異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

文字の大きさ
55 / 365
2章 DT、先生になる

53話 カエルの子はカエルと言うけど、おたまじゃくしだよね?

しおりを挟む
 雄一達は大会へのエントリーをする為に冒険者ギルドへとやってきた。

 そして、カウンターの前にやってきた雄一は、悟りの境地に至った修行僧のように何も期待していないといった空虚な目をして口を開く。

「冒険者ギルドの扉に手を触れた瞬間から、色々と諦めていた……だから、俺はショックなど受けてない」
「なんだい? 来た早々、何故泣いているんだい?」

 カウンターにいる、はりきりサンこと、50年物のユリアを見つめて気持ち良いと思えるほどの泣きっぷりをみせる雄一。

 なんとなく理由を察したテツは、苦笑いを洩らすだけで済んでいるが雄一の豹変ぶりに驚くティファーニアは目を白黒させる。

 少し雄一の再起動まで少しかかると思ったテツがユリアに話しかける。

「すいません。ユウイチさんは色々ちょっと辛い事が立て込んでるようなんで……あっ、僕は、テツと言います」
「アンタがテツかい。アタシはユリア。ユリアお姉ちゃんと呼んでくれていいよ?」

 ドヤ顔で決めてくるユリアに、どう対応したらいいか戸惑うテツは、やはりホーラのようなスルースキルは持ち合わせていないらしく脂汗を掻き始める。

 それを横で楽しげに見守っていたティファーニアであったが、仕方がないとばかりにテツに微笑み、代わりユリアに話しかける。

「こんにちは、ユリアさん。今日は私のコミュニティーのエントリーに来ました。出て貰う代理の方を連れて伺ったというのが今日の寄こさせて頂いた理由です」

 そう言うティファーニアの言葉を受けたユリアは、眉間に皺を寄せて雄一を見つめると声を顰め、人目を気にするように後ろを伺いながら軽く身を乗り出す。

「ティファーニアを見た時から、そうじゃないかとは思ってたんだけど、実は……」
「大丈夫だ。概ねの事情は理解してるし、それに……」

 再起動した雄一がユリアの背後の奥のほうに衝立がある辺りに視線を向ける。

 そんな雄一を見て、「余計なお世話だったみたいだねぇ」と呟くのを笑みを見せて首を横に振る。

 2人のやり取りにちょっと置いてけぼり感を漂わせるテツとティファーニア。

 すると、衝立の向こうから2人の男が連れだって出てくる。

 1人は昨日ぶりのベルグノートと眼鏡をかけた痩身の髭を蓄えた3流臭がするベルグノートを年を取らせたらこんな感じと思わせる、カール髭がイラッとさせる30後半の男が雄一のほうへと歩いてやってくる。

「おやおや、そこの大男はどなたかな? 見ない顔だが……紹介して頂けないかな、ユリア? ティファーニア嬢でも良いのだが?」

 白々しい棒読みで言ってくる男を睨みつけるように見るティファーニア。

 無表情で機械的に淡々とした雰囲気を漂わせて口を開こうとするユリアより先に雄一が口を開く。

「2人に聞かなくても隣の貧相なガキに聞けばいいだろう? 『おぼえてろよ』と言ってたから覚えておいたぞ? ドリームノート」
「ベルグノートだっ! ただの冒険者の分際で俺を愚弄するかぁ!」

 腹芸もできないベルグノートを呆れた目で見つめる雄一達の視線を受けて、思わずといった感じで腰にある片手剣の柄に手を添えるのを見た雄一が目を細める。

 ただ、それだけの挙動だけで汗を流すベルグノートは柄から手を離すとカール髭の後ろに隠れるように下がる。

 自分のペースと思ってた展開に発展するが一瞬どうすればいいか分からない子供のような顔をするカール髭。

 違う流れに眉を寄せるカール髭は大根役者、本当に舞台から下ろした方がみんなの為かと悩む雄一の呆れが籠る視線に晒されるが気付いた様子も見せずに台本をそのまま読むように演技を続ける。

「で、どなたなのかな? そこの大男は?」

 懲りずにユリアとティファーニアに視線を向ける男に雄一は嘆息する。

「お前はアドリブもできんのか? よく貴族やってられるな? 衝立の向こうで何時間、出待ちしてたんだ? おっさん」

 分かり易い反応の、眉間に血管を浮き上がらせるカール髭から見えない角度でユリアが雄一達に指で3と示してくる。

 どうやら衝立の向こうで3時間も出番待ちをしていたと知って、「暇人極まるな」と呟き呆れる。

 声を震わせるカール髭は、同じ言葉を吐いてくるので拉致があかないと諦めた雄一が伝える。

「はいはい……俺が、お前が待ってた雄一さんだ。で、次のセリフを言ってくれると助かるんだが? こちらも忙しい身でな、メルヘンノートの親父さん」
「ベルグノートだっ! この私が子爵のサウザント家の当主、ポメラニアンの息子と知っての狼藉……」

 雄一の言葉に唾を飛ばしながら叫ぶが、ビクッと動きから体を硬直させ、口をパクパクさせるカール髭、ポメラニアンは脂汗を流す。

 対面にいる雄一から発せられる軽い威圧に圧されているだけで気を失いそうになるのを必死に耐えているようだ。

「先程も言ったが……お前達と違って、こちらは暇じゃないんだ。いつまでも、お前の大根役者に付き合う気はないんだが、どうしても付き合って欲しいなら俺とサシで話せる場所で付き合ってやろうか?」

 剣呑な笑みを見せながら笑う雄一が一歩前に出るとヒッと悲鳴を上げて3歩後ろに下がる。

 その時にベルグノートの足を踏んでしまい、不意打ちだったせいか極端に痛がり、跳ねる姿をティファーニアが噴き出してしまう。

 妾にしようとする女に笑われて矜持が傷ついたのか、虚勢を張る為に叫ぼうとしたが目の前の雄一を恐れて、苛立たしげに黙る。

 さっさと言え、と顎でしゃくる雄一に促されるようにポメラニアンは続きを話す。

「ティファーニア嬢、もしかして……その雄一と申す者をエントリーされようとしているならば残念でしょうが、それは叶わないので別の代役か、貴方をエントリーされると良い」

 呆れた視線を向けるティファーニアはポメラニアンから雄一に視線を向けると、「面倒臭いだろうが、付き合ってやれ」と言われて、色々諦めるように溜息を吐く。

「それは、何故なんですか?」

 やっと自分の思っている流れに成ってきた事に気分を良くしたようでカール髭を撫でつけると嬉しそうに語ってくる。

「それはですな、その男が冒険者ギルドの試験にて、何やらやって剣聖リホウに勝ったのです。4の冒険者が①の冒険者に勝つなど前代未聞。何か不正をしたに決まっているのですよ」

 胸を張るポメラニアンを見て首を傾げるテツは、何も考えてない顔をして口を出す。

「冒険者としての試験ですよね? 不正も何も個人でやってる事であれば、それは技術ですし、事前に何々をしてはいけませんという決め事があるような試合であれば、ともかく冒険者なら当然の話だと思うんですが?」

 素直なテツの言葉に旗色が悪くなって慌て出すポメラニアンは、

「いや、どうも卑怯な事をしたようで……さすがに冒険者としても、どうだろう? と調査を必要と判断という話なのだよ。そんな疑惑の人物を大会に出して良いモノかどうか……」

 そう言ってくるのを見てテツがユリアに視線を向けて、「そうなんですか?」と問いかけるがユリアは大袈裟に肩を竦める。

「アタシもその現場にいて見てたけど……一振りで吹っ飛ばされたうえに魔剣を粉砕されたという状態にどんな不正があったか、アタシのほうが知りたいほどさね」

 ユリアはポメラニアンを見つめて、「報告書を上げておきましたが、読まれましたか?」と小馬鹿にするように見つめる。

 肩を震わせて怒りに包まれた表情を見せるが、雄一に見つめられるだけで冷水を浴びせられたように顔を青くさせると視線を逃がす。

「むしろ、試験に魔剣を持ちだした剣聖リホウが叱責対象だと思うんですが? 冒険者としての力も技術とも関係のない部分になるのですから?」

 ティファーニアに突っ込まれてグゥの音も出ないポメラニアン。

 そろそろ茶番に付き合うのがダルくなってきた雄一は話をシメにかかる。

「まあ、心配するな。お前達の筋書きとは違うだろうが結果は同じになる」

 雄一の言葉の真意を掴み切れないサウザント一家の2人は顔を見合わせる。

「お前のクソガキが勝つ、負けると騒げるぐらいの大会に俺が出る必要などない。コイツで充分だ」

 雄一がテツの肩をポンと叩くとテツは、毅然とした態度で、ご指名頂きましたと言わんばかりにサウザント一家の前に立ち塞がる。

 それを見たベルグノートが調子を取り戻したかのように笑いだす。

「このガキが相手なら楽勝だ。一度、勝ってる相手に負けるかよ!」

 馬鹿にされるテツは、雄一がするような不敵な笑みを意識してるようだが、失敗して残念な笑みを浮かべる。

 隣にいたティファーニアもテツが何をしてるのか分かったようで面白くて笑いだしそうな自分と必死に戦うといった違う戦場が生まれていた。

 雄一は、今のテツを見つめるのは危険と判断してベルグノートに視線を向けて本家本元の不敵な笑みを浮かべる。

「本当にそうなるといいな? というか、そうなると本気で思ってるのか?」
「当たり前だっ!」

 その言葉を聞いた雄一が目を細める。

「その魔剣、へし折ってやろうか? リホウのように?」

 雄一の視線から魔剣を守るように庇うベルグノートは父親に視線を向ける。

「父上、もうここにいても時間の無駄かと思います。それに……そろそろ執務に取りかからないと色々、影響が出てくるかと?」
「うむ、そうだな。我らは、やらねばならん事が多い。それではティファーニア嬢、また会いましょう」

 そう言うと雄一から逃げるように、そそくさと退散していく。

 視線すら見送る気がない雄一に親子揃って舌打ちをすると急ぎ足で冒険者ギルドから立ち去って行った。

 やっと鬱陶しいのがいなくなったとばかりに溜息を吐くユリアが、ティファーニアを見つめて話しかける。

「で、そこの可愛い坊やをエントリーする事でいいなら、あの馬鹿親子がいらん事をしてくる前に手続きしてしまうよ?」

 どうやら、正式に手続きをしたものを覆すほどの力を冒険者ギルドで振るえないようである。

 まあ、事務長と密にできるぐらいであれば、せいぜい雄一にした嫌がらせぐらいが関の山なのだろうと理解する。

「はい、お願いします。私のコミュニティーの代表は、この隣にいるテツ君です」

 ティファーニアに誇らしげに説明されたテツは、やったるでーという声が聞こえそうな顔をして鼻息を荒くする。

 それを見ていた雄一はティファーニアにかかれば、いくらでもテツを調子に乗せられ、どこまでも登らせそうだと冷や汗を流す。

「了解したさね。すぐに手続きを済ませておくよ」
「頼むぜ、ばあさん!」

 手を上げて、気軽に頼むよ、と言わんばかりの顔をする雄一を射抜くような目をしたユリアが叫ぶ。

「ばあさん言わない! 一度は聞き流すけど二度目の今回は流さない! 次、言ったら……股の間ものをチョン切るよっ!」

 ユリアの気迫に圧された雄一は、ヒッ! と情けない悲鳴を上げて股にある未使用のマイサンを庇うように両手で隠し屈む。

 リホウより、よっぽど怖いと呟く雄一はユリアを見つめて震える。

 それを眺めるテツとティファーニアに楽しげな笑みが漏れた。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

処理中です...