異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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3章 DT,先生じゃなく、寮父になる

86話 若さゆえにらしいです

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 村を馬車で出発してから2時間経過した頃、ホーラ達の馬車の空気は最悪の一歩手前のギスギスしたものになっていた。

 本来、どっしりと構えている年長のはずの2人が一番オロオロしており、役に立たないがいつも通りな辺りが廻り者も期待してなかったので混乱は生まれていない。

 ホーラは苛立ちが眉間に表しているかのような皺の寄り方をさせながら寝たフリを続けていた。

 先程からみんなにチラチラと見られているのは気付いていたが、それに返す反応が定まらないので仕方がなく寝たフリをしている。

 そのなかでも、しつこいぐらいチラチラと見てくる人物に手元にあった何かを目を瞑ったまま、当てずっぽうで放る。

 すると鈍い音をさせ、テツが声なき悲鳴を上げるが馬車の操作していた事を思い出す。

 だが、そこは耐えたようなので、こっそりと評価しておく。

 それに溜息を吐いたポプリが寝たフリをするホーラに呆れたのか、疲れたのか分からない顔をして話しかける。

「ホーラ、いつまで放っておくの?」
「どうしろというさ? しっかりと説明して現実は突き付けた。アイツも冒険者、自己責任で行動するのを止める理由なんてないさ」

 みんな、ホーラが言うのが正論だというのは分かっている。

 そして、同時に「でもっ!」と言う想いもある。

 本来、それは甘い考えだと馬鹿にされる事ではあるが、そこはあの大男の背中を見てきているこのメンバーならでは思考回路であろう。

「こんな時、ユウイチさんならどうするかな……」

 テツは頭を摩りながら黙って馬に乗って着いてくるギルバードをチラ見した後、馬車の操作に専念する。

 ホーラはテツの言葉を聞いて、自分の中の雄一に問いかける。

 雄一は口の端を上げて、呆れるように肩を竦めるのを見たホーラは以前の訓練中のテツの話をした時の事を思い出す。

 雄一にミチルダから借りてきたミスリルを見せた事で、ちょっとした事件が発生した。

 ミチルダが、魔法の初歩魔法ではミスリルを砕く事も斬る事もできないと教えられたと話したのが不味かったようで雄一がチャレンジすると言うとテツが持て囃して拍手をする。

 早速とばかりに試す雄一。

 普通にウォータボールを打ち込むが潰す事もできてないのを確認したら、今度も同じようにウォータボールを出すがすぐに打ち出さずに集中させたと思ったらウォータボールが凄い回転を加えていくのをホーラは目を丸くして見守る。

 そして、先程より小さくなったウォータボールを打ち出すとミスリルが木端微塵になってしまう。

 唖然と口を開くホーラを無視してテツが騒ぐ。

「す、凄いですよ、ユウイチさん! 僕も剣に水を纏わせて回転させたら威力倍増です!!」
「いや、アンタは生活魔法以外使えないさ?」

 鼻息を荒くするテツは、ホーラの言葉を無視して近くに流れる川へ、寒さも気にせずに飛び込む。

「水と一体になって友達になればきっと使えますっ!」

 川の流れに逆らってクロールをするテツは、本気で信じている顔をして叫ぶ。

 全力で呆れて引くホーラは隣で笑みを浮かべる雄一に問う。

「できると思う?」
「まあ、無理だろうな」

 嬉しそうに泳ぐテツを眺めるがやはり水温が低いようで、唇の色が悪くなってきているのを見たホーラが、上がってくるように叫ぶが無視して泳ぎ続ける。

「駄目さ、どうしたらいいさ」
「男は、駄目って言われてもできると信じると引けなくなる時があるからな」
「そんな時はどうしたらいいさ?」

 雄一はイヤらしい笑みを浮かべると、「こうする」と言うと人差し指と中指を合わせてチョキのような手を作ると下から上へと跳ねあげる。

 爆音と言っていいほどの音がテツのほうから聞こえて見るとテツは間欠泉を腹に受けるように吹っ飛ばされるとこちらのほうへと飛んでくる。

 飛んできたテツの片足を掴み逆さまになったテツは白目を剥いて気絶していた。

「このように力づくで止める」

 うわぁ、という口だけでパクパクさせるホーラはついでに聞いてみる。

「それでも駄目だったら?」
「そうだな、それでも駄目だったら……」


 ホーラは瞑っていた目を開き、雄一が言った言葉の続きを口にする。

「それでも駄目だったら、死んでも治らない馬鹿だったと諦めるしかないさ」

 腹が決まったホーラを見て、ポプリは笑みを浮かべると馬車を操ってるテツに声をかける。

「テツ君、馬車を止めて」
「あっ、はい、分かりました」

 テツが馬車を止めるとホーラが馬車から降りて、ギルバードのほうに近づいていくとギルバードも馬から降りると近くの木に馬を繋ぐ。

「あれほど説明したのに、着いてくる気というのはどういうこと?」
「ああ、俺は、お前に認められる男だと証明しないといけない」

 揺るがぬ思いでホーラを見つめてくるが、ホーラの表情はピクリとも動かない。

「言っても分からないなら体で理解して貰うさ。腰のモノを抜きな。命を取ろうって話じゃない。怪我したら後ろの2人が直してくれるから心配いらないさ」
「俺は自分の身など心配してない。お前が傷を負う……」

 ホーラは一足飛びでギルバードの懐に飛び込むと喉元に投げナイフを添える。

「いらない心配してるんじゃないさ。アンタ程度の実力じゃ、傷どころか掠らせる事もできないさ」

 ゴクリと生唾を飲み込むギルバードから離れるホーラを見ていたポプリがテツに問いかける。

「ホーラって投擲と射撃以外もできるの?」
「まあ、護身術程度にユウイチさんに仕込まれてるって聞いてます」

 ポプリは、「護身術程度ねぇ~」と呆れた目で見つめる。

 その護身術程度ですらギルバードとの実力差は明白であった。

「認めて欲しかったら口だけでなく実力で示すといいさ」

 ホーラの言葉で踏ん切りがついたギルバードは、ロングソードを抜いて構える。
 おそらく、飛び出した家で基本だけは学んでいたのであろうというのが見え隠れするお手本のような構えをみせる。

 ホーラは、投げナイフを逆手に持って自然体でギルバードを見つめる。

「かかってきな」

 一瞬、悔しそうな顔を見せたが、上段切りをするつもりか剣を掲げて飛びかかってくる。

 ギルバードからすれば全力で走ってるつもりなのだろうが、普段、雄一、テツを見ているホーラからすれば歩いているように見える。

 溜息を吐きながらナイフでロングソードを流し、懐に入るとしゃがみ、廻し蹴りでギルバードの踵にあてる。

 綺麗に入った蹴りで、引っ繰り返ったギルバードのマウントポジションを取って両腕をホーラは両膝を使って押さえる。

 チェックメイトとばかりに再び、ナイフを喉元に突き付けた。

「これで分かったさ? アンタがいたら足手纏いでアタイ達が危ない。帰りな」

 そう言うとナイフをどけて、立ち上がるホーラを見つめるギルバードは頭を打ってるようでふらつき、木に凭れかかりながら立ち上がる。

「でも、俺はっ!」

 ホーラのその言葉の続きを言わせないと言わんばかりに仕込んでいたナイフを数本、ギルバード目掛けて投げる。

 狙い通り、ギルバードを縫い止めるようにナイフは突き刺さる。

 動けなくなったギルバードに近づいて、一本、一本抜きながら話し始める。

「アタイの戦いのスタイルは遠隔からの攻撃、投擲や射撃がメインさ。短剣の扱いなんて護身術程度の手慰み。アンタが得意とする近接に合わせても、あの様でいつまでも我儘を言うんじゃないさ」

 悔しそうに唇を噛み締めるギルバードにトドメを刺す。

「例え、アンタが着いてこれるぐらいの実力があったとして、アタイがアンタに靡く可能性はゼロさ」

 全てのナイフを抜くとホーラは、ギルバードに一切視線を寄こさず、テツ達がいる馬車へと戻って行った。


 戻ってきたホーラに、「あぁーあ、ホーラは鬼ねぇ」とからかうポプリに迎えられるが今の心境ではいつものように流せず、不機嫌そうに鼻を鳴らして馬車の乗り込み、また寝たフリを開始する。

「でも、ユウイチさんだったらボコボコにした後、魔法で意識を取り戻させた後に、でも、と言ってこられたら何度も意識を奪い、回復を繰り返して体面を気にせず泣くまで続けますから、ホーラ姉さんは優しいと思いますよ?」

 テツの言葉を聞いたポプリは、「えっと、本当に?」テツが冗談を言う性格ではないと知っているが思わず聞き返す。

「ユウイチさんは男には本当に容赦ありませんからね……」

 遠い目をするテツにホーラが手近にあった何かを投げてぶつける。

「さっさと出発するさ」
「はいぃぃ!」

 テツは頭を摩りながら急いで馬車を出発させる。

 ホーラの怒気に恐れたポプリは御者席、テツの隣へと避難する。


 それを最初から最後まで黙って見守っていたシホーヌとアクアは、動き出して景色が流れ始める馬車後部から未だに項垂れたままのギルバートを見つめる。

「彼は諦められたでしょうか? おそらく初恋のように見受けましたが……」
「うん、多分、そうだと思うのですぅ」

 もし、自分達があの立場なら諦められたかと言われたら、おそらく、諦めなかっただろうと思うとお互いの目を見て同じ事を思っている事を理解する。

「男と女の違いがあるから、同じとは言えないのですぅ」
「そうですね、ホーラが主様のように徹した行動を取れなかったのは当然ですが、それが裏目に出ない事を祈っておきましょう」

 2人は、ギルバードが見えなくなるまで後方を見続けていた。


 それから、しばらくするとアクアはテツに馬車を停めるように言う。

「どうしたんですか?」
「もう結構近くまで来てます。馬をこのまま連れていくと境界線を越えた瞬間、馬は暴れ出しますよ?」
「境界線?」

 テツとの話を隣で聞いていたポプリが聞き返してくる。

「実はベへモスは、自由に行動できる範囲が制限されています。元々は、地の精霊の眷属だったのですが、地の精霊に反旗を翻して閉じ込められているのです」

 ベへモス以外は出入り自由なので、迷い込んだ者が食われたり殺されたりしていると説明してくる。

「そんな訳で、馬を連れていくとその恐怖で機能しなくなるのでこの辺りで置いておくのを勧めます」

 テツは素直に馬車を停めると馬を縛っておけるような木を捜し、縛りながらアクアに問いかける。

「ここに置いておくのはいいんですが、馬が獣やモンスターに襲われませんか?」
「その心配はないでしょう。ベへモスより強いモノであればともかく、それより弱いモノもここに張られている結界に近づけませんから」

 この辺りに近づけるのは知能のある人か、草食動物ぐらいであると説明してくる。

 なるほど、と頷きながら、きっちりと馬を繋ぐとテツ達は出発の準備を始める。

「ここから道案内はしますが、すぐに戦闘になると思いますので注意して進んでくださいね?」

 どうやらアクアはベへモスの位置を捉える術があるようで、テツ達は神妙な顔をして頷く。


 そして、アクアの先導の下、探るように前を進む。

 3人はアクアが指差す方向に意識を大きく割いて歩いていた為、後ろのほうが疎かというのもおこがましいレベルで意識を向けていなかった。

 しかし、それは仕方がない事である。

 3人で頑張って戦ったら勝てるんじゃ? という説明を受けていたのだから、どうしても居ると言われたほうに意識を全部向けてしまう。

 だから、気付く事ができなかった。自分達を追跡するモノの存在に。

 アクアは立ち止まると3人に止まるように手で知らせると岩陰からそっと覗くとゆっくりと戻ってくる。

 アクアはみんなの顔を近くにくるように身ぶりで示し、小さな声で伝える。

「いました。あの岩陰の向こうに居ます。覚悟はできてますか?」

 テツ達は自分の装備の確認をもう一度すると3人で顔を合わせて、確認が済んだのを見てアクアに視線をやり、ホーラが代表で黙って頷く。

「じゃ、頑張ってくるのですぅ。私達は戦闘には一切関知しないのですっ。あくまで死なないように面倒を見るだけなのを忘れないで欲しいのですぅ」

 3人は頷くと、ゆっくりと岩陰を目指して歩き始めた。
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