異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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2章 DT、先生になる

52話 テツは男するらしいです

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 朝の一連は、膠着状態に陥るかと思われたが、「雄一の弁護士を呼んでくれ」と情けなく叫ぶのを見た女性陣が渋々、話を聞く体勢に入り誤解が解けて、みんなで朝食を取っていた。

 ミランダお手製のパンが良い味を出していた事に目を見張った雄一は、カウンターに移動して2人でパン談義で花を咲かせる。

「私は、パンにはバターを少し多めに使うから重くならないように、小麦粉に甘みのある種類の……」
「酵母に手を出したいんだが、毎日使うならいいけどストックするとなると難しいからな……」

 などと大男の2人が料理話をする、ちょっと、いや、かなり不思議な空間が形成されていた。

 そんな事お構いなしに楽しげに語っているとミランダが、テーブル席に目を向けている事に気付き、「どうした?」と問いかける。

「とりあえずは、お疲れ様でいいのかしら?」
「それは俺の言葉のような気がするんだが?」

 後ろのメンバーに気付かれないように、静かに感謝を伝える目礼をミランダにする雄一。

 テツの背中を押したのがミランダである事を雄一は気付いていた為である。

 雄一の見立てだとテツが1人で立ち直るには時間がかかるとみていたが、テツは目を覚ましたと思われる時間からそれほど経ってない時間で姿を現した。

 そんな雄一の言葉と態度が分からないとばかりに惚けるミランダ。

「何の事か分からないわ? それより、さっきの質問の返事は貰えないのかしら?」

 目を細めて言ってくるミランダを見て、どうやらテツは自分1人で立ち直り、自分の意志で動いたという事にしておくと決めているようだと納得した雄一はミランダの意志を尊重して、そういうことにしておく。

 何故か雄一は自分の母親を思い出し、切なさと懐かしさに胸を締め付けられる思いにさせられ苦笑いで誤魔化し、ミランダへの返事を口にする。

「何もお疲れするような事はしてないさ。むしろ楽しんで、これからどうなるかと胸が躍るのを抑えるのが大変な程さ」

 そういいつつ、テツを見つめて、「なっ?」とミランダに同意を求める。

「そうね、あの子の場合、大会が始まる前と終わってからが大変そうだけどね……」
「違いない」

 2人は、顔を見合わせて楽しそうに笑いあった。





 朝食が済んだテツと共にティファーニアと話をする為に教会跡へと向かって歩いていた。

 雄一は、マッチョの集い亭を出る前の事を思い出しながら歩く。



 ティファーニア達は、朝食が済むとすぐに、「これ以上はご迷惑かけられません」と礼と共にマッチョの集い亭を後にした。

 ティファーニアが去った後に最終確認をテツにする。

「お前が大会に出るという意思は変わらないか?」
「はいっ! 出て、僕が1番になってきます!」

 良い感じに全身に気迫を巡らせ、ベルグノートに対する変な拘りも見えない事に満足した雄一は頷くとホーラを呼ぶ。

「ホーラ、俺とテツはティファーニアのところにいって、大会のエントリーについて話をしてくるから家の子達の面倒を見てやってくれ」
「それはいいんだけど……なんで、ティファーニアがいるうちに話をしなかったさ?」

 苦笑する雄一はホーラに答える。

「そりゃ、これだけ俺達の身内がいる目の前では思った事が言い辛いだろ? ただでさえ、引け目を感じてるようだからな」

 ホーラは思い出すように宙を眺める。

 そして、頷いてみせて納得した表情を見せてくる。

「確かに、朝、出ていく時のティファーニアを思い出すと否定もできないさ」

 出ていく時に雄一に気持ちだけでも、と言って銀貨1枚を支払おうとしていたが、雄一にやんわりとお断りされて目を伏せていたティファーニアを思い出していた。

 いくら家を追い出される時に僅かなりとはいえ、お金が手渡されてたティファーニアであっただろうが、宿泊費と治療費を支払えるだけの金などあったとは思えない。

 あったとして、それは今後の為に残しておきたい金のはずである。子供達の大事な食費なのだろうだから。

 雄一は、いくらかは知らないが得たお金を自分の為だけに使い、冒険者として生活するのであれば、ティファーニアは楽とまではいかなくても、お金に苦労する生活はしてなかっただろうと思う。

 だが、その楽な道を敢えて避けるようにして、幼い子供達と共に生活しているティファーニアに共感していた。

 例え、手が届く範囲だけだとしても、見る者が見れば愚か者と馬鹿にする者もいるだろう。


 笑いたい奴らには、笑わせておけばいい……


 自分の意思を貫く者の生きる姿を美しいと感じれない残念な奴らに歩みを止められる必要はないと雄一は思う。



 そんな考え事をしながら歩いていると目指していたティファーニア達が住む教会跡が見えてくる。

 雄一は、隣に歩くテツの頭に掌を置くと見上げてくるテツの瞳を見つめて話す。

「ここが避けて通れない最大の山場だ。ここを乗り切ったら大会なんて些事だ」
「へっ? どういうことですかユウイチさん?」

 雄一の言葉の意味が理解できないテツは問いかけてくる。

 それに雄一は苦笑で応えるのみで言葉にせずにテツから正面の教会跡にいると思われるティファーニアを見つめた。



 教会跡に着くと子供達と破壊されて散らばる残骸をどかす作業をするティファーニアを発見する。

 向こうもすぐにこちらに気付き、首を傾げながら近寄ってくると子供達も雄一に気付いて走ってくる。

 ティファーニアより先にやってきた子供達に囲まれ、笑う雄一とズボンを引っ張られて困るテツの下へティファーニアもやってきた。

「どうされたのですか? わざわざ、こちらに来られて……ちょっとびっくりしてます」

 それはそうであろう。約束もせず、別れてから1時間も経っていないのに雄一達がこうしてやってきているのだから。

「テファお姉ちゃんに悪い事しにきたの?」

 雄一に部族メイクを施した幼女が、「ムゥ」という声と共に睨んでくるが雄一から見れば可愛いだけである。

 幼女も雄一がそんな事しにきてないと分かっているので、口許はフニャと笑っている。

「いやいや、そんな事しにきてないぞ? ちょっと齧りにきただけ、ちょっとだけな?」

 指で少しと表現すると幼女は、「ダメェ――!」と楽しげな声を上げて雄一の足に縋りついてくる。

 雄一と幼女のやり取りを堪え切れない笑みを零し、見つめるティファーニアに見とれるテツを横目に雄一は幼女に手を横に広げる。

「じゃ、お前をパクリといっちゃうぞぉ~!」

 「ガォ――」と唸る雄一から、「キャ――」と逃げる幼女は、ティファーニアの次の年長だと思われる雄一にタックルした子の後ろに逃げ込み、様子を窺ってくる。

 雄一は、その年長の子に目を向ける。

「悪いな? ちょっとお姉ちゃんと話をしたいから子供達の面倒を頼めるか?」
「ああ、任せてくれよ!」

 鼻の下を指で擦りながら言ってくる少年に、「ありがとうな?」と笑いかける。

 雄一は、ティファーニアを見つめながら、「少し、時間を貰うぞ?」と教会跡の庭の瓦礫のあるほうに視線を向けて歩き出す。

 雄一の後を着いていくティファーニアとテツは、着くと座ろうと言われるがままに瓦礫を椅子替わりに座る。

「さて、なんとなく俺がきた理由は察してるんじゃないかと思う。だから、単刀直入に用件を言おう。大会のエントリーについてだ」

 雄一にそう言われたティファーニアであったが、背筋を伸ばすように姿勢を整えただけで驚いた様子はなかった。

 どうやら、雄一が思うように、その可能性は考えていたようである。

「昨日のお前の要請についてだが、北川家として受ける用意がある」
「じゃ、先生がっ!」

 身を乗り出してくるティファーニアに手を差し出して、「待て」と伝える。

「北川家として受ける意思はあるが、出場する予定は俺ではなく、テツだ」

 ティファーニアは期待を裏切られた、という表情を一瞬するが唇を噛み締める事で伏せるが、雄一とテツには筒抜けであった。

 目だけでテツの様子を見るが、表面上は一切変化はない。

 こういう流れが来る事をいくらかは想像していたのであろう。

 いくら、想定内といえど、堪える事は堪えるらしくテツの握る拳が物語っていた。

「そのぉ、テツ君は、まだ怪我から治ったばかりで……」
「ティファーニア。言い回しを気にして遠回りをする必要はない。俺もテツもお前の気持ちを理解したうえで、それでもテツを出場させようとしている」

 だから、思ってる事を言っていい、と暗に伝える。ティファーニアには、それが通じると信じて反応を待つ。

 一呼吸吐いて、間を取るようにしたティファーニアは雄一を見て、そして、テツを見つめながら答えてくる。

「それでは率直な意見を言わせて頂きます。確かにテツ君は、私が出るよりは間違いなく良い結果を生むでしょう。ですが、テツ君はベルグノートに負けました。この事実は動きません」

 いくら雄一の許しがあったといえ、テツを陥れ、助けて貰う立場である自分がこういう言い方をする事に抵抗があるようで苦渋に満ちた表情を浮かべるティファーニア。

 ティファーニアは辛そうに言葉にして、捲し立てるように続きを言葉にする。

「ベルグノートより強い者が出てくるかもしれません。例えば、剣聖リホウが出てきたらテツ君に勝機はありません。ですから先生に出て欲しいのです!」

 ふむ、とティファーニアの言い分を聞いた雄一は少し関係がない事を言葉にする。

「前に学校で剣聖に相手して貰ったって言ってたが……リホウの事なのか?」
「えっ? はい、その通りですが……それが何か?」

 雄一は、どう答えたモノかと悩んだようだが、そのまま言う事にする。

「リホウなら多分出てこないぞ?」
「何故、先生がそれが分かるのですか?」

 雄一は、困った顔をしてポリポリと頬を掻きながら、明後日に視線を向けて言ってくる。

「まあ、なんだ。俺がぶっ飛ばして壁に叩きつけた。その時に魔剣も折ったから怪我が治ってたとしても慣れた得物もないのに出てこないと思うんだな、これが」

 雄一の言葉にパクパクと口を動かして目を剥いてくるティファーニアに苦笑する。

「先生が出てくれたら解決だと思うんですが……」

 そう言ってくるティファーニアに雄一は指を2本立てて見せる。

「俺が受けるに当たって2つ問題がある。1つは、俺がこの話を受けてくれと言われた時に言った、家族をどうするかという事だ」

 その事を忘れていたらしいティファーニアは、眉を潜めて目を瞑る。

「俺が出ても、おそらくは大丈夫だとは思うが万が一の心配もある。それ以外にも守らないといけないモノ、そう、お前が家族と呼ぶ者達だ」

 必死すぎて視野狭窄的になっていたティファーニアは唇を噛み締める。

 そんなティファーニアを見るのが辛くて口を挟みたそうにしてるテツに目で、『待て』と伝える。

「そ、それでも確実性のある先生に……」
「2つ目だ」

 雄一は、ティファーニアの言葉に被せて話し出す。

「どうやら、ベルグノートの父親はそれなりに地位のある人物のようだな? そして、息子を勝たせる為に色々と工作をしていて、その中には俺の出場を難しくさせるといったモノが急ピッチで進められているらしい」

 雄一の言葉に目を剥くようにして、否定してくる。

「確かに、ベルグノートの家は確かに裕福で侯爵と縁戚を持つ子爵ですが、冒険者ギルドに介入して捻じ曲げるほどの力はないはずです!」

 有り得ないと雄一の言葉を否定してくるティファーニアであるが、瞳に焦りがあった。

 雄一がそんな見え透いた嘘は言わないだろうと理解している。

 何より信じたくないのは、今の信念の支えにしているモノを崩されるような気持ちにされてたからであろう。

「それが残念な話、現実らしいぞ? 冒険者ギルドの事務長はある商人と懇意にしてるそうだ。そして、その懇意にしてる商人と……」

 そこまで言われたティファーニアは事情を理解して俯く。

 隣にいるテツが小声で雄一に聞いてくる。

「誰から、そんな話を?」
「昨日の夕方に、あの胡散臭い商人に会いに行ってな」

 雄一は、うんざりした表情で溜息を吐く。

 正直、関わり合いを持ちたくはなかったが、王都にコネのない雄一は断腸の思いで会いに行って情報を引き出してきた。

 エイビスは、それはそれは嬉しそうに情報を開示してきた。雄一と縁を繋ぐチャンスとばかりに。

 ばっさりと切って、永遠にサヨウナラといきたいところだが、さすがにそれは気が引けると頭を悩ましていた。

 そんな思いをして得た情報が誤情報だったらエイビスをミンチにする用意が雄一にはあった。

 だが、そんな未来は来ない予感が雄一にあったので残念そうに首を横に振る。

 そして雄一は、目でテツに『待て』の解除を伝える。

 テツは、深呼吸をしてティファーニアと向き合う。

「ティファーニアさん、僕もその話は初耳ですが、その話があろうがなかろうが僕は大会に出たいという気持ちは変わりません」
「テツ君の気持ちは嬉しい。でも、これは遊びじゃないの! 私だけでなく家族の命運がかかってると言っても過言じゃないのよ!」

 ティファーニアの必死な思いから捻りだされた鋭利な言葉がテツに突き刺さる。
 それでも、ティファーニアを柔らかい笑顔で見つめるテツ。

 それを背中から見ている雄一は心でテツにエールを送る。

 正面からは分からないだろうが、背中で語るテツは泣いていた。

 そんなテツではあるが、穏やかに静かに言葉を紡ぐ。

「僕は、もう負けたりはしない。昨日とはもう違う。戦う理由も想いもあります。何より、覚悟が決まっています」
「テツ君が言う覚悟って何だと言うの?」

 疲れたように項垂れながら、涙するティファーニアはテツに問いかける。

 テツは嬉しそうに笑みを浮かべて、ティファーニアを見つめると言葉を奏でる。

「貴方の未来を切り開いて、その涙を嬉し泣きに変える。それが僕の覚悟です」

 そっと差し出すハンカチをティファーニアの前に持って行くとハンカチを持つ手をティファーニアに両手で掴まれる。

「お願い……私を助けて……」

 嗚咽混じりにティファーニアは囁くように声を洩らす。

 それをしっかり拾ったテツは、ニッコリと大きな笑顔で期待を背負った男の顔をする。

「はいっ! 必ず、僕がティファーニアさんの未来を切り開いてみせます!!」

 それを見守っていた雄一は、優しげに目を細めて2人を見つめて微笑んだ。
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