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2章 DT、先生になる
35話 男は馬鹿が多いようです
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雄一達は、冒険者ギルドに行く為にメインストリートを歩きながら顎に手を添える。
いつも思うことなのだが、早朝訓練でテツに結構、手加減弱めの一撃でKOしてるつもりなのだが、朝食が済んだあたりで復活してるコイツは只者じゃないと思う。
現に今も、何が楽しいのか分からないが鼻歌を歌いながら雄一の隣を歩くテツの姿があった。
テツの傷などの治りは、雄一の水魔法の回復があるので普通と考えて差し支えがないが、雄一の回復魔法では体力、血などの回復が出来ないのにも関わらず、明らかに体力の回復速度が半端がない。
最初は雄一もアルビノという補正かと、なんとなく思っていたが、前の説明文を読む限り、それはなさそうである。
反対側のホーラを見ると疲れがあるのか、伸びをしながら歩く姿を見て、これでもタフだとは思うが、これが許容範囲であると雄一は思う。
2人のステータスを見比べて違いを探ろうと、まずはホーラのステータスを拾い上げる事にする。
○ホーラ 11歳 スリーサイズ:必要ならタップしてください。
片手剣:D 短剣:B- 投擲:A 射撃:S 簡易付加魔法:C
アビリティ:投擲 Lv2 射撃 Lv1 簡易付加魔法 Lv2 集中
称号 :一途な少女 北川家の長女
特に回復を助けるようなアビリティも称号もなさそうであるが、気になる称号に意識を向ける。
『北川家の長女。弟と妹の面倒が行き届かない部分を雄一の代わりにフォローをするのはホーラなのですぅ。特にレイアの雄一に対する相談を聞く事により、今のバランスが成り立ってると言っても過言ではないのですぅ! シホーヌが役に立たないのが問題になってないのは、ホーラがいてこそ……誰なのですぅ! この説明文を書いたのはっ!…………』
雄一は、目頭を押さえて心の中で、いつもお世話になってます、とホーラに感謝する。
そして、できればレイアにデレてくれるように誘導して欲しいと願う。
ついでに、相談内容も知りたいと願うが怖いので確認するのは止す事にする。
そして、テツのステータスを確認をする。
○テツ 10歳
両手剣:SS
アビリティ: 両手剣 Lv2 肉体強化 Lv1 見切り
称号 : 憧憬を抱く者 悲しみを乗り越えたアルビノ 北川家の長男
増えている肉体強化はあるが、確かに新陳代謝は上がっている感覚がなくはないが、そこまで絶大なものじゃないのは雄一も体感から、これが原因ではないと分かる。
これかな? と思うモノはあるが、できれば違って欲しいと願いから増えた称号のほうに意識を向ける。
『北川家の長男。天然で、どこか抜けている感じなのに優しく頼りになるお兄ちゃん。姉には、はっきりと信賞必罰を受ける補正がかかり、妹に対して大きな好感度補正がかかるのですぅ』
雄一は、奥歯をギリッと音をさせて空虚な目でテツを見つめる。
見つめられたテツは、ユウイチさん、何か僕にご用ですか? ですか? といった感じで尻尾があれば振っていそうなテツが雄一を見つめ返す。
すまない、テツ。俺は、いつか訓練中に手加減を誤って事故を起こすかもしれない、と結構マジトーンで考えていた。
これは違ったと思う雄一は、見るのが少し怖いアレかと、げんなりとしながら意識を向ける。
『憧憬を抱く者。憧れる存在がいる限り、不屈の根性と脅威の回復力を誇るのですぅ。憧れを抱く者への想いが強ければ、強いほど大きな補正がかかるのですぅ。ちなみに対象は、ユウイチなのですぅ』
これか……と雄一は頭を抱える。
最後の補足はまさに蛇足だろ? と雄一は嘆く。
『えっちぃ異性交遊は駄目なのですが、えっちぃ同性交遊は、ちょっと許してもいいかも、と思ったのですぅ』
蛇足を通り越して求めてない説明が付け加えられた雄一は、辺りをキョロキョロ見渡す。
あのアホ毛がどこかから見てるのではないかと思い、見渡すがそれらしい姿は見つけられないし視線も感じない。
「ユウ? どうかしたさ?」
「いや、なんでもない……」
少し疑問に思ったようであるが、雄一なら大丈夫だろうと信頼してくれたらしく、1つ頷くとメインストリートで店を構えるホーラの行きつけの甘味処の屋台のおばちゃんに手を振る。
ホーラは、あそこの餡子のかかった団子がお気に入りらしい。
雄一が、家で作ってやろうか? と聞いた事があるが、ホーラに断られた事がある。
理由を聞いてみると、とっても納得できる内容であった。
「買い食いだから、楽しい事もあるのさ」
確かに、そういう情緒は必要だな、と雄一も思ったものである。
そんな事を思い出していると、目の前に冒険者ギルドが見えてきた。
雄一は、ホーラとテツを連れだって中へと入っていった。
▼
中に入ろうとした時、身なりの悪い中学生ぐらいの少年3人と入り口ですれ違う。
少年達は、ホーラを見ると手を上げてニカッという笑顔を見せるとそのまま通り過ぎていく。
「知り合いか?」
「ん、お互い顔を知ってる程度だけどね? ストリートチルドレンってそんなに数が居ないから話した事はなくても、お互い顔ぐらいは知ってるし情報も共有してるさ」
それを聞いた雄一は、自立しようと頑張るのはホーラ以外にもいたのかと嬉しく思う。
何かあったら少しぐらいなら手を貸してやろうと先程の少年達の顔を心に刻む。
正確に言うなら自立しようと頑張るホーラの話を聞き、雄一の助けがあったといえ、成功を収めつつある姿に触発された者が少数ながら現れ出したというのが事実だが言うのが恥ずかしい為、ホーラはその辺りを濁した。
そんなホーラの気持ちに気付かず、雄一は少し嬉しげな顔をしたまま出入り口で止まっていた足を動かし始めて扉を開けた。
中に入りカウンターを見つめた雄一の表情から嬉しげな微笑みは消え、諦めの表情が浮かぶ。
「分かっていた事ではあるが、何故だ?」
ぼやきながらカウンターに行くと死んだ魚の目のようなエルフの男性が声をかけてくる。
「相変わらず、ノンビリと報告に来られる方ですね? 既に他の冒険者の酒の肴になるぐらいの時間は経ってから報告にこられるのは、貴方ぐらいですよ? ユウイチ様」
急ぎの報告の時は、すぐに来て頂けるので問題はありませんが? と溜息を吐かれる。
「ウルセェーよ、ミラー。俺はこれでも主夫業がメインの兼業で冒険者やってんだ。どっちを優先させるかなんて分かり切った事だろ?」
ミラーをやさぐれ度MAXの目を向けるが、濁った目をしながら笑うこの男を怯ませる事はできなかった。
「片手間でされて、しかも、先日、4の冒険者に成り立ての方が2の冒険者でもできないような事をされるとは、世の中、ナメ過ぎですよ?」
昨日のオークの群れとオークキングを狩った事でも凄い事だが、大陸を渡ってきたと思われるドラゴンをウォーターカッター1発で首チョンパさせた雄一は王都のほうでも騒がれるほどの冒険者として名が轟き始めている。
「既に、その辺の男爵より、お金を稼がれてますが主夫業がメインと言い張る貴方の頭の構造に疑問を覚えますよ」
「馬鹿野郎! ドラゴンを狩るより、レイアを抱き締めるほうが大変なんだぞ? 冒険者として名を馳せてもアリアとミュウに嫌われたら俺は死ねる自信があるからな?」
ドラゴンですら敵とにして力不足とばかりに倒す男であるが、娘にあっさりと即死させられるという馬鹿げた話を口にする。
涙目でマジトーンで叫ぶ雄一を、はぁ?と呆れた顔を向けるミラーと苦笑するホーラ。
「大丈夫です! みんな、ユウイチさんの事が大好きですからっ!」
何も考えてなさそうなテツが、雄一を励ます。
「まあ、ユウイチ様が嫌われている事実があろうがなかろうが、どうでも良い事ですが冒険者ギルドからお知らせとお願いがあります」
「ど、どうでもいい事じゃねぇー! この世で一番大事な事だぞっ!!」
いつものように、ミラーの胸倉を掴んで揺する雄一をホーラが、まあまあ、と微笑ましい光景を見つめながら言う。
「で、どんな話さ?」
雄一は、3人に嫌われたら生きてる楽しみがねぇーと騒ぎ、復帰するのにちょっとかかりそうだと思ったホーラが代わりに聞く体勢に入る。
「ええ、貴方達が成した事が4の冒険者の枠に収まるモノじゃないという事が、ギルド内で問題になりました。4に上がった速度も速かったのですが、貴方とテツ君は3の冒険者に、ユウイチ様を2の冒険者にするという話が王都の冒険者ギルド本部から話がきています」
やっている事が既に1の冒険者レベルであるが、一気に上げるのは反発を生むし、何より他の1の冒険者に睨まれる恐れがあるらしい。
「へぇ、つまり、アタイ達は、これから、3と2の冒険者と名乗り、待遇されるということ?」
「その前に、王都の冒険者ギルド本部で試験を受けて頂きたいという手紙が届いています」
3枚の封筒をカウンターに置かれるのを見て代表でホーラが受け取り、各自の手紙を渡して行くが雄一はまだ復帰していないようなので預かっておく事にする。
「へぇ、簡単な学力テストと実技。こちらは、どの程度やれるか見る為に真剣勝負って書いてるさ。殺し合いじゃないよね?」
「ええ、勿論です。真剣勝負と書いてるのは全力を尽くせという意味ですので、それはありませんが、だいぶ字が読めるようになられましたね?」
微笑むミラーに照れて手を振り、その成果を見せつけるように指先に炎を灯すホーラ。
教わってるのは文字や戦い方だけではない、と誇らしげにするホーラをミラーが目を細めて見つめているのに気付いたホーラが咳払いをして話を続ける。
「しっかり、勉強させて貰ってるからさ。読めるようになるのは当たり前さ。でも、王都となると行って帰るだけで1週間近くかかる旅路になるよね?」
「そうですね、それぐらいになると思いますが、行って帰るだけでは済まないので、もっと長くかかると見て頂いた方が良いかと思います」
あちゃーと言う声が聞こえそうな表情をしてホーラは雄一を見つめる。
やっと復帰しそうだと判断したホーラが雄一を呼ぶ。
「ユウ、冒険者ギルド本部が王都に来てくれ、て言ってるさ。ただ、行って帰ってくるだけでも1週間ぐらいかかるうえ、向こうの用事次第では、もっとかかると言う話なんだけど……」
「あぁん? そんな長い間、家を空ける訳ないだろうが? キャンセルだ、キャンセル」
「しかし貴方は特に、王都でも名前が独り歩きし過ぎていて行って貰わないと本部はかなり困った事になるのですが……」
珍しく困った顔をするミラーに雄一はすげなく、知らん、知らんと言って断る。
だが、ある人物の何も考えてなさそうな言葉がこの場の空気を一気に変えた……手紙を読むテツの呑気な言葉で。
「王都ですか、双子ちゃんとミュウちゃん達は、この辺りの近辺しか出歩いていませんから行ったら喜びそうですよね? 小さい子って普段見れない場所を移動してるだけでも喜びますし?」
テツの言葉をピクピクと耳を動かして聞く雄一が、正面にいるミラーに恩着せがましい顔をして口を開く。
「まあ、冒険者ギルドを困らせるのは俺も本意じゃないし、仕方がない……本当に仕方がなく行ってやる事にするよ」
「はぁ、行って頂けるなら、この際なんでもいいですよ? ただ、時々、貴方が強い人なのか、弱い人なのか分からなくなりますね?」
どういう流れでこうなっているか理解しているミラーは呆れながらそう言うが、雄一にはまったく効果はなかった。
「さあ!! 2人とも乗り心地のいい馬車を調達に行くぞ!」
意気揚々と冒険者ギルドの出口に向かって歩く雄一の背中を見つめるホーラにミラーは言う。
「後の事はお願いしますね?」
ホーラは、苦笑いを返事として横で展開に付いていってないテツの肩を叩き、頭に手を載せる。
「とりあえず、テツ、ナイスアシストだったさ」
えっ? どういうことですか、ホーラ姉さん? とクエスチョンマークを乱立させるテツを置いて、ホーラは雄一を追いかけて小走りで冒険者ギルドを出て行った。
いつも思うことなのだが、早朝訓練でテツに結構、手加減弱めの一撃でKOしてるつもりなのだが、朝食が済んだあたりで復活してるコイツは只者じゃないと思う。
現に今も、何が楽しいのか分からないが鼻歌を歌いながら雄一の隣を歩くテツの姿があった。
テツの傷などの治りは、雄一の水魔法の回復があるので普通と考えて差し支えがないが、雄一の回復魔法では体力、血などの回復が出来ないのにも関わらず、明らかに体力の回復速度が半端がない。
最初は雄一もアルビノという補正かと、なんとなく思っていたが、前の説明文を読む限り、それはなさそうである。
反対側のホーラを見ると疲れがあるのか、伸びをしながら歩く姿を見て、これでもタフだとは思うが、これが許容範囲であると雄一は思う。
2人のステータスを見比べて違いを探ろうと、まずはホーラのステータスを拾い上げる事にする。
○ホーラ 11歳 スリーサイズ:必要ならタップしてください。
片手剣:D 短剣:B- 投擲:A 射撃:S 簡易付加魔法:C
アビリティ:投擲 Lv2 射撃 Lv1 簡易付加魔法 Lv2 集中
称号 :一途な少女 北川家の長女
特に回復を助けるようなアビリティも称号もなさそうであるが、気になる称号に意識を向ける。
『北川家の長女。弟と妹の面倒が行き届かない部分を雄一の代わりにフォローをするのはホーラなのですぅ。特にレイアの雄一に対する相談を聞く事により、今のバランスが成り立ってると言っても過言ではないのですぅ! シホーヌが役に立たないのが問題になってないのは、ホーラがいてこそ……誰なのですぅ! この説明文を書いたのはっ!…………』
雄一は、目頭を押さえて心の中で、いつもお世話になってます、とホーラに感謝する。
そして、できればレイアにデレてくれるように誘導して欲しいと願う。
ついでに、相談内容も知りたいと願うが怖いので確認するのは止す事にする。
そして、テツのステータスを確認をする。
○テツ 10歳
両手剣:SS
アビリティ: 両手剣 Lv2 肉体強化 Lv1 見切り
称号 : 憧憬を抱く者 悲しみを乗り越えたアルビノ 北川家の長男
増えている肉体強化はあるが、確かに新陳代謝は上がっている感覚がなくはないが、そこまで絶大なものじゃないのは雄一も体感から、これが原因ではないと分かる。
これかな? と思うモノはあるが、できれば違って欲しいと願いから増えた称号のほうに意識を向ける。
『北川家の長男。天然で、どこか抜けている感じなのに優しく頼りになるお兄ちゃん。姉には、はっきりと信賞必罰を受ける補正がかかり、妹に対して大きな好感度補正がかかるのですぅ』
雄一は、奥歯をギリッと音をさせて空虚な目でテツを見つめる。
見つめられたテツは、ユウイチさん、何か僕にご用ですか? ですか? といった感じで尻尾があれば振っていそうなテツが雄一を見つめ返す。
すまない、テツ。俺は、いつか訓練中に手加減を誤って事故を起こすかもしれない、と結構マジトーンで考えていた。
これは違ったと思う雄一は、見るのが少し怖いアレかと、げんなりとしながら意識を向ける。
『憧憬を抱く者。憧れる存在がいる限り、不屈の根性と脅威の回復力を誇るのですぅ。憧れを抱く者への想いが強ければ、強いほど大きな補正がかかるのですぅ。ちなみに対象は、ユウイチなのですぅ』
これか……と雄一は頭を抱える。
最後の補足はまさに蛇足だろ? と雄一は嘆く。
『えっちぃ異性交遊は駄目なのですが、えっちぃ同性交遊は、ちょっと許してもいいかも、と思ったのですぅ』
蛇足を通り越して求めてない説明が付け加えられた雄一は、辺りをキョロキョロ見渡す。
あのアホ毛がどこかから見てるのではないかと思い、見渡すがそれらしい姿は見つけられないし視線も感じない。
「ユウ? どうかしたさ?」
「いや、なんでもない……」
少し疑問に思ったようであるが、雄一なら大丈夫だろうと信頼してくれたらしく、1つ頷くとメインストリートで店を構えるホーラの行きつけの甘味処の屋台のおばちゃんに手を振る。
ホーラは、あそこの餡子のかかった団子がお気に入りらしい。
雄一が、家で作ってやろうか? と聞いた事があるが、ホーラに断られた事がある。
理由を聞いてみると、とっても納得できる内容であった。
「買い食いだから、楽しい事もあるのさ」
確かに、そういう情緒は必要だな、と雄一も思ったものである。
そんな事を思い出していると、目の前に冒険者ギルドが見えてきた。
雄一は、ホーラとテツを連れだって中へと入っていった。
▼
中に入ろうとした時、身なりの悪い中学生ぐらいの少年3人と入り口ですれ違う。
少年達は、ホーラを見ると手を上げてニカッという笑顔を見せるとそのまま通り過ぎていく。
「知り合いか?」
「ん、お互い顔を知ってる程度だけどね? ストリートチルドレンってそんなに数が居ないから話した事はなくても、お互い顔ぐらいは知ってるし情報も共有してるさ」
それを聞いた雄一は、自立しようと頑張るのはホーラ以外にもいたのかと嬉しく思う。
何かあったら少しぐらいなら手を貸してやろうと先程の少年達の顔を心に刻む。
正確に言うなら自立しようと頑張るホーラの話を聞き、雄一の助けがあったといえ、成功を収めつつある姿に触発された者が少数ながら現れ出したというのが事実だが言うのが恥ずかしい為、ホーラはその辺りを濁した。
そんなホーラの気持ちに気付かず、雄一は少し嬉しげな顔をしたまま出入り口で止まっていた足を動かし始めて扉を開けた。
中に入りカウンターを見つめた雄一の表情から嬉しげな微笑みは消え、諦めの表情が浮かぶ。
「分かっていた事ではあるが、何故だ?」
ぼやきながらカウンターに行くと死んだ魚の目のようなエルフの男性が声をかけてくる。
「相変わらず、ノンビリと報告に来られる方ですね? 既に他の冒険者の酒の肴になるぐらいの時間は経ってから報告にこられるのは、貴方ぐらいですよ? ユウイチ様」
急ぎの報告の時は、すぐに来て頂けるので問題はありませんが? と溜息を吐かれる。
「ウルセェーよ、ミラー。俺はこれでも主夫業がメインの兼業で冒険者やってんだ。どっちを優先させるかなんて分かり切った事だろ?」
ミラーをやさぐれ度MAXの目を向けるが、濁った目をしながら笑うこの男を怯ませる事はできなかった。
「片手間でされて、しかも、先日、4の冒険者に成り立ての方が2の冒険者でもできないような事をされるとは、世の中、ナメ過ぎですよ?」
昨日のオークの群れとオークキングを狩った事でも凄い事だが、大陸を渡ってきたと思われるドラゴンをウォーターカッター1発で首チョンパさせた雄一は王都のほうでも騒がれるほどの冒険者として名が轟き始めている。
「既に、その辺の男爵より、お金を稼がれてますが主夫業がメインと言い張る貴方の頭の構造に疑問を覚えますよ」
「馬鹿野郎! ドラゴンを狩るより、レイアを抱き締めるほうが大変なんだぞ? 冒険者として名を馳せてもアリアとミュウに嫌われたら俺は死ねる自信があるからな?」
ドラゴンですら敵とにして力不足とばかりに倒す男であるが、娘にあっさりと即死させられるという馬鹿げた話を口にする。
涙目でマジトーンで叫ぶ雄一を、はぁ?と呆れた顔を向けるミラーと苦笑するホーラ。
「大丈夫です! みんな、ユウイチさんの事が大好きですからっ!」
何も考えてなさそうなテツが、雄一を励ます。
「まあ、ユウイチ様が嫌われている事実があろうがなかろうが、どうでも良い事ですが冒険者ギルドからお知らせとお願いがあります」
「ど、どうでもいい事じゃねぇー! この世で一番大事な事だぞっ!!」
いつものように、ミラーの胸倉を掴んで揺する雄一をホーラが、まあまあ、と微笑ましい光景を見つめながら言う。
「で、どんな話さ?」
雄一は、3人に嫌われたら生きてる楽しみがねぇーと騒ぎ、復帰するのにちょっとかかりそうだと思ったホーラが代わりに聞く体勢に入る。
「ええ、貴方達が成した事が4の冒険者の枠に収まるモノじゃないという事が、ギルド内で問題になりました。4に上がった速度も速かったのですが、貴方とテツ君は3の冒険者に、ユウイチ様を2の冒険者にするという話が王都の冒険者ギルド本部から話がきています」
やっている事が既に1の冒険者レベルであるが、一気に上げるのは反発を生むし、何より他の1の冒険者に睨まれる恐れがあるらしい。
「へぇ、つまり、アタイ達は、これから、3と2の冒険者と名乗り、待遇されるということ?」
「その前に、王都の冒険者ギルド本部で試験を受けて頂きたいという手紙が届いています」
3枚の封筒をカウンターに置かれるのを見て代表でホーラが受け取り、各自の手紙を渡して行くが雄一はまだ復帰していないようなので預かっておく事にする。
「へぇ、簡単な学力テストと実技。こちらは、どの程度やれるか見る為に真剣勝負って書いてるさ。殺し合いじゃないよね?」
「ええ、勿論です。真剣勝負と書いてるのは全力を尽くせという意味ですので、それはありませんが、だいぶ字が読めるようになられましたね?」
微笑むミラーに照れて手を振り、その成果を見せつけるように指先に炎を灯すホーラ。
教わってるのは文字や戦い方だけではない、と誇らしげにするホーラをミラーが目を細めて見つめているのに気付いたホーラが咳払いをして話を続ける。
「しっかり、勉強させて貰ってるからさ。読めるようになるのは当たり前さ。でも、王都となると行って帰るだけで1週間近くかかる旅路になるよね?」
「そうですね、それぐらいになると思いますが、行って帰るだけでは済まないので、もっと長くかかると見て頂いた方が良いかと思います」
あちゃーと言う声が聞こえそうな表情をしてホーラは雄一を見つめる。
やっと復帰しそうだと判断したホーラが雄一を呼ぶ。
「ユウ、冒険者ギルド本部が王都に来てくれ、て言ってるさ。ただ、行って帰ってくるだけでも1週間ぐらいかかるうえ、向こうの用事次第では、もっとかかると言う話なんだけど……」
「あぁん? そんな長い間、家を空ける訳ないだろうが? キャンセルだ、キャンセル」
「しかし貴方は特に、王都でも名前が独り歩きし過ぎていて行って貰わないと本部はかなり困った事になるのですが……」
珍しく困った顔をするミラーに雄一はすげなく、知らん、知らんと言って断る。
だが、ある人物の何も考えてなさそうな言葉がこの場の空気を一気に変えた……手紙を読むテツの呑気な言葉で。
「王都ですか、双子ちゃんとミュウちゃん達は、この辺りの近辺しか出歩いていませんから行ったら喜びそうですよね? 小さい子って普段見れない場所を移動してるだけでも喜びますし?」
テツの言葉をピクピクと耳を動かして聞く雄一が、正面にいるミラーに恩着せがましい顔をして口を開く。
「まあ、冒険者ギルドを困らせるのは俺も本意じゃないし、仕方がない……本当に仕方がなく行ってやる事にするよ」
「はぁ、行って頂けるなら、この際なんでもいいですよ? ただ、時々、貴方が強い人なのか、弱い人なのか分からなくなりますね?」
どういう流れでこうなっているか理解しているミラーは呆れながらそう言うが、雄一にはまったく効果はなかった。
「さあ!! 2人とも乗り心地のいい馬車を調達に行くぞ!」
意気揚々と冒険者ギルドの出口に向かって歩く雄一の背中を見つめるホーラにミラーは言う。
「後の事はお願いしますね?」
ホーラは、苦笑いを返事として横で展開に付いていってないテツの肩を叩き、頭に手を載せる。
「とりあえず、テツ、ナイスアシストだったさ」
えっ? どういうことですか、ホーラ姉さん? とクエスチョンマークを乱立させるテツを置いて、ホーラは雄一を追いかけて小走りで冒険者ギルドを出て行った。
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