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2章 DT、先生になる
41話 都会は怖い人がいる所です
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王都キュエレーに着いた北川家一行は入門審査を受けていた。
雄一とホーラとテツは冒険者としての身分証で、他の面子はシホーヌの怪しい身分証明書で無事通過する事ができた。
荷物検査を受けている時、警備兵に雄一は声をかけられる。
「なぁ、アンタも名を上げる為に来たクチかい?」
「名を? 何の事か分からないが、俺達は冒険者ギルド本部で試験を受ける為に呼ばれただけだが?」
本当に何の事か分からなかった雄一は、眉を寄せながら言う姿に警備兵も違うならいいよ、とあっさり引き下がるので少し気持ち悪さがあったが自分達には関係ないだろうと割り切る。
「なんだったでしょうか?」
「さあな? なんとなく面倒事な気がするから関わらないほうが良さそうな気がするが……それよりも目先の問題を解決しようか? 俺達が寝る場所の確保だ」
「その通りなのですぅ! 寝る所も大事なのですが、美味しいご飯が食べられる所を探して欲しいのですぅ!」
アホ毛をピコピコ激しく自己主張させる奴を見て、「だそうだ」とテツに残念そうに伝える。
「でも、大事な事ではありますよね?」
まあな、と肩を竦める雄一は、ゆっくりと馬車を走らせて入門した。
入門してメインストリートに入った雄一達一行の視界に広がる景色に人通りの多さがダンガとの違いに驚かされる。
中でもレイアのテンションが跳ね上がり、当然、大きな子供のプラス2名も。
「凄い、今日は祭でもある日なのかっ? 屋台も一杯だし!」
レイアとシホーヌとアクアが辺りを落ち着きなく見渡しているなか、テツとホーラは眉を寄せて何やら考え込んでいるようだ。
雄一も同じように眉を寄せる。
雄一の膝の上のアリアは、不安そうに雄一の胸元をギュッと小さな手で握る。
それと同時に肩車されているミュウも少し震えるようにして雄一の頭に四肢を使って抱きついてきた。
「大丈夫か? 2人とも?」
雄一は、気遣ってアリアとミュウに声をかけるがアリアは雄一の胸に顔を伏せて抱きついてくる。
ミュウも弱ったガゥを発動して口を開く。
「がぅ……ずっと、ジロジロ見るヤツ、嫌い」
気持ち悪そうに言うミュウの足をポンポンと叩いて、「俺が傍にいると言う」と更に掴みかかってくる。
「ユウ、これがさっきの警備兵の言ってた意味だと思う?」
「ああ、それじゃないという話でこれが普通という話なら俺は冒険者ギルド本部に目を付けられてもいいから、とんぼ返りするな」
雄一達がメインストリートに入った辺りから冒険者風の者、つまり荒くれ者、騎士崩れといった者が剣踊や魔法を実践して見せながらそれを観察する者達で溢れ始めた。
だから、最初は本当に祭があるのか? と雄一も最初は勘違いをした。
じろじろ見られるのも、いかにも田舎者といった風に見えているのかな? ぐらいにしか考えていなかった。
だが、それは勘違いだと思い知らされる事になる。
ジロジロ見られているのは、雄一、ホーラ、テツの3人である。
その中でも特に雄一を値踏みするようにして見てくるので、その視線に晒されたアリアとミュウが怯えてしまっていた。
気持ちが悪いのを我慢して進むと馬車を預かってくれる場所を発見し、とりあえず馬車を預けて外に出る。
出た所で、まだ眉を寄せていたテツが雄一に話しかけてくる。
「武術大会でもあるんでしょうか?」
「似て非なるモノですよ、お客様」
話しかけた雄一ではなく、近くに寄ってきた男が代わりに答えた。
長身痩躯の油断がならないタイプの商人風の男が、テツの言葉に返事をしてきたようである。
「何をサラッと自分の顧客にしてるんだ? まだ何も買ってないし、買う予定もないんだが?」
目を細めて観察するようにその男に見つめながらも軽口を叩くように喋りクギも刺す。
雄一の切り返しに虚を突かれたのか愛想笑いを浮かべていた男は、一瞬、素の表情に戻ると笑い出す。
「いや、初めてですよ。いきなり、それを突っ込まれた方は貴方が初めてです。途中で言ってこられる方や、最後まで突っ込むか悩む方であれば出会った事はありますが……本当に面白い」
大半は、気付かずに最後までそのままという方が多いんですけどね、と最初と比べて、若干、温度を感じる笑顔を向けてくる。
「喜んで貰って何よりだ。俺達は急ぐから行く。もう会わない事を祈るわ」
正直、得体も知れなく武力とは違う凄味を感じる男の視線に家族を晒すのを嫌った雄一は有無を言わさず話をブチ切る。
ブチ切った雄一は、みんなを連れて離れようとするが男に呼び止められる。
止まる気はなかった雄一だったが自分の中の何かが警鐘を鳴らし、足を止めて男と家族の間に自分を挟んで振り返る。
「そんなに警戒しないでください。取って食おうという訳ではありませんし、本当に貴方が気に入ったのですよ」
「そんなミエミエの嘘を言われて信じる馬鹿がいるかよ? お前みたいな奴は金と結婚して墓まで一緒ってタイプが他人を気に入るか?」
男の言葉を半眼で否定してくる雄一に先程より、更に好意的な笑みを見せてくる。
「貴方の性格が気に入ったというは嘘じゃありません。お察しの通り、私はそういう人間です。貴方からは儲け話の匂いがする。私の鼻が教えるのですよ、この方と縁を持っておけ、とね」
嫌そうな顔をする雄一を笑みを浮かべて見つめる男。
「ですので……お近づきに貴方が警戒しない程度の情報を2つ提供しましょう。1つは、そこの坊やが言っていた……」
「坊やじゃないっ! テツだぁ!!」
みんな、雄一任せで黙っていたが急に話を振られたテツが坊や呼ばわりされ、思わず名乗る。
そのテツを雄一は無言で拳骨を落とし、痛がるテツは頭を押さえて屈む。
それを見ていたホーラが、「馬鹿」と呟いて手で顔を覆うと、それを涙目で見つめるテツが、
「酷いよ、ホーラ姉さん……」
そして、次はホーラから遠慮のない拳骨を貰い、地面に転がり悶絶するテツ。
「フッフフ、テツ君とホーラさんですか。この方と比べると霞みますが、充分、貴方達からも金の匂いがしますよ? 今後もお付き合いさせて欲しいものです」
ホーラとテツに愛想笑いを配ると、雄一に向き直り、仕切り直してくる。
「話の腰を折ってしまいましたが、テツ君が言ってた武術大会のようなものが1週間後に開催されます。私の見立てが正しいならキュエレーに来るのも初めてで話ですら知らない状態でこられてると思いますので、武術大会との違いをお話しますね?」
首都には冒険者ギルドの依頼を受けて仕事をするやり方が少し違う方法があるらしい。
1人でやるソロ活動。
複数の者が集まってするパーティ、雄一やホーラ、テツと一緒に行動するようなモノ。
首都には3つ目にコミュニティーと呼ばれるモノがあるという。
それは10人以上の集まりのある組織のようなモノを指す。
そのコミュニティーで依頼をこなしていき評価を高めれば、より良い仕事を廻して貰えるようになる。
コミュニティーのトップは貴族の称号を持つモノを旗にして作られるらしい。
「そのコミュニティーの評判を劇的に変動させる大会が近々あり、各コミュニティーから代表者を出しその成績がコミュニティーの強さのステイタスになるのですよ」
趣旨は理解できるが日々の評価だけで判断してはいけないのだろうかと興味なさそうに雄一は聞いているが、痛みから復活したテツとホーラは少し興味があるようで耳を傾けていた。
「なので、この時期は新人勧誘や、強い者に大会に出て貰えるように交渉するスカウトが奔走し、それに便乗してアピールするモノが徘徊するという事です」
「そういうタイミングで新人勧誘は分かるが……代理で大会に出て貰うってのはコミュニティー関係なくないか?」
雄一は、それではコミュニティーの存在理由に問題が生まれそうだと思い、口にする。
「それは、交渉力があるコミュニティーと評価されますので問題ありません。交渉も戦いであり、聞く気のなかった貴方が私に話に興味を持って質問して貰えるように話を展開するように?」
苦虫を噛み潰したような顔をする雄一に笑みを浮かべる男。
「おそらく目端の利く者が貴方を勧誘に来るでしょうから、どういうスタンスを貫くかは早めに決めておかれると良いでしょう」
仏頂面をする雄一に再び、笑みを浮かべる男は懐から紙を取り出し、万年筆を取り出すとサラサラと何かを書き始め、終わると雄一に差し出す。
「2つ目は、お勧めの宿をご紹介させて貰います。私の名前、エイビスと伝えて頂けたら毎食デザートが付いてくるサービスがありますので一度覗いてみられたらどうでしょうか?」
男、エイビスは隙のないお辞儀をすると背を向けて去って行こうとするので雄一は呼び掛ける。
「さすがに名乗らせて自分が名乗らないのは失礼だから……」
「いえいえ、結構です。それと私とコンタクトを取りたくなったらメインストリートで店を構える者の誰でも良いのでエイビスの店を聞けば、どこか教えて貰えますので……次にお会い出来る日をお待ちしておりますね、ユウイチ様?」
去っていくエイビスの背中を見つめて、えなくなると雄一は「末恐ろしいヤツだ」と呟くと同時に盛大な溜息を吐く。
「えっと……どうされますか? 主様?」
ずっと黙って経過を見守っていたメンバーのアクアが問いかけてくる。
「あの野郎の言いなりになってるようで気分は良くないが、ここは素直にいってみようと思う」
「信用できないみたいな事をユウは言ってたけど、どういう心境の変化さ?」
不思議そうに問いかけてくるホーラに、残念なお知らせをしようとしてる自分に呆れる。
「確かに信用はできないんだが、アイツが金に煩いという事は通じた。そして、俺で儲け話を絡ませる事ができると信じているようだったからな。こんな下らない事で儲けをフイにしたりはしない」
「じゃ、紹介された宿に行くのですぅ? 行くなら早めに行ったほうがいいのですぅ。そろそろ、お空の色が茜色になりそうなのですぅ」
そうは言ったが気乗りがしない雄一は緩慢な動きで、みんなを見渡し、「行くか?」と溜息混じりに言うとエイビスに渡された紙に書かれた地図に従い、『マッチョの集い亭』へと向かって歩き出した。
雄一とホーラとテツは冒険者としての身分証で、他の面子はシホーヌの怪しい身分証明書で無事通過する事ができた。
荷物検査を受けている時、警備兵に雄一は声をかけられる。
「なぁ、アンタも名を上げる為に来たクチかい?」
「名を? 何の事か分からないが、俺達は冒険者ギルド本部で試験を受ける為に呼ばれただけだが?」
本当に何の事か分からなかった雄一は、眉を寄せながら言う姿に警備兵も違うならいいよ、とあっさり引き下がるので少し気持ち悪さがあったが自分達には関係ないだろうと割り切る。
「なんだったでしょうか?」
「さあな? なんとなく面倒事な気がするから関わらないほうが良さそうな気がするが……それよりも目先の問題を解決しようか? 俺達が寝る場所の確保だ」
「その通りなのですぅ! 寝る所も大事なのですが、美味しいご飯が食べられる所を探して欲しいのですぅ!」
アホ毛をピコピコ激しく自己主張させる奴を見て、「だそうだ」とテツに残念そうに伝える。
「でも、大事な事ではありますよね?」
まあな、と肩を竦める雄一は、ゆっくりと馬車を走らせて入門した。
入門してメインストリートに入った雄一達一行の視界に広がる景色に人通りの多さがダンガとの違いに驚かされる。
中でもレイアのテンションが跳ね上がり、当然、大きな子供のプラス2名も。
「凄い、今日は祭でもある日なのかっ? 屋台も一杯だし!」
レイアとシホーヌとアクアが辺りを落ち着きなく見渡しているなか、テツとホーラは眉を寄せて何やら考え込んでいるようだ。
雄一も同じように眉を寄せる。
雄一の膝の上のアリアは、不安そうに雄一の胸元をギュッと小さな手で握る。
それと同時に肩車されているミュウも少し震えるようにして雄一の頭に四肢を使って抱きついてきた。
「大丈夫か? 2人とも?」
雄一は、気遣ってアリアとミュウに声をかけるがアリアは雄一の胸に顔を伏せて抱きついてくる。
ミュウも弱ったガゥを発動して口を開く。
「がぅ……ずっと、ジロジロ見るヤツ、嫌い」
気持ち悪そうに言うミュウの足をポンポンと叩いて、「俺が傍にいると言う」と更に掴みかかってくる。
「ユウ、これがさっきの警備兵の言ってた意味だと思う?」
「ああ、それじゃないという話でこれが普通という話なら俺は冒険者ギルド本部に目を付けられてもいいから、とんぼ返りするな」
雄一達がメインストリートに入った辺りから冒険者風の者、つまり荒くれ者、騎士崩れといった者が剣踊や魔法を実践して見せながらそれを観察する者達で溢れ始めた。
だから、最初は本当に祭があるのか? と雄一も最初は勘違いをした。
じろじろ見られるのも、いかにも田舎者といった風に見えているのかな? ぐらいにしか考えていなかった。
だが、それは勘違いだと思い知らされる事になる。
ジロジロ見られているのは、雄一、ホーラ、テツの3人である。
その中でも特に雄一を値踏みするようにして見てくるので、その視線に晒されたアリアとミュウが怯えてしまっていた。
気持ちが悪いのを我慢して進むと馬車を預かってくれる場所を発見し、とりあえず馬車を預けて外に出る。
出た所で、まだ眉を寄せていたテツが雄一に話しかけてくる。
「武術大会でもあるんでしょうか?」
「似て非なるモノですよ、お客様」
話しかけた雄一ではなく、近くに寄ってきた男が代わりに答えた。
長身痩躯の油断がならないタイプの商人風の男が、テツの言葉に返事をしてきたようである。
「何をサラッと自分の顧客にしてるんだ? まだ何も買ってないし、買う予定もないんだが?」
目を細めて観察するようにその男に見つめながらも軽口を叩くように喋りクギも刺す。
雄一の切り返しに虚を突かれたのか愛想笑いを浮かべていた男は、一瞬、素の表情に戻ると笑い出す。
「いや、初めてですよ。いきなり、それを突っ込まれた方は貴方が初めてです。途中で言ってこられる方や、最後まで突っ込むか悩む方であれば出会った事はありますが……本当に面白い」
大半は、気付かずに最後までそのままという方が多いんですけどね、と最初と比べて、若干、温度を感じる笑顔を向けてくる。
「喜んで貰って何よりだ。俺達は急ぐから行く。もう会わない事を祈るわ」
正直、得体も知れなく武力とは違う凄味を感じる男の視線に家族を晒すのを嫌った雄一は有無を言わさず話をブチ切る。
ブチ切った雄一は、みんなを連れて離れようとするが男に呼び止められる。
止まる気はなかった雄一だったが自分の中の何かが警鐘を鳴らし、足を止めて男と家族の間に自分を挟んで振り返る。
「そんなに警戒しないでください。取って食おうという訳ではありませんし、本当に貴方が気に入ったのですよ」
「そんなミエミエの嘘を言われて信じる馬鹿がいるかよ? お前みたいな奴は金と結婚して墓まで一緒ってタイプが他人を気に入るか?」
男の言葉を半眼で否定してくる雄一に先程より、更に好意的な笑みを見せてくる。
「貴方の性格が気に入ったというは嘘じゃありません。お察しの通り、私はそういう人間です。貴方からは儲け話の匂いがする。私の鼻が教えるのですよ、この方と縁を持っておけ、とね」
嫌そうな顔をする雄一を笑みを浮かべて見つめる男。
「ですので……お近づきに貴方が警戒しない程度の情報を2つ提供しましょう。1つは、そこの坊やが言っていた……」
「坊やじゃないっ! テツだぁ!!」
みんな、雄一任せで黙っていたが急に話を振られたテツが坊や呼ばわりされ、思わず名乗る。
そのテツを雄一は無言で拳骨を落とし、痛がるテツは頭を押さえて屈む。
それを見ていたホーラが、「馬鹿」と呟いて手で顔を覆うと、それを涙目で見つめるテツが、
「酷いよ、ホーラ姉さん……」
そして、次はホーラから遠慮のない拳骨を貰い、地面に転がり悶絶するテツ。
「フッフフ、テツ君とホーラさんですか。この方と比べると霞みますが、充分、貴方達からも金の匂いがしますよ? 今後もお付き合いさせて欲しいものです」
ホーラとテツに愛想笑いを配ると、雄一に向き直り、仕切り直してくる。
「話の腰を折ってしまいましたが、テツ君が言ってた武術大会のようなものが1週間後に開催されます。私の見立てが正しいならキュエレーに来るのも初めてで話ですら知らない状態でこられてると思いますので、武術大会との違いをお話しますね?」
首都には冒険者ギルドの依頼を受けて仕事をするやり方が少し違う方法があるらしい。
1人でやるソロ活動。
複数の者が集まってするパーティ、雄一やホーラ、テツと一緒に行動するようなモノ。
首都には3つ目にコミュニティーと呼ばれるモノがあるという。
それは10人以上の集まりのある組織のようなモノを指す。
そのコミュニティーで依頼をこなしていき評価を高めれば、より良い仕事を廻して貰えるようになる。
コミュニティーのトップは貴族の称号を持つモノを旗にして作られるらしい。
「そのコミュニティーの評判を劇的に変動させる大会が近々あり、各コミュニティーから代表者を出しその成績がコミュニティーの強さのステイタスになるのですよ」
趣旨は理解できるが日々の評価だけで判断してはいけないのだろうかと興味なさそうに雄一は聞いているが、痛みから復活したテツとホーラは少し興味があるようで耳を傾けていた。
「なので、この時期は新人勧誘や、強い者に大会に出て貰えるように交渉するスカウトが奔走し、それに便乗してアピールするモノが徘徊するという事です」
「そういうタイミングで新人勧誘は分かるが……代理で大会に出て貰うってのはコミュニティー関係なくないか?」
雄一は、それではコミュニティーの存在理由に問題が生まれそうだと思い、口にする。
「それは、交渉力があるコミュニティーと評価されますので問題ありません。交渉も戦いであり、聞く気のなかった貴方が私に話に興味を持って質問して貰えるように話を展開するように?」
苦虫を噛み潰したような顔をする雄一に笑みを浮かべる男。
「おそらく目端の利く者が貴方を勧誘に来るでしょうから、どういうスタンスを貫くかは早めに決めておかれると良いでしょう」
仏頂面をする雄一に再び、笑みを浮かべる男は懐から紙を取り出し、万年筆を取り出すとサラサラと何かを書き始め、終わると雄一に差し出す。
「2つ目は、お勧めの宿をご紹介させて貰います。私の名前、エイビスと伝えて頂けたら毎食デザートが付いてくるサービスがありますので一度覗いてみられたらどうでしょうか?」
男、エイビスは隙のないお辞儀をすると背を向けて去って行こうとするので雄一は呼び掛ける。
「さすがに名乗らせて自分が名乗らないのは失礼だから……」
「いえいえ、結構です。それと私とコンタクトを取りたくなったらメインストリートで店を構える者の誰でも良いのでエイビスの店を聞けば、どこか教えて貰えますので……次にお会い出来る日をお待ちしておりますね、ユウイチ様?」
去っていくエイビスの背中を見つめて、えなくなると雄一は「末恐ろしいヤツだ」と呟くと同時に盛大な溜息を吐く。
「えっと……どうされますか? 主様?」
ずっと黙って経過を見守っていたメンバーのアクアが問いかけてくる。
「あの野郎の言いなりになってるようで気分は良くないが、ここは素直にいってみようと思う」
「信用できないみたいな事をユウは言ってたけど、どういう心境の変化さ?」
不思議そうに問いかけてくるホーラに、残念なお知らせをしようとしてる自分に呆れる。
「確かに信用はできないんだが、アイツが金に煩いという事は通じた。そして、俺で儲け話を絡ませる事ができると信じているようだったからな。こんな下らない事で儲けをフイにしたりはしない」
「じゃ、紹介された宿に行くのですぅ? 行くなら早めに行ったほうがいいのですぅ。そろそろ、お空の色が茜色になりそうなのですぅ」
そうは言ったが気乗りがしない雄一は緩慢な動きで、みんなを見渡し、「行くか?」と溜息混じりに言うとエイビスに渡された紙に書かれた地図に従い、『マッチョの集い亭』へと向かって歩き出した。
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