53 / 365
2章 DT、先生になる
51話 理解と覚悟らしいです
しおりを挟む
テツは震える体を意思の力で抑えようとするが、余計に震えてくる自分に喝を入れる為に自分の拳を顔に叩きつける。
強く叩き過ぎて火花な散ったような感覚に襲われ、鼻から血が流れているが自分の意思で抑えられるぐらいの震えまで落ち着き安堵する。
腕で鼻血を拭い、前方にいる捜していた男、雄一を見つめる。
深呼吸を1つすると覚悟を決めたテツが、雄一に向かって歩を進める。
雄一の前までやってきて雄一を見上げるが、遠くから見たままの姿勢で目を瞑ったまま微動すらせずにいる雄一に普段とは違う凄みに尻込みしそうになる。
テツは逡巡するように目を彷徨わせるが意を決して口を開いた。
「ユウイチさん、あの……」
「テツ、大会には俺が出る」
テツの言葉を被せるようにして雄一は、大会の出場の意思を示してきた。
未だに目を閉じて口を動かした以外は、変化を見せない雄一を見つめながらテツは唇を噛み締める。
「お前がベルグノートと再戦を望んで、ここに来てるという前提で話している。違うなら、さっさと帰れ」
雄一の冷たく反論を許さない物言いにテツは怯む。
一瞬、雄一の言う事に従って帰ろうと考える自分に気付き、唇を噛み締める。
テツは考える。
何の為に自分は雄一を捜して、ここまできたのかと……
「帰りません、ユウイチさんが大会に出ようとしてるのには驚きましたが、僕は大会に出たいという気持ちを伝える為にやってきました」
雄一から発されるいつもとは違う畏怖に負けじと踏ん張るが、声が震えるのはどうしようもなかった。
「駄目だ、テツ。お前を大会に出す訳にはいかない……」
「僕は、どうしても出たいんです! 油断から負けたままではいられないんです!」
テツがそう言った瞬間、突然、目を開いた雄一が鋭い視線でテツを貫く。
呼吸がし辛くなったテツが、酸素を求めるように口をパクパクさせるようにする様を見ながら雄一は口を開く。
「テツ、お前はまだ気付かないのか? 油断をしようがしまいが、『負け』という結果は覆せない」
脂汗を流すテツに一歩、また一歩と近づく雄一は、テツの一歩手前に来ると歩みを止めて見下す。
「ましてや、お前は負けてはいけない戦いで、勝てる勝負で負けたという事を俺に言って自分の要望をどうやって通すと言うんだ?」
「あ、あれは……相手が炎を生み出せる剣があった……から……」
言ってる途中で尻すぼみになるテツを雄一は冷めた目で見つめる。
「なら、お前は魔法が得意なものが、遠距離から攻撃するように立ち回ったら卑怯者呼ばわりするのか? 逆にお前は近接が苦手の者に合わせて距離を取って戦ってやるのか?」
雄一の言葉に反論を封じられ、拳を握り締める。
そしてテツの肩に雄一は手を置くと突き離す言葉を口にする。
「お前の悔しさを晴らす為にティファーニアの未来をベットするには……大きすぎる。諦めろ……」
そう言った雄一がテツを通り過ぎて、この場を離れようとした雄一だったが呼び掛けられたような気がして振り返る。
振り返った先のテツは、肩を傍目からでもはっきり分かるほど震わせて再び、何かを呟く。
「言いたい事があるなら、さっさと言え。俺も暇じゃない」
再び、突き離す雄一の言葉にテツは振り返る。
歯を食い縛りながら泣くテツは、腹の底から声を出すように大きくはないが力強い声を出して雄一を睨む。
「イヤダッ! 僕が、ティファーニアさんの夢を……! 願いを叶えるんだ!!」
テツの様子に嘆息する雄一は、腰に両手を当てて愚か者を見るような目でテツを見つめる。
「分かった。ならティファーニアに聞くとしよう。俺とテツ、どっちに大会に出て欲しいか……どういう答えが返ってくると思う?」
「関係ない! どんな答えが返ってこようと僕が出るっ!!」
再び嘆息する雄一は、テツを見つめる。
「何故、そこまで拘る? 仮にお前が出て良い成績を上げたとしても、俺がしてもティファーニアの次に繋げる事には変わらないだろう?」
「違うんだ、違うんですよ、ユウイチさん……!」
テツは、腕全体を震わせながら握り拳を作る。
「僕は、ずっと浮かれてました。何に浮かれてるかも考えもせずに……そして、衝動のままに動いて芯が定まらないまま戦い、負けました……」
独白するテツを雄一は、黙って見つめる。
テツは雄一を睨みつけるように見ているが、見てる相手は雄一ではなく、雄一の瞳に映る自分を射殺すように見ている。
「考えてない、考えなくても答えは出ていて……自分の前にありました。でも、それを認めるのが怖かった!」
「何が怖かったというんだ?」
雄一がテツに答えを促す。
テツは、深呼吸1発決めると声を大にして告白する。
「僕は、ティファーニアさんが好きだぁぁぁ!!!!」
顔を真っ赤にし、肩で息をしながら雄一を睨む。
雄一は目を点にして、思わず、「ハァ?」と声を洩らしてしまう。
テツは、雄一の反応に気付く余裕もないようで口を開く。
「僕は、それをティファーニアさんに気付かれて拒絶されるのが怖かった。だから、自分に嘘を吐いて気付かないフリをしてました……だけど、イヤなんです……」
テツは泣くのを堪えるように唇を噛み締めるが失敗する。
「ベルグノートと結ばれるなんて、論外だ! 例え、ユウイチさんがティファーニアさんの夢を叶えるとしても、その役を譲るのは……イヤなんだっ!!」
テツは腕で涙を拭い、肩で息をする自分を呼吸を落ち着かせようとするが余計に乱れてしまう。
それを見る雄一は口の端を上げて見つめる。
「この想いは届かないかもしれない……でも、あの人の前に立って未来を切り開く役は譲りません!」
「でも、ティファーニアは俺に大会に出てくれって言うと思うぞ?」
先程までのテツであれば怯む言葉であったが、テツは瞳をビクともさせずに受け止める。
「なら僕は、ユウイチさんに勝ってティファーニアさんに認めて貰うまでです!!」
テツは、負けそうな気持ちに発破をかけるように叫びながら、雄一に飛びかかってくる。
迫りくるのテツを雄一は、上げた口の端を更に上げて眩しそうにテツを見つめる。
テツは、雄一のそんな様子に気付く余裕もなく、振りかぶると雄一に拳を振り抜く。
振り抜いた拳が雄一に当たった瞬間、テツは間の抜けた声で、「へっ?」と声を洩らす。
地面に降り立ったテツは、自分の拳と雄一の口の端に流れる血を交互に見つめて間抜け面を晒す。
まさか、当たるとは思ってもなかったのであろう。
「合格だ、テツ。良い気合いが入った拳だった。殴られてやったのは餞別だ」
テツを見つめる雄一の瞳は、いつもの温かみのある視線に戻っている事に気付くテツ。
だが、まだ状況が飲み込めてないテツに雄一は語りかける。
「守る戦いはな……何故、守りたいかをちゃんと理解と覚悟がキマってないとしちゃいけねーよ。それをキメてないない状態で戦うと……もう言わなくても分かるよな?」
沈みゆく月を眺めながら雄一はテツを横目で見つめる。
徐々に理解が追い付いてきたテツは、アワワッと声に出して、口を震わせる。
「確かに、その通りですけど……僕はユウイチさんに見捨てられたのか、と本気で思ったんですよ! 酷いですよ!」
「悪い、悪い。だがよ、あのまま大会に出たら、最悪、お前は失敗を引きずって負けたぞ?」
雄一の言葉に絶句し、否定する言葉が用意できないテツは情けない顔をし頬を掻く。
その様子に笑みを浮かべる雄一はテツの頭にポンと手を置く。
「だがな……もう、そんなヘマはしねぇーだろ? ティファーニアの夢を守ってやれ」
「はいっ! 僕がきっと叶えてみせます!!」
目をキラキラさせるテツに雄一は、嬉しそうにウンウンと頷き肩に手を置く。
テツを見つめてくる雄一の目が笑ってないのに気付いたテツは、生存本能が警戒レベルマックスをお知らせしてくるを自覚する。
「それはともかく、テツ。1発は1発ってことだ」
雄一が、そう言う言葉が聞こえているのに脳が拒否したようで、「えっ?」と聞き返そうとする。
そんなテツの心情を理解する気がないと思われる雄一は、腰を使わない腕だけで振り抜いた拳をテツの頬に綺麗に入れる。
打ち抜かれたテツは、悲鳴も上げる余裕もなく地面を滑るように転がっていく。
「イタァ―――――!!! 気を失いそうな程、痛いです! そのうえ、骨が折れたかと思うような拳の入り方しましたよ!!」
転がり終わると殴られた頬を押さえて、首だけでこちら見て文句を言ってくるテツに近づき笑いながら答える。
「よしっ! 狙い通りだ。気を失わないように骨が折れない限界で留める。もっとも長い間、痛みと友達になれる殴り方だ」
「最低ですよ! ユウイチさん!」
テツの、半泣きの顔が面白くて、雄一は腹を抱えながら軽い感じに謝る。
拗ねるテツを横目に笑いを収めた雄一は、テツに語りかける
「よく聞けよ? 大事な事を話す」
雄一の言葉を聞いて表情を強張らせる。
そんな様子のテツを眺めながら雄一は口を開く。
「テツ、俺はホーラとお前に口を酸っぱくして言ってる事に取り返しのつく無茶はしていいという事を言ってる。だから、取り返しがつかない無茶はしたら駄目だと」
雄一がテツを見つめる真摯さに、テツは黙り続きを聞く。
「だが、取り返しのつかない無茶をしていい時がある。もう分かるな、テツ?」
「はい、守りたい理由を理解して覚悟をした時です」
雄一は、テツの言葉に頷いてみせる。
「そうだ、お前の守りたい想い、『ティファーニアさんが好きだぁぁぁ!!!!』という想いをしっかり理解して覚悟を決めろよ?」
顔を真っ赤にして口をパクパクと陸に上がった魚のようにしているテツに、雄一はイヤラシイ笑みを浮かべる。
「何も真似してまで言う事じゃないでしょう!!」
復帰したテツが、顔が赤いまま雄一に噛みついてくるテツであるが、殴られたダメージの為か立ち上がれないようで歯痒い思いに歯を食い縛る。
そんなテツを楽しそうに眺める雄一はテツを荷物のように肩に背負う。
そして、何度もテツの真似をして悔しがらせて笑うという底意地の悪い事をしながらマッチョの集い亭に足を向けた。
▼
マッチョの集い亭に早朝と呼ぶには早い時間に戻るが、着いた早々、雄一とテツは食堂の板張りの上で正座させられていた。
雄一の前には、シホーヌとアクアとレイアが仁王立ちしており、テツの前にはホーラとティファーニアがジト目で見つめていた。
雄一は、治したテツをまた怪我させて帰ってきた事を怒られ正座させられていた。
テツは、雄一に夜遊びをしてるところ見つかり、折檻を受けたと勘違いをホーラとティファーニアにされて疑いの目で見つめられていた。
雄一とテツは、床に両手を着いて叫ぶ。
「「お願いですから、言い訳を聞いてくださいっ!!」」
フィーリングがバッチリな師弟であった。
強く叩き過ぎて火花な散ったような感覚に襲われ、鼻から血が流れているが自分の意思で抑えられるぐらいの震えまで落ち着き安堵する。
腕で鼻血を拭い、前方にいる捜していた男、雄一を見つめる。
深呼吸を1つすると覚悟を決めたテツが、雄一に向かって歩を進める。
雄一の前までやってきて雄一を見上げるが、遠くから見たままの姿勢で目を瞑ったまま微動すらせずにいる雄一に普段とは違う凄みに尻込みしそうになる。
テツは逡巡するように目を彷徨わせるが意を決して口を開いた。
「ユウイチさん、あの……」
「テツ、大会には俺が出る」
テツの言葉を被せるようにして雄一は、大会の出場の意思を示してきた。
未だに目を閉じて口を動かした以外は、変化を見せない雄一を見つめながらテツは唇を噛み締める。
「お前がベルグノートと再戦を望んで、ここに来てるという前提で話している。違うなら、さっさと帰れ」
雄一の冷たく反論を許さない物言いにテツは怯む。
一瞬、雄一の言う事に従って帰ろうと考える自分に気付き、唇を噛み締める。
テツは考える。
何の為に自分は雄一を捜して、ここまできたのかと……
「帰りません、ユウイチさんが大会に出ようとしてるのには驚きましたが、僕は大会に出たいという気持ちを伝える為にやってきました」
雄一から発されるいつもとは違う畏怖に負けじと踏ん張るが、声が震えるのはどうしようもなかった。
「駄目だ、テツ。お前を大会に出す訳にはいかない……」
「僕は、どうしても出たいんです! 油断から負けたままではいられないんです!」
テツがそう言った瞬間、突然、目を開いた雄一が鋭い視線でテツを貫く。
呼吸がし辛くなったテツが、酸素を求めるように口をパクパクさせるようにする様を見ながら雄一は口を開く。
「テツ、お前はまだ気付かないのか? 油断をしようがしまいが、『負け』という結果は覆せない」
脂汗を流すテツに一歩、また一歩と近づく雄一は、テツの一歩手前に来ると歩みを止めて見下す。
「ましてや、お前は負けてはいけない戦いで、勝てる勝負で負けたという事を俺に言って自分の要望をどうやって通すと言うんだ?」
「あ、あれは……相手が炎を生み出せる剣があった……から……」
言ってる途中で尻すぼみになるテツを雄一は冷めた目で見つめる。
「なら、お前は魔法が得意なものが、遠距離から攻撃するように立ち回ったら卑怯者呼ばわりするのか? 逆にお前は近接が苦手の者に合わせて距離を取って戦ってやるのか?」
雄一の言葉に反論を封じられ、拳を握り締める。
そしてテツの肩に雄一は手を置くと突き離す言葉を口にする。
「お前の悔しさを晴らす為にティファーニアの未来をベットするには……大きすぎる。諦めろ……」
そう言った雄一がテツを通り過ぎて、この場を離れようとした雄一だったが呼び掛けられたような気がして振り返る。
振り返った先のテツは、肩を傍目からでもはっきり分かるほど震わせて再び、何かを呟く。
「言いたい事があるなら、さっさと言え。俺も暇じゃない」
再び、突き離す雄一の言葉にテツは振り返る。
歯を食い縛りながら泣くテツは、腹の底から声を出すように大きくはないが力強い声を出して雄一を睨む。
「イヤダッ! 僕が、ティファーニアさんの夢を……! 願いを叶えるんだ!!」
テツの様子に嘆息する雄一は、腰に両手を当てて愚か者を見るような目でテツを見つめる。
「分かった。ならティファーニアに聞くとしよう。俺とテツ、どっちに大会に出て欲しいか……どういう答えが返ってくると思う?」
「関係ない! どんな答えが返ってこようと僕が出るっ!!」
再び嘆息する雄一は、テツを見つめる。
「何故、そこまで拘る? 仮にお前が出て良い成績を上げたとしても、俺がしてもティファーニアの次に繋げる事には変わらないだろう?」
「違うんだ、違うんですよ、ユウイチさん……!」
テツは、腕全体を震わせながら握り拳を作る。
「僕は、ずっと浮かれてました。何に浮かれてるかも考えもせずに……そして、衝動のままに動いて芯が定まらないまま戦い、負けました……」
独白するテツを雄一は、黙って見つめる。
テツは雄一を睨みつけるように見ているが、見てる相手は雄一ではなく、雄一の瞳に映る自分を射殺すように見ている。
「考えてない、考えなくても答えは出ていて……自分の前にありました。でも、それを認めるのが怖かった!」
「何が怖かったというんだ?」
雄一がテツに答えを促す。
テツは、深呼吸1発決めると声を大にして告白する。
「僕は、ティファーニアさんが好きだぁぁぁ!!!!」
顔を真っ赤にし、肩で息をしながら雄一を睨む。
雄一は目を点にして、思わず、「ハァ?」と声を洩らしてしまう。
テツは、雄一の反応に気付く余裕もないようで口を開く。
「僕は、それをティファーニアさんに気付かれて拒絶されるのが怖かった。だから、自分に嘘を吐いて気付かないフリをしてました……だけど、イヤなんです……」
テツは泣くのを堪えるように唇を噛み締めるが失敗する。
「ベルグノートと結ばれるなんて、論外だ! 例え、ユウイチさんがティファーニアさんの夢を叶えるとしても、その役を譲るのは……イヤなんだっ!!」
テツは腕で涙を拭い、肩で息をする自分を呼吸を落ち着かせようとするが余計に乱れてしまう。
それを見る雄一は口の端を上げて見つめる。
「この想いは届かないかもしれない……でも、あの人の前に立って未来を切り開く役は譲りません!」
「でも、ティファーニアは俺に大会に出てくれって言うと思うぞ?」
先程までのテツであれば怯む言葉であったが、テツは瞳をビクともさせずに受け止める。
「なら僕は、ユウイチさんに勝ってティファーニアさんに認めて貰うまでです!!」
テツは、負けそうな気持ちに発破をかけるように叫びながら、雄一に飛びかかってくる。
迫りくるのテツを雄一は、上げた口の端を更に上げて眩しそうにテツを見つめる。
テツは、雄一のそんな様子に気付く余裕もなく、振りかぶると雄一に拳を振り抜く。
振り抜いた拳が雄一に当たった瞬間、テツは間の抜けた声で、「へっ?」と声を洩らす。
地面に降り立ったテツは、自分の拳と雄一の口の端に流れる血を交互に見つめて間抜け面を晒す。
まさか、当たるとは思ってもなかったのであろう。
「合格だ、テツ。良い気合いが入った拳だった。殴られてやったのは餞別だ」
テツを見つめる雄一の瞳は、いつもの温かみのある視線に戻っている事に気付くテツ。
だが、まだ状況が飲み込めてないテツに雄一は語りかける。
「守る戦いはな……何故、守りたいかをちゃんと理解と覚悟がキマってないとしちゃいけねーよ。それをキメてないない状態で戦うと……もう言わなくても分かるよな?」
沈みゆく月を眺めながら雄一はテツを横目で見つめる。
徐々に理解が追い付いてきたテツは、アワワッと声に出して、口を震わせる。
「確かに、その通りですけど……僕はユウイチさんに見捨てられたのか、と本気で思ったんですよ! 酷いですよ!」
「悪い、悪い。だがよ、あのまま大会に出たら、最悪、お前は失敗を引きずって負けたぞ?」
雄一の言葉に絶句し、否定する言葉が用意できないテツは情けない顔をし頬を掻く。
その様子に笑みを浮かべる雄一はテツの頭にポンと手を置く。
「だがな……もう、そんなヘマはしねぇーだろ? ティファーニアの夢を守ってやれ」
「はいっ! 僕がきっと叶えてみせます!!」
目をキラキラさせるテツに雄一は、嬉しそうにウンウンと頷き肩に手を置く。
テツを見つめてくる雄一の目が笑ってないのに気付いたテツは、生存本能が警戒レベルマックスをお知らせしてくるを自覚する。
「それはともかく、テツ。1発は1発ってことだ」
雄一が、そう言う言葉が聞こえているのに脳が拒否したようで、「えっ?」と聞き返そうとする。
そんなテツの心情を理解する気がないと思われる雄一は、腰を使わない腕だけで振り抜いた拳をテツの頬に綺麗に入れる。
打ち抜かれたテツは、悲鳴も上げる余裕もなく地面を滑るように転がっていく。
「イタァ―――――!!! 気を失いそうな程、痛いです! そのうえ、骨が折れたかと思うような拳の入り方しましたよ!!」
転がり終わると殴られた頬を押さえて、首だけでこちら見て文句を言ってくるテツに近づき笑いながら答える。
「よしっ! 狙い通りだ。気を失わないように骨が折れない限界で留める。もっとも長い間、痛みと友達になれる殴り方だ」
「最低ですよ! ユウイチさん!」
テツの、半泣きの顔が面白くて、雄一は腹を抱えながら軽い感じに謝る。
拗ねるテツを横目に笑いを収めた雄一は、テツに語りかける
「よく聞けよ? 大事な事を話す」
雄一の言葉を聞いて表情を強張らせる。
そんな様子のテツを眺めながら雄一は口を開く。
「テツ、俺はホーラとお前に口を酸っぱくして言ってる事に取り返しのつく無茶はしていいという事を言ってる。だから、取り返しがつかない無茶はしたら駄目だと」
雄一がテツを見つめる真摯さに、テツは黙り続きを聞く。
「だが、取り返しのつかない無茶をしていい時がある。もう分かるな、テツ?」
「はい、守りたい理由を理解して覚悟をした時です」
雄一は、テツの言葉に頷いてみせる。
「そうだ、お前の守りたい想い、『ティファーニアさんが好きだぁぁぁ!!!!』という想いをしっかり理解して覚悟を決めろよ?」
顔を真っ赤にして口をパクパクと陸に上がった魚のようにしているテツに、雄一はイヤラシイ笑みを浮かべる。
「何も真似してまで言う事じゃないでしょう!!」
復帰したテツが、顔が赤いまま雄一に噛みついてくるテツであるが、殴られたダメージの為か立ち上がれないようで歯痒い思いに歯を食い縛る。
そんなテツを楽しそうに眺める雄一はテツを荷物のように肩に背負う。
そして、何度もテツの真似をして悔しがらせて笑うという底意地の悪い事をしながらマッチョの集い亭に足を向けた。
▼
マッチョの集い亭に早朝と呼ぶには早い時間に戻るが、着いた早々、雄一とテツは食堂の板張りの上で正座させられていた。
雄一の前には、シホーヌとアクアとレイアが仁王立ちしており、テツの前にはホーラとティファーニアがジト目で見つめていた。
雄一は、治したテツをまた怪我させて帰ってきた事を怒られ正座させられていた。
テツは、雄一に夜遊びをしてるところ見つかり、折檻を受けたと勘違いをホーラとティファーニアにされて疑いの目で見つめられていた。
雄一とテツは、床に両手を着いて叫ぶ。
「「お願いですから、言い訳を聞いてくださいっ!!」」
フィーリングがバッチリな師弟であった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる