異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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10章 DT、マリッジブルーを味わう

271話 この人、女王だったんだな、と思ったらしいです

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 テキパキと飲み物を配っていくミレーヌは空いてる席にアイスティを置くとフゥと溜息を吐きながら座る。

 驚きから立ち直れないアリア達の中でたいして驚いてないミュウが声をかける。

「スゥママ、なんでココにいる?」
「それはねぇ、ユウイチ様と一緒に暮らす為に社会体験させて貰ってるの」

 先程、テキパキと配膳した素振りを見せながら、「様に成ってたでしょ?」と聞くミレーヌにミュウはオレンジジュースを飲みながら頷く。

 口をパクパクさせていたスゥが復帰すると本当に噛みつくように問いただしてくる。

「お母様! 女王業はどうしたの!? というより、ここで働いていてどうして騒ぎにならないの?」
「王位はゼクスに譲ってきたしぃ、ここに来るお客さんは「やっと来たの? いい加減DTに引導渡してあげて!」と懇願されて大歓迎されたわよ?」

 ウフフ、と笑う母親、ミレーヌにも頭が痛いスゥであるが、ダンガの住人の雄一に対するフレンドリーさの半端なさにも頭を抱える。

 雄一の傘下に入れば、相手が女王は勿論、四大精霊獣であろうとも隣人に接するような気軽さが今のダンガにはあった。

 例えば、北川家の三大疾病ならぬ、三大問題集団の一角、マッドクリエイターと呼ばれるロットの婚約者のアンとシキル共和国の前身の王族の血を引くイーリンがいる。
 この2人が興に乗ると色々やらかし実験棟が吹っ飛ぶ事件があった時ですら、近隣住民は「ああ? 北川さんのとこか」と笑うだけで終わり、日常に戻っていく。

 何があっても雄一のところでは不思議ではなく、自分達でちゃんと片付けるだろうと気にすらしない。

 よくよく考えれば、6年前に学校施設ごと消えた事と比べたら驚くに値しないだけかもしれない。

 残る2つは、雄一払いと嘯いて食い逃げを働く『駄目っ子シスターズ+1』と、常識がずれている四大精霊獣(1名、飲酒時のみ)であった。

 アイナなど、売りモノのスープをツマミ食いしようとしたらしいが、滑って中に入ると面倒になったらしく、そのまま煮込まれたそうである。

 ちなみに、そのスープは捨てられたと思われたが実は堂々と「土の精霊獣のエキス入り」と告知され、アイナが鍋の中で寝てるのを確認したのに関わらず、30分で完売するという不思議な出来事があった。

 購入した客層の9割がオッサンだったと記載しておこう。


 それはともかく


「王位を譲ってもゼクスも大変なはず。すぐに城に戻るべき」

 話してる最中にガレットが運んできたドーナツ、ダンテのドーナツを毟り取るアリアはガブリと噛みつく。

 そんなアリアに弱々しく手を伸ばすダンテ。

「ぼ、僕のドーナツ……」
「シッ! 今のアリアに逆らったら危ない。正直、逃げ出したい」

 嫌な汗を掻くレイアはさりげなく自分のドーナツは寄せると腕でアリアの視界から隠す。

 ミュウは観戦モードでオレンジジュース、ドーナツと交互に楽しみながら経過を見逃せないとばかりにジッと見つめる。

「大丈夫よ。国内外は落ち着いているし、ゼクスはしっかりしてるもの。それに、宰相達も頑張るから、と涙ながら手を振って見送ってくれたわ」

 そして、付け加えるようにエイビスが無報酬で知恵も貸すと背中を押してくれたと嬉しそうに言うミレーヌを見る子供達の心は1つになる。


『絶対に楽しんでるな!!』


 きっと今、冒険者ギルドの受付にいるエルフも一枚噛んでるはずである。

 とことん雄一を困らせる事に全力投球な2人であった。

 アイスティの入ったコップの縁を指でなぞりながらダンテを見つめてくるミレーヌは微笑を浮かべる。

「それはそうと、貴方がダンテ君? 本当に男の子には見えないわね。でも、このじゃじゃ馬達を束ねるリーダー役をしてるなんて格好いいわよ?」
「い、いえ、そんな大層な事はしてませんから」

 謙遜しながらも男である事を否定されたような言動にショックを受けるダンテ。

 そんな内情を見抜いたのかミレーヌが楽しそうにクスクスと笑う。

「さっき、ユウイチ様がダンテ君達をペーシア王国に向かわせるのは最初から決まっていたと判断してた続きを聞かせて貰っていいかしら?」

 ダンテに「お姉さんに聞かせてくれる?」と聞くのを傍で半眼で見つめるアリアとスゥが「おばさん」、「お母様」とチクチクと攻撃するが元女王の面の皮は貫通できずに微笑まれる。

 さすがスゥのお母さんだと戦慄を感じるダンテは弱った笑みを浮かべるがミレーヌに促され、続きを話し始める。

「多分なんですけど、ユウイチさんは常に僕達の成長の糧を用意してくれます。戦闘に関しては僕達自身でもまだまだだとは思いますが、自惚れ抜きで同年代の子達と比べれば追随されない経験と下地を作って貰えたと自負してます」

 ダンテの話を両手の指を組んだ上に顎を載せて楽しげにミレーヌは聞く。

 チクチク攻撃していたアリアとスゥも耳を傾け、レイアは既に知恵熱が発生しそうな気配を出していた。

 ミュウは獲物を狙うように隣のスゥが無防備に置くドーナツを見つめ、いつでも飛び出せるように力を溜め出す。

「そこで北川コミュニティの力がまだ及んでいないペーシア王国で力技ではなく正攻法で進む事を経験させ、正攻法でありながら抜け道を見つけ、駆け抜ける逞しさを身につけて欲しいと考えているのでは? というのが僕の考えです」

 ミレーヌの反応を見る為にダンテは相変わらずニコニコさせる顔を見つめる。

 釣られるようにアリア、レイア、スゥが見つめるなか、ミュウはスゥのドーナツにゆっくりと手を伸ばし始める。

「なるほど、それがダンテ君の答えね? 20点♪」

 ミレーヌの答えを聞いた瞬間、ダンテは驚きから思わず、えっ? と呟いてしまう。

 ダンテとて、ミレーヌから満点を貰えるなんて、これっぽっちも思ってなかったがまさか1/5の20点しか貰えないとも思っていなかったからである。

 スゥの肘があたりドーナツが入った皿を移動させて手が止まるミュウ。

 ダンテのように驚くアリア達。

「少し点数から辛過ぎない、おばさん?」
「そんな事ないわよ? お姉さんは優しい点数付けたけど?」

 アリアとの静かな攻防をするミレーヌは朗らかな笑みを浮かべるが良く見れば目尻などに皺が出ないように計算された匠の笑みであった。

 ミレーヌの言で、つまり、本当の点数はもっと低いと言われたダンテは悔しそうに俯く。

 それに気付いたミレーヌはダンテに優しく話しかける。

「ダンテ君の年、そして、貴方達が経験してきた事、一応、報告という形でだいたいの事は知ってるつもりよ? その経験を加味すれば、ダンテ君は良くやってると思う。スゥなんて、もっとダメダメだから」

 ミレーヌに駄目だしされたダンテであったが、ここで黙って終わったら駄目だと思い歯を食い縛る。

 スゥも負けてたまるか、と意気込むようにドーナツに付いて来ていたフォークをテーブルに突き立てる。
 丁度、手を伸ばしていたミュウの手の甲を突き刺すがスゥは気付かないし、ミュウも下唇を噛んで悲鳴を上げるのを耐える。

「残りの80点はどうやったら?」

 悔しい気持ちを飲み込んでミレーヌを見つめてくるダンテを眩しそうに目を細める。

「ダンテ君は、目が届く情報、他人から聞かされた情報を処理するのは良く出来てると思うわ。でも逆に目が届かない情報はまったく把握していないわ」
「お母様、無茶を言い過ぎなの。目が届かない情報を把握なんてできないの」

 ミレーヌの言葉をスゥが反論するがダンテはその言葉の意味を理解しようと頭を回転させる。

 我が娘を適当にあしらいながら、今、得た情報を分解、構築を繰り返すダンテを見つめて、「やっぱり手元にある情報を処理するのは上手いわね」と微笑む。

 ダンテは手の届かないところの情報を自然に精霊から受け取る事で済ませてしまう事があり、見えない所の情報が欲しければ精霊に聞くという習慣があるせいで上手く機能していなかった。

 見えない場所にあるものというのは、何も行けば見えるモノばかりではない。人であろうが精霊であろうが見えないモノを見る、経験が圧倒的にダンテには、いや、アリア達全員に足りてなかった。

 頭を悩ましたダンテだが、難しい顔をして顔を上げてくる。

 その顔を見たミレーヌがクスッと笑ってみせる。

「良く分からないって顔してるわね」
「はい、どうしても纏まらなくて……」

 そう言いながらも考えるのを止めてないらしく眉を寄せている。

 ダンテの真摯な態度には好感を覚えるし、自分の娘の仲間にこういう子がいる事は良かったとも素直に思えるミレーヌは少しだけ先を進む為の指針を示す。

「ダンテ君、計算は答えは一つだけど、物事の答えには1つと限らないのよ?」

 目をパチパチさせるダンテを筆頭にアリア達も目を見開く。

「そんな事ある訳ないの。答えが沢山あったら困るの」
「そうかしら? 例えば、貴方達がここで注文した飲み物。飲み物の種類は1種類で統一しなくちゃならなくなったらどうする?」

 アイスティのコップを持ち上げたミレーヌが揺らして見せてアリア達に微笑む。

「じゃんけんをして勝った人が決める? 多数決で多かったの? みんなの好みの中間にありそうなもの?」

 言葉が出てこないアリア達を覗き込むようにするミレーヌは笑う。

「どれもが正解で不正解。その時の状況などで簡単に答えは変わる。勿論、話術で全員バラバラのモノを注文できるように交渉という考えもあるし、違う店に移動するのも選択肢にあるわ」
「難しい事は分からねぇけど、正しい事をしてたら問題ないんじゃ?」

 知恵熱が出ている疑いがあるレイアが必死に自分の考えを口にしてみる。

 頭を使うのを不得意にするレイアが必死に考えた事を評価するように少し驚いてみせるミレーヌ。

「頑張りは認めるけど、レイアちゃん。正しいも1つじゃないのよ。正義なんて人の数だけあるのだから」

 えっ? えっ? と混乱するレイアはついにキャパオーバーしたようでテーブルに突っ伏す。

 レイアを横目に自分の手の甲を舐めるミュウに気付いて、「この子はマイペースねぇ」と呟いて苦笑する。

 一同を見渡すミレーヌは子供達の背を押すように言う。

「いってらっしゃい。貴方達がペーシア王国に行く価値はあります。ユウイチ様が貴方達に何を見せ、体験して欲しいと思っているか知るだけで意味はきっとあると思いますよ?」

 女王、母としての面を見せるミレーヌの言葉はアリア達に自然に沁み込み、気付けば頷いていた。
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