高校デビューできずに異世界デビュー

バイブルさん

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6章 誘う、森の民が住まう大樹へ

109話 人、利用しようとすれば、利用される!?

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 クラウドを出発した俺達と依頼ではなく有志で集まった50人の冒険者達はモンスターパニックに襲われているという村が見渡せる丘に辿りついていた。

 一昼夜、休まずに移動してきた俺達は疲れも見せずに高い士気でやってきたわけだが、目の前の状況を見て脱力しそうになっていた。

 目の前に広がる視界にはモンスター達が村へと向かう様子が、ビルの上から見下ろして見える車が大渋滞している都心のようだ。


 はぁ……母さんが昔、好きだったといって口ずさむテールランプが……って歌を思い出すな。


 ゲンナリしそうになっていた俺の脇腹を肘で突かれる。

「あんちゃん、他人の目を気にしろ。成り立てとはいえ、あんちゃんはもう俺達クラウドの冒険者達の顔なんだぜ?」

 声を潜ませて俺の耳元で言ってくれるダンさんの言葉で背筋がピンと伸びる。


 あぶねぇ、いつもの癖でダルゥとか言おうかと思ってた!

 そうだよな、名誉は欲しいがやる気はない責任者の下で働かされて頑張ろうって気持にならんよね……


 俺はダンさんに有難う、という気持ちを込めて見つめた後、小さく頷く。


 しっかりしろ、俺っ!


 心に活を入れて俺は振り返って背後にいた冒険者達に声を張り上げる。

「みんな、ビビんな! 確かに1000って凄い数だよな……聞かされた時は大袈裟に言ってるじゃ? と思ったのは否定しねぇ!」

 そう言う俺を見つめてくる冒険者達に向かって強がり上等と口の端を上げて笑う。


 不安に感じてる気持ちを面に出すな、俺!


 力強く俺は右手で村に襲いかかっているモンスター達を指差す。

「俺達はモンスターを殲滅しに来たんじゃねぇ! 俺達は村人を助けに来たんだ、一点突破で切り開くだけでいい!」

 そう言って俺は周りを見渡すが隣同士で目を交わし合っている様子から不安は除けてない事が痛い程、伝わってくる。


 クッ、確かに俺もここまで来るまではアレコレと策を考えていたさ!

 部隊を3,4つ作って救出部隊やかく乱を目的にした部隊などを作ろうと考えていたが、あれは無理だ。

 下手に部隊を作ったら壊滅する。

 一点突破というのも今、思い付いた適当な策だ。でも……


 みんなの反応を見ていた俺に先頭にいる熟練冒険者が俺の苦肉の策である事に気付いたらしく怒鳴るように言ってくる。

「なんだ、その適当な策、いや、無謀は!」

 その言葉にどよめきが生まれ、ざわざわと落ち着かない空気が生まれる。

 ダンさんもその事に気付いていたらしく悔しそうにするのを見て、少し申し訳ない気持ちにさせられる。

 でも、俺には何とかなるという自信がある。

「俺には頼りになる仲間がいます」

 そう言って俺は傍にいたルナと美紅の手を掴んで隣に引っ張り出す。

 ルナは頼りになると言われたのが嬉しいのか、現状の大変さを分かってないのか微妙だがエッヘンとばかりに誇らしげにする。逆に美紅は大勢の目に晒され、尚且つ、あのモンスターを何とか出来るマル秘の人物のように言われたように感じたらしく首を竦めて目を瞑ってしまう。

 2人を見て少し虚を突かれて激昂しそうになってた冒険者達が冷水を被せられたように少し冷静になる。

「た、確かに、ルナちゃんや美紅ちゃんが頼りになるが……」
「ええ、2人は頼りになります。俺は2人に命を預けられるぐらいに信頼してます。ですが、俺が信頼してるのは2人だけじゃない」

 動揺して戸惑う冒険者達に歯を見せる大きな笑みを浮かべて俺は両手を冒険者達に向けて大きく広げる。

 俺の行動に更に戸惑いを見せる冒険者達に更に笑みを深める。

「俺の前に居られる皆さんです。尻込みしてママのおっぱいを吸う事を選び、残った奴等じゃなく、自分を奮い立たせて、今、ここにいる皆さんを俺は信頼してます。きっと俺達であれば出来る!」

 目を見開いて俺を見つめる冒険者達に迷いは決して見せない。


 自分の言葉にウソが無いなら後ろめたい気持ちにならない!

 信頼してるから巻き込むつもりがある事を開きなおれ!


「確かに俺だけであれば無謀そのもの。だから頼りになる皆さんを巻き込ませて!」

 俺の衣を着せない言葉に冒険者達が目を点にするなか、ダンさんは額に掌を当て、目尻に涙を浮かべて笑う。

 いきなり笑い出したダンさんに注目が集まり、ひとしきり笑い終えると俺に背を向けたダンさんが冒険者達を見渡す。

「聞いたかよ? この新しいAランク様は俺達を利用する気満々らしい。そのうえ隠す様子もない大物ぷりだ。しかもだ、ここまで来ちまったから尻を捲ったら格好悪く、来たんだからクラウドに残った奴等と違う事を示せ、と仰せだ」


 ちょ、ちょっと待ってダンさん! その話だと俺、相当な悪人にされてねぇ?


 内心、大慌てで頭を抱えたい俺だが必死に笑みを継続させる。もしかしたら既に泣きっ面かもしれない。

 ダンさんは先頭にいる先程、俺に文句を言ってた熟練冒険者に「なぁ?」と言われて一瞬、眉を顰めたがすぐに何かに気付いた様子を見せると意地の悪い笑みを浮かべる。

「……そうだな。おい、オメェー等、ここまで来ちまったからしゃーねぇー! 後でトールをボコるとして、まずは肩慣らしにモンスターをボコりに行くぞ!」
「よし! じゃ、先陣切るのはあんちゃんということで……」
「待て待て! 先陣はいいけど、ボコるというのはナシの方向で!」

 俺が必死に言い募ろうとするがダンさんと熟練冒険者が他の者に檄を飛ばして、それに応える冒険者達の声に掻き消される。

 置いてけぼりになる俺が深い溜息を洩らしていると何故か楽しそうな顔をするルナが俺の肩に手を置く。

「回復魔法ならかけてあげるの」
「回復魔法が必要な事態にならんように奮闘してくれ!」

 俺は周りに仲間がいない事に涙を流した。





 モンスター達の叫び声が聞こえるぐらいの距離まで移動した俺達は特攻を意識した矢のような陣形を取る。

 間近で見るモンスターパニックは更に圧迫度を俺達は感じていた。


 おいおい、間近で見て、俺の突破力で何とかならん気がしてきたぞ……


 俺は腰に付けているカラスとアオツキを見つめる。

 普通の剣と比べるとカラスは短い。アオツキはもっと短く、短刀と言って問題はない。

 俺の腕のリーチも入れてもその範囲は狭すぎる。

 矢のように突っ込む以上、それなりの広さがないと後方がモンスターの波に飲み込まれてしまう。

 悔しく思う俺の脳裏にルナのエアーブレットを切り裂いてその後方にいたルナすら壁に叩き付けたロキの重ねを思い出す。

「くそう……俺もあれが出来たら……」

 自分の情けなさに耐えきれずに下唇を噛み締める俺に話しかける声があった。

『我が力を貸そうか、主よ』
「へっ!?」

 目に映る景色が白黒になり、周りにいる者達、モンスターも含めて動きを止めている中で俺は何故か右手に持つカラスを見つめ続けた。
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