駄女神の玩具箱ーどうして、お前はそんなに駄目なんだ?-

バイブルさん

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ここからが玩具箱の本番

春の陣 裏

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「馬鹿野郎、武器を持つとは何事だ! 俺達は戦場に行くんだぞ!」
「す、すいません、ユウイチさん!」

 謝ってくるテツに雄一は大きな唐草模様の布を手渡す。

 受け取ったテツに頷いてみせる雄一も同じ物を手に持つ。

「さあ、俺達の戦場に行こうっ!」

 決死の覚悟を滲ませた雄一とおっかなびっくりしているテツは玄関を出ていった。

 その姿を食堂の影から見ていた6つの瞳があった。

「なあ、アイツとテツ兄、どこ行くんだろ? 秘境に採取依頼? 素手で討伐?」
「それが理由ならユウさんはあんな顔しない。もっと余裕の顔をしてる。でもテツ兄さんは似たような勘違いしてる」

 覗きこんでいたのは、北川家のちっちゃい3人で、レイアの疑問にアリアが答え、まったく話の流れを理解できてないのに、腕を組んでる格好、雄一のモノマネをしているミュウが訳知り顔で「がぅぅ!」と頷く。

 あれほど必死な顔をするのを雄一が珍しいから少し気になるレイアは、アリアに聞く。

「なら、何をしにいくんだ?」
「分からない。とにかくユウさんは必死」

 首を横に振るアリアから、自信ありげにしていたミュウに視線を向けると答える機会がくると思ってなかったらしく、レイアの視線から逃げようとする。隠れる場所が見つからず、とりあえず、そっとアリアの影に隠れる。

 ジト目したレイアに廻り込まれたミュウはテンパりながら助けを求めるようにキョロキョロしていると何かを発見して表情を明るくする。

「ホーラ、教えて」

 生活魔法入門を片手に食堂に入ってきたホーラを見つけたミュウは助けを求める。

「んっ? どうかしたさ?」
「ユーイとテツが何をしに行ったか、知らない?」

 ミュウが縋るように聞くとホーラは「んん?」と視線を天井に向けて考え込むと掌を叩く。

 そして、辺りをキョロキョロするとテーブルの上にある紙を手にするとミュウに手渡す。


『ダンガ商店街、春のバーゲン開催!! 5割引きから。ダンガにある商店、露店問わず、開店してる店は全て対象。奮ってご参加してください!』


 と、書かれたチラシを手渡され、3人は覗きこむ。

 アリアとレイアはなんとか読めたようで納得するが、レイアは、「バカじゃないの」と呆れたように口にする。

 チラシを渡されたミュウは顔にビッシリと汗を掻く。

「だんが……はるの……きから、だんがにある……わず……がぅぅ……」

 半分も読めなかったミュウの肩に優しくも逃亡を許さない意思を込めたホーラの手が置かれる。

 その手を恐れるように体を震わせて、見上げた先のホーラを見つめようとするが目が泳ぎ、上手くいかない。

「ミュウ、文字の勉強が足らないようさ。早速、頑張るさ?」

 その言葉に踵を返して逃げようとするが、両肩に手を置かれて、絶妙の力加減でその手を振り払えず、涙ながら目の前にいるアリアとレイアに手を伸ばして助けを求めるが目を反らされる。

 見捨てられたと顔を驚愕に染め、瞳から滝のように涙を流すミュウにホーラは優しげに語る。

「アタイも鬼じゃないさ。これを読み終わったら、遊んできていい」

 ホーラに差し出された本を見たミュウは首を激しく振って、「がぅぅ、ムリ、ホーラ、鬼」と必死に逃げだそうとするがホーラの手から逃げれない。

 困ったような顔をするホーラであるが、左手に持っている本、どこから出した?と聞きたくなるミュウの腕より分厚い本を持っていた。

 ホーラとしては本当に温情をかけているつもりだが、雄一のシゴキを受ける事で、その辺りの匙加減がティースプーンからお玉にクラスチェンジしている事に気付いていなかった。

 膠着状態に陥っているとお風呂掃除をしてたらしいポプリがお風呂のほうからやってくる。

「やっと掃除が終わりましたわ。面倒ですけど、汚いお風呂は嫌ですから……あれ? ホーラ、今日はあの変態の所に行くって言ってませんでしたっけ?」

 首をコキコキと鳴らしながらやってきたポプリは首を傾げながらホーラにそう言ってくる。

「ああっ、もうそんな時間! それと師匠は女に対しては無害って何度も言ってるさ」

 ポプリは、初めてミチルダと会った時、あのパンイチの格好に心がシャットダウンしてしまい気絶してしまった事があるので、変態呼ばわりを止めない。

 ホーラとしても教えを請う立場でなければ、擁護する側には廻らなかっただろうな、とは思うあたり、酷かったりする。

「じゃ、ミュウ、お勉強は夕飯の後でするさ」

 一瞬、解放されたと思ったらしいミュウであったが、時間がずれ込んだだけと知り、絶望する。

 ミュウに、「また後で」と手を振っていくホーラを微妙な表情で見送った後、何かを振り切るようにするとアリア達に向き合う。

「がぅ、イッパイ、遊ぶ!!」

 握り拳を作って天に翳して叫ぶ迫力に飲まれた2人がウンウンと頷かされる。

 今を全力で楽しみ、後に廻された大変な事はその時に考えるという、ある残念な2人の生き様がミュウの中にも根付き、芽吹いた瞬間であった。



 庭に出た3人は、何で遊ぶ?という議題で白熱していた。

「魔法の練習。できるようになって、ユウさんをびっくりさせる」

 ホーラが置いていった生活魔法入門を片手に負けないと目力を込めて2人を見る。

 レイアも負けるか、と言わんばかりに2人を牽制しながら自分の意見を言う。

「いいや、今日は野イチゴ狩りに行って、おやつにする!」

 こないだ確認した感じだと、丁度、今頃が食べ頃のはずとレイアは身ぶりを激しくして訴える。

 ミュウはそれに、ガゥ、と頷くが、瞳に使命感を宿らせて宣言する。

「野イチゴ、悪くない。でも、肉もいいけど、お魚も!!」

 要約すると、お肉もいいけど、今日の夕飯の気分は肉より魚ということらしい。
 雄一の事だから、魚を川で獲ってきたら夕飯の材料にきっと使うというミュウの算段であった。

 各自の意見が出て、お互い引く気がないというのを確認した3人はお互いを牽制しあった後、頷く。

「アタシは、アリアとミュウと争いたくなかったよ……」
「んっ、でも仕方がない、避けて通れない道もある」
「がぅ、強いモノが全てを得る。それが自然の掟」

 3人の戦いの幕が切って落とされた。


「うぉぉ! 負けたっ!!」

 頭を抱えて、引っ繰り返るレイアを2人は見向きもしない。敗北者に目を向けている暇など2人にはないのであるから。

 アリアは土を盛っていき、整えるとミュウが棒をその頂きに突き刺す。

 睨みあうとミュウが盛られた土を豪快に奪う。

 そして、沈黙を守り、目の前の棒の行方を見つめるが反応らしい反応はなくアリアが舌打ちする。
 アリアは慎重に土を削り、危なげなくクリアする。

 そう、3人は棒倒しで勝敗を着けていた。

 ミュウは野生のカン頼りでガンガン攻め、アリアは慎重に、レイアは、気が短いので早々に敗退した。

 再び、恐れを知らないようなミュウの削り方をするが、棒は倒れず、アリアのターンになる。
 額に汗を滲ませながら注意深く観察して、指でゆっくりと削るようにするが一周廻ろうとしたところで棒が倒れて、アリアは悔しそうに顔を歪める。

「がぅぅ、ミュウの勝ちぃ!」
「ほうぅ、何やら楽しそうな事をやっとるな、わっちも混ぜておくれ」

 声をかけられた3人は声がした方向に目を向けると銀髪をかんざしや櫛で束ねて、黒色の丈の短い着物を花魁風に纏い、ぽっくり下駄を履いた、キツネの獣人の幼女がいた。

「もう勝負ついた。ミュウの勝ち。これから川遊び」
「なんじゃ、わっちに負けるのが怖いか? 尻尾がない犬よ」

 キツネの獣人の幼女はミュウを挑発する。その挑発にあっさり乗って、「尻尾ある。ここっ!」とお尻を向けて、短パンから飛び出ている可愛らしい尻尾を指差す。

「それはすまない、余りに小さ過ぎて、わっちは見逃しとった」

 キツネの獣人の幼女は自分の尻尾を自慢するように前に出して手櫛で整える。

 それに目を据わらせたミュウは、土山を盛り、棒を突き刺すとキツネの獣人の幼女を見上げる。

「マキマキ頭をコテンパンにして、ミュウ、勝つ」

 口をへの字にするのを見て、コロコロと楽しげに笑うキツネの獣人の幼女はミュウの対面に行き、ミュウは見知らぬ幼女と戦い始めた。


「そんな、ミュウの負け……」

 始まって、まさかの2手目でミュウは棒を倒してしまう。

「尻尾が短い奴はこの程度ということかの~」

 クスクスと笑うキツネの獣人の幼女を睨みつけるミュウは飛びかかる。

 それを予想してたかのようにミュウを避けるだけでなく、擦れ違いざまにミュウの足を引っ掛ける。

 こけるミュウを見て口を手で隠しながら笑う。

「先程の遊びで勝てんから、次は鬼ごっこということかの。わっちは受けて立つのじゃ」

 キツネの獣人の幼女は、アリアとレイアにもかかってこいと挑発する。

 アリアとレイアは頷き合うとミュウと合流して、追いかけ始める。

 そして、夕暮れ時まで、カラン、コロンという音を軽快に響き渡った。



 夕暮れ時になると玄関で誰かが倒れる音に気付いた4人は、そちらのほうに意識を向ける。

「いかんのじゃ、もうそんな時間になっておったか。それでは、また会おう」

 そう言うとキツネの獣人の幼女は、建物の影に走っていく。それを追いかけた3人であるが建物の影を覗き込むが誰もいなくて首を傾げる。

 キツネの獣人の幼女も気になるが玄関の物音も気になった3人は行くと、倒れている雄一と膝を抱えるテツの姿があった。

 レイアは、テツを呼び掛け、ミュウは、雄一を突っつくが反応がないのを確認する。

 レイアとミュウがアリアを見つめると、首を振ってみせて決断する。

「私達の手に負えない。シホーヌとアクアを捜そう」

 その言葉に頷き合うと3人は2人を捜す為に玄関から離れていきながら、レイアは呟く。

「そういえば、あの銀髪どこにいったんだろう?」
「分からない、でも、次はミュウが勝つ!」

 再会の約束はしていないが、新しくできた友達と次があると信じて、ミュウは再戦を胸に刻んだ。
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