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11章 DT、見守る愛を貫く
312話 少年、少女の心に触れるらしいです
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「ユウイチ、あの力はなんだ! お前が止めなければ空間まで斬り裂くところだったぞ!」
「俺にもまだ分からない事だらけだ。いくつかピースは手にあるが、それを繋ぐピースだけが足りてない感じだ。だが、凄まじく嫌な感じがする。とんでもない勘違いをしているような……」
雄一が握る拳から血が滴るのに気付いたホーエンが真顔になり、雄一に問いかけてくる。
「その傷はまさか……?」
「ああ、1発目の振り抜いた力を抑えた時にな。油断もあったが正直、手傷を負わされるとは思ってなかった」
2発目の合図に使ったモノを抑えるのは油断なく止めたので怪我は負わなかった雄一であったが、雄一に傷を負わせたのは土の邪精霊獣以来である。
ホーエンの想像以上の力を秘めていたアリア達に驚くのを見て雄一は被り振る。
「この力は制御もできてないが、まだ本来の力から沸き出た結露のようなものだ」
更に驚くホーエンは声も出ないようで固まる。
それを横目で見る雄一は考えに耽る。
今のアリアとレイアの様子から自分達が扱えるタイプの力ではないようだ。母親から継いだ刀剣の巫女としての力は名の通りに誰かに使われて初めて意味があるのだろう。
だが、あの力は誰でも扱えるモノでもないようだ。あの力は雄一には扱えない。あの能力が発現する瞬間まで捉える事ができなかった。
だから、力の強弱ではない。
では、なんだ? と考えていると初めて会った時にこっそりと見たノースランドのスキルで万人に1人いるかどうかと表示された気になるスキルがあったのを思い出し、遠目ではあったがヒースを凝視する。
「やはり、息子にも継承されてたか……」
『ソードコントロール』
ヒースの父にあったスキルで今のヒースにもそのスキルは存在した。しかし、明滅してるところを見るとどうやら進化しようとしているようだ。
どうやら、このスキルが下地にあって初めて使える力のようだと理解に至ると一つピースが見つかる。
「そうか、道理で2人を良く知っていて固執すると思った……それなら納得もいくが、合っているなら、どうしてシホーヌとアクアがひた隠しにしている?」
必死に雄一を関わらせないようにしている2人の真意が分からず、眉を寄せているとホーエンが詰め寄る。
「ユウイチ、何を理解した!?」
「……『ホウライ』の正体。『ホウライ』はアリアとレイアの実父だ。そして、あの神を気取る能力はおそらく俺達と似た理由なのだろう……」
▼
ヒースが投げ放った刀剣が上空を斬り裂くように飛ぶのを確認したダンテは両手を合わせて両足を肩幅に広げて中腰になる。
自分が形成した精霊門を活性化させていき、ポロネがいる場所の真上に転移させる。
ダンテと精霊門が距離が開くと今までの魔力消費など可愛らしいと言わんばかりにバキュームで吸われるように魔力が吸い上げられる。
その負担に汗が噴き出すが、ダンテの表情に揺らぎはない。
こうなる事を理解したうえで発動させ、守りたいものをしっかり見据えているから。
吸い上げられる事に耐えるダンテは更に精神を集中していく。
その集中力は遠く離れているはずのポロネを隣にいるような感覚を掴ませる。
契約をする最低条件は、召喚主と精霊との現実の距離をぼやかす事から始める。それに成功するという事は精霊門を操れる事と同義であった。
「次はポロネの精神の中へ……」
距離感をぼかす事に成功したダンテはポロネと契約する為に潜り始める。
全てを拒絶するように膝を抱えるポロネの内側へ……
ポロネの精神に入ったダンテが最初に目にしたのは漆黒の塊であった。
「うわぁ、危ないっ!」
入った瞬間、迫りくる漆黒の塊に気付いて慌てて避けるダンテは現状確認から始める。
灰色の世界で辺りを見渡してもポロネの姿はなく、ただ、漆黒の塊が襲ってくるのみの世界である事を認識しながら避け続ける。
「これはどういう事だ? 全部が初めて尽くしだから何が何だか分からない。こんな事なら精霊と契約できる見通しが立ったら、と思わずに先に契約に対する知識を入れておけば良かった!」
そう愚痴りながら、辺りをもう一度確認しつつ、漆黒の塊を避け続けた。
今、いる場所はポロネの精神の中、つまり、ポロネの心の中であるとダンテは分かり切った事から確認を始める。
周りの色、灰色が意味するのは清濁混じり合って、白でありたい、という気持ちと、どうなってもいい、という黒でありたいという気持ちで揺れているのだろうとダンテは判断する。
「迷っているなら、まだ間に合うはずだ!」
次にダンテを襲い続ける漆黒の塊に注目する。
いくら避けても襲い続ける漆黒の塊は他者を拒絶する意思だとするなら理解できる。
「不特定多数の誰でもに反応してくれてる事を願うよ。これが僕限定だったら少し泣いちゃいそう」
苦笑いを浮かべるダンテであるが、もう1つ気付いている。
本当に拒絶するなら漆黒の塊を増やすか、ダンテが避けれない程の速度に上げればいいのだが、先程から難なく避け続け、数が増える様子がない。
この世界はポロネが主であるので、当然、好き勝手できる。
ダンテだって、攻撃する時に水球1つで足りなければ数を増やして応戦するのは当然の戦略として使う。
1個しか出せないなら緩急をつけるなり、スピードを上げるぐらいはする。
「なら考えられるのは……間違ってたら、これで終わるな」
ダンテは避け続けるのを止めて、両手を大きく開き、漆黒の塊を受け止めるかのような体勢で棒立ちする。
多くは知らないが精霊と契約する時は相手を信じ、受け入れ、決心をぶれさせない。
これが基本な事ぐらいはダンテは知っている。
だが、判断が間違っていたら剥き出しの精神であるダンテは消滅する事を意味していた。
それでもダンテは恐怖を飲み込んで虚勢を張るように口の端を上げて笑ってみせる。
両手を広げて待ち構えるダンテを恐れさせるかのように急に大きくなったのを見たダンテは確信する。
自分から漆黒の塊を抱きにかかるダンテが叫ぶ。
「ポロネ! 君は他者を怖がっているけど、1人も怖いとどうしていいか分からなくなってるだけだっ!!」
そうダンテが気合い1発と言わんばかりに言い放った言葉と同時に漆黒の塊を抱き締めると漆黒の塊は霧散する。
漆黒の塊が霧散すると同時に灰色の景色がひび割れが起きるがそれ以上の変化が起きない。
それに眉を寄せるダンテがどこにいるか分からないポロネに語りかける。
「何をまだ抱えているんだい? 僕に教えておくれよ。僕はポロネと一緒にある為にここに来たんだ!」
そう語りかけながら、滑るようにこの世界を彷徨いだすダンテ。
すると、ダンテの行方を妨害するようにスクリーンが展開され、そこに映像が映し出される。
そこには、ポロネといつもなら爽やかなイケメンと思われる男の2人がポロネに似た女性が光の粒子になって消えていくのを涙ながら見つめる姿があった。
ポロネ似の女性が消えても、嗚咽を洩らしながら泣き続ける2人。
そんななか、イケメンな男が急に泣き止み、壊れた笑みを浮かべながらポロネを見つめる。
「ウェンディ、家に帰ろう。今日はお前の得意料理のシチューが食べたいな?」
「パパ? 私はポロネよ!?……いやぁぁぁぁぁ!!!」
ポロネを中心に渦巻くように発生する漆黒の竜巻の中で苦しむ姿に気付いてない様子のイケメンの男、ポロネの父親は狂気の色を宿す、愛する者を見つめる瞳で手を差し出す。
更に漆黒の竜巻が強くなる中で苦しむポロネの心の声がダンテに届く。
『パパ! 私はママじゃない! 気付いてっ!!』
スクリーンの中で泣くポロネと連動するように見ているダンテの瞳からも溢れるように涙が零れる。
「分かるよ、ポロネ。お母さんとして扱われる事にも悲しいのもあるけど、何より、ポロネがいないものとして扱われるのが悲しいんだよね?」
ダンテがそう呟くとスクリーンが崩れるように消える。それと同時に灰色の世界に再び、大きな亀裂が入り出す。
亀裂が入る世界をダンテは進み続けると、またもや、スクリーンが現れ、先程とは違う映像が流れ始める。
どこかの山中を漆黒の煙を上げ、両手で自分を抱き締めながら逃げていると思われるポロネの姿があった。
そこに映像なのに凄まじい力を肌で感じさせるような火球がポロネを狙うように飛び込む。
それを最後の力を振り絞るようにして飛んで逃げようとするポロネだったが着弾と同時に発生した風、というには優し過ぎる暴風に煽られて地面に受け身も取れずに叩きつけられる。
逃げようと思っているのか、視線を前にやるポロネだが、それ以上できずに動けずにいた。どうやら、今の一撃で残る力を使い果たしたようだ。
身動きが取れなくなったポロネの下にダンテにとっても見覚えがある4人、四大精霊獣のレン、リューリカ、エリーゼ、アイナがポロネを囲うように降り立つ。
ポロネを見下ろす4人は憐憫の瞳で見つめ、悲しそうにする。
口火を切ったのは、ダンテの教育もして、今回、加護も与えてくれたレンであった。
「ごめんなさいね? 私達ができるのはこれが精一杯」
「わらわ達を恨むな、とは言わんのじゃ。恨んでくれていい、じゃから、お前の父の魂が滅びるまで1000年、眠りに就いてくれ」
「たいした事はできないけど、目を覚ました後や、何でもいい希望や願いはある?」
涙するアイナがポロネに問いかける。
ポロネは弱々しく首を上げると逃げてた先を見つめながら呟く。
「太陽が……海に沈む所が見たかった……ママがとても綺麗だと言ってたから」
「なるほど……確かにこっちの方向に海があったはず」
ポロネと同じ方向、西の方向を見つめるエリーゼは納得したように頷く。
それに更に涙を増量するアイナが、ウンウンと頷きながら言う。
「分かったぁ、ポロネちゃんが目を覚ました最初に見られるのが海であるように眠る場所は海の傍にするね!」
それを聞くと全てを諦めたかのように目を閉じるポロネ。
諦めたかのように見えたポロネの心の声は違う事を言っていた。
『誰か、助けて。1000年も眠りに就きたくない! 私はただ、平穏な生活をしたいだけなのに!!』
そんなポロネの言葉を受けてダンテは泣きながら微笑む。
「ああ、だから、ポロネは何でもない僕達の生活をあれほど楽しそうにしてたんだね?」
特に贅沢が出来る訳じゃない。時折、ミュウが漁や狩猟でアタリを引いた時にみんなで騒ぎながら調理して食べる、そんな、ほんの少しの幸せを願っていただけのポロネの心を受け止めたダンテは涙を止められずにいた。
子供達と遊んであげて、遊ばれ、泣いて笑う、探さなくても見つかるような幸せを得る事を1000年待てと言われたポロネの心情を思うと心が貼り裂けそうだ。
ポロネはまだ親離れもできてない程、心の成長が進んでいなかったのであろう。
目の前に映るスクリーンのポロネを触れるように手を差し出すダンテは震える声音で言う。
「辛かったよね? 寂しかったよね? でも、今は1人じゃないよ? アリア、レイア、ミュウ、スゥ、ヒース、そして……僕がいるよ?」
その言葉が契機にひび割れが進んでいた灰色の世界のひび割れが加速していき、乾いた音と共に完全に割れる。
ダンテの視界に映る先には純白の世界があり、そこに一点、異物のように存在するダンテが会いたかった少女が膝を抱える姿があった。
膝を抱える少女にゆっくりと歩いて近寄るダンテは涙を拭い、優しげな表情、愛しさを込めた声音で少女の名を呼んだ。
「俺にもまだ分からない事だらけだ。いくつかピースは手にあるが、それを繋ぐピースだけが足りてない感じだ。だが、凄まじく嫌な感じがする。とんでもない勘違いをしているような……」
雄一が握る拳から血が滴るのに気付いたホーエンが真顔になり、雄一に問いかけてくる。
「その傷はまさか……?」
「ああ、1発目の振り抜いた力を抑えた時にな。油断もあったが正直、手傷を負わされるとは思ってなかった」
2発目の合図に使ったモノを抑えるのは油断なく止めたので怪我は負わなかった雄一であったが、雄一に傷を負わせたのは土の邪精霊獣以来である。
ホーエンの想像以上の力を秘めていたアリア達に驚くのを見て雄一は被り振る。
「この力は制御もできてないが、まだ本来の力から沸き出た結露のようなものだ」
更に驚くホーエンは声も出ないようで固まる。
それを横目で見る雄一は考えに耽る。
今のアリアとレイアの様子から自分達が扱えるタイプの力ではないようだ。母親から継いだ刀剣の巫女としての力は名の通りに誰かに使われて初めて意味があるのだろう。
だが、あの力は誰でも扱えるモノでもないようだ。あの力は雄一には扱えない。あの能力が発現する瞬間まで捉える事ができなかった。
だから、力の強弱ではない。
では、なんだ? と考えていると初めて会った時にこっそりと見たノースランドのスキルで万人に1人いるかどうかと表示された気になるスキルがあったのを思い出し、遠目ではあったがヒースを凝視する。
「やはり、息子にも継承されてたか……」
『ソードコントロール』
ヒースの父にあったスキルで今のヒースにもそのスキルは存在した。しかし、明滅してるところを見るとどうやら進化しようとしているようだ。
どうやら、このスキルが下地にあって初めて使える力のようだと理解に至ると一つピースが見つかる。
「そうか、道理で2人を良く知っていて固執すると思った……それなら納得もいくが、合っているなら、どうしてシホーヌとアクアがひた隠しにしている?」
必死に雄一を関わらせないようにしている2人の真意が分からず、眉を寄せているとホーエンが詰め寄る。
「ユウイチ、何を理解した!?」
「……『ホウライ』の正体。『ホウライ』はアリアとレイアの実父だ。そして、あの神を気取る能力はおそらく俺達と似た理由なのだろう……」
▼
ヒースが投げ放った刀剣が上空を斬り裂くように飛ぶのを確認したダンテは両手を合わせて両足を肩幅に広げて中腰になる。
自分が形成した精霊門を活性化させていき、ポロネがいる場所の真上に転移させる。
ダンテと精霊門が距離が開くと今までの魔力消費など可愛らしいと言わんばかりにバキュームで吸われるように魔力が吸い上げられる。
その負担に汗が噴き出すが、ダンテの表情に揺らぎはない。
こうなる事を理解したうえで発動させ、守りたいものをしっかり見据えているから。
吸い上げられる事に耐えるダンテは更に精神を集中していく。
その集中力は遠く離れているはずのポロネを隣にいるような感覚を掴ませる。
契約をする最低条件は、召喚主と精霊との現実の距離をぼやかす事から始める。それに成功するという事は精霊門を操れる事と同義であった。
「次はポロネの精神の中へ……」
距離感をぼかす事に成功したダンテはポロネと契約する為に潜り始める。
全てを拒絶するように膝を抱えるポロネの内側へ……
ポロネの精神に入ったダンテが最初に目にしたのは漆黒の塊であった。
「うわぁ、危ないっ!」
入った瞬間、迫りくる漆黒の塊に気付いて慌てて避けるダンテは現状確認から始める。
灰色の世界で辺りを見渡してもポロネの姿はなく、ただ、漆黒の塊が襲ってくるのみの世界である事を認識しながら避け続ける。
「これはどういう事だ? 全部が初めて尽くしだから何が何だか分からない。こんな事なら精霊と契約できる見通しが立ったら、と思わずに先に契約に対する知識を入れておけば良かった!」
そう愚痴りながら、辺りをもう一度確認しつつ、漆黒の塊を避け続けた。
今、いる場所はポロネの精神の中、つまり、ポロネの心の中であるとダンテは分かり切った事から確認を始める。
周りの色、灰色が意味するのは清濁混じり合って、白でありたい、という気持ちと、どうなってもいい、という黒でありたいという気持ちで揺れているのだろうとダンテは判断する。
「迷っているなら、まだ間に合うはずだ!」
次にダンテを襲い続ける漆黒の塊に注目する。
いくら避けても襲い続ける漆黒の塊は他者を拒絶する意思だとするなら理解できる。
「不特定多数の誰でもに反応してくれてる事を願うよ。これが僕限定だったら少し泣いちゃいそう」
苦笑いを浮かべるダンテであるが、もう1つ気付いている。
本当に拒絶するなら漆黒の塊を増やすか、ダンテが避けれない程の速度に上げればいいのだが、先程から難なく避け続け、数が増える様子がない。
この世界はポロネが主であるので、当然、好き勝手できる。
ダンテだって、攻撃する時に水球1つで足りなければ数を増やして応戦するのは当然の戦略として使う。
1個しか出せないなら緩急をつけるなり、スピードを上げるぐらいはする。
「なら考えられるのは……間違ってたら、これで終わるな」
ダンテは避け続けるのを止めて、両手を大きく開き、漆黒の塊を受け止めるかのような体勢で棒立ちする。
多くは知らないが精霊と契約する時は相手を信じ、受け入れ、決心をぶれさせない。
これが基本な事ぐらいはダンテは知っている。
だが、判断が間違っていたら剥き出しの精神であるダンテは消滅する事を意味していた。
それでもダンテは恐怖を飲み込んで虚勢を張るように口の端を上げて笑ってみせる。
両手を広げて待ち構えるダンテを恐れさせるかのように急に大きくなったのを見たダンテは確信する。
自分から漆黒の塊を抱きにかかるダンテが叫ぶ。
「ポロネ! 君は他者を怖がっているけど、1人も怖いとどうしていいか分からなくなってるだけだっ!!」
そうダンテが気合い1発と言わんばかりに言い放った言葉と同時に漆黒の塊を抱き締めると漆黒の塊は霧散する。
漆黒の塊が霧散すると同時に灰色の景色がひび割れが起きるがそれ以上の変化が起きない。
それに眉を寄せるダンテがどこにいるか分からないポロネに語りかける。
「何をまだ抱えているんだい? 僕に教えておくれよ。僕はポロネと一緒にある為にここに来たんだ!」
そう語りかけながら、滑るようにこの世界を彷徨いだすダンテ。
すると、ダンテの行方を妨害するようにスクリーンが展開され、そこに映像が映し出される。
そこには、ポロネといつもなら爽やかなイケメンと思われる男の2人がポロネに似た女性が光の粒子になって消えていくのを涙ながら見つめる姿があった。
ポロネ似の女性が消えても、嗚咽を洩らしながら泣き続ける2人。
そんななか、イケメンな男が急に泣き止み、壊れた笑みを浮かべながらポロネを見つめる。
「ウェンディ、家に帰ろう。今日はお前の得意料理のシチューが食べたいな?」
「パパ? 私はポロネよ!?……いやぁぁぁぁぁ!!!」
ポロネを中心に渦巻くように発生する漆黒の竜巻の中で苦しむ姿に気付いてない様子のイケメンの男、ポロネの父親は狂気の色を宿す、愛する者を見つめる瞳で手を差し出す。
更に漆黒の竜巻が強くなる中で苦しむポロネの心の声がダンテに届く。
『パパ! 私はママじゃない! 気付いてっ!!』
スクリーンの中で泣くポロネと連動するように見ているダンテの瞳からも溢れるように涙が零れる。
「分かるよ、ポロネ。お母さんとして扱われる事にも悲しいのもあるけど、何より、ポロネがいないものとして扱われるのが悲しいんだよね?」
ダンテがそう呟くとスクリーンが崩れるように消える。それと同時に灰色の世界に再び、大きな亀裂が入り出す。
亀裂が入る世界をダンテは進み続けると、またもや、スクリーンが現れ、先程とは違う映像が流れ始める。
どこかの山中を漆黒の煙を上げ、両手で自分を抱き締めながら逃げていると思われるポロネの姿があった。
そこに映像なのに凄まじい力を肌で感じさせるような火球がポロネを狙うように飛び込む。
それを最後の力を振り絞るようにして飛んで逃げようとするポロネだったが着弾と同時に発生した風、というには優し過ぎる暴風に煽られて地面に受け身も取れずに叩きつけられる。
逃げようと思っているのか、視線を前にやるポロネだが、それ以上できずに動けずにいた。どうやら、今の一撃で残る力を使い果たしたようだ。
身動きが取れなくなったポロネの下にダンテにとっても見覚えがある4人、四大精霊獣のレン、リューリカ、エリーゼ、アイナがポロネを囲うように降り立つ。
ポロネを見下ろす4人は憐憫の瞳で見つめ、悲しそうにする。
口火を切ったのは、ダンテの教育もして、今回、加護も与えてくれたレンであった。
「ごめんなさいね? 私達ができるのはこれが精一杯」
「わらわ達を恨むな、とは言わんのじゃ。恨んでくれていい、じゃから、お前の父の魂が滅びるまで1000年、眠りに就いてくれ」
「たいした事はできないけど、目を覚ました後や、何でもいい希望や願いはある?」
涙するアイナがポロネに問いかける。
ポロネは弱々しく首を上げると逃げてた先を見つめながら呟く。
「太陽が……海に沈む所が見たかった……ママがとても綺麗だと言ってたから」
「なるほど……確かにこっちの方向に海があったはず」
ポロネと同じ方向、西の方向を見つめるエリーゼは納得したように頷く。
それに更に涙を増量するアイナが、ウンウンと頷きながら言う。
「分かったぁ、ポロネちゃんが目を覚ました最初に見られるのが海であるように眠る場所は海の傍にするね!」
それを聞くと全てを諦めたかのように目を閉じるポロネ。
諦めたかのように見えたポロネの心の声は違う事を言っていた。
『誰か、助けて。1000年も眠りに就きたくない! 私はただ、平穏な生活をしたいだけなのに!!』
そんなポロネの言葉を受けてダンテは泣きながら微笑む。
「ああ、だから、ポロネは何でもない僕達の生活をあれほど楽しそうにしてたんだね?」
特に贅沢が出来る訳じゃない。時折、ミュウが漁や狩猟でアタリを引いた時にみんなで騒ぎながら調理して食べる、そんな、ほんの少しの幸せを願っていただけのポロネの心を受け止めたダンテは涙を止められずにいた。
子供達と遊んであげて、遊ばれ、泣いて笑う、探さなくても見つかるような幸せを得る事を1000年待てと言われたポロネの心情を思うと心が貼り裂けそうだ。
ポロネはまだ親離れもできてない程、心の成長が進んでいなかったのであろう。
目の前に映るスクリーンのポロネを触れるように手を差し出すダンテは震える声音で言う。
「辛かったよね? 寂しかったよね? でも、今は1人じゃないよ? アリア、レイア、ミュウ、スゥ、ヒース、そして……僕がいるよ?」
その言葉が契機にひび割れが進んでいた灰色の世界のひび割れが加速していき、乾いた音と共に完全に割れる。
ダンテの視界に映る先には純白の世界があり、そこに一点、異物のように存在するダンテが会いたかった少女が膝を抱える姿があった。
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