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3章 DT,先生じゃなく、寮父になる
98話 移転するらしいです
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雄一は、子供が布団になってる状態で目を覚ます。
夜中に子供達が雑魚寝している部屋の前を通りかかるとトイレに起きた子がぐずってたのでトイレに連れていき、寝かしつけた。
だが、その子は雄一のズボンを握り締めており、動くに動けなくなった雄一は諦めて、一緒に寝る事にした訳だが、目を覚ませば、先に述べた通りである。
そろそろ、テツ達の訓練の時間だから起きないといけない雄一は、ミュウで鍛えたすり抜け術を披露する。
誰も観客はいないが。
見事に誰も起こさずに脱出した雄一は、テツ達の訓練の為に家を後にした。
帰ってくるとティファーニアが、昨日、雄一が下ごしらえしていたキノコのスープを火にかけて温めていてくれた。
雄一達が帰ってきた事に気付いたティファーニアが、おかえりなさい、と言おうとしたのだろうが雄一の姿を見て、目を丸くして聞いてくる。
「えーと、先生? テツ君のその有様は?」
雄一の肩に担がれて白目を剥いてるテツを見て、口許を押さえながら聞いてくる。
「ああ、俺はまだ早い、と言ったんだが、受け止めるだけじゃくて少し攻めて欲しいと騒ぐからちょっとしてやったら2発で気絶した」
「テツ君、調子に乗り易いとこあるから……」
ティファーニアはテツの油断からこうなったと思ったようだが、ホーラがティファーニアの肩に手を置いて首を横に振る。
「テファ、テツは頑張ったさ。アタイなら最初の一撃で死んでるさ」
「うん……最初の1発を食らって立ち上がったテツ君は根性あったよ?」
ホーラとポプリはテツをフォローするが口を揃えて、「2発目貰う為にまだ挑んだコイツは馬鹿だ」とバッサリと言い切る。
ホーラとポプリの言い様に雄一はさすがにテツが可哀そうになったのでフォローを入れる。
「まあ、男なんて馬鹿やって限界を計り、その限界を超えようとして初めて男だしな」
「さすが、先生! とても為になります」
ティファーニアに、「じゃ、テツ君は馬鹿じゃないんですね?」と問われた雄一は聞き逃したフリをして視線を明後日に向ける。
向けた先にあった水瓶が目に止まり、鍋で掬うとテツを外に転がし、躊躇なく水をぶっかける。
鼻から水が入ったようで、激しくむせ返りながら起きるテツを見つめて、こちらを見たと同時に、「おはよう」と皮肉交じりに笑う。
「ああっ、僕は気絶しちゃったんですね……」
そう言いつつ、ティファーニアが近くにいるのに気付き、慌てた様子で言ってくる。
「さすが、ユウイチさんの一撃です! 10回も耐えれませんでしたっ!」
嘘を言ってる訳ではないが、誤解を招く発言をする辺りテツにすれば策士と言ってやっても良いレベルの言い回しをしてくる。
「あー、スマン。もうお前が2発で落ちたって説明済んでる」
頭をガリガリと掻きながら、ちょっと悪い事したな、と後悔する雄一の目の前では人生が終わったと項垂れるテツの姿があった。
その項垂れようを見て、ティファーニアが可愛いと呟くのを聞き逃さなかった雄一がティファーニアに目でテツを示す。
頷くティファーニアがテツに近づいて肩を叩く。
「テツ君、ホーラから聞いたけど、ホーラだったら一撃で死んでしまうような攻撃を受けても立ち上がったって聞いたわ。凄いわ」
テツは、パァ――とお花畑をバックに背負うように軽やかに立ち上がる。
「それほどでもありますけどぉ~!」
「でもね、テツ君。先生が加減をミスするとは思わないけど、万が一があるから訓練で無茶はしちゃ駄目よ?」
テツは、手を上げて嬉しそうに「ハ――イッ」と元気に返事する。
そのテツを微笑ましそうに見つめるティファーニアを確認した後、雄一はテツに伝える。
「さて、テツ、今日はお前の先生(仮)のデビューの日だろ? 確か、子供達に自分の名前を書けるようにするって言ってただろ」
「はい、そうでした。井戸で汗を流して授業に備えます」
テツは自分の格好を見て土汚れや汗を掻いてるのに気付いたテツは、雄一にそういうと井戸へ駆け出した。
雄一は、ホーラとポプリに向き合う。
「2人は、今日もストリートチルドレン達に説明会だったよな?」
昨日は質問攻めに合い、相手に理解できるように説明するのに四苦八苦した2人は、続きは明日と伝えて帰ってきたそうである。
「今日はバッチリさ。昨日、聞かれてた内容はしっかり考えて答えも用意した」
「そうなんです。えっと、えっと、だから、褒めてください、ユウイチさんっ!」
頭を差し出すポプリの頭をポンポンと叩く。
撫でられた訳でもないが嬉しそうにするポプリと責めるような目で見るホーラを見て雄一は思う。
しっかり解答を用意した? 甘いな、と……
1つの答えが出るとそれに付随した疑問が生まれるものである。
それを今日、この2人は身をもって知って帰ってくるだろう。
それもまた、成長の糧になると判断する雄一は何も言わずにおく事にする。
「ほらほら、2人も風呂にお湯を張ってやるから、さっぱりしてこい」
そう言いつつ、2人の背中を押して風呂場へと向かう。
言葉通りに雄一は魔法で風呂にお湯を張ると踵を返して台所へと帰ってくる。
ティファーニアがスープの味見をしながら進めるのを見た雄一は手を洗い、パンを焼く為に捏ねておいた生地を切り分けていく。
焼ける量だけ切り分け纏めると窯に放り込み、また、切り分けを始めるという動作を何工程か繰り返し、パンが出来上がると台所の入口で、ちっちゃい3人こと、アリア、レイア、ミュウが雄一を見つめていた。
「どうした? あっ、味見ならもう終わってるからないぞ?」
雄一は手に付いた粉を払いながら近づきながら話しかける。
アリアが一瞬、絶望したような表情を見せたが、レイアが首を横に振って言ってくる。
「家の玄関に……リホウっていったっけ? そいつが酒瓶抱えて寝てるんだけど……」
「おっちゃん、寝てる」
ミュウが、おっちゃんという響きが気に入ったようで連呼する姿を見て、さすがにリホウも傷つくかもな、と苦笑する。
雄一は、ヤレヤレと言いたげの溜息を吐くと沸かし始めたお湯が入った鍋を持ち上げる。
その姿を見たティファーニアが先程のテツの姿を思い出して慌てる。
「せ、先生? まさか、それをリホウさんに? 沸騰はしてませんが、さすがに熱いと思うんですがっ!」
ティファーニアにそう言われた雄一は、ほんのり湯気が上がる鍋を見つめて頷くとすぐ傍にあったコップに入ってる水を足すと満足そうに頷く。
「これで問題ない」
「先生っ、それは焼け石に水って言うんですよっ!」
雄一は、はっはは、と笑いながら、「ヤツは1の冒険者、これぐらい余裕だろう?」と自分の事を棚上げにしてティファーニアに朝食の準備の続きを頼むと雄一は、ちっちゃい3人を引き連れて玄関に向かう。
それをハラハラとした表情で見送ったティファーニアの下へ絶叫を上げるリホウの声が届き、「先生って時々、手加減が酷い時があるわ」と嘆くように呟く。
その後、元気に雄一に泣き事を言うリホウの声が聞こえてきて、もしかして、私の心配のしすぎなのかしら、と徐々に北川家の常識に染まりつつあるティファーニアであった。
朝食が済み、雄一はリホウとティファーニアを伴って冒険者ギルドへと向かっていた。
珍しい面子であるが行く理由が理由なので当然の面子である。
冒険者ギルドに着くと雄一の姿を確認した受付嬢が奥に引っ込み、エル腐が出てくる。
雄一は、舌打ちをした後に挨拶をする。
「顔を見た早々に舌打ちですか? 挨拶の後にしろって意味じゃないですからね?」
苦言を言ってるが、表情はいつも通りヘラヘラ笑いなんとも思ってなさそうに見える。
「で、今日の御用は?」
「ああ、今日は俺というより、後ろの2人の付きそいできてる」
そういうと雄一は、ティファーニアとリホウを前に出す。
「今日は、コミュニティの移転申請にきました」
前に出たティファーニアは、ニッコリと笑顔を浮かべて余所行きの顔で話し出すのを見て、上流階級の教育を受けた女の子だな、と思わず思い、笑いが漏れそうになるがこっそりティファーニアに足を踏まれる。
「なるほど……ですが、良いのですか? 一般的にこれは『都落ち』ですが……」
ミラーはティファーニアの真意を計るように聞き返すが、ティファーニアの面の皮を貫く事はできず頬笑み返される。
「勿論、存じてます。言いたい方には言わせておきましょう。その都にいるコミュニティより凄いコミュニティになりますから」
自信が溢れた表情するティファーニアを好意的にミラーは見つめると視線を雄一に向けてくる。
「貴方もこのコミュニティに?」
「んっ? ああ、客員要員としてだがな」
そうですか、とホッとするような表情を見せるミラーに疑問に思った雄一が聞き返す。
「いえね、貴方を筆頭にテツ、ホーラ、ポプリをコミュニティに引き込みたい、もしくは、所属してるコミュニティに入りたいという要望がギルドに殺到してるんですよ」
「はぁ? 俺のところにそんな話はきてないぞ?」
そういう雄一を溜息を吐いて呆れた顔をして見つめる。
「それは、貴方に直接交渉するのが怖いからに決まってるでしょ? テツ達にも交渉したいが、貴方に聞きつけられたら、やり方次第では身の破滅ですからね」
「確かに、俺もアニキに直接交渉する勇気がなかったら同じ事してますね」
ミラーの言い分にリホウが楽しそうに追従してくる。
雄一は憮然な表情をして、「俺はちゃんと話し合いができる!」と拗ねる。
「それで、この方は? 聞き伝えが間違ってなければ、貴方は剣聖リホウではありませんか?」
「それ、やめてぇ! 悲しい過去を掘り起こさないで!」
やはり、自称だったらしく、我に返るとかなり恥ずかしいらしい。
リホウは、必死にミラーに頼みこむが、ミラーの表情を見てリホウに合掌する。
ミラーの、にへら、と笑うあの顔は新しい玩具ゲットだぜぇ! って言ってるようにしか見えなかったからである。
「ティファーニアは見た通りのまだまだ、これからの少女だ。それを荒くれ者の冒険者の窓口にするにはまだ早い。だから、使い減りのしないコイツを壁にする為にコミュニティ代表代理に据えようと思ってる」
さっきの話を聞いたら余計にティファーニアにさせる訳にはいかない。
ミラーは、フムフムと頷くとファイルを漁り、書類を数点引っ張り出す。
「では、この書類にサインを。それでコミュニティ名は何と言うのですか?」
ミラーに書類を渡され、問われたティファーニアは今日一番の笑顔を浮かべて答える。
それを聞いていたリホウはお腹を抱えて笑い、雄一は眉を寄せて困った顔を覗かせた。
夜中に子供達が雑魚寝している部屋の前を通りかかるとトイレに起きた子がぐずってたのでトイレに連れていき、寝かしつけた。
だが、その子は雄一のズボンを握り締めており、動くに動けなくなった雄一は諦めて、一緒に寝る事にした訳だが、目を覚ませば、先に述べた通りである。
そろそろ、テツ達の訓練の時間だから起きないといけない雄一は、ミュウで鍛えたすり抜け術を披露する。
誰も観客はいないが。
見事に誰も起こさずに脱出した雄一は、テツ達の訓練の為に家を後にした。
帰ってくるとティファーニアが、昨日、雄一が下ごしらえしていたキノコのスープを火にかけて温めていてくれた。
雄一達が帰ってきた事に気付いたティファーニアが、おかえりなさい、と言おうとしたのだろうが雄一の姿を見て、目を丸くして聞いてくる。
「えーと、先生? テツ君のその有様は?」
雄一の肩に担がれて白目を剥いてるテツを見て、口許を押さえながら聞いてくる。
「ああ、俺はまだ早い、と言ったんだが、受け止めるだけじゃくて少し攻めて欲しいと騒ぐからちょっとしてやったら2発で気絶した」
「テツ君、調子に乗り易いとこあるから……」
ティファーニアはテツの油断からこうなったと思ったようだが、ホーラがティファーニアの肩に手を置いて首を横に振る。
「テファ、テツは頑張ったさ。アタイなら最初の一撃で死んでるさ」
「うん……最初の1発を食らって立ち上がったテツ君は根性あったよ?」
ホーラとポプリはテツをフォローするが口を揃えて、「2発目貰う為にまだ挑んだコイツは馬鹿だ」とバッサリと言い切る。
ホーラとポプリの言い様に雄一はさすがにテツが可哀そうになったのでフォローを入れる。
「まあ、男なんて馬鹿やって限界を計り、その限界を超えようとして初めて男だしな」
「さすが、先生! とても為になります」
ティファーニアに、「じゃ、テツ君は馬鹿じゃないんですね?」と問われた雄一は聞き逃したフリをして視線を明後日に向ける。
向けた先にあった水瓶が目に止まり、鍋で掬うとテツを外に転がし、躊躇なく水をぶっかける。
鼻から水が入ったようで、激しくむせ返りながら起きるテツを見つめて、こちらを見たと同時に、「おはよう」と皮肉交じりに笑う。
「ああっ、僕は気絶しちゃったんですね……」
そう言いつつ、ティファーニアが近くにいるのに気付き、慌てた様子で言ってくる。
「さすが、ユウイチさんの一撃です! 10回も耐えれませんでしたっ!」
嘘を言ってる訳ではないが、誤解を招く発言をする辺りテツにすれば策士と言ってやっても良いレベルの言い回しをしてくる。
「あー、スマン。もうお前が2発で落ちたって説明済んでる」
頭をガリガリと掻きながら、ちょっと悪い事したな、と後悔する雄一の目の前では人生が終わったと項垂れるテツの姿があった。
その項垂れようを見て、ティファーニアが可愛いと呟くのを聞き逃さなかった雄一がティファーニアに目でテツを示す。
頷くティファーニアがテツに近づいて肩を叩く。
「テツ君、ホーラから聞いたけど、ホーラだったら一撃で死んでしまうような攻撃を受けても立ち上がったって聞いたわ。凄いわ」
テツは、パァ――とお花畑をバックに背負うように軽やかに立ち上がる。
「それほどでもありますけどぉ~!」
「でもね、テツ君。先生が加減をミスするとは思わないけど、万が一があるから訓練で無茶はしちゃ駄目よ?」
テツは、手を上げて嬉しそうに「ハ――イッ」と元気に返事する。
そのテツを微笑ましそうに見つめるティファーニアを確認した後、雄一はテツに伝える。
「さて、テツ、今日はお前の先生(仮)のデビューの日だろ? 確か、子供達に自分の名前を書けるようにするって言ってただろ」
「はい、そうでした。井戸で汗を流して授業に備えます」
テツは自分の格好を見て土汚れや汗を掻いてるのに気付いたテツは、雄一にそういうと井戸へ駆け出した。
雄一は、ホーラとポプリに向き合う。
「2人は、今日もストリートチルドレン達に説明会だったよな?」
昨日は質問攻めに合い、相手に理解できるように説明するのに四苦八苦した2人は、続きは明日と伝えて帰ってきたそうである。
「今日はバッチリさ。昨日、聞かれてた内容はしっかり考えて答えも用意した」
「そうなんです。えっと、えっと、だから、褒めてください、ユウイチさんっ!」
頭を差し出すポプリの頭をポンポンと叩く。
撫でられた訳でもないが嬉しそうにするポプリと責めるような目で見るホーラを見て雄一は思う。
しっかり解答を用意した? 甘いな、と……
1つの答えが出るとそれに付随した疑問が生まれるものである。
それを今日、この2人は身をもって知って帰ってくるだろう。
それもまた、成長の糧になると判断する雄一は何も言わずにおく事にする。
「ほらほら、2人も風呂にお湯を張ってやるから、さっぱりしてこい」
そう言いつつ、2人の背中を押して風呂場へと向かう。
言葉通りに雄一は魔法で風呂にお湯を張ると踵を返して台所へと帰ってくる。
ティファーニアがスープの味見をしながら進めるのを見た雄一は手を洗い、パンを焼く為に捏ねておいた生地を切り分けていく。
焼ける量だけ切り分け纏めると窯に放り込み、また、切り分けを始めるという動作を何工程か繰り返し、パンが出来上がると台所の入口で、ちっちゃい3人こと、アリア、レイア、ミュウが雄一を見つめていた。
「どうした? あっ、味見ならもう終わってるからないぞ?」
雄一は手に付いた粉を払いながら近づきながら話しかける。
アリアが一瞬、絶望したような表情を見せたが、レイアが首を横に振って言ってくる。
「家の玄関に……リホウっていったっけ? そいつが酒瓶抱えて寝てるんだけど……」
「おっちゃん、寝てる」
ミュウが、おっちゃんという響きが気に入ったようで連呼する姿を見て、さすがにリホウも傷つくかもな、と苦笑する。
雄一は、ヤレヤレと言いたげの溜息を吐くと沸かし始めたお湯が入った鍋を持ち上げる。
その姿を見たティファーニアが先程のテツの姿を思い出して慌てる。
「せ、先生? まさか、それをリホウさんに? 沸騰はしてませんが、さすがに熱いと思うんですがっ!」
ティファーニアにそう言われた雄一は、ほんのり湯気が上がる鍋を見つめて頷くとすぐ傍にあったコップに入ってる水を足すと満足そうに頷く。
「これで問題ない」
「先生っ、それは焼け石に水って言うんですよっ!」
雄一は、はっはは、と笑いながら、「ヤツは1の冒険者、これぐらい余裕だろう?」と自分の事を棚上げにしてティファーニアに朝食の準備の続きを頼むと雄一は、ちっちゃい3人を引き連れて玄関に向かう。
それをハラハラとした表情で見送ったティファーニアの下へ絶叫を上げるリホウの声が届き、「先生って時々、手加減が酷い時があるわ」と嘆くように呟く。
その後、元気に雄一に泣き事を言うリホウの声が聞こえてきて、もしかして、私の心配のしすぎなのかしら、と徐々に北川家の常識に染まりつつあるティファーニアであった。
朝食が済み、雄一はリホウとティファーニアを伴って冒険者ギルドへと向かっていた。
珍しい面子であるが行く理由が理由なので当然の面子である。
冒険者ギルドに着くと雄一の姿を確認した受付嬢が奥に引っ込み、エル腐が出てくる。
雄一は、舌打ちをした後に挨拶をする。
「顔を見た早々に舌打ちですか? 挨拶の後にしろって意味じゃないですからね?」
苦言を言ってるが、表情はいつも通りヘラヘラ笑いなんとも思ってなさそうに見える。
「で、今日の御用は?」
「ああ、今日は俺というより、後ろの2人の付きそいできてる」
そういうと雄一は、ティファーニアとリホウを前に出す。
「今日は、コミュニティの移転申請にきました」
前に出たティファーニアは、ニッコリと笑顔を浮かべて余所行きの顔で話し出すのを見て、上流階級の教育を受けた女の子だな、と思わず思い、笑いが漏れそうになるがこっそりティファーニアに足を踏まれる。
「なるほど……ですが、良いのですか? 一般的にこれは『都落ち』ですが……」
ミラーはティファーニアの真意を計るように聞き返すが、ティファーニアの面の皮を貫く事はできず頬笑み返される。
「勿論、存じてます。言いたい方には言わせておきましょう。その都にいるコミュニティより凄いコミュニティになりますから」
自信が溢れた表情するティファーニアを好意的にミラーは見つめると視線を雄一に向けてくる。
「貴方もこのコミュニティに?」
「んっ? ああ、客員要員としてだがな」
そうですか、とホッとするような表情を見せるミラーに疑問に思った雄一が聞き返す。
「いえね、貴方を筆頭にテツ、ホーラ、ポプリをコミュニティに引き込みたい、もしくは、所属してるコミュニティに入りたいという要望がギルドに殺到してるんですよ」
「はぁ? 俺のところにそんな話はきてないぞ?」
そういう雄一を溜息を吐いて呆れた顔をして見つめる。
「それは、貴方に直接交渉するのが怖いからに決まってるでしょ? テツ達にも交渉したいが、貴方に聞きつけられたら、やり方次第では身の破滅ですからね」
「確かに、俺もアニキに直接交渉する勇気がなかったら同じ事してますね」
ミラーの言い分にリホウが楽しそうに追従してくる。
雄一は憮然な表情をして、「俺はちゃんと話し合いができる!」と拗ねる。
「それで、この方は? 聞き伝えが間違ってなければ、貴方は剣聖リホウではありませんか?」
「それ、やめてぇ! 悲しい過去を掘り起こさないで!」
やはり、自称だったらしく、我に返るとかなり恥ずかしいらしい。
リホウは、必死にミラーに頼みこむが、ミラーの表情を見てリホウに合掌する。
ミラーの、にへら、と笑うあの顔は新しい玩具ゲットだぜぇ! って言ってるようにしか見えなかったからである。
「ティファーニアは見た通りのまだまだ、これからの少女だ。それを荒くれ者の冒険者の窓口にするにはまだ早い。だから、使い減りのしないコイツを壁にする為にコミュニティ代表代理に据えようと思ってる」
さっきの話を聞いたら余計にティファーニアにさせる訳にはいかない。
ミラーは、フムフムと頷くとファイルを漁り、書類を数点引っ張り出す。
「では、この書類にサインを。それでコミュニティ名は何と言うのですか?」
ミラーに書類を渡され、問われたティファーニアは今日一番の笑顔を浮かべて答える。
それを聞いていたリホウはお腹を抱えて笑い、雄一は眉を寄せて困った顔を覗かせた。
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