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2章 DT、先生になる
36話 初めての家族旅行は王都らしいです
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雄一は、意気揚々と扉をバン! と音を立てて店に入ると声を張り上げる。
「店主はいるかぁ――!」
「はい、はい……おりますよ……ああ、これは、これはユウイチ様でしたか? 先日の馬車の料金はしっかり頂いていたと思いましたが……何かあられましたか?」
雄一がやってきたのは雄一が遠出する時に毎回お世話になる貸し馬車屋であった。
店の奥から、ゆっくり現れた小太りの店主がコメカミに指を当てながら記憶を確認するようにして雄一に質問してくる。
「また馬車が必要になって借りに来たんだが……」
「それは、それは、有難うございます。今回も前回と同じ物で宜しかったでしょうか?」
雄一は、目をクワッと擬音が聞こえそうな目の開き方をして目の前の店主をビビらせる。
ビビる店主を無視して雄一は、胸を張って答える。
「あんな、ちゃっちぃ馬車じゃなく、中はソファがあって寛げて眠くなったらいつでも寝れる、でっかいベッドがある……」
話している最中の雄一の背後から角材が振り下ろされて、ガキッと良い音をさせる打撃音を響かせる。
さすがの雄一も続きを話す事もできず、声なき悲鳴を上げ、頭を抱えて屈む。
雄一を殴った事で角材に亀裂が入ってしまっている物を地面に放り投げ、汗を拭うホーラの姿がそこにあった。
「まったく、あの3人の事になるとすぐ暴走するのはユウの悪い癖さ。あっ! それと、ごめん。この角材、閂のでしょ? 弁償するさ」
「いえ、それは替えがいくつでもありますので良いのですが……ユウイチ様は大丈夫なのですか? かなり遠慮がない叩き方をされてましたが?」
店主は、雄一とホーラを交互に見ながら冷や汗をハンカチで拭いながら質問してくる。
「大丈夫だと思いますよ? 不意を突かれたから痛がってますが怪我もしてないと思いますし?」
ホーラの横にいるテツが、店主にそう言いながらホーラを横目に、「ホーラ姉さんとレイアはユウイチさんに遠慮がない攻撃をするよね……」とボソボソと言うが、ばっちり聞こえていたようで睨まれてたので慌てて明後日の方向へと顔を向けて逃げる。
店主は、それでも落ち着かないのか止まらない汗をハンカチで拭いながら痛みで蹲る雄一を横目にホーラに話しかける。
「そのぅ、ユウイチ様には、できるだけ配慮したいと思っておりますが……さすがに先程の注文された馬車は、こちらにはありませんし……王侯貴族でも持ってないんじゃないかと……」
「いいの、いいの。ユウの世迷言は聞き流してくれて構わないさ」
「確かにあったとしても、馬が何頭いるんだろう? て思いますよね?」
呆れ顔で手を振るホーラと苦笑するテツが、店主に気にしないでと伝える。
はぁ……と良いのだろうかと思っている様子の店主が聞き返してくる。
「でしたら、前回と同じ物でよろしいですか?」
「いや、今度は乗る人数が増えるから大きめなのが欲しいのは本当さ。8人乗るから、それ以下のは困るけどある?」
「ほ、ホーラ、お前な? さっきのはさすがに痛かったぞ? それはともかくソファとベッドがないと板に座るのを痛がったり、お昼寝したい、と言い出したらどうするんだ! これは由々しき問題だぞ!」
復帰した雄一は、頭を摩りながら立ち上がるとホーラに食ってかかる。
店主は、ヒビの入っている角材を見つめ、「それはともかくで済むんだ……」戦慄を感じ、ホーラは、「ちぃ、思ったより復活が早いさ!」と舌打ちをする。
「あの子達は、そんなにヤワじゃないさ。アリアは眠くなったらユウの膝の上でも寝るだろうしミュウもユウの頭を抱えながらでも寝るさ」
ホーラが、「普段でもそうでしょ?」と伝えると頬を緩ませた雄一が、「そうかもな」と頭を嬉しげに掻く。
そして、テツに向き直り、アリアとミュウがそうやって寝た時の話を親馬鹿全開の緩んだ表情の雄一が話し出す。
テツは雄一の話に嬉しそうに会釈をするものだから、雄一は有頂天への階段を昇り始める。
それを見つめていたホーラが、
「今の内に話を纏めるさ。で、そのサイズの馬車はある?」
「えっ、はい、10人乗り馬車ならご用意できますが、そちらでよろしかったですか?」
いいのかな? と雄一を見つめながら言う店主にホーラは心配いらないとばかりに頷く。
「ユウは、みんなで旅行行けると嬉しくて浮足立ってるだけさ。だから、何も言ってこないから心配いらないさ」
家族が楽しそうにする姿を夢想が過ぎ、暴走してる雄一を見て私達は愛されていると嬉しくて微笑みを浮かべる。
そして、呟くように言葉にする。
「どうして1人の男として行動してる時は格好いいのに……普段はカッコ悪く、家族の事になると、はぁ……こんなに残念な人になるのか不思議でしょうがないさ……」
格好悪い雄一と格好良い雄一を両方知っている数少ない女である事実にはホーラは自分を誇る。
誇るその気持ちを胸にしまうと店主に、明日ぐらいに必要になると思うから用意のほうをお願いすると、そろそろ2周目が終わりそうな娘自慢をする雄一の背中を押して店を後にした。
▼
家に帰ると雄一はテツを連れて台所に向かい、昼食の用意に入る。
今日の昼食はピザにするつもりである。
ボールに、薄力粉、強力粉、砂糖、塩、ドライイーストを入れて、オリーブオイルを入れながら混ぜると、テツと交代する。
「後は、ぬるま湯を少しずつ入れながら、纏めるように捏ねるんだ。手に付かなくなるまで頑張れ」
テツは、はい! と嬉しそうに雄一と交代し、一生懸命に言われた通りに頑張る。
それを横目に雄一は、皮の剥いたジャガイモを半分に切って、それを薄め、1cm弱ぐらいで切っていく。
切ったジャガイモを沸かした鍋のお湯で茹でる。
薄い為に火が通るのが早いから茹で過ぎに気を付けてあげる。
玉ねぎを薄くスライスし、腸詰ウィンナーを斜めに薄く切ると茹であがったジャガイモと共にフライパンでオリーブオイルで炒める。
玉ねぎが、柔らかくなったあたりで塩コショウを強めに味付けする。そのまま食べたら味が濃いと分かるぐらいにしないとピザにした時に味が薄く感じる為である。
具が出来上がるとテツも出来たようで雄一は、テツにやり方を見せながら生地を作っていく。
麺棒で生地を伸ばしていき、広がった生地にフォークで程良く突いて穴を開けていく。焼いた時に無駄に膨らまないようにするためである。
壁を作るように円を描くように縁を立てていく。
半分の生地を先に作り終えた雄一は、テツが頑張るのを横目に石窯を生活魔法で温めに行く。
戻るとできたようなので、できた具とチーズを生地の上に載せていき、温まった石窯にピザ生地を投入して10分ぐらいするとジャーマンポテトピザの完成である。
雄一は、ピザの焼き加減を見る為に石窯を見つめながらテツに声をかける。
「ピザの様子は俺が見てるから、飲み物と食器の用意を頼む」
「はい、分かりました。飲み物は、牛乳でいいですか?」
テツの言葉に、ああ、と答えるとテツは勝手口を使って中に戻っていった。
そして、出来上がったピザを皿に盛っていき、食堂へと運び込んだ。
運び終えた雄一が、
「ご飯の時間だぞぉ!」
と叫ぶと、庭で遊んでいたアリアとレイアとミュウは飛んでやってくると椅子に座ろうとするのを雄一は止める。
「まずは、手を洗ってきなさい!」
ピザは手掴みで食べるのに外で遊んでた手のままで食べるのを雄一は良しとしない。
アリアは素直に椅子から離れてレイアとミュウに頷いて見せ、ミュウもガゥと頷き、連れだって井戸のほうへと歩いていく。
レイアも口先を尖らせながらも椅子から離れるが、雄一の傍を通りかかり、雄一の太ももをガンと叩く。
雄一は眉を寄せると、無闇に暴力を振ったレイアに教育的指導をする事にする。
レイアが逃げる隙を与えず、腕を腰に廻すと、
「くらえ! 必殺、さば折り!」
ギュッ! と抱き締めると雄一はレイアを抱え上げる。
離せと騒ぐレイアの言葉を無視する。何故なら、これは制裁なのだから! 大義は雄一にあった。
レイアを抱えた雄一は、井戸に向かったアリアとミュウを追いかけてレイアを連れて井戸に向かい、仲良く4人で手を洗いに向かった。
▼
ピザを食べ終わると、雄一は、食後の牛乳を楽しんでいるみんなに呼び掛ける。
「ちょっと、いいか? 話があるんだが?」
「さっきからニヤニヤしてた事と関係あるのですぅ?」
雄一は、まさかシホーヌに悟られるほどニヤけていたのかと愕然とする。
「何か、とぉぉっても! 失礼な事を考えられているような気がするのですぅ……?」
それはそうであろう。
今も口の端に玉ねぎが付いているのに気付かずにいるような今日もアホ毛が絶好調な駄女神に気付かれるとは屈辱の極みである。
「プークスクス、口の端にお弁当するような人にそんな事言う資格はないような気がしますよ?」
シホーヌの口の端を指差し、笑うアクアであるが……お前も顎下にチーズが付いている事に気付けよ、と雄一は目頭を押さえる。
シホーヌもそれに気付き、お互いに指摘しあうが、アホー、バカーといつものやり取りを始めるので雄一はそれを放置して残るメンバーに目を向けて話を始める。
「実は、王都の冒険者ギルドに来るように言われているんだ。行くとなると……行って帰るだけで1週間かかるらしい」
「がぅぅ、1週間? 何回、お日様昇る?」
ミュウは、雄一の背中をよじ登り、いつも指定席に着くと悲しそうに言ってくる。
雄一は、「7回だと伝える」とミュウが、肩の上で暴れ出す。
「ミュウ、ユーイ、そんなにいないの、ヤッ!」
泣きそうなミュウと隣のアリアが、そっと雄一の裾を掴むのを見てニヤけそうになるのに耐えたつもりであった雄一だが残念ながら勿論、ニヤけた。
「アタシは、ホーラ姉、テツ兄がいればいいけど?」
そのレイアのツンに雄一も泣きそうになりながらも伝える。
「呼ばれているのは、ホーラもテツもだ」
そこで、初めてレイアが「げっ!」と嫌そうな声を上げる。
雄一は、レイアの対応に「泣いていいよな?」と泣き真似をしていると本当にアリアとミュウが泣きそうなのに気付き、慌てて本線に戻して話を進める。
「みんなとそんなに離れないといけないのは俺だって嫌だ。そこでだ……みんなで行かないか? これを理由にして王都観光、家族旅行に行こう! て俺は思ってるんだが……どうだろう?」
周りを見渡し、ホーラとテツは知っていた事なので普通だが、レイアはキョトンとし、アリアを見つめるとコックンと頷いてみせる。
ミュウは、雄一の肩の上でミュウダンス(雄一命名)で喜びを表し、ガゥガゥ! と叫び、踊るのを止めると雄一に聞いてくる。
「ユーイ、家族旅行って何?」
言われた意味は分からないけど、なんとなく良い事を言われたと思ったようで踊ったミュウが面白く笑いを堪えながら雄一は答える。
「みんなで遠くに行ってお泊りして遊ぼう! てことだ」
「ミュウ、行く! ユーイとアリアとみんなで遊びにいくっ!!」
本日2度目のミュウダンスを披露すると雄一の肩から飛び降りて、アリアの手を取って踊る。
雄一は、レイアに目を向けて、声をかける。
「レイアも行きたいだろ?」
「行くも行かないも、みんな行くなら行くしない……仕方がないから一緒にいってやるよ」
そう言うレイアの頬がリンゴのように赤く口許が綻んでるのを見て、嬉しくて雄一は目を細める。
「じゃ、明日の朝の内に出かけるから、旅行の準備をするように!」
そう言うとアリアとレイアとミュウを連れてホーラとテツが旅行の準備をする為に手を引いていく姿を雄一は見送り、残る年長組、年上という意味か、園児の年長組かは敢えて追及はしないが2人を見つめる。
話をしている間も飽きもせず低レベルな言い争い、アホーとバカーを言い続ける2人に近づき、同時に2人のお尻に平手打ちを入れる。
「イタっ、痛いのですぅ! それと、お尻を叩かないで欲しいのですぅ!」
「まだ陽が高い時間ですよ? 主様、時間を考えてください……」
2人は顔を赤くして文句を言ってくるが、振り向いた先の雄一の顔を見た瞬間、そんな色っぽい展開は皆無と悟り、お互いの顔を見つめ合う。
「お前らが話を聞いてなかったから2度説明する俺の怒りを爆発させるなよ? あれだぞ? マジで1日ぐらい食べなくても死なないからな?」
雄一の言葉で真っ赤な顔を青くする2人が、我先とばかりに必死に頷く。
そして、王都旅行の説明をし終えると、
「2人は、ホーラを手伝って旅の支度をする。その後に日持ちするお菓子でも買いに行ってこい。テツはこちらで回収して食糧や水を運ばせる要員に連れていくからな?」
そう言われた2人は、ビシッと調教された軍人のように敬礼すると駆け足で食堂を出て行った。
それを見送った雄一は、はぁ……溜息を吐くと昼食の後片付けを手早く済ませ、テツを連れて市場へと出かけて行った。
「店主はいるかぁ――!」
「はい、はい……おりますよ……ああ、これは、これはユウイチ様でしたか? 先日の馬車の料金はしっかり頂いていたと思いましたが……何かあられましたか?」
雄一がやってきたのは雄一が遠出する時に毎回お世話になる貸し馬車屋であった。
店の奥から、ゆっくり現れた小太りの店主がコメカミに指を当てながら記憶を確認するようにして雄一に質問してくる。
「また馬車が必要になって借りに来たんだが……」
「それは、それは、有難うございます。今回も前回と同じ物で宜しかったでしょうか?」
雄一は、目をクワッと擬音が聞こえそうな目の開き方をして目の前の店主をビビらせる。
ビビる店主を無視して雄一は、胸を張って答える。
「あんな、ちゃっちぃ馬車じゃなく、中はソファがあって寛げて眠くなったらいつでも寝れる、でっかいベッドがある……」
話している最中の雄一の背後から角材が振り下ろされて、ガキッと良い音をさせる打撃音を響かせる。
さすがの雄一も続きを話す事もできず、声なき悲鳴を上げ、頭を抱えて屈む。
雄一を殴った事で角材に亀裂が入ってしまっている物を地面に放り投げ、汗を拭うホーラの姿がそこにあった。
「まったく、あの3人の事になるとすぐ暴走するのはユウの悪い癖さ。あっ! それと、ごめん。この角材、閂のでしょ? 弁償するさ」
「いえ、それは替えがいくつでもありますので良いのですが……ユウイチ様は大丈夫なのですか? かなり遠慮がない叩き方をされてましたが?」
店主は、雄一とホーラを交互に見ながら冷や汗をハンカチで拭いながら質問してくる。
「大丈夫だと思いますよ? 不意を突かれたから痛がってますが怪我もしてないと思いますし?」
ホーラの横にいるテツが、店主にそう言いながらホーラを横目に、「ホーラ姉さんとレイアはユウイチさんに遠慮がない攻撃をするよね……」とボソボソと言うが、ばっちり聞こえていたようで睨まれてたので慌てて明後日の方向へと顔を向けて逃げる。
店主は、それでも落ち着かないのか止まらない汗をハンカチで拭いながら痛みで蹲る雄一を横目にホーラに話しかける。
「そのぅ、ユウイチ様には、できるだけ配慮したいと思っておりますが……さすがに先程の注文された馬車は、こちらにはありませんし……王侯貴族でも持ってないんじゃないかと……」
「いいの、いいの。ユウの世迷言は聞き流してくれて構わないさ」
「確かにあったとしても、馬が何頭いるんだろう? て思いますよね?」
呆れ顔で手を振るホーラと苦笑するテツが、店主に気にしないでと伝える。
はぁ……と良いのだろうかと思っている様子の店主が聞き返してくる。
「でしたら、前回と同じ物でよろしいですか?」
「いや、今度は乗る人数が増えるから大きめなのが欲しいのは本当さ。8人乗るから、それ以下のは困るけどある?」
「ほ、ホーラ、お前な? さっきのはさすがに痛かったぞ? それはともかくソファとベッドがないと板に座るのを痛がったり、お昼寝したい、と言い出したらどうするんだ! これは由々しき問題だぞ!」
復帰した雄一は、頭を摩りながら立ち上がるとホーラに食ってかかる。
店主は、ヒビの入っている角材を見つめ、「それはともかくで済むんだ……」戦慄を感じ、ホーラは、「ちぃ、思ったより復活が早いさ!」と舌打ちをする。
「あの子達は、そんなにヤワじゃないさ。アリアは眠くなったらユウの膝の上でも寝るだろうしミュウもユウの頭を抱えながらでも寝るさ」
ホーラが、「普段でもそうでしょ?」と伝えると頬を緩ませた雄一が、「そうかもな」と頭を嬉しげに掻く。
そして、テツに向き直り、アリアとミュウがそうやって寝た時の話を親馬鹿全開の緩んだ表情の雄一が話し出す。
テツは雄一の話に嬉しそうに会釈をするものだから、雄一は有頂天への階段を昇り始める。
それを見つめていたホーラが、
「今の内に話を纏めるさ。で、そのサイズの馬車はある?」
「えっ、はい、10人乗り馬車ならご用意できますが、そちらでよろしかったですか?」
いいのかな? と雄一を見つめながら言う店主にホーラは心配いらないとばかりに頷く。
「ユウは、みんなで旅行行けると嬉しくて浮足立ってるだけさ。だから、何も言ってこないから心配いらないさ」
家族が楽しそうにする姿を夢想が過ぎ、暴走してる雄一を見て私達は愛されていると嬉しくて微笑みを浮かべる。
そして、呟くように言葉にする。
「どうして1人の男として行動してる時は格好いいのに……普段はカッコ悪く、家族の事になると、はぁ……こんなに残念な人になるのか不思議でしょうがないさ……」
格好悪い雄一と格好良い雄一を両方知っている数少ない女である事実にはホーラは自分を誇る。
誇るその気持ちを胸にしまうと店主に、明日ぐらいに必要になると思うから用意のほうをお願いすると、そろそろ2周目が終わりそうな娘自慢をする雄一の背中を押して店を後にした。
▼
家に帰ると雄一はテツを連れて台所に向かい、昼食の用意に入る。
今日の昼食はピザにするつもりである。
ボールに、薄力粉、強力粉、砂糖、塩、ドライイーストを入れて、オリーブオイルを入れながら混ぜると、テツと交代する。
「後は、ぬるま湯を少しずつ入れながら、纏めるように捏ねるんだ。手に付かなくなるまで頑張れ」
テツは、はい! と嬉しそうに雄一と交代し、一生懸命に言われた通りに頑張る。
それを横目に雄一は、皮の剥いたジャガイモを半分に切って、それを薄め、1cm弱ぐらいで切っていく。
切ったジャガイモを沸かした鍋のお湯で茹でる。
薄い為に火が通るのが早いから茹で過ぎに気を付けてあげる。
玉ねぎを薄くスライスし、腸詰ウィンナーを斜めに薄く切ると茹であがったジャガイモと共にフライパンでオリーブオイルで炒める。
玉ねぎが、柔らかくなったあたりで塩コショウを強めに味付けする。そのまま食べたら味が濃いと分かるぐらいにしないとピザにした時に味が薄く感じる為である。
具が出来上がるとテツも出来たようで雄一は、テツにやり方を見せながら生地を作っていく。
麺棒で生地を伸ばしていき、広がった生地にフォークで程良く突いて穴を開けていく。焼いた時に無駄に膨らまないようにするためである。
壁を作るように円を描くように縁を立てていく。
半分の生地を先に作り終えた雄一は、テツが頑張るのを横目に石窯を生活魔法で温めに行く。
戻るとできたようなので、できた具とチーズを生地の上に載せていき、温まった石窯にピザ生地を投入して10分ぐらいするとジャーマンポテトピザの完成である。
雄一は、ピザの焼き加減を見る為に石窯を見つめながらテツに声をかける。
「ピザの様子は俺が見てるから、飲み物と食器の用意を頼む」
「はい、分かりました。飲み物は、牛乳でいいですか?」
テツの言葉に、ああ、と答えるとテツは勝手口を使って中に戻っていった。
そして、出来上がったピザを皿に盛っていき、食堂へと運び込んだ。
運び終えた雄一が、
「ご飯の時間だぞぉ!」
と叫ぶと、庭で遊んでいたアリアとレイアとミュウは飛んでやってくると椅子に座ろうとするのを雄一は止める。
「まずは、手を洗ってきなさい!」
ピザは手掴みで食べるのに外で遊んでた手のままで食べるのを雄一は良しとしない。
アリアは素直に椅子から離れてレイアとミュウに頷いて見せ、ミュウもガゥと頷き、連れだって井戸のほうへと歩いていく。
レイアも口先を尖らせながらも椅子から離れるが、雄一の傍を通りかかり、雄一の太ももをガンと叩く。
雄一は眉を寄せると、無闇に暴力を振ったレイアに教育的指導をする事にする。
レイアが逃げる隙を与えず、腕を腰に廻すと、
「くらえ! 必殺、さば折り!」
ギュッ! と抱き締めると雄一はレイアを抱え上げる。
離せと騒ぐレイアの言葉を無視する。何故なら、これは制裁なのだから! 大義は雄一にあった。
レイアを抱えた雄一は、井戸に向かったアリアとミュウを追いかけてレイアを連れて井戸に向かい、仲良く4人で手を洗いに向かった。
▼
ピザを食べ終わると、雄一は、食後の牛乳を楽しんでいるみんなに呼び掛ける。
「ちょっと、いいか? 話があるんだが?」
「さっきからニヤニヤしてた事と関係あるのですぅ?」
雄一は、まさかシホーヌに悟られるほどニヤけていたのかと愕然とする。
「何か、とぉぉっても! 失礼な事を考えられているような気がするのですぅ……?」
それはそうであろう。
今も口の端に玉ねぎが付いているのに気付かずにいるような今日もアホ毛が絶好調な駄女神に気付かれるとは屈辱の極みである。
「プークスクス、口の端にお弁当するような人にそんな事言う資格はないような気がしますよ?」
シホーヌの口の端を指差し、笑うアクアであるが……お前も顎下にチーズが付いている事に気付けよ、と雄一は目頭を押さえる。
シホーヌもそれに気付き、お互いに指摘しあうが、アホー、バカーといつものやり取りを始めるので雄一はそれを放置して残るメンバーに目を向けて話を始める。
「実は、王都の冒険者ギルドに来るように言われているんだ。行くとなると……行って帰るだけで1週間かかるらしい」
「がぅぅ、1週間? 何回、お日様昇る?」
ミュウは、雄一の背中をよじ登り、いつも指定席に着くと悲しそうに言ってくる。
雄一は、「7回だと伝える」とミュウが、肩の上で暴れ出す。
「ミュウ、ユーイ、そんなにいないの、ヤッ!」
泣きそうなミュウと隣のアリアが、そっと雄一の裾を掴むのを見てニヤけそうになるのに耐えたつもりであった雄一だが残念ながら勿論、ニヤけた。
「アタシは、ホーラ姉、テツ兄がいればいいけど?」
そのレイアのツンに雄一も泣きそうになりながらも伝える。
「呼ばれているのは、ホーラもテツもだ」
そこで、初めてレイアが「げっ!」と嫌そうな声を上げる。
雄一は、レイアの対応に「泣いていいよな?」と泣き真似をしていると本当にアリアとミュウが泣きそうなのに気付き、慌てて本線に戻して話を進める。
「みんなとそんなに離れないといけないのは俺だって嫌だ。そこでだ……みんなで行かないか? これを理由にして王都観光、家族旅行に行こう! て俺は思ってるんだが……どうだろう?」
周りを見渡し、ホーラとテツは知っていた事なので普通だが、レイアはキョトンとし、アリアを見つめるとコックンと頷いてみせる。
ミュウは、雄一の肩の上でミュウダンス(雄一命名)で喜びを表し、ガゥガゥ! と叫び、踊るのを止めると雄一に聞いてくる。
「ユーイ、家族旅行って何?」
言われた意味は分からないけど、なんとなく良い事を言われたと思ったようで踊ったミュウが面白く笑いを堪えながら雄一は答える。
「みんなで遠くに行ってお泊りして遊ぼう! てことだ」
「ミュウ、行く! ユーイとアリアとみんなで遊びにいくっ!!」
本日2度目のミュウダンスを披露すると雄一の肩から飛び降りて、アリアの手を取って踊る。
雄一は、レイアに目を向けて、声をかける。
「レイアも行きたいだろ?」
「行くも行かないも、みんな行くなら行くしない……仕方がないから一緒にいってやるよ」
そう言うレイアの頬がリンゴのように赤く口許が綻んでるのを見て、嬉しくて雄一は目を細める。
「じゃ、明日の朝の内に出かけるから、旅行の準備をするように!」
そう言うとアリアとレイアとミュウを連れてホーラとテツが旅行の準備をする為に手を引いていく姿を雄一は見送り、残る年長組、年上という意味か、園児の年長組かは敢えて追及はしないが2人を見つめる。
話をしている間も飽きもせず低レベルな言い争い、アホーとバカーを言い続ける2人に近づき、同時に2人のお尻に平手打ちを入れる。
「イタっ、痛いのですぅ! それと、お尻を叩かないで欲しいのですぅ!」
「まだ陽が高い時間ですよ? 主様、時間を考えてください……」
2人は顔を赤くして文句を言ってくるが、振り向いた先の雄一の顔を見た瞬間、そんな色っぽい展開は皆無と悟り、お互いの顔を見つめ合う。
「お前らが話を聞いてなかったから2度説明する俺の怒りを爆発させるなよ? あれだぞ? マジで1日ぐらい食べなくても死なないからな?」
雄一の言葉で真っ赤な顔を青くする2人が、我先とばかりに必死に頷く。
そして、王都旅行の説明をし終えると、
「2人は、ホーラを手伝って旅の支度をする。その後に日持ちするお菓子でも買いに行ってこい。テツはこちらで回収して食糧や水を運ばせる要員に連れていくからな?」
そう言われた2人は、ビシッと調教された軍人のように敬礼すると駆け足で食堂を出て行った。
それを見送った雄一は、はぁ……溜息を吐くと昼食の後片付けを手早く済ませ、テツを連れて市場へと出かけて行った。
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少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
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