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1章 DT、父親になる
12話 今度は合格のようです
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仕切り直しをして家を出発した雄一達は、前回同様、同じ森へと向かう為に歩いていた。
雄一はチラッと横を見るが、完全にお怒りモードのようで、口先が尖っているホーラを見つめて溜息を零す。
しかし、こっちがやり過ぎだった事も否めないうえに、これから向かう先でやらかした事の謝罪もまだだったこともあったので、ここで纏めて謝ろうと声をかけることにした。
「あのな? ホーラ、さっきは気が利かない事して、スマン! それと初依頼の時に俺がふざけて言った言葉で、ホーラに、おもら……」
雄一は、ホーラの進行方向に廻り込み、拝むようにして、目を瞑りながら誠意を込めて謝ろうとしたが、言いかけの言葉を脛を強打されることで黙らされる。
ぬぉぉぉぅ! と叫びながら転がる雄一を冷徹な目で見降ろすホーラが言ってくる。
「いい、ユウ? その事実を知ってるのは、アンタだけ……つまり、アンタが洩らさない限り、なかった事にできるのさ。お願いだから、アタイに悲しい事をさせないでね?」
「OKさ、ボス! 俺は、墓まで持って行く覚悟は完了したぜ! だから、だから……生きていたい……!!」
雄一の深いところで、エマージェンシーと叫ぶ警報が鳴り響き、答え如何では殺処分されると脳が音速で口に喋る内容を指示した。
雄一も生きてるの、と土下座して、懇願する。
次はないさ……と、雄一から視線を切るのをプレッシャーから自覚して、雄一は肩から力を抜いて、胸に溜まる息を吐き出す。
良かった、明日も朝日を拝めそうだと、雄一を放って前を歩くホーラを見つめる。
もし、今、大魔王が降臨してホーラか大魔王とどっちと戦う? と聞かれたら迷わず、大魔王を選ぶ自信があった。それはもう、裸で大魔王に挑む事になっても、雄一は今のホーラとは戦いたくはないったらないのである。
「今、ホーラに挑まないといけないのなら、シホーヌに伝説の武具を要求しないと戦うかどうか悩む事すらできんな」
吹いてもいない北風から身を守るように自分の体を抱き締めて、ホーラの後を追いかけた。
▼
森に到着すると雄一はホーラの前に出る。
「いいか? 俺が前に出て、索敵をしながら向かうから、見つけても飛び出すんじゃないぞ?」
「分かってるさ、浮かれてた気分はしっかり抜けてるから、そんなヘマはしないから心配無用さ」
頬を膨らませて言う姿は微笑ましいが、それが逆に不安を誘うと言いかけるが今は飲み込む事にした。
何故なら、森に入った早々に雄一はゴブリンと思われる気配に気付いた為である。
前回の時も思ったが、水の音やあれだけ離れてたのに気付けたのは、何かのアビリティが発現したのでは? と思うが、確認をするのを忘れているが今は使える物は、なんでも使うということで納得して忘れる事にした。
「ホーラ、早速のお客さんの登場のようだぞ? おそらく、2匹だ」
雄一の言葉に身構えるホーラであるが、まだ少し距離があると伝えて「ガチガチになってるぞ」と笑って見せる。
雄一の言動に唇を尖らせて少し拗ねてしまったようである。
前を行く雄一が警戒するまでは肩の力を抜く方針に切り替えたようではあるが、一応は自分でも索敵をしながら歩くホーラに気付かれないように笑みを浮かべる。
そろそろ見える距離に来たと思った雄一は、手でホーラに止まれ、と合図すると物影からそっと覗き見るとお食事中だったようでウサギを生で丸齧りされているところであった。
雄一は小さな声を意識して、ホーラに声をかける。
「ゴブリンは2匹、丁度、食事中で無防備だ。気付かれる前に1匹を確実に仕留めるぞ? その後は、俺が牽制するから、きっちり仕留めてこい」
雄一の言葉にやや緊張ぎみではあったが、しっかりと頷くホーラに笑みを浮かべて「お前ならやれるさ」と頭をポンポンする。
ホーラも物影から覗き込み、位置を確認をするとスリングを取り出し石を装填して回転させていく。
回転音に気付いたのかキョロキョロしだすゴブリンがこちらを向こうとしたので、反対側の茂みへと雄一が石つぶてを放ちその音でこちらへの注意が外れる。
その隙にホーラはスリングを放ち、投擲された石は近い位置のゴブリンのコメカミにヒットさせると即死なのか昏倒したのか分からないが碌に声も上げずに倒れる。
残るゴブリンもさすがに投擲したホーラに気付き奇声を上げて襲いかかってくる。
ウサギの血で血だらけになっているゴブリンが走ってくるのにヒッと声を上げながら慌てて、石を装填しようとするが急ごうとしたのが裏目に出て落としてしまう。
それを見た雄一は間に合わないな、と判断すると今朝、持ってきた物で元の世界で言うところのボーラを取り出す。
お手製だがなんとかなるだろう、とロープの真ん中を掴んで回転させるとゴブリンの足元を狙って投げる。
狙い通りにゴブリンの足元に飛び、両足に巻きつくように絡まり、派手に転倒するゴブリン。
転ばされたゴブリンが苛立ちげに巻きついたボーラをあっさりと外す。
だが、その僅かな時間が勝敗を分けた。
取り落とした石を拾い直したホーラはスリングに装填して回転させるとボーラを外し終えて立ち上がったところを狙い、1匹目と同じようにコメカミに綺麗にヒットさせて倒してしまう。
「やったさぁ! アタイが倒したのさ……ユウの助けがあってこそなのは分かってるけどね」
そう言って項垂れるホーラが今の攻撃で仕留めたか確認していなかった事に気付いた雄一は、同じ失態を繰り返さないように「トドメを入れておけ」と注意を促す。
その可能性に気付いたようで短剣を片手に警戒しながら近づくホーラ。
動かなくなっているゴブリンの喉元を突いていく。2匹とも突くが反応らしい反応がないところを見ると一撃必殺になっていたようである。
昨日の今日で一撃必殺するホーラを見た雄一は、不意を打たれたらホーラに一撃必殺されるかもしれないから怒らせないようにしようと戒めるキッカケになった事は口外する気はなかった。
ホーラは仕留めたゴブリンの討伐部位である右耳を剥ぎ取ると汚い布に包むと嬉しそうに笑いながら振り返ってくる。
「これで依頼完了さぁ。まあ3日目だから、少し査定が落ちるかもしれないけど、首は繋がるはず。報告の為に急いで帰ろう、ユウ!」
ホーラは本当に嬉しそうに雄一の手を引いて歩き出す。
雄一は、ゆっくりと帰っても明るい内に帰れる、と苦笑しながら手を引かれて街へと帰って行った。
帰り道を歩いていると思い出したようにホーラが聞いてくる。
「そういえば、2匹目にユウが投げた物は何なのさ?」
「ああ、これか?」
そういうとポケットに仕舞ったボーラを取り出す。
「これはボーラという狩猟用道具なんだ。紐の中央を掴んで回転させて投げつける」
近くにあった木を狙って投げると木に巻きつくように縛っていくのを感嘆の声を上げながら見つめるホーラ。
「なんか便利そうさ、名前も自分に似てるから面白いのさ」
「なら、やるよ。ホーラならすぐに使いこなせると思うぜ?」
有難いさ、と喜んで受け取るホーラを眺めて武器を貰って喜ぶ女の子ってどうなんだろう? と雄一は苦笑する。
浮かれるホーラを眺めながら、街に戻ると更にテンションが上がったホーラが走り出して「早く早く!」と手を振ってくる。
気持ちは分かるのだが「そんなに浮足立ってると転ぶぞ?」と注意するがまったく耳に入ってないように見えた。
仕方がないと諦めてホーラの下へと、やや速度を上げて歩き始めた。
冒険者ギルドに到着するが、前に入った入り口を無視して通り過ぎるホーラを見つめて止めようとしたが、ミラーの説明を思い出した。
「そういや、報告は裏手の入り口からだったな」
頭を掻きながら、立ち止まったせいで距離が空いてしまったホーラを追いかける為に小走りして追い付かせる。
裏手側にくると、前と比べると綺麗とはお世辞でも言えない場所に到着する。
表はレンガ造りだったが裏手は木造という造りになっており、ホーラの後を続くように中に入る。
入ったすぐ右手には酒場のような場所があり、真昼間だというのに酒を飲んで騒ぐ姿が見える。
反対側を見ると素材の値段交渉に熱が入っている冒険者と買い取り業者との駆け引きが佳境を迎えようとしているのか、お互いの表情に明暗が別れていた。
どうやら買い取り業者が有利のようだ。
そう、これが雄一が思い描いていた冒険者ギルドであった。
頬を緩ましながらキョロキョロしながらホーラの後に続いていくと、受付カウンターに到着して、前を見た瞬間、雄一は項垂れる。
「これはユウイチ様、ご無事で何よりです。あれから日数が経っているのにも関わらず姿が見えなく心配して……どうされましたか? 前回同様、会って早々、項垂れてますが?」
魚の死んだ目のようなエルフが雄一を心配してそうにない表情で言ってくるのを涙目の雄一は震える指を突き付ける。
「なんで、達成報告側にお前がいるんだ、ミラー! ってか俺の受付嬢を返せよっ!」
こっそり滅茶苦茶楽しみにしていたらしい雄一は本当に泣きそうである。
そんな雄一を見つめて、はっはは、と乾いた笑いをするミラーは残念なお知らせをしてくる。
「私は優秀なので、どちらにも現れます。後、受付指名はありませんので悪しからず。ですが、受付が冒険者を指名できたりします」
その言葉を聞いた雄一は震える声で問いかける。
「まさか、俺を指名してたりしないよな?」
「いえいえ、そんな楽しい事は、まだしておりませんよ」
その言葉に戦慄を受ける雄一を楽しそうに見つめるミラーを見ているホーラは、雄一の反応が楽しくて、本気でしそうだな……と思うが、なんとなく雄一に受付嬢とのツーショットを見たくないと思い、心でミラーを応援する。
「俺の出会いを奪わないでくれぇ!」
雄一の魂の叫びであった。
拗ねて、床に『の』字を書く雄一を横目に呆れるホーラは気を取り直して、ミラーにゴブリン討伐の報告をする為に討伐部位をカウンターに置く。
「これはこれは、本当に討伐されたので?」
「ああ、苦労もしたし、怖い目にもあったけど、なんとか勝てるようになったさ」
ミラーは、強がらずに弱い自分を認められるようになったホーラに一瞬、目を見開き、いじけている雄一に視線をやると「そうですか」と笑みを浮かべる。
「討伐完了でいいよな?」
嬉しそうに結果を聞こうとするホーラに笑みを浮かべて頷き、何かを言いかけたミラーの言葉を遮る下品な声が響く。
「なんだ? 魔力も碌にねぇ、ガキが、ゴブリンなんか狩れる訳ねぇだろうが? その耳はどこの餓鬼の耳だぁ?」
その言葉を聞いてイジケから復活を果たした雄一は、ホーラとミラーがキツイ視線を向ける先を見つめて溜息を吐いた。
分かり易い相手だな、とつまらなさそうに呟いた。
雄一はチラッと横を見るが、完全にお怒りモードのようで、口先が尖っているホーラを見つめて溜息を零す。
しかし、こっちがやり過ぎだった事も否めないうえに、これから向かう先でやらかした事の謝罪もまだだったこともあったので、ここで纏めて謝ろうと声をかけることにした。
「あのな? ホーラ、さっきは気が利かない事して、スマン! それと初依頼の時に俺がふざけて言った言葉で、ホーラに、おもら……」
雄一は、ホーラの進行方向に廻り込み、拝むようにして、目を瞑りながら誠意を込めて謝ろうとしたが、言いかけの言葉を脛を強打されることで黙らされる。
ぬぉぉぉぅ! と叫びながら転がる雄一を冷徹な目で見降ろすホーラが言ってくる。
「いい、ユウ? その事実を知ってるのは、アンタだけ……つまり、アンタが洩らさない限り、なかった事にできるのさ。お願いだから、アタイに悲しい事をさせないでね?」
「OKさ、ボス! 俺は、墓まで持って行く覚悟は完了したぜ! だから、だから……生きていたい……!!」
雄一の深いところで、エマージェンシーと叫ぶ警報が鳴り響き、答え如何では殺処分されると脳が音速で口に喋る内容を指示した。
雄一も生きてるの、と土下座して、懇願する。
次はないさ……と、雄一から視線を切るのをプレッシャーから自覚して、雄一は肩から力を抜いて、胸に溜まる息を吐き出す。
良かった、明日も朝日を拝めそうだと、雄一を放って前を歩くホーラを見つめる。
もし、今、大魔王が降臨してホーラか大魔王とどっちと戦う? と聞かれたら迷わず、大魔王を選ぶ自信があった。それはもう、裸で大魔王に挑む事になっても、雄一は今のホーラとは戦いたくはないったらないのである。
「今、ホーラに挑まないといけないのなら、シホーヌに伝説の武具を要求しないと戦うかどうか悩む事すらできんな」
吹いてもいない北風から身を守るように自分の体を抱き締めて、ホーラの後を追いかけた。
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森に到着すると雄一はホーラの前に出る。
「いいか? 俺が前に出て、索敵をしながら向かうから、見つけても飛び出すんじゃないぞ?」
「分かってるさ、浮かれてた気分はしっかり抜けてるから、そんなヘマはしないから心配無用さ」
頬を膨らませて言う姿は微笑ましいが、それが逆に不安を誘うと言いかけるが今は飲み込む事にした。
何故なら、森に入った早々に雄一はゴブリンと思われる気配に気付いた為である。
前回の時も思ったが、水の音やあれだけ離れてたのに気付けたのは、何かのアビリティが発現したのでは? と思うが、確認をするのを忘れているが今は使える物は、なんでも使うということで納得して忘れる事にした。
「ホーラ、早速のお客さんの登場のようだぞ? おそらく、2匹だ」
雄一の言葉に身構えるホーラであるが、まだ少し距離があると伝えて「ガチガチになってるぞ」と笑って見せる。
雄一の言動に唇を尖らせて少し拗ねてしまったようである。
前を行く雄一が警戒するまでは肩の力を抜く方針に切り替えたようではあるが、一応は自分でも索敵をしながら歩くホーラに気付かれないように笑みを浮かべる。
そろそろ見える距離に来たと思った雄一は、手でホーラに止まれ、と合図すると物影からそっと覗き見るとお食事中だったようでウサギを生で丸齧りされているところであった。
雄一は小さな声を意識して、ホーラに声をかける。
「ゴブリンは2匹、丁度、食事中で無防備だ。気付かれる前に1匹を確実に仕留めるぞ? その後は、俺が牽制するから、きっちり仕留めてこい」
雄一の言葉にやや緊張ぎみではあったが、しっかりと頷くホーラに笑みを浮かべて「お前ならやれるさ」と頭をポンポンする。
ホーラも物影から覗き込み、位置を確認をするとスリングを取り出し石を装填して回転させていく。
回転音に気付いたのかキョロキョロしだすゴブリンがこちらを向こうとしたので、反対側の茂みへと雄一が石つぶてを放ちその音でこちらへの注意が外れる。
その隙にホーラはスリングを放ち、投擲された石は近い位置のゴブリンのコメカミにヒットさせると即死なのか昏倒したのか分からないが碌に声も上げずに倒れる。
残るゴブリンもさすがに投擲したホーラに気付き奇声を上げて襲いかかってくる。
ウサギの血で血だらけになっているゴブリンが走ってくるのにヒッと声を上げながら慌てて、石を装填しようとするが急ごうとしたのが裏目に出て落としてしまう。
それを見た雄一は間に合わないな、と判断すると今朝、持ってきた物で元の世界で言うところのボーラを取り出す。
お手製だがなんとかなるだろう、とロープの真ん中を掴んで回転させるとゴブリンの足元を狙って投げる。
狙い通りにゴブリンの足元に飛び、両足に巻きつくように絡まり、派手に転倒するゴブリン。
転ばされたゴブリンが苛立ちげに巻きついたボーラをあっさりと外す。
だが、その僅かな時間が勝敗を分けた。
取り落とした石を拾い直したホーラはスリングに装填して回転させるとボーラを外し終えて立ち上がったところを狙い、1匹目と同じようにコメカミに綺麗にヒットさせて倒してしまう。
「やったさぁ! アタイが倒したのさ……ユウの助けがあってこそなのは分かってるけどね」
そう言って項垂れるホーラが今の攻撃で仕留めたか確認していなかった事に気付いた雄一は、同じ失態を繰り返さないように「トドメを入れておけ」と注意を促す。
その可能性に気付いたようで短剣を片手に警戒しながら近づくホーラ。
動かなくなっているゴブリンの喉元を突いていく。2匹とも突くが反応らしい反応がないところを見ると一撃必殺になっていたようである。
昨日の今日で一撃必殺するホーラを見た雄一は、不意を打たれたらホーラに一撃必殺されるかもしれないから怒らせないようにしようと戒めるキッカケになった事は口外する気はなかった。
ホーラは仕留めたゴブリンの討伐部位である右耳を剥ぎ取ると汚い布に包むと嬉しそうに笑いながら振り返ってくる。
「これで依頼完了さぁ。まあ3日目だから、少し査定が落ちるかもしれないけど、首は繋がるはず。報告の為に急いで帰ろう、ユウ!」
ホーラは本当に嬉しそうに雄一の手を引いて歩き出す。
雄一は、ゆっくりと帰っても明るい内に帰れる、と苦笑しながら手を引かれて街へと帰って行った。
帰り道を歩いていると思い出したようにホーラが聞いてくる。
「そういえば、2匹目にユウが投げた物は何なのさ?」
「ああ、これか?」
そういうとポケットに仕舞ったボーラを取り出す。
「これはボーラという狩猟用道具なんだ。紐の中央を掴んで回転させて投げつける」
近くにあった木を狙って投げると木に巻きつくように縛っていくのを感嘆の声を上げながら見つめるホーラ。
「なんか便利そうさ、名前も自分に似てるから面白いのさ」
「なら、やるよ。ホーラならすぐに使いこなせると思うぜ?」
有難いさ、と喜んで受け取るホーラを眺めて武器を貰って喜ぶ女の子ってどうなんだろう? と雄一は苦笑する。
浮かれるホーラを眺めながら、街に戻ると更にテンションが上がったホーラが走り出して「早く早く!」と手を振ってくる。
気持ちは分かるのだが「そんなに浮足立ってると転ぶぞ?」と注意するがまったく耳に入ってないように見えた。
仕方がないと諦めてホーラの下へと、やや速度を上げて歩き始めた。
冒険者ギルドに到着するが、前に入った入り口を無視して通り過ぎるホーラを見つめて止めようとしたが、ミラーの説明を思い出した。
「そういや、報告は裏手の入り口からだったな」
頭を掻きながら、立ち止まったせいで距離が空いてしまったホーラを追いかける為に小走りして追い付かせる。
裏手側にくると、前と比べると綺麗とはお世辞でも言えない場所に到着する。
表はレンガ造りだったが裏手は木造という造りになっており、ホーラの後を続くように中に入る。
入ったすぐ右手には酒場のような場所があり、真昼間だというのに酒を飲んで騒ぐ姿が見える。
反対側を見ると素材の値段交渉に熱が入っている冒険者と買い取り業者との駆け引きが佳境を迎えようとしているのか、お互いの表情に明暗が別れていた。
どうやら買い取り業者が有利のようだ。
そう、これが雄一が思い描いていた冒険者ギルドであった。
頬を緩ましながらキョロキョロしながらホーラの後に続いていくと、受付カウンターに到着して、前を見た瞬間、雄一は項垂れる。
「これはユウイチ様、ご無事で何よりです。あれから日数が経っているのにも関わらず姿が見えなく心配して……どうされましたか? 前回同様、会って早々、項垂れてますが?」
魚の死んだ目のようなエルフが雄一を心配してそうにない表情で言ってくるのを涙目の雄一は震える指を突き付ける。
「なんで、達成報告側にお前がいるんだ、ミラー! ってか俺の受付嬢を返せよっ!」
こっそり滅茶苦茶楽しみにしていたらしい雄一は本当に泣きそうである。
そんな雄一を見つめて、はっはは、と乾いた笑いをするミラーは残念なお知らせをしてくる。
「私は優秀なので、どちらにも現れます。後、受付指名はありませんので悪しからず。ですが、受付が冒険者を指名できたりします」
その言葉を聞いた雄一は震える声で問いかける。
「まさか、俺を指名してたりしないよな?」
「いえいえ、そんな楽しい事は、まだしておりませんよ」
その言葉に戦慄を受ける雄一を楽しそうに見つめるミラーを見ているホーラは、雄一の反応が楽しくて、本気でしそうだな……と思うが、なんとなく雄一に受付嬢とのツーショットを見たくないと思い、心でミラーを応援する。
「俺の出会いを奪わないでくれぇ!」
雄一の魂の叫びであった。
拗ねて、床に『の』字を書く雄一を横目に呆れるホーラは気を取り直して、ミラーにゴブリン討伐の報告をする為に討伐部位をカウンターに置く。
「これはこれは、本当に討伐されたので?」
「ああ、苦労もしたし、怖い目にもあったけど、なんとか勝てるようになったさ」
ミラーは、強がらずに弱い自分を認められるようになったホーラに一瞬、目を見開き、いじけている雄一に視線をやると「そうですか」と笑みを浮かべる。
「討伐完了でいいよな?」
嬉しそうに結果を聞こうとするホーラに笑みを浮かべて頷き、何かを言いかけたミラーの言葉を遮る下品な声が響く。
「なんだ? 魔力も碌にねぇ、ガキが、ゴブリンなんか狩れる訳ねぇだろうが? その耳はどこの餓鬼の耳だぁ?」
その言葉を聞いてイジケから復活を果たした雄一は、ホーラとミラーがキツイ視線を向ける先を見つめて溜息を吐いた。
分かり易い相手だな、とつまらなさそうに呟いた。
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