異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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1章 DT、父親になる

11話 不合格のようです

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 投擲の訓練をした次の日の朝、雄一が作ったポトフを飲み込むような速度で食べるホーラの姿があった。

 訓練で気を失ったホーラは昏々と眠りに着き、陽が昇るまで目を覚まさなかったようで、目を覚ますと同時に食事を催促してくるので、みんなで朝食という事になった。

 起きぬけのホーラの食べっぷりに4人は目が点になって見守っていた……いや、アリアはすぐにいつものペースを取り戻して、黙々と食べだしているのに気付いた雄一は、アリアは大物だな、と頬を緩ます。

 リスのように頬を膨らませたホーラが雄一にニンジンを口から飛ばしながら話しかけてくる。

「ふみょろあ、ごぷりゅんのとおばく、れべんじ。ごっくん、そう言う訳でよろしくさ」
「何言ってるか、分からんわっ! 後、口に物を入れて叫ぶなっ!」

 顔に飛んできたニンジンを右手でキャッチした雄一は、空いてる左手でホーラの頭にチョップを入れる。

 入れられたチョップに涙目になるホーラは、恨めしそうに雄一を睨むと言い直してくる。

「今日、ゴブリン討伐、リベンジ、て言ったのさ。何も叩かなくても……」
「家では、食事の行儀は煩くいく予定だ、ビシビシいくからな?」

 雄一は、ホーラから視線を切って、シホーヌとレイアに目を向けると危険探知でも持ってるのか? と聞きたくなるほど、目を向けた時点で明後日の方向を見つめている2人がいた。

 明後日の方向からホーラに視線を戻したレイアが口を開く。

「ホーラ姉、やる気満々だなぁ」
「当然さぁ、もう、ゴブリンなんかに負けてられないのさ」

 2人のやり取りを見ていた雄一が「ホーラ姉?」と問いかけるとホーラが、

「ああ、ここに来た初日にレイアと意気投合して、そう呼ぶって言われたのさ」

 雄一はホーラに羨望の眼差しを向けて、レイアに視線を向けると、雄一の目を見たレイアは嫌そうな顔をする。

「レイア、レイア? 俺、ユウイチパパ! もしくは、兄ちゃん!」

 目を爛々と輝かす雄一を一瞥したレイアは、プイ……と顔を背ける。

 雄一は、この世の終わりだ……と言わんばかりの顔をして項垂れる。

 それを見ていた、ホーラに大袈裟な、と呆れられるが、雄一は反論する気力がないのか「今日、俺は一日、寝てる」と愚痴る。

 項垂れた頭を隣に座っていたアリアが椅子の上に立ち上がり、手を伸ばして、雄一の頭をナデナデしてくる。

 ウルッときた雄一はアリアを抱き締めて頬ずりをする。

「俺に優しいのはアリアだけだぁ……いつでもアリアも、呼んでくれてもいいんだからね?」

 露骨な催促をする雄一にアリアは淡々と頭をポンポンとして好きにさせているのを見ていた、ホーラが、

「立ち直ったみたいだから、朝食済んだら、出発するから準備よろしくさぁ」

 ホーラは食器を纏めて、立ち上がると「準備してくるさ」と言って食堂を出ていく。

 それを見送っていたシホーヌが、雄一に視線を向けて聞いてくる。

「大丈夫なのですぅ?」
「んっ? 何がだ?」

 勿論、ホーラの事ですよ、と心配そうに聞いてくるシホーヌに何でもないような顔をして答える。

「多分、このままだと失敗する可能性が高いだろうな」
「だったら! なんとかしないと駄目なのですぅ。何故、そんなに悠長に構えているのですぅ!」

 慌てるシホーヌを横目で見つめる雄一をレイアは睨み、雄一から解放されたアリアは我関せずとばかりに食事を再開していた。

 雄一は、頭をガリガリと掻きながら「これを言うと怒られるような気がするが……」と前振りをして口を開く。

「俺は、今回、ホーラの冒険者資格剥奪になってもいい、と思っている」
「酷いのですぅ。あの子はあれほど必死になっていて、先程の意気込みを見てて、ユウイチは冒険者を辞めろ、と言うのですぅ?」

 シホーヌの尻馬に乗るように、雄一の傍に寄って来て「どう言う事なんだよ! 」とレイアが雄一の袖を引っ張る。

「勿論、最初からやり直しで資格取り直しで済むならだけどな」

 袖を引っ張るレイアに「ホーラを見捨てるって話じゃないから心配するな」と頭を撫でる。

 顔を真っ赤にしたレイアに「頭、撫でんなっ!」と手を振り払われる。

 レイアに怒られて地味にダメージを受けている雄一にシホーヌが「じゃ、どういう事なのですぅ?」と聞き返してくる。

「確かに、ホーラの才能の芽吹きは見られた。だけど、大きな弱点を抱えているんだよ。今の状態でもハマれば、ゴブリン相手なら負けなしでいけるんだろうがな」

 シホーヌは、そう言う雄一に、それを教えてあげればいいんじゃ? と思ってそうだが、それだけじゃ済まない困った問題も抱えている事に雄一は気付いていた。。

「確かに、それは、教えれば済むんだが、それより問題があるんだ。今のアイツは今まで無理だ、できない、と思っていた事が何でもできる! と気が大きくなってる。無茶な事でも、できる! と思いこみをしてしまう状態なのが問題なんだ」

 雄一は、自分が小学生の時に、先生がやっている蹴上がりを見ただけで、出来た事に調子に乗って、大車輪を勝手にやって失敗して、頭から落下して意識を刈られる経験をしていた。

 あの時の自分は、なんでもできる! と思ってしまい、危険性を考えもせずに実行してしまっていた。

 あの浮き足だっているホーラの様子と当時の自分が被って見えた。

「弱点をはっきり認識させて、長くなってる鼻を上手く折れるといいんだが、少し心配だけどやってみますかねぇ」

 まだ近くにいたレイアの頭を撫でようとするが、触れる前に逃げられて項垂れる。

 片付けをしてしまうから、さっさと食べてくれと言いながら、レイアで得れなかった温もりを自分の器に残るポトフを片付ける事で補完しようとする。

 雄一は語る。

 残りのポトフは塩分多めになっていたと……





 朝食が済んで片付けを済ませると、今日のお昼に置いて行く料理はBLTサンドにする事に決めた雄一は、手早く作ると3人分に大皿に並べて布巾をかけ、雄一とホーラの分を竹ぽいモノで編み込まれて作られた入れモノに詰め、振り返らずに声をかける。

「これは、昼食のだからな? ツマミ食いしようとか考えるなよ、レイア、シホーヌ?」

 しまったのですぅ、逃げるのですぅ、と言って、廊下を走る2人の足音が聞こえる。

「シホーヌは確定っと」

 あのアホ毛は、抜いてやったほうがアイツの為だろうかと悩むが、もっと駄目になったら怖すぎる……と呟き、肩を竦めていると、台所に入ってくるアリアに気付くと近寄り、しゃがむ。

「あの2人がツマミ食いをしないように頼むな?」

 そういう雄一の言葉に頷くが、よく見れば、アリアの口の端に僅かに涎が盛り上がっているのに気付いた雄一は苦笑しながら、指の背で拭ってやる。

「さっき、朝食食べたばかりだろう?」

 どうして、家の子達は、こうも食いしん坊ばかりなのか? と苦笑いしながら、アリアの頭を撫でるが、その背を押すのが自分の作る料理が問題である事に雄一は気付いていなかった。





 雄一は、2日前の出で立ちが、違う所が風呂敷の中のサツマイモがBLTサンドに変わっただけ、といった状態であるように見える。

 だが、良く見ると右手には短い縄の両端に石を縛った物を持っていた。

 そして、家を出ると、だいぶ待った! とばかりに顔を顰めるホーラが雄一を睨むように見つめてくる。

「遅かったさっ! トロトロしてたら、陽が沈んでしまうさ」
「陽が出てから2時間と経ってねぇってどんなけ、せっかちな太陽だっていうんだ」

 嘆息して言う雄一に、ムッとしたようでそっぽ向くホーラは、さっさと行くさ、と歩き出そうとするが雄一は止める。

「まあ、待て。行く前に簡単な試験だ」

 昨日は、ホーラが気絶したからできなかったからな、と言うと、面倒臭そうにするので、そんなに時間はかけないっと笑みを浮かべる。

 足元の石を拾ってスリングにセットしたホーラは昨日の木に向き合おうとするのを見た雄一は、

「ああ、もう木にぶつけるのは見る必要はないんだ」

 そう言いながら、足元の小石をいくつか拾いながら、雄一、1人分の大きさの円を地面に書くとその上に雄一は入る。

「じゃ、試験の説明だ。これから、ホーラはスリングを使っても手で投げてもいい、俺にぶつけるか、俺をこの円から出したら、合格だ」
「スリング使って、ユウに当たったら……」

 そう言ってくるホーラに雄一は、鼻で笑うように「当てられたらな?」と言う。

 それを見たホーラは「馬鹿にされたもんさ!」と憤慨したようで、予備の石を捜してポケットにしまうと、スリングを回転させる。

 いれ込んだように口をへの字にするホーラが、雄一の胸を狙ったようで的確に飛ばしてくるが笑みを浮かべたままの雄一は胸を反らすだけで避けてしまう。

 ああもあっさり避けられると思ってなかったホーラは、クッ! と唸り、スリングに装填し直すと回転させながら駆け寄って近距離から打ち出そうと寄ってくるのを見た雄一は右手の親指を弾く。

 弾かれた指から小石が飛び出し、ホーラの右頬を掠るようにして、シュバ、と音をさせて通り過ぎる。

 蒼白な顔をしたホーラが回転させてたスリングに回転を加えなくなったせいで石が転げ落ちるのも気にせず、震えながら雄一を見つめる。

「まだ試験は終わってないぜ?」

 震えるホーラは、おそるおそるといった感じで落とした石を拾おうとするが、再び、雄一は石を指で弾き、拾おうとしていた石を粉砕させる。

 粉砕する石の破壊音にホーラは、ヒッ、と悲鳴を上げて、尻モチ着く。

「そろそろ、気付けたか? お前に出来て、出来ない境界線の線引きが?」

 そういう雄一を見る事もできないホーラに嘆息しながら「じゃ、俺から説明してやるよ」と言う。

「確かに、何もできなかったお前は出来る事が増えた。特に相手に気付かれてなくて距離があると、かなり有利に進められるようになり、その条件であれば、ゴブリンなんて敵じゃないだろう」

 ああ、間違いない、ホーラ、お前は成長してると、ゆっくりとホーラに近づきながら声をかける。

「だが、近接に持ち込まれたり、複数の敵に同時に襲われる、もしくは、自分と同じ遠隔タイプが相手だと速射性がないスリングでは分が悪い」

 動き回って打つスキルもないし、間合いを計る経験と勘がまだ備わってないホーラは、と雄一は一旦言葉を切り、ホーラの隣に来るとしゃがんで、ホーラの頭をすっぽり覆うように掌を載せる。

「今のホーラでは、固定砲台としてしか活躍できない」

 ホーラは悔しげに唇を噛み締める。

 それを見た雄一は胸を締め付けられるように痛いが、勘違いしたまま、挑んでホーラを失うよりはいい、と自分に言い聞かせる。

「じゃ、アタイはまだ、ゴブリン討伐は早いと?」

 潤んだ瞳で雄一を見つめるホーラの頭を載せた手で撫でながら笑みを浮かべながら言ってやる。

「いや、これから行くのは変更なしだ。もうホーラも自分が何が出来て、出来ないかの線引きがだいぶできただろ?」

 そういう雄一の言葉に小さく頷くホーラ。

「だったら、最良の手は不意打ち、最悪の場合の正面からなった時は俺が牽制入れてる間に遠距離からの攻撃。逆に不意を突かれた場合も、俺が盾になればいい」
「不意打ちはともかく、それ以外だと、依頼として問題があるさ]

 慌てた感じでホーラが言ってくるが、雄一は口の端を上げて言ってくる。

「なぁーに、俺が攻撃して仕留めない限り、誰が証明できるよ? 疑いを持たれて調べられても、ホーラのスリングと短剣でできると判断される状況があればいいんだ。動きを阻害するだけの牽制なら確認しようがないさ」

 イヤラシイ笑みを浮かべる雄一に呆れた顔をしたホーラであったが、プッと噴き出して笑う。

 雄一も笑うと立ち上がり、ホーラに手を差し出す。

 ホーラは、雄一の手を握ると引っ張られて立ち上がる。

「じゃ、行くか?」
「えっと、ちょっと時間が欲しいのさ」

 モジモジしたホーラにそう言われて、歩き出そうとした足を止めて「どうした?」と問いかける。

「そ、その、なんだ、ちょっと家に一旦戻って、ぱ、ぱ……を替えてくるから待ってて欲しいさ」

 何を替えるって、と耳に手を当てて聞こえなかったらしい雄一はとホーラの近づく為に目線の高さまで腰を折る。

 完全に涙目になっているホーラを見て、固まる雄一。

「パンツ替えてくるから待ってろって言ってるのさっ!!」

 振りかぶったホーラは綺麗に雄一の鼻の下の人中に拳を入れると家へとダッシュで戻って行く。

 人中に拳を入れられた雄一は声なき悲鳴を上げながら、その場で転がり続ける事になった。

 どうやら、雄一も不合格だったようである。

 デリカシーという試験に落ちた瞬間であった。
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