駄女神の玩具箱ーどうして、お前はそんなに駄目なんだ?-

バイブルさん

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ここからが玩具箱の本番

愛し、育むことで知る事 ①

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 突然だが北川家は、学校施設を作っても無駄に余った土地がある。何せ、計画性のないアホ毛が勢いだけで選んだだけの事はある。
 実際は、売れずに不良債権になってたのをホルンが買い叩いただけだが、シホーヌがその辺の事情を理解してなかったので雄一に説明できていなかった。

 無駄に余った土地を見ていた雄一は思い付きから言葉にした事により始まった。

「家庭菜園をしよう!」

 そう思い付いた雄一は思い立ったら、すぐ行動という思いからすぐに市場に行き、種などを買ってきた。
 いくつか買ってきたモノで少し手間がかかるのがトマトである。

 とりあえず形から入るとばかりに麦わら帽子を装着する。

 そして小さい鉢に植えられているトマトの苗から取りかかろうとする。

 鉢に入っている苗を持って畑の近くに置いている時、不意に後ろに誰かいる事に気付いて振り返るとそこにいたのはレイアであった。

 レイアの姿を確認した雄一は首を傾げる。確か、今日はホーラ達の引率で近くの川にちっちゃい子達を連れて出かけていたはずである。

 こちらにやってきたレイアは雄一の近くの石の上で膝を立てて膝に顔を隠すようにしてジッとしてるのを見て声をかける。

「どうしたんだ? レイア。今日はホーラ、テツ達と学校のみんなで川遊びに出かけたんじゃないのか?」
「面倒だから行かなかった」

 雄一が「アリア達もか?」と問うと首を振るのを見て、だいたいの状況が理解できた。

 レイアはどうも他人と距離を作ろうとするきらいがある。一回、溶け込むとミュウのように仲良くなるのだが、あれだけ一杯の人数を前にすると仲良くなりたくてもなれないのであろう。
 その癖に変に負けず嫌いなところがあり、「アタシにはアリアとミュウさえいればいい!」とか言ってそうである。

 まだ雄一の下には話が来てないが実際、それが理由で喧嘩をしてレイアより年長の男の子を相手に負かせて少々問題になり、レイアの周りに壁が出来始めていた。

「友達か……」

 そう雄一が呟くとレイアの肩が跳ねるのを見て、そう的外れの話ではないと確信する。

 よく友達は沢山いるのが良いという風潮を聞くが雄一はそれはどうだろうと思う側の人間である。たった1人でも心を許せる友人を作る事と沢山の友達がいるというは種類は違えど、同じように必要な事だと思う。
 だが、勘違いはしてはいけない。1人いるからもういい、誰々がいればそれでいいで止まってしまう事と同じとは思ってはいけない。
 常に2人、3人目が現れる事を想定して窓口は開けておき、色んな事に歩み寄るつもりでいなくてはいけない。何より、その友達、さえ、だけ、と言われて嬉しく思う気持ちもなくはないだろうが、いつかそれが重みになって離れていく理由になりかねない。
 大事にしてる相手を苦しめるのが自分という悲しい結果にしない為に勘違いしてはいけないと雄一は考える。

 そう考える雄一は、こうやって塞ぎ籠るのは悪い兆候と考えるが、どうしたものかと腕を組んで考えていると丁度いいのが目の前にあった事に気付く。

「レイア、手が空いてるなら手伝ってくれないか?」
「……何をだよ?」

 普段なら嫌がって言われたらすぐにどこかに行くのだが、本当に何もする事がなく退屈だったようで珍しく拒否から始まらずに返事をしたレイアに笑みを浮かべる。

「家庭菜園、畑を作ろうと思って手始めにトマトの苗を植えようとしてるんだ」
「ゲッ、トマト嫌いだ。そんなモンの為に手伝わないといけないんだよっ!」

 いつもの調子を取り戻したかのようにブスッとするレイアの目線に合わせる為に雄一は屈む。

「そうだな、レイアはトマトが嫌いだ。だが、そう毛嫌いされるトマトの気持ちを考えた事あるか?」
「はぁ? トマトの気持ち?」

 馬鹿な人を見るような目で雄一を見るレイアに笑顔で頷いてみせる。

「レイアはトマトがどうやって育ってレイアの下に赤く実になってくるか知ってるか? トマトはきっと思ってる。私がどう育ってきたかも知らないで知ったつもりでいらないとか言わないで、てな」

 そう雄一に言われたレイアが顔を強張らせる。それを見た雄一は自分の見立ては間違ってなかったと判断する。

 どうやらレイアは似たよう事を思いながら他の子達と接してきたようで今のトマトの話を自分と重ねたようである。

「レイア、手が空いてるならトマトの事を知る為に育ててみないか?」
「ちっ、仕方がない、手伝ってやるよ。何からしたらいい?」

 唇を尖らせるレイアに笑みを浮かべる雄一は、「まずはな……」と言いつつ、ドサクサに紛れてレイアの手を取って畑予定地に連れていく。

「俺がクワで土を掘り起こしていく」

 ちょっとレイアには待って貰い、ある程度、掘り起こすとレイアの下に戻ってくる。

 こちらを見てるレイアに小さなスコップを手渡す。雄一も同じスコップを持つと掘り起こした土を苗を植える場所を作るように纏めて均すのを見せる。

「こんな風に形を整えていってくれ。あんまり綺麗にしようとしなくていいぞ。これから苗を植えるから崩れるからな」

 説明を終えるとレイアに「分かったか?」と問うと頷いてくる。

 雄一はレイアがやり始めたのを見て、土を掘り起こし始める。


 しばらく時間が経ち、雄一が六畳ぐらいの畑を4つ掘り起こし終わる。

 レイアの様子を見ると汗を拭いながらも泣き事も言わずに頑張る姿がそこにあった。
 雄一はレイアに近寄り、被っていた麦わら帽子をレイアに被せる。

「少しはマシになると思うぞ?」
「ブカブカで余計に邪魔」

 そう雄一の言葉に切り返して、作業に戻るが突き返してこないあたりがレイアぽくて苦笑いを浮かべる。

 レイアの作業に雄一も混じり、手早く終わるとレイアは畑を見渡し、満足そうに頷くと不意に疑問が生まれたようで首を傾げる。

「なぁ、なんで4つも畑を作ったんだ? トマトの苗の数だと1つで足りそうだけど?」
「ああ、作るのはトマト以外にもニンジンとジャガイモとサツマイモも作るんでな。手伝うのはトマトだけでいいんだぞ?」

 暗に雄一にできないなら、トマトだけやればいいと言われたと思ったレイアはブスッと顔を顰める。

「……全部やる。アタシだってできる!」

 噛みつくように言ってくるレイアの言葉が雄一の目には頬を染めて意地になってるレイアが「アタシだってできるモンッ!」と言っていると変換されて堪らなくなり、抱き締める。

「ヨシッ! 一緒に頑張ろうなっ!」

 そう抱き締めてくる雄一の額にレイアはスコップを突き刺すが、今の雄一には効果なく、レイアは雄一に「汗臭い」と呟き、やっと我に返った雄一が解放した。


 雄一の指導の下、レイアはトマトの苗植えから、ニンジン、ジャガイモ、サツマイモの作付けも完了する。

 意地を張ってやりきったレイアは終わるとその場に大の字になって倒れる。

 レイアが見上げる空の太陽は茜色が混じり出しており、長い時間、畑仕事をしていた事を知る。

 当初は、アリア達が帰ってくるまで長い時間をどうしようと持て余していたのに、あっという間に時間が過ぎた。

 でもその代わり凄く疲れたがレイアは満足そうに笑みを浮かべる。

「お疲れさん、レイア」

 寝っ転がるレイアにそう声をかけてくる雄一は、こちらを見たレイアに濡れタオルを顔にかけてやる。
 びっくりしたようであるが濡れたタオルが気持ちが良かったようで、そのタオルで自分の顔をゴシゴシと擦る。

 スッキリした顔を見せるレイアに雄一はコップを手渡す。それを受け取ったレイアが一気に煽ると顔を顰める。

「酸っぱい……」
「レモンの搾り汁を入れ過ぎたか?」

 雄一の魔法で作った冷水にレモンの搾り汁を入れたものであった。

 レイアは雄一の言葉に首を横に振る。

「びっくりしただけで、美味しかった」

 笑顔を浮かべて雄一を見るが、すぐにそれに気付き、いつもの不機嫌な顔を作る。

 それに雄一は苦笑すると畑にジョウロを持って近寄っていく。それを見たレイアは、

「あれ? 終わったんじゃ?」
「ああ、後、水を撒いたら今日は終わりだから休んでていいぞ」

 一度、寝っ転がってしまって体が言う事を聞きにくくなっているのを気合いで動かしてレイアは立ち上がる。

「最後までやる」

 そう言うと雄一が持つジョウロを奪うとヨタヨタした歩きで畑に近づいていく。そして、トマトに水をやろうとするのを見た雄一が止める。

「レイア、トマトは水をやらなくていい」

 水をやりそうになってたの急制動かけて止まると振り返る。

「どうして?」
「トマトは水がほとんどなくても育つ。むしろ、水が多いと育たなくなったり、実が出来た時、割れる事になるんでな。やる時は葉っぱとかがシワシワになり始めてからでいい」

 よく分からないようであるが、とりあえず納得するとニンジンのほうに行って水を撒き始める。

 水を撒き終えたレイアが雄一の所に戻ってくると見上げて聞いてくる。

「トマトとか、いつできるんだ? 明日か?」
「そうだな、早くて1カ月後かな」

 雄一の言葉にレイアは驚きを隠せずに固まる。

 そんなレイアを笑みを浮かべて見つめる雄一はしゃがみ込んで覗きこむ。

「育てるの止めるか?」
「……最後までやる」

 そう言うレイアの麦わら帽子越しに頭をグリグリと撫でる。

「一緒に頑張っていこうな!」

 と言いつつ、撫でるのを止めない雄一の脛をレイアが蹴る事で止めさせる事に成功する。

 涙目になる雄一の笑い声と共に玄関の方から騒がしい子供達の声が聞こえてきた。

 レイアをチロッと見る雄一が、

「レイア、夕飯の準備も手伝うか?」
「手伝わない」

 即答で断られた雄一は、項垂れながら台所を目指して歩き出した。
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