異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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2章 DT、先生になる

54話 大会の好敵手は、ボンボンではありませんでした

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 雄一はティファーニアを連れて、再びマッチョの集い亭へと戻ってきた。

 大会について聞いた事を纏める為である。

 あの後、ユリアから説明された事を確認と予定を決める為にテーブル席に座る。

 雄一が戻ってきたのを知ったアリアとミュウが駆け寄ってくると椅子に座る雄一の膝の上にアリアと肩車してくるミュウに苦笑する。

「そこにいてもいいけど、これから話し合いをするから静かにしてるんだぞ?」

 良い子の2人は、アリアは、コックンと頷き、ミュウは、ガゥと返事をしたので雄一は好きにさせる。

 対面にいる2人は手を振って挨拶され、微笑ましそうに見つめ、手を振り返すテツとティファーニア。

「さて……今後の予定を決める為に確認事項から始めるか」

 そう言うとテツとティファーニアは、雄一を見て頷いてくる。

「まず、大会が始まるのが2日後で対戦相手の抽選が明日にされる。結果はその日の夕方に冒険者ギルド前にて発表される」

 雄一はそういうと2人を見る。

「試合会場は、街の外、南門の抜けた先を利用した広い空間で行われる」

 何も対戦相手は、武器をメインで戦う者ばかりではなく、魔法を行使してくる者いる。そんな中、狭い空間でやれば、魔法の制限が加えられる魔法をメインに使う者が不利になる。その辺りの公平さを重んじたというが雄一は、建物の中でやったら損害が出るのを嫌ったのだろうと読んでいた。

「そこまで分かってる状態で俺達が考えないといけないポイントはなんだろうか?」

 雄一は、ティファーニアに問いかけると一考した後、答えてくる。

「あれだけ広い場所でやるなら、位置取りをどうするか考えておくのが大事じゃないのでしょうか?」
「違うな、言葉は似てるが俺達が頭を悩ませるのは……場所取りだ」

 ちっちち、と指を振りながら言ってくる雄一に、ティファーニアは首を傾げて聞き返す。

「位置取りではなく、場所取りですか?」

 ティファーニアの言葉に雄一は頷く。

 混乱したように何が何だか分からなくているティファーニアに飲み物を運んできたミランダが、笑いながら口を挟んでくる。

「ユウイチが言ってるのは戦いをする者の話じゃなくて、観戦する者達の話よ?」

 そう言ってくるミランダに笑いながら、「そんな事で頭を悩まさないでしょう?」と口にするが、言葉にするとまさかと思ったらしく雄一を見つめる。

 雄一は、やっと分かったかとばかりに、ニヤッと笑うと頷いてくる。

「それだけ広い場所でやるとなると全体が良く見える場所を早めに押さえておく必要がある」
「ええっ! 戦うテツ君の心配じゃなくて観戦する人の心配ですか? 先生!」

 ティファーニアが驚き過ぎて、思わずテーブルに手を着いて立ち上がる。

 それを見てる雄一は、ティファーニアは何を言ってるんだ? と言いたげな顔をして膝にいるアリアの黒くて艶やかな髪を撫でていた。

 そして、「ああっ」と声を洩らすとティファーニアとのズレに雄一は気付く。

「ティファーニアは、相手を調べて、こいつならこう戦うとかの対策を立てる必要があると言いたいのか?」
「当然じゃないんですか?」

 やっぱり、そうだったか……と言いたげな溜息を吐く。

 そして、頭を掻こうとしたが雄一の頭を枕にして既に寝ているミュウの邪魔をしそうだったので衝動を抑える。

「まあ、ベルグノートぐらいの相手なら考えても無駄にならないだろうが、それ以上の存在が何人かいるらしい」
「そうなんですか? ユウイチさん」

 少し嬉しそうなテツがそう言ってくるのを頷いてみせる。

「ああ、エイビスから話を聞きだした時に俺達の存在を知る前は、他のヤツとコンタクトを取ろうとしてたらしい。その候補に上げていた者が2人いたと言っていたが、勿論、ベルグノートは選考外だったらしいぞ」
「そんな……」

 ショックを受けるティファーニアがテツを見つめて、大丈夫だろうかと不安そうな顔を見せる。

 テツは何を勘違いしたのか、男前の顔をして微笑むのを見て、残念そうに雄一は眉間を指で揉む。

 ここにホーラがいたら雄一は傷ついただろう。何故ならば、「サリナに注目されたユウみたいさ?」と言われただろうからである。

 今回はいなくて運が良い男かもしれない雄一であった。

「落ち着いて考えるんだ。ベルグノート自体はたいした事がないが、魔剣の力はたいしたものだ」

 雄一は、指を一本立てて、注目と言わんばかりにティファーニアに見せつけると続きを話す。

「そのベルグノートが勝つ為に、あの親子は色々工作してる。だから、俺も相手を見た訳ではないから断言は避けるが、下手したら、テツはベルグノートと戦えずにベルグノートは離脱という展開もあるという事だ」

 本当にその可能性はくじ運次第では高そうだと雄一は笑う。

「僕としては、それは困るんですけど……」
「まあ、お前の気持ちも分かるが、性格はともかく、目は確かそうなエイビスが言っている以上、覚悟だけはしておけ」

 2人のやり取りを見ていたティファーニアが、頬に一滴の汗を流す。

「あのぉ……2人のやり取りを見てるとベルグノートは敵として見てないように感じるのですが?」
「実際に敵にすらならならない相手だからな。魔剣の存在に気付かなかった事は大きいが、それを踏まえても、この馬鹿が油断し過ぎた事と手加減をし過ぎたのが敗因だからな?」

 雄一の何でもないとばかりの発言を聞いて固まるティファーニア。

 言われたテツは、乾いた笑いを洩らして項垂れる。

「2人が戦ってるところを見た訳じゃないが……戦った場所の状況を見る限り、油断したのは間違いない。自分が戦った被害が、周り、ティファーニア達にいかないように必要以上に加減したのが敗因だ」

 雄一の言葉を受けたティファーニアはテツを見て、「そうなの?」と問いかける。

 テツは左右の人差し指をツンツンと当てながら頼りない笑いをティファーニアに向ける。

「テツは不器用で加減が下手だからな。大方、格好でもつけたんだろうな?」

 テツが多少の被害を目を瞑る覚悟があれば、あそこで負ける過去は存在していなかったであろう。

 そう言われたテツは顔を真っ赤にして俯く。

 2人の反応から本気で言ってると理解したティファーニアは呆けるように交互に2人を見つめる。

「で、話を戻すが、ベルグノート以上の存在になってくると下手に対策立てると揚げ足取られかねないんだな。その場で対応するが正解だと思う。勿論、長い時間取って確認できるなら無意味とは言わないが、戦いとは騙し合いなところがあるからな」

 膝にいるアリアも寝たようで、体がずれないように位置修正をしながら答える雄一を見たティファーニアは苦笑するしかないとばかりに笑う。

「戦いに絶対はないが、こういう時は、あれこれと悩むより全力を尽くせるように自然体でいるのが一番大事だからな」

 何より、後2日で何が出来る、と雄一は笑う。

「という訳で、これから下見に行こうと思う。だが、この子達をベッドに連れていくから、ちょっと待っててくれ」

 雄一は、ミランダに出された飲み物、コーヒーを一気に飲みする。

 アリアを、コワレモノを扱うように優しく抱き抱えるのを見たティファーニアは頬笑みを浮かべながら声をかける。

「慣れた感じがしますね?」
「いつもの事だからな?」

 そう言う雄一にティファーニアは、「先生、優しい顔をされてます」と頬笑みを浮かべる。

「ユウイチさん、ミュウが頭の上で盛大に涎を垂らしてますけど……」
「いつもの事だ……頭も洗ってくるから少し延長でよろしく頼む」

 アチャーと言いたげな顔をするテツが雄一に言うと達観した目をして返答してくる。

 そう言って席を外す雄一を2人は見送り、顔を見合わせると笑い合いながらミランダが出してくれた飲み物を口にする。

 テツがコーヒーの苦味に顔を顰めるのを見て、ティファーニアの顔の笑みが更に綻んだ。





 出る準備が済んだ雄一を出迎えた2人と合流するとティファーニアの案内で南門を抜ける。

 そして、案内されるがまま連れて行かれると杭とロープで繋いだだけの手抜き感が誘う場所にやってくる。

「もっと広く取ってるのかと思ったが、そうでもないんだな?」

 連れてこられた場所を見た雄一の感想であった。

 フーン、と鼻を鳴らすようにして闊歩すると、丁度、舞台の中央最前列といった対面に貴賓席がある位置にくると一つ頷く。

 近くに生えてた3mほどの木を見つけ、巴でサックリと斬る。それを持ちあげると空中に放り投げ、フッという掛け声と共に巴で木を斬りつけると5本の杭をこさえる。

「えっ? 今、1回しか斬ったように見えなかったのだけど?」

 冷や汗を流すティファーニアは、目を泳がせてテツを見つめる。

 見つめられたテツも苦笑いをしながら答える。

「今のは僕では、3回まで目を追うのが精一杯でした。あれでもユウイチさんは、気軽にやってるレベルなんですけどね……」

 ハァ、と溜息を零すティファーニアだったが、それ以前に、あの木を軽々と投げる雄一もおかしいと気付き、更に溜息を零す。

 そんな事、お構いなしの雄一は、鼻歌を歌いながら目を付けた場所にいくと四方に杭を叩きつけるように打ち込む。

 そして、中央に幅が一番広かった杭を打ち込み、巴を一閃して雄一側から平らな面ができるように斬る。

 振り返った雄一が『マッチョの集い亭』を出る時に持ってきたと思われる縄をテツに放って言う。

「これを四方の杭に縛って囲いにしろ」

 雄一に言われるがまま作業を始めるテツ。

「えっと、先生は何をされてるのですか?」
「決まってるだろ? 場所取りだ。出場選手の家族席はあって然るべきだろ?」

 そう言いつつ、平らにした面にナイフで彫り込みで、『文句のあるやつは、マッチョの集い亭にいるユウイチまで』と書き込む。

 ハァ……となんと言ったらいいか分からない顔をするティファーニアの様子を見る限り、一般的な事ではないようだが気にしない事にした雄一は、自分の作業に満足したように頷く。

 そんな満足そうな顔をする雄一に声をかける者がいた。

「あの、あの……そこに書かれているお名前を見させて貰ったのですが、貴方がダンガの冒険者のユウイチさんですかぁ?」

 振り返った先には、黒いローブを羽織ったティファーニアより小柄な少女が雄一を見上げて間違ってたらどうしようといった顔をして問いかけてくる。

「ああ、そうだが、早速、文句のあるヤツが来るとはビックリだな?」

 アワワッ、と本当に声に出して口をワナワナさせる少女は、手を大袈裟に左右とも胸の前でサヨウナラするように振る。

「違う、違うのですよ。私は貴方に会いたくて、伺っただけなのですよぉ」

 赤髪を短い尻尾のようにポニーテールにする少女は緑の瞳を涙で潤ませて、「本当に違うんですよぉ」と両手を神に祈るようにして訴えてくる。

「分かったから、泣きそうな顔するな。で、俺に何の用があってきたんだ?」
「えっと、えっと……ユウイチさんが大会に参加するという噂があったので、前々から打診のあったコミュニティーの代表に参加したのですがぁ……出ないと聞いたのですが本当ですかぁ?」

 本当におどおどして窺うようする少女に素直に頷く。

 それを見た少女は、「えぇ――」と叫ぶ。

「そんな、そんな、ユウイチさんに間近で見て貰えて、あわよくば、ユウイチさんと戦えたかもしれないのに……」

 本当に泣きそうに顔を歪める少女の対応に困った雄一は、情けなくもテツとティファーニアに視線をやる。

 テツは早々に雄一の視線から逃げる。その様子に雄一はテツに「薄情者!」と小声で罵る。

 ここは自分の出番だとばかりに前に出たティファーニアに後光を感じる雄一。

「先生に見て貰いたかったのは分かるけど……戦って、どうするつもりなの?」

 そうだったとばかりに目を見開いた少女は、目元を拭うと雄一を見てくる。

「そう、そうだったぁ、ユウイチさんが噂通りの人なら聞いて欲しいお話がありますぅ」
「それは悪い事したな。俺は出ないが、俺の代わりにコイツが出る」

 テツに指を指すと少女は、「どうも」と頭を下げるが、すぐに興味を失ったようで雄一に視線を戻す。

 それに落ち込んで地面に『の』を書き始めるテツを苦笑をしながら見守るティファーニア。

「えと、えと、大会が終わった後でいいので、お手合わせをお願いしてもいいですかぁ?」
「それぐらいなら別に構わないぞ?」

 雄一が快諾すると、手を叩いて本当に嬉しそうにしてくる。

「絶対、絶対、約束ですぅ。後、できたら、試合での私も見ておいてくださいね?」

 撤回する間を与える前に退散しようという浅はかな考えが見えるが微笑ましいの雄一は見逃す。

 スキップするように退散しようとしてた少女が振り返る。

 やっちゃったという顔をした少女が離れた所から大きめの声で言ってくる。

「ごめんなさい、ごめんなさい。私は、ポプリと言います。ポプリ、先月、11歳になりました!」

 雄一の前方では、「もう、大人ですぅ!」と言わんばかりに無い胸を張る少女、ポプリの姿を見て笑みを浮かべる。

「ポプリな? 覚えておくが……年は言う必要はなかったと思うぞ?」

 雄一にそう言われたポプリは、やっちゃった顔から、やらかした顔にクラスチェンジすると顔を両手で隠して今度は脱兎の如く逃亡する。

 逃げるポプリを見送ったティファーニアは苦笑しながら言ってくる。

「何だったんでしょうね、あの子?」

 そういうティファーニアを横目に、まだイジけるテツを見つめて雄一は口を開く。

「テツ、今の子がエイビスが言ってた2人のうちの1人、『灼熱の魔女』ポプリだ。油断するなよ?」

 イジけてたテツが跳ね起きるように立ち上がり雄一を見つめる。

 そして、走り去ったポプリが向かった先を見つめて放心する。

 ティファーニアも同じように驚いて、テツと同じようにポプリの背中を捜すように見つめる。

 雄一は、観客としても楽しめそうだと笑みを浮かべた。
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