異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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最終章 DTには『さようなら』は似合わない

317話 相棒との別れのようです

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 上空を見つめていたホーラが舌打ちと同時に辺りにいた小型モンスターに爆裂が込められたパチンコを放つと後方にいるポプリのところまでバックステップで飛んで戻る。

 ポプリと背中合わせになるホーラが苛立ちを隠さずに言う。

「馬鹿テツがマジな顔してたと思ったら、アイツが生きてたさ! 生きてるとしても今、出てくるなんて最悪のタイミングさ!」
「アイツ!?」

 ホーラは目が良いから見えたがポプリは人並みな為、ドラゴンの上にいた人物が見えてない。

 見えてなかったポプリにも苛立つように吐き出す。

「パラメキ国と戦争時にアタイとアンタがやり合ってる時にテツが相手してたヤツさ!」
「まさかセシルですか!? テツ君の話を聞いた限り、生きてるとは思ってませんでしたが……」

 テツに深手を負わされて、大雨で増水する濁流と化した川に身を投げたセシルが生きてると信じてたのはそれを見ていたテツのみであった。

 特別、良い感情を持ってた相手ではなかったが、パラメキ国に戻ったポプリになんだかんだ言いながらも人として接してきた唯一の人物だったので微妙な感情に揺らされる。

 考えに耽ってしまったポプリにホーラが吼える。

「考え込むのはいいけど、手を動かすさ!」
「ご、ごめんなさい!」

 ポプリは慌てて魔法の詠唱を再開すると迫りくるモンスターの集団に無数の火球を放ち始め、やっと動き出したポプリに華を鳴らすと再び、パチンコを放つ為に引き絞り始めた。







 上空ではテツとセシルは数合打ち合った後、鍔迫り合いで力比べするようにしていた。

「チィ! 相変わらずの馬鹿力だな!」

 力比べでは分が悪いと判断したセシルが鍔迫り合いを嫌って後方に飛ぶのを見送りながらテツが語りかける。

「セシル、君宛てに伝言を預かっている。君を育ててくれたブロッソ将軍から……」
「黙れ、テツゥ! てめえ等の口から、おっさんの名は聞きたくねぇぇ!!」

 激昂したセシルは飛び出してテツに迫る。

 嵐のように両手に持つ2つの剣をテツを叩き切るように乱打してくる。

 必死に防ぐテツが悲痛な表情で叫ぶ。

「やっぱり、君は今もブロッソさんが最強である為に誰よりも……」
「うるせぇーよ! 黙れって言っただろうが? 手始めにお前を殺し、『救国の英雄』様と称えられるクソヤロウを殺す! その為に胸糞悪い『ホウライ』と取引までしたんだからなぁ!」

 過去に囚われたままのセシルを悲しそうに見つめるテツに眉を寄せるセシル。

「胸糞悪い目で見るな……それにどうした? お前なら、クソヤロウが最強だ、とか叫びそうなのに何故いわねぇ?」
「僕は、6年で色々考え、成長してきた。勿論、ユウイチさんが最強だと疑ってない。でも、告知して歩く必要なんてないと思っている。僕はその背を追う者。それにセシル、君も分かってる」

 悟ったような目で見つめられたセシルは苛立ちげに唾を吐き捨てる。

「何が分かってるって言うんだぁ?」
「ユウイチさんが最強だと。でなければ君は『ホウライ』と手を組むという考えには至らない」

 セシルは返答の代わりに剣圧から生まれる衝撃波を放つが悲しそうな顔をするテツのツーハンデッドソードで斬り払われる。

 図星を突かれたセシルは据わった目をテツに向けると呟く。

「御託はもういい。お前は黙って斬られろ」
「セシル、君は……」

 テツに続きを言わせるかと斬りかかるセシルと2人は激しい剣戟の応酬を繰り返し始めた。

 凌ぎながら何度も語りかけようとしたテツだが、セシルの攻撃の鋭さに黙らせられ続ける。

 このままだと何も言えずに殺されるだけだと踏ん切りを付けたテツが攻めに転じる。

「消えた!?」

 テツが歩法を使い、セシルの視野と視野の死角に入る。

 一瞬、驚いた顔をしたセシルであったが嘲笑するようにすると衝撃波をテツに放つ。

「そのカラクリはもう理解してる!」
「――――ッッ!!」

 咄嗟に身構えたテツが衝撃波をツーハンデッドソードで受け止める。

 再び、姿を現せたテツに小馬鹿にするように口の端を上げる。

「あの頃と同じように上手くいくと思ったかよぉ?」
「そうだね、あの時のままの手でなんとかなるというのは傲慢だった」

 そうテツが呟くと辺りの空気が揺らめき始める事にセシルが気付く。

 テツの姿がブレ出すのを凝視しているとテツが1人、また1人と増えていく。

「……てめぇ……テツ、何をしてやがる!?」
「分かるよ。見える僕の全てが本物に見えてる。気配を探っても全てから等しく同じ気配を感じるんでしょ?」

 テツが6人になったとを引き攣りながら見つめるセシルが目を忙しなく動かすのを力強く6方向から見つめるテツが呟く。

「安心して、6つ子という事はないから。本物は1人だから」
「ざけんなよ!!」

 セシルの叫びが引き金になったようにテツが飛び出し、斬りかかる。

「うおぉぉぉぉ!!」

 絶叫するように叫ぶセシルがテツの攻撃の全てに剣戟を放って剣と剣が打ち鳴らす音が辺りに響き渡る。

 激しい斬り合いもずっとは続かずにお互いに距離を取ると無呼吸で斬り合ったせいか2人は荒い息を吐き出す。

「まさか、1撃も入れられないとは思わなかった……」
「舐めんな……と言いてぇーが、互角といったところか……死ぬ気で修行したつもりだったがまさか差を埋められてねぇーとはな……だがな?」

 ニヤリと笑うセシルの余裕の笑みにテツの表情が強張る。

 突進体勢に入ったセシルが嘲笑う。

「腕は同じ、だが、6年前と今で俺とお前に決定的な差がある!」

 そう言うとテツの攻撃を恐れてないかのように無防備にテツに特攻してくるセシル。

 そんなセシルの行動に虚を突かれたテツであったが、動きを捉えて、それに合わせるように相棒のツーハンデッドソードを振り下ろす。

 すると、何か柔らかいモノ、空気に包まれるような感触がツーハンデッドソードを通して手に伝わる。

「――――ッッ! これはっ!!」

 常人からすれば、誤差と呼べる差ではなかったが、腕が均衡する2人は大きな差となる。

 勝利を確信したセシルが口を弧を描くような笑みを浮かべる。

「武器の差だ! 戦う者としてより良い武器を手にしなかった驕りがお前の敗因だっ!!」

 斬りかかるセシルの両刀の間にかろうじてツーハンデッドソードを挟み込む。

「あめぇ!! そんなので防げると思ったか!!」

 迷いを感じさせないセシルの剣戟は力強く、乾いた音と共にテツは胸に激痛が走り、吹き飛ばされる。

 テツは胸の痛みより、目の前で粉々になる相棒、ツーハンデッドソードに目を奪われる。


 ぼ、僕の剣がぁ!!!


 初めて、雄一に買って貰い、数々の戦いを乗り越えて6年間、折れもせず、欠けもせず、テツと一緒にあり続けたテツの戦友が散る瞬間をテツは目を見開いて空中を飛ばされながらも手を伸ばされる。

 そして、幻聴かもしれないが『ああっ、だから早くウチを貰い受けたら良かったのにねぇ?』という少女の声がテツの鼓膜を揺らした。

 色んな感情が入り混じり、唇を噛み締め、瞳を涙で潤ませながら落下していった。








 ホーラ達が『ホウライ』が率いるモンスターと接敵した頃の北川家に雄一が帰還していた。

「アニキ、状況は……」
「ああ、状況はおおよそ把握している」

 そう答えると引き下がるリホウに代わり、シホーヌとアクアが心配げに見つめてくる。

「ユウイチ、そのぉ……」
「主様……」

 そんな2人を苦悩する雄一は「分かっている……」と今の心境を語るような苦渋に籠った声音で答える。

 雄一はカンフー服の上着を脱ぎ捨てる。

 脱ぎ捨てられた服は食堂のテーブルの上に落ちると同時に雄一はリホウに告げる。

「リホウ、後の事は任せる」
「へい……ご武運を」

 深々と礼をするリホウと泣きそうな顔を見せるシホーヌとアクアに見送られる雄一は玄関の扉を開け、出ながら呟く。

「俺は、親として我が子達にどうしてやるの正解なんだ……教えてくれ、父さん、母さん……」

 苦しい胸中を持て余しながら雄一はダンガのメインストリートの広場に避難してた住民に喝采を浴びせられながら一歩一歩、戦場、『ホウライ』がいる場所へと向かった。
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