異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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5章 DT、本気みせます!

125話 火の精霊神殿らしいです

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 王都にあるエイビスの商館では、空前絶後の慌ただしさに包まれていた。

 以前、雄一が訪れた時ですら、今までにない忙しさに奔走していた商館ではあったが、既に商館に在籍するメンバーでは現実的な話、処理オーバーに陥っていた。

 それでも辛うじて廻せている原因を見つめると場違いな者、多数のエルフの姿が見えた。

 エイビスの商館にも1,2人のエルフはいたが、一か所の場所でエルフが半数を占めるような場所など王都を全部捜そうがどこにも存在しない。

「ミラー様、今回の御助力大変助かりました。なんとお礼を申し上げれば……」

 エイビスは目の前にあるソファに座りながら、引っ切り無しに入ってくるエルフの者から報告相談を持ちかけられるのを滞りなく捌いていくミラーに同じように書類や報告などに来る者を捌きながら礼を述べる。

 ミラーはエイビスに目を向けずに手も思考も止めずに返事を返す。

「はっはは、そんな水臭い事を言われないでください。同じ楽しみを見出した者同士ではありませんか? エイビス殿」

 そう答えるミラーにエイビスは、「どうか、私の事はエイビスと呼び捨てにして頂きたい」と言ってきたので、ミラーも「それならば、是非、私もそうしてください」と言うとエイビスのほうで少し躊躇する空気が生まれる。

 エイビスからすれば、ミラーは年長者というレベルではなく、悠久の時を生きるエルダ―エルフとこうやって会話をしてるだけでも緊張してしまうのである。

 ただ生きてる時間が長いだけの老害であれば、取るに足らないがミラーはあきらかに別格である。

「もう私は、貴方の事を友と思っていたのですが、独り相撲だったでしょうか? 我らは友、そう悪友でしょう?」

 ミラーがそう言ってきた言葉を聞いたエイビスは一瞬、手と思考が止まりそうになるが意思の力の抑える。

 だが、強靭なエイビスの精神といえど、口の端が上がるのは抑えきれなかった。

「失礼しました。こちらが勝手に遠慮していたようです。まだ見限られてないようでしたら悪友と思わせて頂いてよろしいか?」

 どこか恐れるような声音で言うエイビスにミラーは、嬉しそうに「モチロンッ」と答える。

 互いにタイミングを合わせたかのように、一瞬だけ仕事の手を止めて視線を交わして笑みを浮かべる。

 すぐに仕事モードに切り替わった2人は、仕事を裁きながら話を始める。

「エイビス、補給物資の集まり具合はどうですか?」
「はい、食糧関係は現時点で不足はありません。ですが、医薬品関係の集まり具合がよろしくありませんね」

 眉を寄せるエイビスは頭が痛そうにする。

 戦争が始まるという事で今、王都から田舎のほうに避難しようという動きがそれなりにあり、出ていく者も残る者も医薬品を買い求めて在庫不足に陥っていた。

 そういう意味では食糧も同じように減ってはいるが、元々、ナイファ国は豊かな土地で食糧に困る事がなかった為、そちらでは今のところ混乱は起きてなかった。

 勿論、エイビスは薬を買い占める真似ができる立場にいるが、やり過ぎるとこの戦争が終わった後、内部に敵を作るハメになるかもしれないので慎重に行動していた。

 そんなエイビスの言葉を受けたミラーは1つ頷くと口を開く。

「では、その不足分を私達の方で用立てましょう」

 そう言うとミラーに報告に来ていた者に、「すぐに手配を」と伝えるとそのエルフは「承りました」と言うと部屋から出ていった。

「本当に何から何まで……」
「我らはバックアップなのです。お互いを助け合って、前線に居る者を援護するのが仕事でしょう?」

 エイビスは、ミラーにそう言われて、「そうですね」と答えると違う気がかりを思い出す。

「前線と言えば、彼が戦線を離れてますが大丈夫でしょうか?」
「ああ、確か、子供達を人質に取ったらしいですね。ゲスなやり方ですが、彼を誘き寄せるエサとしては極上ですね」

 エイビスの言葉で思い出したらしく、ミラーは嫌悪を滲ましながら答える。

「私も噂でしか知りませんが、伝えてきた者、ホーエンと申しましたか? どうやら精霊のギフトを受け取った者らしいですが、さすがの彼でも今回は余裕とはいかないのではないでしょうか?」

 そう言ってくるエイビスの言葉にミラーは楽しそうに目を細めて笑う。

「普通なら……ですね。彼は運命を……いえ、彼は簡単に終わるような御仁ではありませんよ」

 そう言われたエイビスであったが、ミラーが言った「運命を……」と言うところに興味が沸いたが、言うのを止めたミラーに問いかけたところ、きっと答えないと判断したエイビスはアプローチを変えて問いかける。

「その渦中とは言いませんが、見える場所ぐらいにはいられるのですかね?」
「御心配なく、私が貴方を巻き込んでみせます。だって、私達は悪友でしょ?」

 そう言うミラーとエイビスは笑い合う。

 先程まで必死さが見られたエイビスの表情に悪戯の時が待ち遠しいといった子供の笑みが浮かぶ。

「では、このような些事は、さっさと済ませて、特等席の用意をするのを楽しませて貰いましょうか」
「お茶とお菓子はこちらで用意しますので、私の分もお願いします」

 エイビスは、嬉しそうに「喜んで」と答える。

 その日を楽しむ為にエイビスは今、目の前にある案件を全力で捌き、ソロバンを弾く。

 そして、エイビスが弾くソロバンのリズムが音楽を奏でるかのように楽しげに部屋を包んだ。





 ナイファ国、王都から馬車で2日といった場所にある火の精霊の神殿では、四大精霊の内の2つの火と水の精霊が結界越しに丸1日、睨みあっていた。

 片方は、豊かなボリュームの長い赤い髪を地面に着かないように長さで調整されたポニーテールにした14~15歳の少女が、椅子に座って惜しげもなくスリットから美しい足を組む事で晒していた。

 髪と同じく、赤いチャイナドレスを着ている。

 無駄に派手に金、銀を使って東洋の竜を刺繍されている胸元は少年のような慎ましさであった。

 そして、余裕を見せつけるかのように肘かけで肘を立てて、小さな顎を拳に添えるように凭れかけていた。

「ざまぁーないわね、アクア。人間の子供の面倒をみてるなんて、プライドはないの? アンタも一応は、四大精霊の一柱なのよ?」
「驕りとプライドを一緒にしないでください。私は自分の意思で楽しんでやっています。そういう貴方こそ、四大精霊としての誇りはないのですか? 精霊が無闇に直接、人に害を与えたら制約に引っかかります。今回の件は、どう説明するつもりですか、アグート?」

 青い髪のボブカットの少女、アクアは、普段のニットワンピース姿から、雄一と出会った時のシンプルで髪と同じ色で上品な色合いのチャイナドレスを身に纏っていた。

 アグートは、何を下らない事を、と言いたげな顔をしながら手をヒラヒラさせる。

「説明も何も、アンタを引き寄せようとしたら抵抗にあったから結界丸ごと引き寄せたら着いてきただけよ」
「それを父なる精霊王に説明して納得して貰えると?」

 アクアがそう切り返すと、ピクッと眉を揺らし溜息を吐く。

「そうね、確かに納得はしてくれないかもね。でも、相応の霊気を支払えば済む程度の話よ」

 この場合の霊気とは、信者の祈りが力となり精霊に蓄えられる力、人間で言うところの金である。

 罰金で済むから気にしてない、と言われたようなもののアクアは、ここで初めて表情に怒りが漏れる。

「確信犯ってことね! どうせ、貴方が用事があったのは私でしょう? そう伝えたら、私は逃げずにやってきたわ。相手にして欲しいならしてあげるから、すぐに子供達を元の場所に戻しなさい」

 冷静な表情を維持していたアクアの表情を崩す事ができたのが嬉しかったのか、笑みを浮かべる。

「それは自意識過剰よ。今回は、筆頭信者の願いを聞いてアンタの加護を持つ男を戦場から引き離すのが目的よ。アンタはついで、そう、ついでよ」
「どっちが自意識過剰なのですぅ。赤い馬鹿は、アクアの事を物凄く意識してるのは見てたら誰でも分かるのですぅ。でも、残念だったのですぅ」

 ここに飛ばされてきてから一度も話に加わらなかったシホーヌは、アリア達と同じぐらいの子供達を抱き抱えながら静かな声でアグートに言う。

 ずっとアクアにしか視線をやってなかったアグートは、モブは黙ってろ、と言いたげな目で見つめる。

「アクアは、赤い馬鹿の話なんて一切しないし、思い出す事もなかったのですぅ」

 シホーヌは、アグートが絡む話以外では、という言葉をあえて省いて言う。

 導火線が短いタイプのようで、シホーヌの子供のような挑発に乗り、歯を剥き出しにして顔を赤くする。

 シホーヌの馬鹿に触発されたかのように、子供達は「バーカ、バーカ」と騒ぎ始めてアグートのコメカミに血管が浮き上がる。

 それを見ていたホーエンがやんわりと止めに入る。

「アグート、そうカッカするな。相手は何もできない子供の言う事だ。一応、信者の為という建前は存在しても子供達を巻き込んだのは我らだ。抑えろ」
「だとしても、子供だからこそ、躾は必要よ!」

 アグートは、火の玉を100はあろうかという数を生み出すとニヤリと笑みを浮かべる。

「口の利き方は教えてあげないとね!」

 そう言うと魔法を打ち出す。

 それを見たアクアが、後ろを振り返り叫ぶ。

「怖がらないでっ! こちらに届かないわ」

 アグートが放った火の玉が結界に全弾直撃して煙で視界がゼロになる。

 煙が晴れるのをノンビリとニヤニヤした笑みを浮かべて見つめていたアグートであったが、煙が晴れた先の光景を見て目を剥きだす。

 そこには魔法を打ち出す前と同じ光景があった為である。

 アグートは、勿論、今、程度の魔法では結界が破壊出来ない事はよく理解してた。だから、結界も無事で誰も傷を負っていない事は予想外でもなんでもなかった。

 だが、煙が晴れた先にアグートを恐れた目で見たり、泣いている者が1人としていなかったのである。

 アクアとシホーヌが恐れてないのはいい。結界が壊れないと分かっていただろうし自分の感情をある程度制御できる。

「どうして、どうしてなのよ! 怖かったでしょ? 怖かったはずよ。なんで何もなかったような顔をしてるの」

 激情に流されるがままに叫ぶアグートを残念そうにアクアは見つめるが何も語らない。

 そんななか、子供達の中から1人の男の子が出てくる。

「お前らなんか恐れるかっ! 威張ってられるのもユウイチ父さんが来るまでなんだからな!」

 その男の子は、ティファーニアが連れてきた、一番年長の男の子のバッツであった。

 バッツの言葉に触発されるかのように他の子供達も、雄一を父と呼び、声を上げる。

 父を、親を知らずに育ったこの子供達にとって雄一は絶対的な存在である。

 雄一が居れば、雄一がきっと助けに来てくれると心から信じ切っているのである。
 だから、訳が分からないところに飛ばされて1日経過しようともうろたえたりせず、ジッとおとなしくしていた。

 そんな啖呵を切ったバッツの肩に手を置く少女がアグートを見つめる。

「いい加減にしてくれないかしら? 貴方の事情に巻き込まれただけでも迷惑なのに、先生が来るまでぐらいおとなしくできないのかしら? これが火の精霊なんて幻滅もいいところよ」

 そう言った少女、ティファーニアは、アクアを見つめる。

「本当に水の精霊だったんですか?」
「そうですっ! やっと信じてくれましたか!」

 と嬉しそうにアクアが胸を張ってくるが、無情にもティファーニアは「全然、まったく」と笑顔全開で言われて、アクアは項垂れる。

 その様子をいつものようにプップゥーと笑うシホーヌの姿もあり、北川家の面子はいつも通りの空気を纏う。

 それをワナワナと手を震わせて見つめるアグートは、完全に放置された事を知り、屈辱に身を震わせる。

「アグート、こちらの負けだ。だいたい、あの者が来るまではおとなしくしておくという約束を破ったのはこちらだ。弁えろ」

 ホーエンにまで諭されて切れたらしいアグートは、怒りの形相で手を翳して力を行使始める。

 やれやれ、と初めは見ていたホーエンであったが、集め続ける力がどんどん大きくなり、訝しく見つめているとアグートの真意に気付く。

「馬鹿者、結界を破壊する気か! この者らの約束だけではなく、我らの信者との約束も反故する事になるぞ!」

 それに気付いたシホーヌが、「いけないのですぅ! アクア」と声をかけると2人で結界の強化を始める。

「大丈夫よ、ホーエン。信者との約束は守れるわ。あの男はもうこちらに向かってるはず、既に引き離すという約束は守られてる」

 溜めに溜めた力を放とうとするのを止めようとしたホーエンが、何かに気付き上空を見つめる。

 黒い鳥が見える。

 だが、明らかにおかしいと気付く。

 あれだけ離れた位置にあるのに縮尺がおかしいぐらいに大きい。

 徐々に大きくなってくるとその黒鳥の上に人らしき姿が見えた。

「私を馬鹿にした事をあの世で後悔してらっしゃい!」

 そうアグートが叫ぶのを聞いた時、止めようとしてた事を思い出して視線を戻すが目を向けた時点で既に火球は放たれた後であった。

 すると、風斬り音がする。

 建物を飲み込むかという火球と比べると酷く小さい黒い塊が突っ込む。突っ込んだと同時に火球は切り裂かれる。

 真っ二つに切り裂かれた火球の小爆発で起きた風で縛っていた髪が前にきたのを後ろに戻す少年に睨まれる。

 睨まれたアグートは、短い悲鳴を上げて後ずさる。

 それを見つめていたホーエンも腹にズシとくる威圧に苦笑いを浮かべる。

 その少年の後ろから少年に声をかける者達がいた。

「ユウイチ、遅いのですぅ! 待ちくたびれたのですぅ!」
「お待ちしておりました。主様」

 シホーヌとアクアの傍では子供達が、やってきた雄一に喝采を送る。

 振り返った雄一は、「遅くなってスマン」と優しげに笑みを浮かべる。

「思ったより、早く来たな」

 そう声をかけたホーエンは、そちらに顔を向ける雄一を見て、「良い面構えだ」と笑みを浮かべる。

「覚悟は決まったか? 決まってなくても待ってやらないがな!」

 そう言うと雄一は巴をホーエンに突き付けた。
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