異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

文字の大きさ
252 / 365
8章 DT、海を渡る

幕間 ちゃんと仕事してます

しおりを挟む
 どっかの商人ギルドのカウンターか? と問いたくなるほど客が寄りつかないザガンの冒険者ギルドのカウンターには、お馴染な痩身の糸目の中年がやってきていた。

 勿論、カウンターの向こうの主は死んだ魚の目かと疑うエルフであった。

 エイビスとミラーであった。

「ついに、冒険者ギルドの上層部は勿論、大手コミュニティもユウイチ様達が気になりだしたようですね」
「ええ、丁度、メガボウブ、というコミュニティがしばらく活動休止告知した後に来たユウイチ殿が来た事もあり、メガボウブの再来と騒がれています」

 ミラーは入れ違いで出会う事はできなかったが噂と実績だけを見ると確かに、そう思いたくなるほど、大きな事をやらかしているのが分かる。

 エイビスは休止前にやってきたので、少し人となりを見ていた。

 15~17歳ぐらいの男女集団で10名程で構成されていて、仲が良いのか、悪いのか分からないコミュニティだったとエイビスは語る。

 ただ、金や名誉の為にやっているような空気は一切なかったそうだ。

 なのに、強い。

 まるで、今の雄一達が果たしている依頼の質と量と共に……

「確かに、このコミュニティの不透明さは気になりはしますが、今はいない者達を気にしてもしょうがありません。目の前の問題に対応しましょう」
「ほほう、友、ミラーが問題と言葉にする、これは興味深い」

 おっさん2人顔を突き合わせて笑みを浮かべる。

 興味深いと言いつつもエイビスの顔には心当たりあり、と書いてある。

「大物といえば間違いはありませんが、堕ち行く巨星と呼ぶべきでしょうか? 今はギリギリ、ザガン1位のコミュニティと名乗ってられますが、明日もそうという保証の限りではない例のあのコミュニティです」

 ミラーは机の引き出しから2通の手紙をカウンターに置く。

 その両方を手にしたエイビスは宛名を見ると片方は、自分宛てと雄一、北川コミュニティ代表宛て、なのを確認する。

 雄一のを懐に仕舞い、手紙の封をペーパーナイフで開封する。

 取り出した紙を開くと、目を走らせて読み終えると目の前のミラーに差し出す。

 ミラーは読んでも? とも聞く野暮をせずにエイビスのように一読すると溜息を吐く。

「あのコミュニティは破滅願望でもあるのですか? 碌に冒険者ギルドの活動をしてないから凄い勢いでコミュニティから人が出て行ってるというのに……」
「まあ、相当な高額ですが、ユウイチ殿の食指はピクリとさせる事はできないでしょうな。このまま引き合わせたら喧嘩別れも見えるので、手紙を渡す前に私が一度会ってきましょう」

 例え、堕ち行く巨星だとしても、今、雄一達が求める情報の開示をさせるだけの力はこのコミュニティにはある。

 だが、エイビスは考える。

 会いに行って出し惜しみをするような相手であれば、スッパリと断ろうと。

 もう、既に雄一達がこなした仕事で得たモノをフル活用して、後、1カ月もあれば独力でもその情報を開示させられるとエイビスは睨んでいた為であった。

 そう、エイビスはまだ2週間も経ってないのに各方面の根回しから、最大評価を受けれるように、常に求められている所謂、流行のような相手を見事に選び、雄一に仕事を斡旋するようにミラーに伝えていた。

 勿論、雄一達の腕があって初めて出来ている事なのは間違いないが……

 少しでも早いに越した事はないが、要らない揉め事を抱えるのは避けたいとエイビスは考えていた。

「気を付けてください。あのコミュニティのトップのノースランドは何を考えているか分からない所があります」
「勿論です。まだまだ楽しみが盛り沢山過ぎて目が廻りそうな状況が出来上がっているのに下手は打ちませんよ」

 再び、顔を見合わせて笑みを浮かべる、おっさん2人。

 エイビスは、気軽に手を上げて、身を翻す。

「では、散歩ついでに行ってくるとしますよ」

 それを見送るミラーは、エイビスを見送りながら呟く。

「こういう別れ方は、受付してる者の間では、死亡フラグですが、まあ、大丈夫でしょう。私達は愛されっ子世に憚る、と申しますし」

 そう言うとミラーは次の雄一に手渡す依頼の選別作業に専念し始めた。





 エイビスは、冒険者ギルドの程近い場所にある豪邸を目指して歩き始める。

 立派な城門の前にやってくると両端に構えてた者が近づいてくる。

「こちら、コミュニティ、ソードダンスに何か御用でしょうか?」

 目は疑ってる事を隠していないが、エイビスが商人だと判断して一応、丁寧な言葉で対応してくる門兵。

 そう言われたエイビスは懐から取り出し、先程読んでいた手紙の差し出し人を見せながら答える。

「頂きましたお手紙の内容を拝見して、直接お聞きしたい事ができたので伺った次第です」
「ん? こ、これはマスターの筆跡に刻印。申し訳ありませんでした! 中にご案内します」

 手紙の封にされている刻印と差し出し人の名前の筆跡を見た門兵は背筋を伸ばしてエイビスを歓迎する。

 門が開かれ、話しかけてきた方の門兵がそのまま案内してくれるようだ。

 中に入るとロビーのような場所にソファがいくつかある。

 そこを指し示される。

「こちらで少々お待ち下さい。あっ、失礼ですが、お名前をお聞きするのを忘れておりました」
「お気になさらず、北川コミュニティ専属ブローカーのエイビスです。以後、お見知りおきを」

 柔らかい笑みを浮かべて礼をするエイビスに、慌てて礼を返す門兵。

「すぐにご予定の確認をして参りますので、お待ちください」

 もう一度、一礼をすると門兵は早足で奥へと姿を消した。



 それから10分程経った頃。

 エイビスは、ソードダンスのロビーでメイドが入れてくれたお茶を飲んでいると先程の門兵がメイドを一人連れて戻ってくる。

「すぐにお会いになられるようです。後の案内はこのメイドが案内を引き継ぎますので」

 それに頷いてみせるエイビスは立ち上がる。

 立ち上がったエイビスに行き先を示すようにメイドが手を奥へと向ける。

 そのメイドは茶髪で顔もスタイルも平凡そのもので特徴がこれといって見当たらない少女であった。

 だが、奥に行くと突然キャラが変わったようにゴシップ好きの少女のように目をキラキラさせたのをエイビスに見せる。

 再び、顔を前に向けるとエイビスに話しかけてくる。

「お客様、お客様。今日は何のお話で来られたのですか?」
「はっはは、只のお仕事のお話ですよ」

 エイビスは笑みを張り付けたまま答える。

「どんなお仕事ですか?」
「そんな事、メイドの君が知ってどうするんです?」
「メイドというのは、毎日が単調で話のタネに飢えてるんです……ちょっとだけ協力してくれませんか?」

 そう言われたエイビスは、「ああ、そういう話は聞きますね?」と笑みを浮かべ続ける。

 メイドは可愛らしく舌を出して照れたらしく少し頬を朱に染める。

「少しだけでいいんです。このお屋敷の外には決して洩らしませんから!」
「そうですねぇ、私もそれほど分かってる事が少ないから、こうしてやってきてますんで……」
「またまた、お客さん、焦らすのが上手なんだから……」

 メイドが後ろを振り返るとエイビスの姿はなく、歩いていた足を止める。

 するとメイドが向けていた顔を反対側から話しかけられる。

「そうかな? とは思いましたが上手く嵌り出したと油断した瞬間に忍び足になってましたよ。貴方は密偵、ああ、こちらでは総括でアサシンと呼んでましたか?」

 驚いたメイドは飛び跳ねるように前に飛び出すと懐からナイフを取り出して振り返る。

 そこまで行動してしまい、やってしまった、と唇を噛み締める。

「能力はありそうですが、実務経験不足というところでしょうか。ああ、勘違いしないでくださいね? 貴方がここに忍び込んでいるアサシンだろうが、私を試す為にノースランド殿が遣わせたアサシンでもどうでも良いのです」

 そんな些事はそちらで、お好きにと、あっさりと言い放つエイビス。

 エイビスの反応に目を白黒させるメイド。

「私は、ノースランド殿の下に連れて行ってくれさえすれば良いですので」

 メイドは疑わしいと思わなくもないが、ここで暴れる訳にはいかない理由が双方の立場でもあるようでエイビスの言葉を信じてナイフを仕舞う。

 今度は黙って案内を開始してくれたので、エイビスも黙って着いていく。

 大きな扉の前に到着する。

 全てが終わったという顔をするメイドにエイビスは声をかける。

「もし、君が今いる場所に今回の事で居辛くなるというなら、大陸を渡ってナイファに来ると良い。君は本当に経験さえ積めば使える子だと思うよ」

 駆け引きといった経験はダメダメだが、不意に出てしまうほど忍び足を鍛え、尚且つ、ヤケッパチにならないで考える事を放棄しなかった事を評価した。

 メモ帳に書き込んでいき、千切るとメイドの少女に手渡す。

「それを持って、そこに書かれてる場所に行けば、雇ってくれる。毎日が充実して、昨日の事など、どうでも良くなる事受け合いですよ」

 二コリと笑うエイビスは「一度、考えてみてください」と伝えるとメイドの少女がメモをジッと見つめた後、一礼して去っていく。

 それを見送るエイビスの笑みが三日月を描く。

 ここに新たな被害者、ガッツの部下が増える事が内定した瞬間であった。

 メイドの少女から前の大きな扉に目を向ける。

 そして、扉に手をかけて押しながらエイビスは呟く。

「さて、何が待ってるのでしょうか。鬼が出るか蛇が出るか……少なくともユウイチ殿ほど逸材は出てこないでしょうな。あの人が一番楽しい」

 やはり、エイビスの価値基準は普通では計れない領域らしい。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

処理中です...