓さん、妻という話はどこから?」
「もうもう、テツ君は恥ずかしがり屋さんなんだからぁ! 第一段階の契約する時に誓いをしたでしょ?」
うふふ、と嬉しそうにする梓を見つめるテツが記憶を探るように目を瞑るが心当たりがない。
「誓いをしました?」
「しましたよ! 契約を結んだ……時に……?」
徐々に言葉が尻すぼみになる梓がコメカミに指を当て、慌てるように自分の胸に聞くように手を当てると瞑らな瞳を大きく見開くと叫ぶ。
「しまったっ!! あの時の事を驚き過ぎて誓いをせずに契約を結んでしまったですよぉ!!」
顔ビッシリと汗を掻く梓がテツを凝視する。
テツは言い知れない残念な予感に苦笑を浮かべる。
すると、突然、テツの前で三つ指ついた梓が輝かんばかりの笑みを浮かべて顔を上げる。
「幾久しく」
「その……意味を理解した後では頷けないですよ? 俺はテファ以外と結婚する気はありませんから」
申し訳なさそうにするテツに顔を向けていた梓がプルプルと震え出すと目端の幅と同じ涙の滝が生まれる。
正座の状態から飛び上がる梓がテツの片足に抱き着く。
「このままだとウチ、未婚なのに出戻りなのですよぉ!」
「申し訳ないとは思いますけど……」
梓には悪いがテツもそこは譲れない領域である。
「性悪狐の巴が『試練を果たした瞬間にどさくさ紛れに誓わせたら勝ちじゃ』と自慢げに言ってたから実践しようと思ってたのにぃ!!」
「なるほど、ユウはその手でやられたという事さ?」
呆れるように肩を竦めるホーラ、そして、メモを取るアリアとスゥ。
それを恐ろしげに見つめるテツが呟く。
「危なかった……あの瞬間に言われてたら思わず頷いてた……」
雄一との久しぶりの邂逅と熱い戦いの後の高揚してたテツは何も考えずに頷いていたと恐怖する。
縋る梓が子供のような泣き方をしながら言ってくる。
「ウチもこのままでは帰れません! せめて、お友達からぁ!」
困るテツとそれを見守るアリア達。
状況に着いてこれないデングラに離れた位置で苦笑いしていたダンテが問いかける。
「まあ、テツさんは取り込み中だから代わりに僕が聞くけど……君に歩行を教えたのはユウイチさんかな?」
「ん? そうだが、お前もユウイチ様を知ってるのか?」
デングラの言葉に頷くダンテはどうやら繋がったと思い、話を進めようとするが背後から梓の勝鬨の声が響く。
「よっしゃあ、ですよぉ! ふっふふ……テツ君はチョロいから内側に入り込めば後はこっちのものですよ」
嬉しそうに天井を見つめる梓を苦笑いで眺めるテツ。
それを見つめるアリアとスゥが話し合う。
「考えている事を口にしたらテツさんに警戒されて終わりなの」
「そうとも言えない。あの残念さはあの2人に近しい。予定通りにはいかないけど、結果は同じになる理解出来ない法則が発生しかねない」
あれは恐ろしいとばかりにアリアが呟くのを聞いたスゥがあの2人を思い出し、その可能性に頷かされる。
騒ぐ後ろの状況を眺めるダンテとデングラ。
このままでは話が進まないと嘆息するダンテは騒ぎの中核であるテツを手招きして、その場から離れさせる作戦を開始した。
「がうぅ!」
アリアとスゥの攻撃も意にも介さない余裕の笑みを浮かべて避け続ける少年に特攻しようとした時、2人の肩に手を置く兄、テツが現れる。
「この子の相手をするの代わってくれるかい? 確認したい事があるんだ」
「えっ!? テツ兄が? 珍しい……いいけどさ?」
こんな風にレイア達が暴れていると止めるか、苦笑いを浮かべながら見守るというスタンスが普通のテツに代わってくれと言われた事が意外そうな表情を浮かべるレイア。
ミュウは偉そうに腕組みして、ガゥと頷いてみせるが、おそらくたいした考えはないだろう。
レイア達に「ありがとう」と告げたテツは少年に向かって力みを感じさせない自然体で近づいて行く。
近づいて行くとアリアとスゥが道を開ける。レイアとのやり取りを聞いていたのか、近づくテツに気付いたかは不明だがテツの様子を見た瞬間、ビックリしたように息を止める姿が見られた。
激昂していたアリア達を近づいただけで落ち着かせたテツに少々、挙動不審になった少年だったが、きかん坊のように鼻を鳴らす。
そんな少年に薄らと笑みを浮かべるテツが話しかける。
「君がどんな悪さをしたかは何となく想像出来なくもないけど……その技術を教えてくれた人はそんな事をする為に授けてくれたのかな?」
「――ッ!! な、何を言ってる!? お前は何者だ!」
テツから言い知れない圧力を感じ、虚勢の笑みすら出来ずに恐怖した少年は後ずさる。
それを背後で見ていたアリア達4人も背筋を伸ばして気を付けを思わずしてしまう。
テツは滅多に怒らない。
だから、知る者も少ないが、ホーラは相手が誰であれ、怒る時は激昂するが、テツは下の子を叱る時のもっともキツイ時の反応、そう、薄らと笑うのである。
アリア達もまた、少ない回数であるがテツを怒らせた経験はあった。その時の恐怖が忘れられないらしい。
テツが射程範囲に入るのを感じた少年は慌てて歩行で距離を取り始める。
しかし、同じだけ距離を詰めるテツに目を見開かされる。
距離、位置を誤認させるはずの歩行に寸分違わず、同じ距離感で逃げる少年にテツが付いてくるのだから……
「お前は何者だ! どうして、俺様と同じ動きが出来る!」
「相手に誰かと問う時は、まず名乗ると教わらなかったかい?」
そう言った瞬間、テツは一気に間合いを詰め、少年を覗きこむように瞳を見つめる。
テツの動きに焦った少年は飛び退くように離れようとするが「へっ?」と間抜けな声を洩らしながら地面に叩きつけられる。
何が起こったか分からない少年が驚いた表情をして身を起こすのを見ているテツが教える。
「何を驚いているんだい? ただ、足を払っただけだよ?」
「くぅぅ! だから、どうして俺様と同じ動き、歩行が出来るのだっ!」
少年が歩行、と言葉にした瞬間、テツの目が細まる。
そこから漏れた何かに反応した少年が飛び起きると同時に背後の出口に向かって逃げ出そうとする。
薄らと笑みを浮かべたテツが一瞬で少年の前に廻り込む。
「君にはどうしても確認したい事がある。ゆっくりしていくといい」
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1時間後。
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その方法であるが体を痛めつけた、という訳ではない。
テツは、ただ、足払いをかけ続けたのである。しかも、一度も倒さずに。
絶妙な足払いをするテツの妙技はデングラに痛みどころか触れている事すら感じさせずに宙を浮かされる。
見た目、足は地面に着いているように見えるのだが、デングラの足裏には地面との接触を感じさせない。
当然、デングラは引き攣りながらではあるが口の端を上げて笑う。
「お前は何をしてる? 馬鹿じゃないのか?」
「そうかい?」
薄らとした笑みを止めないテツから身を仰け反る……仰け反らせようとしたデングラであったが出来ない事に驚き、テツを凝視する。
しかし、これ以上、驚くのはテツに主導権を取られると思ったらしいデングラはテツが疲れるのを待つ、とばかりに目を瞑って腕組みをする。
5分後
疲れを見せるどころか汗一つ掻かないテツに反して、両腕を振り回しているデングラという構図に変わっていた。
体重移動が出来ないデングラが必死にテツを掴もう、殴ろうとするが当然、そんな分かりやすい動きに捕まるテツではない。
「いい加減、降ろせ! 馬鹿者!!」
恐怖に歪んだ表情のデングラが叫ぶ。
考えて欲しい。飛び降りたと思ったら着地した感覚がないまま、そこから移動出来ない感覚を。
奈落の谷に突き落とされて、いつまでも地面に着かない感覚とも違い、五感の触感を失ったような恐怖である。
しばらく強気だったデングラであったが、15分もすると大人しくなり始める。
「うっぷ、気持ち悪い……」
ついには平衡感覚もおかしくなり、酔い始め、顔を真っ青にして口許を手で抑え始める。
更に30分後
「お、俺様が悪かったです! どうか許して下さい……吐いちゃうぅ!!」
形振り構わない泣き方をし出したデングラがテツに許しをついに請うたのでテツは足払いを止める。
降ろして貰ってホッとしたのも束の間、デングラはそこから出口に飛び出して色々とスッキリさせに疾走した。
という事があり、恭順を示したデングラが出来上がった。
「凄いですね? 兄さん! 俺様にしたのは魔法か何かですか?」
それにテツが答えようとした瞬間、テツの得物、梓が巫女装束の人の姿で現れる。
そして、チッチッチとするように人差し指を揺らしながら自分の事のように自慢するように言ってくる。
「只の足運びの応用、技術なのですよ!」
梓の登場に驚いた様子を見せるデングラが梓を凝視しながら問いかける。
「えっと……兄さん? 突然、現れた、この方は?」
少し困ったような顔をするテツが答えようとするが、またもや頼まれてもないのに鼻高々にする梓が自己紹介する。
「ウチは梓! テツ君の唯一無二の一振りの刀であり……妻です♪」
言い切った梓はキャンキャンと嬉しそうに飛び上がり「正式な式はまだなのにぃ!」と黄色い声を上げる。
目をパチパチさせて驚くデングラ。
しかし、驚いていたのはデングラだけではない。黙って見守っていたホーラ達も驚いていた。
「テツ、アンタ、テファから……はぁ……」
一瞬、テツを疑ったホーラであったが、テツも驚き過ぎて間抜け面を晒しているのを見て「アタイとした事がない可能性を疑ったさ」と溜息を零す。
アリア達もホーラと同じ結論に至ると梓の空回りだろう、と納得する。
驚きから最後に復帰したテツが首を傾げながら梓に問いかける。
「梓さん、妻という話はどこから?」
「もうもう、テツ君は恥ずかしがり屋さんなんだからぁ! 第一段階の契約する時に誓いをしたでしょ?」
うふふ、と嬉しそうにする梓を見つめるテツが記憶を探るように目を瞑るが心当たりがない。
「誓いをしました?」
「しましたよ! 契約を結んだ……時に……?」
徐々に言葉が尻すぼみになる梓がコメカミに指を当て、慌てるように自分の胸に聞くように手を当てると瞑らな瞳を大きく見開くと叫ぶ。
「しまったっ!! あの時の事を驚き過ぎて誓いをせずに契約を結んでしまったですよぉ!!」
顔ビッシリと汗を掻く梓がテツを凝視する。
テツは言い知れない残念な予感に苦笑を浮かべる。
すると、突然、テツの前で三つ指ついた梓が輝かんばかりの笑みを浮かべて顔を上げる。
「幾久しく」
「その……意味を理解した後では頷けないですよ? 俺はテファ以外と結婚する気はありませんから」
申し訳なさそうにするテツに顔を向けていた梓がプルプルと震え出すと目端の幅と同じ涙の滝が生まれる。
正座の状態から飛び上がる梓がテツの片足に抱き着く。
「このままだとウチ、未婚なのに出戻りなのですよぉ!」
「申し訳ないとは思いますけど……」
梓には悪いがテツもそこは譲れない領域である。
「性悪狐の巴が『試練を果たした瞬間にどさくさ紛れに誓わせたら勝ちじゃ』と自慢げに言ってたから実践しようと思ってたのにぃ!!」
「なるほど、ユウはその手でやられたという事さ?」
呆れるように肩を竦めるホーラ、そして、メモを取るアリアとスゥ。
それを恐ろしげに見つめるテツが呟く。
「危なかった……あの瞬間に言われてたら思わず頷いてた……」
雄一との久しぶりの邂逅と熱い戦いの後の高揚してたテツは何も考えずに頷いていたと恐怖する。
縋る梓が子供のような泣き方をしながら言ってくる。
「ウチもこのままでは帰れません! せめて、お友達からぁ!」
困るテツとそれを見守るアリア達。
状況に着いてこれないデングラに離れた位置で苦笑いしていたダンテが問いかける。
「まあ、テツさんは取り込み中だから代わりに僕が聞くけど……君に歩行を教えたのはユウイチさんかな?」
「ん? そうだが、お前もユウイチ様を知ってるのか?」
デングラの言葉に頷くダンテはどうやら繋がったと思い、話を進めようとするが背後から梓の勝鬨の声が響く。
「よっしゃあ、ですよぉ! ふっふふ……テツ君はチョロいから内側に入り込めば後はこっちのものですよ」
嬉しそうに天井を見つめる梓を苦笑いで眺めるテツ。
それを見つめるアリアとスゥが話し合う。
「考えている事を口にしたらテツさんに警戒されて終わりなの」
「そうとも言えない。あの残念さはあの2人に近しい。予定通りにはいかないけど、結果は同じになる理解出来ない法則が発生しかねない」
あれは恐ろしいとばかりにアリアが呟くのを聞いたスゥがあの2人を思い出し、その可能性に頷かされる。
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主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
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