184 / 365
6章 DT、出番を奪われる?
163話 ややこしい事になってきたようです
しおりを挟む
一夜明けた、次の日、レイア達は宿屋の1階の食堂兼酒場で朝食を頂いていた。
レイアは昨日から機嫌が悪いままで唇を尖らせ、スクランブルエッグを突っつきながら「マズ……」と言いかけたところでアリアにモーニングスターの柄で殴られていた。
「ユウさんやテファ姉さん、アンナ達と一緒に考えない。あれと比べて美味しかったら、村じゃなく、街で店を開いてる」
レイアの耳を引っ張り、口を寄せて宿屋の女将に聞かれないように配慮した。
アリアの手を払ったレイアが、顔を真っ赤にしてモーニングスターを指差す。
「普通、そんな固いヤツで殴るか? アタシの頭が悪くなるだろうがっ!」
「そういうセリフは頭の良い時期があって初めて言える」
宿の女将には配慮するが身内、特に姉妹であるレイアには無礼講なアリアであった。
アリアの切れ味抜群の言葉というデンプ○ー・ロールを食らったレイアはグロッキー寸前に追い込まれる。
それを見ていたダンテは震える。
軽い女性恐怖症になりそうなダンテだが呪文のように「おかしいのは家の女の子だけだ」と唱える。
グロッキーなレイアも震えるダンテも見えている素振りをしないスゥが食事を終え、お茶を一口飲むと話し出す。
「調べ出す出発点として、私が考えるにゴブリンの目撃者に話を聞きに行くか、村長の身辺調査をするか、のどちらかだと思うの」
「んっ、私は、村長の身辺調査を推す」
スゥの言葉に同意しつつ、アリアが考える優先順位を伝えてくる。
現実逃避から復帰したダンテも、
「僕もアリアの意見と同じで村長の身辺調査かな?」
「はぁ? なんでそんな面倒臭い事するんだ? 目撃情報を聞きながら、新しい情報を確認してゴブリン撃破、簡単なお仕事じゃ?」
呆れるように溜息を吐くレイアがそういうとミュウも頷く。
ミュウは間違いなく頭を使うより力技に訴えたいだけだが、レイアの残念ぶりには他の面子は頭を抱える。
「ねぇ、アリア。僕が思うにだけど……」
「全部言わなくても分かった。次からは気を付ける」
あのレイアの言動を全てをアリアのせいにする気はないが、やっぱり叩き過ぎてるのじゃないかとダンテは思った。
それについてはアリアも同じように思ったようで重い溜息吐く。
「レイア? 確かに先に目撃情報を集めるのは悪くはないの。でも昨日、貴方も言ってたように場合によっては、村長の罠の可能性を否定できないの」
「罠なんて噛みちぎってしまえばいい!」
迷いもなくドヤ顔するレイアの脛をアリアはつま先蹴りをする。
だが、蹴りの強化で脛を鍛えているレイアの防御力は高く、レイアを驚かせる事しかできなかったのにアリアはダメージを負う。
涙目でつま先を摩るアリアに替わりダンテが説明する。
「そんな事ができるのはユウイチさんぐらいだよ。これは仮の話だけど、村長が一枚噛んでいるなら冒険者がのこのこ行ったら返り討ちにできる算段があるという事だよ。だって、その準備もできてないのに依頼なんて出さないよ」
「アタシ達は、ただの冒険者じゃないっ!」
いきり立つレイアをジッと見つめるスゥは告げる。
「そう、私達は冒険者じゃない、良く言って、冒険者見習なの」
スゥの言葉にレイアは二の句が告げられなくなる。
そんなレイアに嘆息するとスゥは続ける。
「そんな私達が考えなしに動いて失敗するとする。きっとコミュニティの誰かが尻拭いにやってくるはずなの。冒険者ですらない私達がコミュニティの名を傷つけ貶める結果になるの」
「きっと、私達のミスだから、ホーラ姉さん、テツ兄さん、もしくは、ユウさんが出張る」
尻拭いをその3人がする事をアリアに示唆されたレイアはグゥの音も出ないようで黙り込む。
ミュウも弱ったように鳴きながら、「それは困る」と項垂れる。
「私達は、ユウ様の「また今度」という言葉を無視してここにいる。いい加減は許されないの。最善を尽くしての失敗なら諦めは着く、でもレイアのように行き当たりばったりで失敗したら、ユウ様の前にどんな顔で出ていけばいいの?」
レイアもミュウも黙り込み、重い空気が生まれる。
スゥ達も失敗できないという思いから、強く言い過ぎた事に後悔が首をもたげてくる。
その重い空気を払うように手を叩く音がする。ニッコリと笑ったシホーヌである。
「ユウイチ達はきっとコミュニティの事はたいして気にしないのですぅ。勿論、お説教はするとは思うですぅ。でも……」
「ええ、そうですね。きっと主様は、貴方達が無事かどうかのほうを心配されますよ。だから、石橋を叩くのを面倒と思わず、丁寧に行きましょう。なにせ、これが貴方達の初討伐依頼なんですよ?」
シホーヌの言葉にアクアが繋ぎ、子供達に笑いかけ、「依頼完了して笑って帰るのですぅ」と肩肘張らないシホーヌの言葉が贈られる。
そんなユルそうな2人を見て、肩の力が抜けた子供達は笑みが戻る。
スゥはレイアに向き合う。
「ごめんなさいなの。依頼を無事達成しなくちゃ、と思う気持ちと、あの村長が怪しくてキツイ事を言っちゃったの」
そう言って頭を下げるスゥに慌てたレイアも焦りながらも言葉を話す。
「いや、アタシも考えなしだった。ごめん、少しは考えるように気を付ける」
素直に謝るレイアを優しい目で見つめるアリアとホッとした顔を見せるダンテ。
そんなレイアとスゥの間に立ち、訳知り顔で腕を組みながら頷くミュウに3人の少女の瞳が集中する。
「「「ミュウも反省しなさい」」」
矛先が自分にきて慌てたミュウは辺りを見渡しながら弱った声で鳴く。
そして、妥協するような顔をするとダンテの後ろへと逃げ込む。
「がぅぅ……頑張れ、だ、ダンテバリアっ!」
どっかで見たような事を実行する。駄目な事はすぐに真似をするミュウは3人の怒りが過ぎるのを耐えるように目を瞑る。
ダンテは、困った笑いを浮かべる。
レイア達は、物凄く見覚えがあり、呆れを通り過ぎて、良く分からないが許せたらしく溜息を吐いて、この話はこの辺りで終わらせる事にする。
「それで、最初はどうする?」
レイアがスゥとアリアを見つめて問うと顎に手をやったスゥが辺りを見渡しながら答える。
「丁度、私達がいる場所、この場所柄、きっと情報が集まり易いと思うの。その大半の噂話などを知ってると思う人から聞いてみるの」
「宿の女将さん」
そうアリアが答えると頷くスゥが、「すいませ――ん!」と大きめの声を上げると奥から宿の女将が出てくる。
少しばつの悪そうな顔をして出てくる。
「すまないねぇ。盗み聞きをする気はなかったんだけど途中から聞いてしまったよ」
申し訳なさそうに素直に言ってくる宿の女将にどういう反応をしたらいいか困った子供達が顔を見合せながら苦笑する。
「いえ、僕達も結構大きい声で言ってましたから仕方がないですよ」
代表でダンテが気にしないでくださいと伝える。
「なら、だいたいの事情は伝わってると思うの。知ってる事を教えて欲しいの」
聞かれてた事は説明が省けたとプラス思考に働かせたスゥは単刀直入に聞く。
そのスゥの胆力に呆れたらいいのか笑えばいいか悩むような顔をする宿の女将は諦めたように説明を始める。
「今回の依頼の発端になったのは、多分、依頼書にも書かれてるだろうけど村の近く、北の海辺の洞窟にゴブリンの姿を見つけた事から始まってねぇ」
宿屋の女将がそういうとアクアの眉が寄る。だが、それに気付いたのはシホーヌのみで他の面子は誰も気付かなかった。
そんなアクアを放置して話は続く。
「それを発見された人は?」
「ゼペット爺さんといってね。洞窟と反対側の南の外れで住んでるよ」
アリアの質問に宿屋の女将は答えてくれる。そして、その時の事は直接、ゼペット爺さんに聞いてくれ、と言われる。
もう1つ聞きたい事があるが、村の人間には答えにくい事だと思い、躊躇するアリアとスゥとダンテの姿を見た宿屋の女将はどことなく諦めを感じさせる空気を纏う。
アリアとスゥはダンテに目配せをする。
慌てた様子のダンテが左右を見渡し、自分を指差すと2人に頷かれて狼狽して見せる。
そんなダンテをジッと見つめる2人の圧力に負けたダンテが項垂れながら、宿屋の女将に質問する。
「えっと、村長の事で知ってる事を話して頂けませんか? 無理ですか? じゃ、しょうがな……」
逃げ腰なダンテの背中をアリアとスゥが手で叩いてカツを入れる。
涙目になるダンテに苦笑した宿屋の女将は溜息を吐いて笑みを浮かべる。
「いいさ、いいさ。アタシが知ってる事は教えてあげる、と言ってあげたいんだけど、それほど村長の事を知ってる訳でもないんだよ」
「どうしてですか?」
首を傾げるダンテの言葉に宿屋の女将は思い出すように天井に視線を向ける。
「今の村長がその席に着いたのは3か月前で、この村に来てからでも半年程度で先代の村長の遠縁という事しか知らなくてねぇ」
「なんでそんな人が村長に?」
眉を寄せて疑わしいという思いを珍しく表情に浮かべたアリアが問う。
問われた宿屋の女将は頬に手を添えながら、溜息を零す。
「さあねぇ。ただ、先代の遺書のようなモノが発見されて、自分が死んだら村長を今の村長にという指名がなされたのさ」
「それに反対する人は出なかったんですの?」
考え込むようにするスゥが宿屋の女将に質問する。
「いたさ、いきなりやってきた男がいきなり村長だ、と言われて受け入れるほうがおかしい。何かを村にもたらした訳でもない男が村長と認める訳がなかった。でもね……」
話の流れがキナ臭くなり、アリアとスゥは表情を硬くし、ダンテは冷や汗を流す。
レイアは話に着いて行けなくなりつつあり、隣にミュウに「分かるか?」と問いかける。
ミュウは腕を組んで頷く。
そして、「大丈夫」と呟きながらレイアから視線を逃がす。
それを見ただけで、レイアでも分かった。大丈夫の後に、分かってないが続くと。
「次々と反対した人の行方が分からなくなってねぇ」
宿屋の女将の話では、最初は若い夫婦で喧嘩を良くするがおしどり夫婦と評判だった旦那が行方不明になり、昼を過ぎても帰ってこなくて嫁が騒いだそうである。
当初は喧嘩して旦那が家出したんじゃないかと村の者達で笑いあったが、次の日にも姿が見えず、3日目になって村人総出で捜したが結局見つからなかったそうである。
それから、また1人、また1人と反対していた者達の行方が分からなくなったそうである。
「それやったの今の村長だろっ!」
そう言い募るレイアに辛そうな顔を見せる宿屋の女将を見たアリアが前のめりになってるレイアを引っ張って座らせる。
「ごめんね、証拠もないのに憶測では口にする訳にはいかないのよ。私はこれからもこの村での生活があるんでねぇ」
そういう宿屋の女将は、話はこれで終わりと言う空気を出すと背を向ける。
宿代をテーブルに置いたアクアが立ち上がる。
「宿代、ここに置いておきます。お話して頂いて有難うございます。貴方から話を聞いたとは吹聴しませんのでご安心を」
そう言うとシホーヌとアクアは子供達に出発を促す。
ブゥ垂れるレイアに苦笑しながら宿を出ようとした時、宿屋の女将が後ろから声をかけてくる。
「ゼペット爺さんは先代の村長の親友だったよ」
つまり、ゼペット爺さんに聞けば何か分かるかもしれないと伝えてきてくれる。宿屋の女将が取れるギリギリのラインまで攻めてくれた。
振り返ったレイアは宿屋の女将に笑みを弾けさせる。
「ありがとっ! またご飯食べにくるなっ!」
さっきはマズイと言おうとしてた癖にとアリアは思うが、それを胸に仕舞うとレイアの背中を押して宿を出て、南に住んでいるというゼペット爺さんを訪ねる為に歩き出した。
レイアは昨日から機嫌が悪いままで唇を尖らせ、スクランブルエッグを突っつきながら「マズ……」と言いかけたところでアリアにモーニングスターの柄で殴られていた。
「ユウさんやテファ姉さん、アンナ達と一緒に考えない。あれと比べて美味しかったら、村じゃなく、街で店を開いてる」
レイアの耳を引っ張り、口を寄せて宿屋の女将に聞かれないように配慮した。
アリアの手を払ったレイアが、顔を真っ赤にしてモーニングスターを指差す。
「普通、そんな固いヤツで殴るか? アタシの頭が悪くなるだろうがっ!」
「そういうセリフは頭の良い時期があって初めて言える」
宿の女将には配慮するが身内、特に姉妹であるレイアには無礼講なアリアであった。
アリアの切れ味抜群の言葉というデンプ○ー・ロールを食らったレイアはグロッキー寸前に追い込まれる。
それを見ていたダンテは震える。
軽い女性恐怖症になりそうなダンテだが呪文のように「おかしいのは家の女の子だけだ」と唱える。
グロッキーなレイアも震えるダンテも見えている素振りをしないスゥが食事を終え、お茶を一口飲むと話し出す。
「調べ出す出発点として、私が考えるにゴブリンの目撃者に話を聞きに行くか、村長の身辺調査をするか、のどちらかだと思うの」
「んっ、私は、村長の身辺調査を推す」
スゥの言葉に同意しつつ、アリアが考える優先順位を伝えてくる。
現実逃避から復帰したダンテも、
「僕もアリアの意見と同じで村長の身辺調査かな?」
「はぁ? なんでそんな面倒臭い事するんだ? 目撃情報を聞きながら、新しい情報を確認してゴブリン撃破、簡単なお仕事じゃ?」
呆れるように溜息を吐くレイアがそういうとミュウも頷く。
ミュウは間違いなく頭を使うより力技に訴えたいだけだが、レイアの残念ぶりには他の面子は頭を抱える。
「ねぇ、アリア。僕が思うにだけど……」
「全部言わなくても分かった。次からは気を付ける」
あのレイアの言動を全てをアリアのせいにする気はないが、やっぱり叩き過ぎてるのじゃないかとダンテは思った。
それについてはアリアも同じように思ったようで重い溜息吐く。
「レイア? 確かに先に目撃情報を集めるのは悪くはないの。でも昨日、貴方も言ってたように場合によっては、村長の罠の可能性を否定できないの」
「罠なんて噛みちぎってしまえばいい!」
迷いもなくドヤ顔するレイアの脛をアリアはつま先蹴りをする。
だが、蹴りの強化で脛を鍛えているレイアの防御力は高く、レイアを驚かせる事しかできなかったのにアリアはダメージを負う。
涙目でつま先を摩るアリアに替わりダンテが説明する。
「そんな事ができるのはユウイチさんぐらいだよ。これは仮の話だけど、村長が一枚噛んでいるなら冒険者がのこのこ行ったら返り討ちにできる算段があるという事だよ。だって、その準備もできてないのに依頼なんて出さないよ」
「アタシ達は、ただの冒険者じゃないっ!」
いきり立つレイアをジッと見つめるスゥは告げる。
「そう、私達は冒険者じゃない、良く言って、冒険者見習なの」
スゥの言葉にレイアは二の句が告げられなくなる。
そんなレイアに嘆息するとスゥは続ける。
「そんな私達が考えなしに動いて失敗するとする。きっとコミュニティの誰かが尻拭いにやってくるはずなの。冒険者ですらない私達がコミュニティの名を傷つけ貶める結果になるの」
「きっと、私達のミスだから、ホーラ姉さん、テツ兄さん、もしくは、ユウさんが出張る」
尻拭いをその3人がする事をアリアに示唆されたレイアはグゥの音も出ないようで黙り込む。
ミュウも弱ったように鳴きながら、「それは困る」と項垂れる。
「私達は、ユウ様の「また今度」という言葉を無視してここにいる。いい加減は許されないの。最善を尽くしての失敗なら諦めは着く、でもレイアのように行き当たりばったりで失敗したら、ユウ様の前にどんな顔で出ていけばいいの?」
レイアもミュウも黙り込み、重い空気が生まれる。
スゥ達も失敗できないという思いから、強く言い過ぎた事に後悔が首をもたげてくる。
その重い空気を払うように手を叩く音がする。ニッコリと笑ったシホーヌである。
「ユウイチ達はきっとコミュニティの事はたいして気にしないのですぅ。勿論、お説教はするとは思うですぅ。でも……」
「ええ、そうですね。きっと主様は、貴方達が無事かどうかのほうを心配されますよ。だから、石橋を叩くのを面倒と思わず、丁寧に行きましょう。なにせ、これが貴方達の初討伐依頼なんですよ?」
シホーヌの言葉にアクアが繋ぎ、子供達に笑いかけ、「依頼完了して笑って帰るのですぅ」と肩肘張らないシホーヌの言葉が贈られる。
そんなユルそうな2人を見て、肩の力が抜けた子供達は笑みが戻る。
スゥはレイアに向き合う。
「ごめんなさいなの。依頼を無事達成しなくちゃ、と思う気持ちと、あの村長が怪しくてキツイ事を言っちゃったの」
そう言って頭を下げるスゥに慌てたレイアも焦りながらも言葉を話す。
「いや、アタシも考えなしだった。ごめん、少しは考えるように気を付ける」
素直に謝るレイアを優しい目で見つめるアリアとホッとした顔を見せるダンテ。
そんなレイアとスゥの間に立ち、訳知り顔で腕を組みながら頷くミュウに3人の少女の瞳が集中する。
「「「ミュウも反省しなさい」」」
矛先が自分にきて慌てたミュウは辺りを見渡しながら弱った声で鳴く。
そして、妥協するような顔をするとダンテの後ろへと逃げ込む。
「がぅぅ……頑張れ、だ、ダンテバリアっ!」
どっかで見たような事を実行する。駄目な事はすぐに真似をするミュウは3人の怒りが過ぎるのを耐えるように目を瞑る。
ダンテは、困った笑いを浮かべる。
レイア達は、物凄く見覚えがあり、呆れを通り過ぎて、良く分からないが許せたらしく溜息を吐いて、この話はこの辺りで終わらせる事にする。
「それで、最初はどうする?」
レイアがスゥとアリアを見つめて問うと顎に手をやったスゥが辺りを見渡しながら答える。
「丁度、私達がいる場所、この場所柄、きっと情報が集まり易いと思うの。その大半の噂話などを知ってると思う人から聞いてみるの」
「宿の女将さん」
そうアリアが答えると頷くスゥが、「すいませ――ん!」と大きめの声を上げると奥から宿の女将が出てくる。
少しばつの悪そうな顔をして出てくる。
「すまないねぇ。盗み聞きをする気はなかったんだけど途中から聞いてしまったよ」
申し訳なさそうに素直に言ってくる宿の女将にどういう反応をしたらいいか困った子供達が顔を見合せながら苦笑する。
「いえ、僕達も結構大きい声で言ってましたから仕方がないですよ」
代表でダンテが気にしないでくださいと伝える。
「なら、だいたいの事情は伝わってると思うの。知ってる事を教えて欲しいの」
聞かれてた事は説明が省けたとプラス思考に働かせたスゥは単刀直入に聞く。
そのスゥの胆力に呆れたらいいのか笑えばいいか悩むような顔をする宿の女将は諦めたように説明を始める。
「今回の依頼の発端になったのは、多分、依頼書にも書かれてるだろうけど村の近く、北の海辺の洞窟にゴブリンの姿を見つけた事から始まってねぇ」
宿屋の女将がそういうとアクアの眉が寄る。だが、それに気付いたのはシホーヌのみで他の面子は誰も気付かなかった。
そんなアクアを放置して話は続く。
「それを発見された人は?」
「ゼペット爺さんといってね。洞窟と反対側の南の外れで住んでるよ」
アリアの質問に宿屋の女将は答えてくれる。そして、その時の事は直接、ゼペット爺さんに聞いてくれ、と言われる。
もう1つ聞きたい事があるが、村の人間には答えにくい事だと思い、躊躇するアリアとスゥとダンテの姿を見た宿屋の女将はどことなく諦めを感じさせる空気を纏う。
アリアとスゥはダンテに目配せをする。
慌てた様子のダンテが左右を見渡し、自分を指差すと2人に頷かれて狼狽して見せる。
そんなダンテをジッと見つめる2人の圧力に負けたダンテが項垂れながら、宿屋の女将に質問する。
「えっと、村長の事で知ってる事を話して頂けませんか? 無理ですか? じゃ、しょうがな……」
逃げ腰なダンテの背中をアリアとスゥが手で叩いてカツを入れる。
涙目になるダンテに苦笑した宿屋の女将は溜息を吐いて笑みを浮かべる。
「いいさ、いいさ。アタシが知ってる事は教えてあげる、と言ってあげたいんだけど、それほど村長の事を知ってる訳でもないんだよ」
「どうしてですか?」
首を傾げるダンテの言葉に宿屋の女将は思い出すように天井に視線を向ける。
「今の村長がその席に着いたのは3か月前で、この村に来てからでも半年程度で先代の村長の遠縁という事しか知らなくてねぇ」
「なんでそんな人が村長に?」
眉を寄せて疑わしいという思いを珍しく表情に浮かべたアリアが問う。
問われた宿屋の女将は頬に手を添えながら、溜息を零す。
「さあねぇ。ただ、先代の遺書のようなモノが発見されて、自分が死んだら村長を今の村長にという指名がなされたのさ」
「それに反対する人は出なかったんですの?」
考え込むようにするスゥが宿屋の女将に質問する。
「いたさ、いきなりやってきた男がいきなり村長だ、と言われて受け入れるほうがおかしい。何かを村にもたらした訳でもない男が村長と認める訳がなかった。でもね……」
話の流れがキナ臭くなり、アリアとスゥは表情を硬くし、ダンテは冷や汗を流す。
レイアは話に着いて行けなくなりつつあり、隣にミュウに「分かるか?」と問いかける。
ミュウは腕を組んで頷く。
そして、「大丈夫」と呟きながらレイアから視線を逃がす。
それを見ただけで、レイアでも分かった。大丈夫の後に、分かってないが続くと。
「次々と反対した人の行方が分からなくなってねぇ」
宿屋の女将の話では、最初は若い夫婦で喧嘩を良くするがおしどり夫婦と評判だった旦那が行方不明になり、昼を過ぎても帰ってこなくて嫁が騒いだそうである。
当初は喧嘩して旦那が家出したんじゃないかと村の者達で笑いあったが、次の日にも姿が見えず、3日目になって村人総出で捜したが結局見つからなかったそうである。
それから、また1人、また1人と反対していた者達の行方が分からなくなったそうである。
「それやったの今の村長だろっ!」
そう言い募るレイアに辛そうな顔を見せる宿屋の女将を見たアリアが前のめりになってるレイアを引っ張って座らせる。
「ごめんね、証拠もないのに憶測では口にする訳にはいかないのよ。私はこれからもこの村での生活があるんでねぇ」
そういう宿屋の女将は、話はこれで終わりと言う空気を出すと背を向ける。
宿代をテーブルに置いたアクアが立ち上がる。
「宿代、ここに置いておきます。お話して頂いて有難うございます。貴方から話を聞いたとは吹聴しませんのでご安心を」
そう言うとシホーヌとアクアは子供達に出発を促す。
ブゥ垂れるレイアに苦笑しながら宿を出ようとした時、宿屋の女将が後ろから声をかけてくる。
「ゼペット爺さんは先代の村長の親友だったよ」
つまり、ゼペット爺さんに聞けば何か分かるかもしれないと伝えてきてくれる。宿屋の女将が取れるギリギリのラインまで攻めてくれた。
振り返ったレイアは宿屋の女将に笑みを弾けさせる。
「ありがとっ! またご飯食べにくるなっ!」
さっきはマズイと言おうとしてた癖にとアリアは思うが、それを胸に仕舞うとレイアの背中を押して宿を出て、南に住んでいるというゼペット爺さんを訪ねる為に歩き出した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる