異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

文字の大きさ
108 / 365
3章 DT,先生じゃなく、寮父になる

幕間 ある一室で願いを託す者

しおりを挟む
 幼い兄妹がお互いを抱き締め合って眠るのを愛しげに髪を梳く女性、成人して間がなさそうな年齢の彼女は、目の前の子供達の母親であった。

 その姿を後ろから見つめている初老の男、年が60歳ぐらいに見える。

 トトランタで60歳と言えば長寿と思われる年齢である。

 老人は、女性に声をかける。

「お嬢様、お話を続けてもよろしいでしょうか?」
「ふっふふ、貴方から見れば、いつまでも私は幼い少女の時と同じように見えるのかしら?」

 老人に昔を懐かしむように微笑む女性であったが、慌てた老人が訂正しようとしてくるが女性が止める。

「いいのよ、私も親の立場になって、その気持ちが痛いほど分かるようになったから」

 そう微笑みながら言う女性は、「人前だけは気を付けてね?」とお茶目にウィンクしてくる。

 頭を下げて、なかなか上げようとしない老人に女性が、「話を続けて?」と促す。

「はい、もうだいたいのことはご存知かとは思いますが、僅かに残っていた良心的な貴族もほぼ全員、中立を宣言しました」

 悔しそうにそう言う老人は、「悔しゅうございます」と憤るが、女性は被り振ると諦めが滲む笑みを浮かべる。

「彼ら達も守るべき領地、領民、そして、家族があります。責めるのは酷でしょう」

 再び、子供達の髪を梳きながら言葉を続ける。

「既に私はお飾り以外の価値がありません。私では彼らを守ってあげることもできない。あれほど風当たりがキツくなっても長い間耐えてくれた彼らには感謝しか言葉はありません」

 女性は、悲しそうに子供達を見つめ、「ただ……」と呟き、目を伏せる。

「私にはまだお飾りと最悪の場合、責任を取らせる為のスケープゴートの役割があります。ですが、この子達はあの者には無用の長物のはず……だから、この子達を……」

 女性は、始末するという言葉を飲み込む。

 女性を見つめていた老人もその飲み込んだ言葉を理解した。

 この兄妹を守る方法を必死に模索するが良案が2人にはなかった。

「この子達を守る事ができる者がいないのでしょうか……」
「私に1つ案がありますぞ?」

 2人ではない力強い声が加わり、慌てる2人はドアのほうに目を向ける。

「門番がおらなんだので、いないかと思ったら話し声がしたので聞き耳を立ててしまいましたわ。そうしたら、聞こえてきた話し声の内容を打開する案があったもので、勇み足をして入室の許可を取り忘れた事をお許し願いたい」

 一応、立ち聞きした事は悪いと思っているようで申し訳なさそうに頭を掻く姿を見せる初老の男。

 何故か、場に相応しくない対応なはずなのに苦笑するだけで許してしまう気持ちにさせるのは、きっとこの初老の男の人徳であろう。

 最初からいた老人より10歳ほど若そうな男であるが、武人の趣を感じさせる初老の男は堂々と中に入ってくる。

「しかし、門番も寄こさない扱いの酷さと間諜を置かないところから、とことん舐められておりますな」

 女性の10歩ほどの距離で止まった男が形式に乗っ取った礼をするのを見て、女性は懐かしそうに目を細めて名を呼ぶ。

「久しぶりですね、ペペロンチーノ、壮健そうで何よりです。舐められてるですか、実際に何もできませんから正当な評価でしょう」

 ペペロンチーノを苦笑で歓迎の意思を示すが、もてなす術がない事を詫びる。

 首を振り、「お気にされず」と笑みを浮かべるペペロンチーノに老人が話しかける。

「先程言われた案があるというお話は?」
「そう、私もそれを聞かせて貰いたい」

 そう言ってくる2人はペペロンチーノに身を乗り出して話を促す。

「ご子息達を市井の者に託すのです」
「何を馬鹿な、市井の者にお二人を守れるような者などおらん」

 老人は、「ペペロンチーノ殿に託させて貰いたい」と言うが、ペペロンチーノは手で待ったをかける。

 女性も同じように思うがペペロンチーノの自信がありげな笑みを見て、続きを促す。

「それが居るのですよ。私が全力で守る事を宣言して実行するよりも確実な相手が」
「馬鹿なそんな者がいると聞いた事がない」
「ペペロンチーノ、本当というなら、もっと詳しく聞かせてください」

 ペペロンチーノは、説明を始める。

 彼の者は、ドラゴンを初級魔法1発で仕留める剛の者。

 彼の者の怒りは、敵対する者を目だけ意識を奪う

 彼の者は、5分とかからず、500を超える相手を命を奪わずに自分の得物で薙ぎ払う。

 彼の者、ストリートチルドレンの為に学校を作り、生きる術を与える。

「そのうえ、彼はパパラッチをほぼ単独で壊滅させました」
「パパラッチ?」

 女性が首を傾げるが、その名前が何を意味するか分からなかった。

 同じように老人も首を傾げるが、「あっ!」と声を上げてペペロンチーノに詰め寄るように確認する。

「パパラッチと言えば、ダンガを牛耳るあの者の組織の1つ?」
「然り、しかも、どうやら、あの者がバックにいると分かったうえで暗に挑発もしております」

 2人はその話を聞いて目を剥くが、その瞳に僅かな希望を宿し始める。

「それだけではありません。彼の者の下には、志高い有能な者が募り始めております。代表的なのは、剣聖、灼熱の魔女、そして、彼の者を師事する少年少女、その少年、先日、中止になりましたが冒険者ギルドが主催する大会で貴族のバカ息子が暴走させた魔剣に挑んだのがその少年なのです」
「ああ、その話はこの子達が凄く楽しそうに私にしてくれたので知っております。あの白髪の少年が師事する相手ですか……」

 女性がすぐにも飛び付きたいという思いと戦いながら、リスクとメリットを必死に考えて苦悩するのをペペロンチーノは眺めつつ、数ヵ月前の出来事に思い出す。

 あの時、自分の屋敷に現れた少女2人を思い出していた。

 その少女達に通行許可書を書くキッカケになった自分のカンを褒めてやりたい。その少女の1人がその者と一緒に暮らしていると年長の門番から報告を受けていたのである。

 女性に老人が問いかける。

「どうされますか? お嬢様」

 言ってから、口を押さえる老人を苦笑する女性。

 そして、表情を真面目なモノに切り替えるとペペロンチーノを透き通った迷いのない瞳で見つめる。

 それを見たペペロンチーノは、女性の腹が決まったのを悟る。

「爺、大変心苦しく思いますが、貴方にこの子達を彼の者の所に届けるのを頼んで良いでしょうか?」
「ははっ! この老骨にムチ打ってでも必ず遂行してみせます」

 目を細めて老人を見つめて「ありがとう」と微笑む。

 再び、ペペロンチーノに視線を戻し問いかける。

「彼の者の名は?」
「ユウイチと申します」

 また1つ雄一の物語に最後の希望を願う者が交差する。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

処理中です...