高校デビューできずに異世界デビュー

バイブルさん

文字の大きさ
27 / 124
1章 四苦八苦する異世界生活

26話 肉防衛戦

しおりを挟む
 目を覚ますと馬小屋で寝ていた。

 一瞬、何故、と慌てそうになるがここで寝る経緯を思い出して苦笑する。

 イノシシ狩りに来たが遅い時間になったのでおっさんに馬小屋を借りた事を思い出す。

「昨日、食ったイノシシの肉、美味かったな。元の世界じゃ、かなりクセがあるって聞いた覚えがあったけど、同じじゃなくて良かった」

 昨日の美味しかった記憶が蘇り、涎が出そうになって拭うと目の前で本当に垂らしてる人物がいた。

 ルナであった。

 ワラで丁寧に作られたベットの上で眠り気持ち良さそうに涎を垂らす姿は、何度見ても美少女という言葉を霞ませると涙が零れそうになる。


 くそう、そこで俺が寝るはずだったのに!


 叩き起こしてやろうかと思ったが、余りに小さな男になってしまいそうな気がしたので堪える。

 肩を竦めるだけで堪えた俺だったが、顔を洗おうと思った瞬間、放って行って先に顔を洗ったと言ったらルナは……

「どうして起こしてくれなかったの! 徹のアホー!!」

 と言いそうな気がした俺は、面倒臭いヤツと思いつつも起こす事にした。

 ルナを揺すりながら、

「おい、起きろ。歯を磨きに行くぞ?」
「うーん、後、ちょっと……」

 愚図るルナに俺は最強の呪文を唱える。

「ルナ、少ない赤いジャム、俺が全部使うぞ?」
「駄目なのっ! 赤いジャムは私のなの!!」

 寝ぼけ眼で飛び起きるルナは、アレ? と首を傾げて辺りを見渡す。

 目の焦点が合ってきて、俺の顔を見つめると事情を察したようで顔を赤くさせて頬を膨らませる。

「徹! またやったの! もうしないって言ってたのに!!」
「えっ? そうだっけ? 次からは気を付けるわ」

 俺が顔を洗いに行くぞ、と言いながら肩に手拭をかける。

 それを見つめていたルナがブツブツ言いながら、俺の後を手ぶらでやってくる。


 もうコイツは自分の手拭で顔を拭く気ないな


 2人並んで、おっさんの家のほうに向かうと木々の向こうからおっさんが歩いてくる。

「おう、2人共、目を覚ましたのか?」
「うん、それでさ、顔を洗いたいんだけど、井戸とか川ないか?」

 俺がそう聞くとおっさんは自分が出てきた木々の向こうを指差す。

「ワシが来た道を真っ直ぐに行けば、湧水が沸いてる。そこで洗えばどうじゃ?」
「おっさん、ありがとう。行こう、ルナ」

 おっさんに行ってくると言うと朝飯用意してるからと告げられ、見送られる。


 わざわざ、湧水なんか探さなくても生活魔法で、と思う所だが、寒い日ならともかく生活魔法の水は温いのだ。
 水が見つからないなら使うが、できれば、すっきり、しゃっきりしたい俺は自然の水を使いたい。


 顔を洗い終わった俺達はおっさんの家に行くと食べる用意が済んだ状態で待っててくれた。

「よし、じゃ、早速食おうか」

 俺達が席に着くや、おっさんは嬉しそうにいうとパンに昨日の肉の残りを挟んだ簡単な料理を口にし出す。

 ルナも負けないとばかりに齧り出すのを横目で見ながら、俺も、いただきますをしてから食べ始めた。



 食事を済ませた俺達は、おっさんにも手伝って貰いながらイノシシの肉を担ぎながら下山し始める。

 今、自分が持ってる肉や2人が持ってる分を想像してゲンナリとする。

「本気でおっさんに手伝って貰えて助かった。俺とルナだけなら、全部持って行くつもりならもう一回は来ないといけない所だった」

 俺の言葉にルナも、うんうん、と声に出しながら頷く。

 おっさんは、ガハハ、と笑いながら肩を揺らす。

「なぁーに、ワシも最高に美味いと思える食事が昨日はできた。色んな意味でワシのほうこそ、有難うだ」

 あれで酒を切らしてなかったら、もっと最高だったと笑う、おっさんは今日帰る時に買う物の予定に加えると頷いていた。

 そう言われて、昨日は濃い一日だったな、と思いながら、くだらない天気の話や近々ある祭がどうとかと騒ぎながら俺達は山を下って、クラウドへと向かった。







 クラウドに到着した俺達は、この重い肉を何とかする為に冒険者ギルドに向かう事にした。

 俺達が冒険者ギルドに到着すると丁度、ダンさんが買い取りカウンターにいるペイさんと談笑中のタイミングだったようで、ぜぇぜぇ、言ってる俺達の所にやってきた。

「おお、お帰り。凄い肉の量だな。何頭分だ?」

 そう言うと後ろにいるおっさんに気付き、ダンさんは頭を下げる。

「お久しぶりです。ザウスさん」

 おっさんは気軽に手を上げて、おう、と気安く挨拶を交わす。

「何頭分と思うじゃろ? これは実は1頭分なんだぞ?」
「本当ですか? これで1頭分となるとどれくらい大きかったのやら」
「もうそれは牛さんのように大きなイノシシだったの!」

 肉を床に置いて手を広げ、如何にでかかったか笑みを弾けさせながら説明するルナ。

 それに頷くおっさんが、ワシが知る限り、主じゃ、と告げて2人は盛り上がる。

「話すのはいいけど、先に肉を買い取って貰おうぜ? さすがに重いって」
「そうだな、じゃ、俺も運ぶの手伝おう」


 そういうダンさんはイケメンレベルの高い行動、ルナの肉を持ってあげる。しかも、変にアピールもせずに自然にやるダンさん、やっぱり渋いなっ!


 いつか実践できるように心に刻む俺はペイさんがいる買い取りカウンターに肉を運ぶ。

 肉を目の前で見たペイさんが驚いた顔をする。

「頼んだのは私だけど、正直、1,2度は失敗すると思ってたわ。それなのにこんな大物を倒してくるなんて、2人は凄いのね」

 べた褒めしてくるペイさんの言葉に気分良くしたルナが胸を張るが、俺が事実をチクる。

 ルナが俺を踏み台にして木の上に逃げた事や、魔法を外しまくった事、俺がカッコ良くチキンレースに勝った事を伝える。

 やられぱなしではいられなかったルナはチキンレースの事実を暴露し、ダンさんやペイさんに笑われてしまう。

 俺達の話をニコニコしながら聞いていたペイさんが首を傾げ始める。

「ねぇ、トール君。何か出し忘れてない?」
「えっ? 何の事ですか?」

 笑みを浮かべるペイさんに俺も笑みで返す。


 ペイさん、美人だから笑みで脅迫するの止めてぇ!! マジで怖いから!!


 と俺の心の中は大変な事になっていた。

 ルナも似たような心境なのか、俺達は仲良く、あはは、と笑いながら惚ける。

 そんな俺達の様子を見て、ペイさんは確信を深めたようで余裕の笑みを俺達は見つめる事ができなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……? ~ハッピーエンドへ走りたい~

四季
恋愛
五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……?

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...