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3章 DT,先生じゃなく、寮父になる
77話 芽吹きは突然に…なのでしょうか
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お昼のシチューを堪能したテツ達は、気合い入れて岸辺で向かう先を見つめていた。
「テツ、いける?」
「勿論です、ホーラ姉さん。生活魔法で空を駆ける応用だったんで楽勝ですっ!」
「もしかして、なかった事にしようとしてるかもだけど制御に失敗して空高く飛んでいったんだから油断はしないでね?」
ホーラの言葉に自信満々に語るテツの言葉にしっかり突っ込むポプリを雄一は見つめて面白い奴らだと笑みを浮かべる。
ホーラとテツだけの時でもバランスが取れているように見えていたが、ポプリが加入して更にこの3人に付け入る隙が減ったと言っていいだろう。
そんな3人を見つめて雄一は声をかける。
「行ってこい」
そう言うとホーラとポプリに水魔法を行使する。
2人の周りに水でできた膜が覆われる。
雄一の言葉に3人は頷き、ホーラとポプリが何かを口にするが、何を言ってるか分からない。
この魔法の最大の欠点である。
「行ってきます。期待して待っててください、だそうです」
首を傾げる雄一にテツが通訳をする。
テツとて聞こえてる訳ではないが、声を聞かなくても表情などで分かるあたり、順調に2人の調教、もとい、教育は実に成ってきているようである。
どうやらテツの言う通りだったようで、満足そうに頷く2人とテツは湖の上に立つと水を掻きわけるようにして移動を始める。
その制御を見守っていた雄一は、「まだまだだな」と呟くが急場凌ぎでならアレで充分かと見逃す事する。
ある地点に行くと3人が頷くのが見えた。
するとホーラとポプリは、水の中へと入っていくのを確認すると雄一その場で胡坐を掻く。
当然のように肩にはミュウが、胡坐を掻いた足にはアリアがチョコンと座る。
他の面子も各々の観戦の仕方をし、3人の動向を見守った。
水の中に入ったホーラとポプリは、水深20mぐらいまでは一緒に行動したが、途中で頷き合うと2手に別れる。
ホーラは方向を変えて泳ぎ出し、ポプリはラミアがいる場所へと向かった。
水深40mを越えた辺りで、ポプリとラミアはお互いを認識する。
ポプリは、警戒するように見るラミアを見つめ、その深さで待機する。
ポプリはラミアを見て顔を顰める。
あの豊かな胸とあの垂れ目気味の大きな瞳の美しい顔を見て、自分の突起の気配がまだない胸を抑える。
「私だって、後5年もすれば負けない大きな胸に……なるはず……」
ポプリは、自分の胸に、「大丈夫よね? きっと期待に応えてくれるよね?」と問いかける姿は、雄一が見れば泣くのを耐える姿が見られる切なさが溢れる姿であった。
「テツ君の話だと、サリナさんという人にそっくりだという話だったよね。一度、会っといたほうが良さそうね」
ポプリは正直、油断していた。
雄一の女運の無さに身の周りに女性といえば、家族ぐらいしかいないものとばかり思っていた。
シホーヌとアクアは見た目は良いが、頭の中身が残念だから時間の猶予があると油断をしていたのである。
あの2人は、基本的に周りの者と時間の概念がずれている為、焦った行動を取るという考えが浮かび難いという問題もあり、ノンビリしているところもあるが、やはり、あの2人だからというほうがシックリくるかもしれない。
ライバルになりそうな人物はチェックする必要があるとポプリは思う。
まして、見た目があのレベルだと言われたら今の時点で雄一に告白でもされたら勝負が着いてしまいそうであると。
サリナの意識調査とどんな人かを見に行く事を決めると待ち人のホーラが、ラミアの後方で合図を送ってくるのに気付く。
その合図と共にポプリはゆっくりとラミアに近づいていく。
近づく度に威嚇するように牙を剥いてくるラミアから背中を見せて逃げたくなるが、女は度胸! と自分に言い聞かせる。
少しづつ近づいて距離が縮む度に身を乗り出してくるラミアでチキンレースをするポプリは緊張しつつ、潜っていく。
ついに痺れを切らせたラミアが飛び出してくる。
それを見たポプリは、踵を返すとラミアがゆっくりと追い付いてこれる速度を維持して水面に向かって上昇していった。
飛び出したラミアを確認したホーラは、ラミアの巣の傍にあった卵を奪うとテツがいる方向へと泳ぎ出す。
ポプリを追いかけていたラミアがホーラの存在に気付き、踵を返すとホーラを追いかけだす。
ホーラはポプリと違い、本気で逃げる。
ラミアから追いかけられなくなったポプリは、水面に上がるとテツに向かって叫ぶ。
「テツ君、ホーラがラミアを連れて行くよ!」
「はい、捉えてますっ」
テツは、ツーハンデッドソードを構えると目を瞑り、その時を待つ。
テツの目の前をホーラが飛び出し、それを追いかけるようにしてラミアが姿を表せると目を開いたテツが、雄叫びを上げながらツーハンデッドソードを振り抜く。
剣の腹で叩きつけるようにラミアを上空高く、少しでも遠くへ跳べと願い振り抜く。
テツの願いが叶ったかのように跳ぶラミアを見つめて、水飛沫を立てて落ちるのを確認した3人は脱兎の如く逃亡する。
殺したほうが楽ではあったのだが、何も人に被害を出して依頼されているモノであればともかく、今回はテツ達が横取りをするような立場だった為、躊躇していたところ雄一に相談してこの方法が取られた。
3人はお互いの顔を見合わせると成功を喜び合い、雄一達がいる場所へと戻って行った。
遠くからそれを見ていた雄一は、アビリティの『鷹の目』を発動させてテツに吹っ飛ばされるラミアを見つめて呟く。
「なんて立派な、いやいや、そうじゃなくてラミアの意識は綺麗に刈り取ってるな」
ホクホク顔の雄一は、一応、メインのラミアの状況も確認をした。あれであれば、すぐに目を覚ます事はないであろう。
視線を戻すと卵を掲げて嬉しそうにするホーラがいたので手を振る。
それから、すぐに3人は岸に着き、雄一達の傍へとやってくる。
傍にやって来た時に魔法を解除をしてやる。
「ユウ! これで2つ目を手に入れたさぁ!」
上手くいった事が嬉しいのかいつもよりテンションの高いホーラが体当たりするようにしてくる。
濡れているホーラに体当たりされて冷たかったが、嬉しそうにするホーラにまさに水を差すような真似は憚られたので笑顔で誤魔化す。
みんなが卵に興味津々の様子で見つめるので、雄一はシホーヌとアクアに問いかける。
「お前達も興味を持って見てるところを見ると初めてなのか?」
「そうですぅ、写真でしか見た事はなかったのですぅ」
「私は、水から得た情報としてしか知らなかったので自分の目で見るのは初めてですが、これで間違いはありませんよ」
アクアは、「この鳥の孵化したてのヒナがラミアの好物と聞いてます」と言ってくる。
ちっちゃい3人は目をキラキラさせて見つめる姿が可愛らしくて目を細めて眺めているとアリアがホーラに向かって手を伸ばす。
それを見たホーラが雄一を見つめてくるので頷く。
「まあ最悪、落としても殻さえあれば、こちらとしては問題はないからな」
と言いつつもアリアの傍に行き、「一緒に持とう」と声をかけると頷かれたので一緒に支えるとアリアは嬉しそうに頬ずりをする。
その頬ずりが原因かと思わせるようなタイミングで卵が躍動するように跳ね出す。
目を丸くするアリアと、「えっ?」と思わず声を洩らす雄一の目の前で卵は割れ、中から真っ黒なヒナが生まれる。
雄一とアリアを交互に見つめると首を傾げて、ピーピーと鳴く。
すると、ちっちゃい3人が雄一を見つめてくるのに気付く。
勿論、嫌な予感にも気付いている。
「ユーイ、コイツ、仲間!」
「なぁ、コイツの面倒みてやろうぜ、お父さんもお母さんもいないみたいだし、アリアにも懐いてるしさ」
アリアの両手の上でおとなしく立って雄一をジッと見つめる黒いヒナを見て、おそらく、刷り込み現象で初めて見た雄一とアリアを親と認識しているのであろう。
雄一は戦慄する。
いつか来ると思っていた試練がこんな形でやってくるとは露にも思っていなかった為である。
しかし、お父さん歴が短かろうが言うべき事は言う、と表は顰めっ面、裏では号泣しながら心を鬼にする。
「駄目だ、誰が面倒を見るんだ? 何より野生の生き物は自然で生きるのが1番だ」
雄一は、「駄目です。生き物は玩具じゃないんだぞ」と3人に伝えるが、納得できないようでミュウは雄一によじ登り、頭をペンペンと叩きつける。
レイアは、どんどん様になってきているローキックの連打を雄一の左足の一点集中させて狙い打ってくる。
耐えるのがパパの仕事と涙を浮かべながら耐える雄一にヒナを掲げて、「ん、んっ!」とアピールするアリアを見て、雄一はある事に気付き、これは良い機会かもしれないと思う。
雄一はしゃがみ込んでアリアと目線を合わせると語りかける。
「アリア、お母さんをしようとする者が、態度だけで分かってくれというのはどうなのだろう? 会った時は話せなかったんだろうが今は話せない事もないんだろう?」
優しげに見つめる雄一の目を怯えるように目を反らすアリアに、「アリアはその子のお母さんになってやりたいんだろ?」と穏やかな声でアリアに届ける。
雄一は、結構前から気付いていた。
確かに出会った頃は感情が希薄なところもあり、失語症を患わってる雰囲気を感じていた。
だが、最近、感情も豊かになり、意思表示が激しくなり、掛け声のような先程の「ん、んっ!」と声が出そうなモノを呟く事が増えてきていた。
だから、後はきっとキッカケだけだと思ったいた雄一は、この機会を利用してアリアが喋るキッカケになればと思っていた。
優しげに見つめる雄一の視線の先のアリアは、下唇を噛み締める。
ゆっくりとであるが雄一に視線を戻してくると震える体で頑張るように口をパクパクさせる。
焦って声や手を出したくなるが、グッと堪える。
意を決した瞳をしたアリアが、再び、口を開く。
「……クロのお母さん、なってあげたい。お父さんになってユウさん?」
「おう! 俺で良ければ任せろ!」
アリアの撫で心地の良い黒髪を撫でながら微笑む。
周りで固唾を飲み込んで見守っていた面子が、喋ったアリアに飛びかかるようにして、揉みくちゃにしだす。
クロがアリアの手から雄一の手へ避難して、肩にピョンピョン跳ぶとミュウに掴まれ、雄一の頭の上に置かれる。
見上げても見えないがクロに声をかける。
「これから、よろしくな? クロ」
雄一の言葉に反応するように、ピーピー、と鳴く。
「ミュウもよろしくっ!」
とガゥガゥと叫ぶミュウの声に雄一は頬を綻ばせながら、「おめでとう!」と撫でまわされて困った顔をしつつも嬉しそうなアリアを見つめて、雄一は安堵の溜息を吐いた。
「テツ、いける?」
「勿論です、ホーラ姉さん。生活魔法で空を駆ける応用だったんで楽勝ですっ!」
「もしかして、なかった事にしようとしてるかもだけど制御に失敗して空高く飛んでいったんだから油断はしないでね?」
ホーラの言葉に自信満々に語るテツの言葉にしっかり突っ込むポプリを雄一は見つめて面白い奴らだと笑みを浮かべる。
ホーラとテツだけの時でもバランスが取れているように見えていたが、ポプリが加入して更にこの3人に付け入る隙が減ったと言っていいだろう。
そんな3人を見つめて雄一は声をかける。
「行ってこい」
そう言うとホーラとポプリに水魔法を行使する。
2人の周りに水でできた膜が覆われる。
雄一の言葉に3人は頷き、ホーラとポプリが何かを口にするが、何を言ってるか分からない。
この魔法の最大の欠点である。
「行ってきます。期待して待っててください、だそうです」
首を傾げる雄一にテツが通訳をする。
テツとて聞こえてる訳ではないが、声を聞かなくても表情などで分かるあたり、順調に2人の調教、もとい、教育は実に成ってきているようである。
どうやらテツの言う通りだったようで、満足そうに頷く2人とテツは湖の上に立つと水を掻きわけるようにして移動を始める。
その制御を見守っていた雄一は、「まだまだだな」と呟くが急場凌ぎでならアレで充分かと見逃す事する。
ある地点に行くと3人が頷くのが見えた。
するとホーラとポプリは、水の中へと入っていくのを確認すると雄一その場で胡坐を掻く。
当然のように肩にはミュウが、胡坐を掻いた足にはアリアがチョコンと座る。
他の面子も各々の観戦の仕方をし、3人の動向を見守った。
水の中に入ったホーラとポプリは、水深20mぐらいまでは一緒に行動したが、途中で頷き合うと2手に別れる。
ホーラは方向を変えて泳ぎ出し、ポプリはラミアがいる場所へと向かった。
水深40mを越えた辺りで、ポプリとラミアはお互いを認識する。
ポプリは、警戒するように見るラミアを見つめ、その深さで待機する。
ポプリはラミアを見て顔を顰める。
あの豊かな胸とあの垂れ目気味の大きな瞳の美しい顔を見て、自分の突起の気配がまだない胸を抑える。
「私だって、後5年もすれば負けない大きな胸に……なるはず……」
ポプリは、自分の胸に、「大丈夫よね? きっと期待に応えてくれるよね?」と問いかける姿は、雄一が見れば泣くのを耐える姿が見られる切なさが溢れる姿であった。
「テツ君の話だと、サリナさんという人にそっくりだという話だったよね。一度、会っといたほうが良さそうね」
ポプリは正直、油断していた。
雄一の女運の無さに身の周りに女性といえば、家族ぐらいしかいないものとばかり思っていた。
シホーヌとアクアは見た目は良いが、頭の中身が残念だから時間の猶予があると油断をしていたのである。
あの2人は、基本的に周りの者と時間の概念がずれている為、焦った行動を取るという考えが浮かび難いという問題もあり、ノンビリしているところもあるが、やはり、あの2人だからというほうがシックリくるかもしれない。
ライバルになりそうな人物はチェックする必要があるとポプリは思う。
まして、見た目があのレベルだと言われたら今の時点で雄一に告白でもされたら勝負が着いてしまいそうであると。
サリナの意識調査とどんな人かを見に行く事を決めると待ち人のホーラが、ラミアの後方で合図を送ってくるのに気付く。
その合図と共にポプリはゆっくりとラミアに近づいていく。
近づく度に威嚇するように牙を剥いてくるラミアから背中を見せて逃げたくなるが、女は度胸! と自分に言い聞かせる。
少しづつ近づいて距離が縮む度に身を乗り出してくるラミアでチキンレースをするポプリは緊張しつつ、潜っていく。
ついに痺れを切らせたラミアが飛び出してくる。
それを見たポプリは、踵を返すとラミアがゆっくりと追い付いてこれる速度を維持して水面に向かって上昇していった。
飛び出したラミアを確認したホーラは、ラミアの巣の傍にあった卵を奪うとテツがいる方向へと泳ぎ出す。
ポプリを追いかけていたラミアがホーラの存在に気付き、踵を返すとホーラを追いかけだす。
ホーラはポプリと違い、本気で逃げる。
ラミアから追いかけられなくなったポプリは、水面に上がるとテツに向かって叫ぶ。
「テツ君、ホーラがラミアを連れて行くよ!」
「はい、捉えてますっ」
テツは、ツーハンデッドソードを構えると目を瞑り、その時を待つ。
テツの目の前をホーラが飛び出し、それを追いかけるようにしてラミアが姿を表せると目を開いたテツが、雄叫びを上げながらツーハンデッドソードを振り抜く。
剣の腹で叩きつけるようにラミアを上空高く、少しでも遠くへ跳べと願い振り抜く。
テツの願いが叶ったかのように跳ぶラミアを見つめて、水飛沫を立てて落ちるのを確認した3人は脱兎の如く逃亡する。
殺したほうが楽ではあったのだが、何も人に被害を出して依頼されているモノであればともかく、今回はテツ達が横取りをするような立場だった為、躊躇していたところ雄一に相談してこの方法が取られた。
3人はお互いの顔を見合わせると成功を喜び合い、雄一達がいる場所へと戻って行った。
遠くからそれを見ていた雄一は、アビリティの『鷹の目』を発動させてテツに吹っ飛ばされるラミアを見つめて呟く。
「なんて立派な、いやいや、そうじゃなくてラミアの意識は綺麗に刈り取ってるな」
ホクホク顔の雄一は、一応、メインのラミアの状況も確認をした。あれであれば、すぐに目を覚ます事はないであろう。
視線を戻すと卵を掲げて嬉しそうにするホーラがいたので手を振る。
それから、すぐに3人は岸に着き、雄一達の傍へとやってくる。
傍にやって来た時に魔法を解除をしてやる。
「ユウ! これで2つ目を手に入れたさぁ!」
上手くいった事が嬉しいのかいつもよりテンションの高いホーラが体当たりするようにしてくる。
濡れているホーラに体当たりされて冷たかったが、嬉しそうにするホーラにまさに水を差すような真似は憚られたので笑顔で誤魔化す。
みんなが卵に興味津々の様子で見つめるので、雄一はシホーヌとアクアに問いかける。
「お前達も興味を持って見てるところを見ると初めてなのか?」
「そうですぅ、写真でしか見た事はなかったのですぅ」
「私は、水から得た情報としてしか知らなかったので自分の目で見るのは初めてですが、これで間違いはありませんよ」
アクアは、「この鳥の孵化したてのヒナがラミアの好物と聞いてます」と言ってくる。
ちっちゃい3人は目をキラキラさせて見つめる姿が可愛らしくて目を細めて眺めているとアリアがホーラに向かって手を伸ばす。
それを見たホーラが雄一を見つめてくるので頷く。
「まあ最悪、落としても殻さえあれば、こちらとしては問題はないからな」
と言いつつもアリアの傍に行き、「一緒に持とう」と声をかけると頷かれたので一緒に支えるとアリアは嬉しそうに頬ずりをする。
その頬ずりが原因かと思わせるようなタイミングで卵が躍動するように跳ね出す。
目を丸くするアリアと、「えっ?」と思わず声を洩らす雄一の目の前で卵は割れ、中から真っ黒なヒナが生まれる。
雄一とアリアを交互に見つめると首を傾げて、ピーピーと鳴く。
すると、ちっちゃい3人が雄一を見つめてくるのに気付く。
勿論、嫌な予感にも気付いている。
「ユーイ、コイツ、仲間!」
「なぁ、コイツの面倒みてやろうぜ、お父さんもお母さんもいないみたいだし、アリアにも懐いてるしさ」
アリアの両手の上でおとなしく立って雄一をジッと見つめる黒いヒナを見て、おそらく、刷り込み現象で初めて見た雄一とアリアを親と認識しているのであろう。
雄一は戦慄する。
いつか来ると思っていた試練がこんな形でやってくるとは露にも思っていなかった為である。
しかし、お父さん歴が短かろうが言うべき事は言う、と表は顰めっ面、裏では号泣しながら心を鬼にする。
「駄目だ、誰が面倒を見るんだ? 何より野生の生き物は自然で生きるのが1番だ」
雄一は、「駄目です。生き物は玩具じゃないんだぞ」と3人に伝えるが、納得できないようでミュウは雄一によじ登り、頭をペンペンと叩きつける。
レイアは、どんどん様になってきているローキックの連打を雄一の左足の一点集中させて狙い打ってくる。
耐えるのがパパの仕事と涙を浮かべながら耐える雄一にヒナを掲げて、「ん、んっ!」とアピールするアリアを見て、雄一はある事に気付き、これは良い機会かもしれないと思う。
雄一はしゃがみ込んでアリアと目線を合わせると語りかける。
「アリア、お母さんをしようとする者が、態度だけで分かってくれというのはどうなのだろう? 会った時は話せなかったんだろうが今は話せない事もないんだろう?」
優しげに見つめる雄一の目を怯えるように目を反らすアリアに、「アリアはその子のお母さんになってやりたいんだろ?」と穏やかな声でアリアに届ける。
雄一は、結構前から気付いていた。
確かに出会った頃は感情が希薄なところもあり、失語症を患わってる雰囲気を感じていた。
だが、最近、感情も豊かになり、意思表示が激しくなり、掛け声のような先程の「ん、んっ!」と声が出そうなモノを呟く事が増えてきていた。
だから、後はきっとキッカケだけだと思ったいた雄一は、この機会を利用してアリアが喋るキッカケになればと思っていた。
優しげに見つめる雄一の視線の先のアリアは、下唇を噛み締める。
ゆっくりとであるが雄一に視線を戻してくると震える体で頑張るように口をパクパクさせる。
焦って声や手を出したくなるが、グッと堪える。
意を決した瞳をしたアリアが、再び、口を開く。
「……クロのお母さん、なってあげたい。お父さんになってユウさん?」
「おう! 俺で良ければ任せろ!」
アリアの撫で心地の良い黒髪を撫でながら微笑む。
周りで固唾を飲み込んで見守っていた面子が、喋ったアリアに飛びかかるようにして、揉みくちゃにしだす。
クロがアリアの手から雄一の手へ避難して、肩にピョンピョン跳ぶとミュウに掴まれ、雄一の頭の上に置かれる。
見上げても見えないがクロに声をかける。
「これから、よろしくな? クロ」
雄一の言葉に反応するように、ピーピー、と鳴く。
「ミュウもよろしくっ!」
とガゥガゥと叫ぶミュウの声に雄一は頬を綻ばせながら、「おめでとう!」と撫でまわされて困った顔をしつつも嬉しそうなアリアを見つめて、雄一は安堵の溜息を吐いた。
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