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3章 頑張る冒険者家業
61話 他人の不幸は蜜の味
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昼過ぎにクラウドに到着した俺達は、真っ先にマリーさんの容体を確認する為に家に直行した。
家に直行した俺達をライラとマイラが玄関先で俺達が来るのを待っていたように立っていた。
俺達に気付いた姉のライラが元気良く走ってくると飛び付くように抱きつく。
「お姉ちゃんが起きた! お兄さんがなんとかしてくれたんだよね、ねっ!」
「そうか、上手くいって良かった。正直、間違ってたらどうしようかと思った」
抱きついて嬉しそう見上げてくるライラの頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細める。
我に返った風に顔を赤くして飛び離れると後ろにいたロキ、ルナ、美紅にもお礼を言いながら頭を下げていく。
それを見送っていると袖を引っ張られたのでそちらに顔を向けるとマイラが感情が希薄な表情で見上げていた。
「お帰りなさい、お兄さん。やっぱり、お兄さんに頼んで良かった」
「期待に応えられて何よりだ。で、本当にお姉さんは大丈夫なのか?」
俺の質問に頷くマイラは「付いて来て」と言うので、ロキ達に家に入る事を伝えてマイラの後を付いて行った。
中に入ると男が声を上げて泣いて鼻を啜る音が聞こえてくる。
俺達が顔を見合わせているとライラが説明してくる。
「お姉ちゃんの婚約者が来て、助かって朝から泣きっぱなし! 嬉しいのは分かるんだけど、男なのにねぇ?」
俺とルナ、美紅は気持ち分かるが、さすがに朝からとなるとさすがにどうかと思っているとロキが鼻を鳴らしながら前に出ようとする。
「さすがに男の涙の安売りし過ぎだろうがぁ、ああぁ? 俺がぁ、目が覚める一発くれてやらぁ?」
「待てっ! ロキの手加減ない拳は一般人には凶器と変わらん!!」
咄嗟に飛び付いた俺が羽交い締めにするが、ズルズルと引きずられるのを見たルナと美紅が正面に廻ってロキを宥めにかかる。
「待つの! そういう人もいるの!」
「私達もちょっとないな、と思いますが人の好みは人それぞれです!」
止められてイラっとしたロキが首を傾げながらルナと美紅に言う。
「関係ねぇ……そうか、てめえぇらも変わり種にホの字だったな……イタタッ、何しやがる!」
「煩いの! 黙って付いてくるの!」
「トオル君、少し、ロキさんと『お話合い』がありますので席を外しますね?」
顔を真っ赤にしたルナが恐れも知らないのかロキの長いボサボサの髪を掴み、美紅が飛び上がってロキの耳を抓みながら家に出ていく。
何があったか、分からないが……こえぇ!!
こういう時の俺が取るべき行動は1つだ。
「いってらっしゃい、ごゆっくり」
「てめぇ! トオル、助けようとか思わねぇのかよ!!」
「うん、全然」
笑顔でロキを見捨てるナイスガイな俺は爽やかに手を振って連行されるロキを見送る。
ライラは状況が分からないようだが俺とロキを交互に見つめて、俺の真似をするのが良いと判断したようで笑顔でロキを手を振って見送る。
「さて、戯れはこれぐらいで……」
「いや、ロキにとったら戯れじゃ済まないと思うが……」
俺の真横でいつもの半眼で無表情な顔で見つめていたマイラの言葉に一応、ロキの為に突っ込みを入れておく。
ボーとした顔をこちらに向けるマイラが姉、マリーの部屋に手を向けて口を開く。
「こちらです」
な、流しただと……!!
酷い子、と思うが当然のようにロキを助けに行く気のない俺も酷い子!
七面相のようにコロコロと表情を変える俺を見上げて首を傾げるライラが裾を引っ張ってくる。
「えっと、結局、あの大きいお兄さんはどうしたの?」
どうやら、この場で純粋と言えるのはライラ1人のようだ。
▼
マイラの先導でマリーさんの部屋に連れてこられると大泣きしてたと思われる男と先日は寝ていたマリーさんがベットの上で困り、苦笑いする姿があった。
ライラ達と一緒に入ってきた俺を見て、少し驚いた様子のマリーさんと婚約者の男は揃って首を傾げる。
「「どなた?」」
綺麗にハモるあたり、お似合いの2人なのかもしれない。
「お兄さんは、お兄さんは……あれ? 何て名前だっけ?」
マリーさんと婚約者は同時に首をカクッと曲げる。
この2人にフュー○ョンさせたら1発で成功させるかもな。
それはそうと名前を忘れられるとは……あれ? 正式に名乗ったっけ?
「姉さん、前に冒険者ギルドで調べた時に他の方から聞いてたでしょ?」
マイラがそう言うと「ああっ!」と思い出したかのように手を叩くライラ。
「思い出した! クラウドの勇者の……なんだっけ?」
「思い出さないで良い方を思い出して、肝心な方を忘れるとか、どうなんよ!!」
俺が軽く鼻を抓んでやると「痛い、痛い!」と騒ぎだすライラ。
それを頬を染めて見つめるマイラが呟く。
「姉さん、とても良い顔ですよ?」
あかん、この子、自分の姉が困る姿に興奮するタイプだ!!
しかも自分で手を下さずに誰かにされているのを喜ぶタイプのようだ。
すると、婚約者が再び涙と鼻水を流しながら俺に抱き付いてくる。
「君が助けてくれたらしいね! ありがとうぅ、僕はベンと言うんだ。僕で出来る事なら何でも言ってきて、クラウドの勇者さん!」
「誰がクラウドの勇者と呼ばれ、礼を言われて喜ぶよ!」
付けられそうな鼻水に恐れ慄いた事もあり、咄嗟に殴ってしまう。
はぅぅ~、と情けない声と共に豊かなマリーさんの胸に顔から飛び込むベン。
おいおい、そこはこれから俺が飛び込む予定地だろうがぁぁ!!
ベンを見つめて、黒い炎に身を任せるか揺れているとマリーさんが苦笑しながら目を廻してるベンを抱えながら礼を言ってくる。
「貴方がマイラが言ってた冒険者のトールさんですね? 今回は本当に有難うございました……ゴホゴホ、ごめんなさいね、どうやら寝たきりだったみたいで長く話すと咳き込むの」
「お気になさらず。今日は無事、呪いが解けたか見に来ただけなんで?」
そういって手を振ると背を向けながら「お大事に」と言って部屋を後にする。
一緒に付いてきた双子が玄関を出た所で話しかけてくる。
「お兄さんに依頼したのは私達だから、時間がかかっても支払うからね!」
「ああ、気長に待ってるからあせんなよ?」
「ほら、ライラ姉さん、お兄さんに教えてあげたらいい情報があると言ったでしょ?」
ん? 情報?
首を傾げる俺と思い出して手を叩くライラ。
ライラが悪戯っ子のように笑うと俺にしゃがむように言いながら裾を引っ張ってくる。
素直にしゃがむと「耳を貸して」と言われるので素直に貸すと素晴らしい情報を貰う。
「んとね、お姉ちゃんの胸の谷間にはホクロが2つあるんだよ? そこは私達が覗いても凄く照れるの」
俺は雷に打たれたように固まる。
なんだと!! そんな素晴らしい場所にホクロ様ができるのか!?
そんな訳がないだろう、一度確認の必要を感じるな……2人にはお風呂とか水浴びする場所と時間帯の情報を聞き出す必要がある!
男前の顔で考え込む俺から言ったった、とドヤ顔するライラが離れようとしたところを「えい」と起伏のない掛け声でライラの背をマイラが押す。
ゴンッ!
「イタタ、何を……」
「あああああああっ! 何するのマイラ!! わ、私のファーストキスがぁぁ!!」
俺の言葉を飲み込む勢いで叫んだライラがマイラの襟首を掴んで激しく揺さぶるのを眺める。
ファーストキスって、俺には頭突きとしか分からんかったが……
揺さぶられるマイラは平然な顔をしながら言う。
「大丈夫、頬はファーストキスにはカウントされない。親愛の情だから!」
「えっ? そうなの? セーフなの?」
相変わらず、あっさり丸込められるライラは頭が残念な子であった。
まあ、ファーストキスはいつしたかは自分が考える基準だからな……
親戚のおばちゃんが「アンタのファーストキスもセカンドキスも私が頂いたわ!」とのたまうのはカウントしなくて良いはずである!
しゃがんだ格好のままで呆れる俺の前にやってきたマイラが礼儀正しくペコリと頭を下げてくる。
「本当にありがとう、お兄さん。こちらが支払える対価はできる限りさせて貰う。それでも多分、足らない」
「気にすんな。気持ちだけでいいさ」
笑う俺に被り振るマイラは苦しそうに言ってくる。
「私はお兄さんが早い段階で知っておけば苦しまずに済む事を知っていながら話す事ができない。これは大きな裏切り、本来、私はお兄さんに殺されても文句が言えない」
「おいおい、穏やかじゃないぞ? どういうことだ……」
問いかけようとした俺の口は封じられる。
マイラが俺の首に腕を廻してきて、その小さな唇で塞がれる。
驚く俺と無表情な事が多いマイラのレア表情、はにかむように照れた顔して俯く。
姉のライラは事態が飲み込めなくて変な踊りを始めている。
「きっと、事実を知ってもお兄さんは私を殺すどころか許すと思う。でも、それでは私の気が済まない。だから、せめて、私のファーストキスを貰って欲しい」
「お前のように肝の太いヤツがそこまで思いつめる理由って……」
その先を聞きたそうにする俺に被り振るマイラ。
「ごめんなさい。その先は今は答えられない。答えられる時は、お兄さんも知っている。それに私も女の子、感情も打算もある」
「感情? 打算? 何か良く分からんが?」
首を傾げる俺にマイラが笑みを浮かべて言ってくる。
「私がこうしたら、お兄さんが違う意味で大変な目に遭うと分かってた。私は大好きな人を困らせるのが好き」
「はぁぁ?」
本当に嬉しそうに笑うマイラに詳しく聞こうとした時、俺の両肩にそれぞれ違う手が置かれる。
思わず、ビクッとさせる俺はおそるおそる振り返ると目からビームでも出てるのではないかと思わせるルナと美紅がそこにいた。
「えっ、ナニ? 徹は大きな胸にしか興味がないと思ってたら、小さい子も好きだったの?」
「トオル君、心が病んでます。健全な体には清い心が宿ります。走りましょう!」
これ、アカンヤツだ……俺の生存本能がこの場から遠くに離れろ、と警報を鳴らす。
煩い、警報を鳴らされずとも、この状況で分からんヤツは戦場から帰って来れない!
というか警報遅過ぎだ!
ルナと美紅の手から距離を取る俺の目の前では魔法を唱え出す2人の姿を確認する。
「ま、マイラ! 覚えてろよぉ!!!」
俺は捨て台詞を吐くとルナと美紅から背を向けると脱兎の如く逃亡を図る。
後ろから襲いかかる魔法の数々を避け続けて俺はクラウドの街中を駆け巡る事になった。
「俺はロリコンじゃねぇ!!」
ルナと美紅に追いかけられているところをダンさんとペイさんに見られる。
逃げ回る俺を楽しげに笑う2人。
「あんちゃん、楽しそうだな?」
「そう思うなら代わって!!」
「駄目よ。ダンの今日の予定は私が決めるから?」
このラブラブぷりを見せつけやがって!!
襲いかかる魔法が掠るようになってくる。
ヤバい! 魔法の精度が上がり出してる!
こうなったら、ダンさんも巻き込んでやる!
急に方向転換してダンさん目掛けて走り出すとダンさんも俺の狙いに気付いたようで焦った顔をするとペイさんの安全の為に俺から逃げ出す。
「あんちゃん! ペイとのデートを邪魔するな!」
「他人の不幸は蜜の味、他人の幸福はヒ素の味、という名言を知らんのか!?」
ダンさんの「知るかぁ!!」と雄叫びと共に俺とダンさんはキレたルナと美紅の魔法を避けながらクラウドの外を目指して走り続けた。
3章 了
家に直行した俺達をライラとマイラが玄関先で俺達が来るのを待っていたように立っていた。
俺達に気付いた姉のライラが元気良く走ってくると飛び付くように抱きつく。
「お姉ちゃんが起きた! お兄さんがなんとかしてくれたんだよね、ねっ!」
「そうか、上手くいって良かった。正直、間違ってたらどうしようかと思った」
抱きついて嬉しそう見上げてくるライラの頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細める。
我に返った風に顔を赤くして飛び離れると後ろにいたロキ、ルナ、美紅にもお礼を言いながら頭を下げていく。
それを見送っていると袖を引っ張られたのでそちらに顔を向けるとマイラが感情が希薄な表情で見上げていた。
「お帰りなさい、お兄さん。やっぱり、お兄さんに頼んで良かった」
「期待に応えられて何よりだ。で、本当にお姉さんは大丈夫なのか?」
俺の質問に頷くマイラは「付いて来て」と言うので、ロキ達に家に入る事を伝えてマイラの後を付いて行った。
中に入ると男が声を上げて泣いて鼻を啜る音が聞こえてくる。
俺達が顔を見合わせているとライラが説明してくる。
「お姉ちゃんの婚約者が来て、助かって朝から泣きっぱなし! 嬉しいのは分かるんだけど、男なのにねぇ?」
俺とルナ、美紅は気持ち分かるが、さすがに朝からとなるとさすがにどうかと思っているとロキが鼻を鳴らしながら前に出ようとする。
「さすがに男の涙の安売りし過ぎだろうがぁ、ああぁ? 俺がぁ、目が覚める一発くれてやらぁ?」
「待てっ! ロキの手加減ない拳は一般人には凶器と変わらん!!」
咄嗟に飛び付いた俺が羽交い締めにするが、ズルズルと引きずられるのを見たルナと美紅が正面に廻ってロキを宥めにかかる。
「待つの! そういう人もいるの!」
「私達もちょっとないな、と思いますが人の好みは人それぞれです!」
止められてイラっとしたロキが首を傾げながらルナと美紅に言う。
「関係ねぇ……そうか、てめえぇらも変わり種にホの字だったな……イタタッ、何しやがる!」
「煩いの! 黙って付いてくるの!」
「トオル君、少し、ロキさんと『お話合い』がありますので席を外しますね?」
顔を真っ赤にしたルナが恐れも知らないのかロキの長いボサボサの髪を掴み、美紅が飛び上がってロキの耳を抓みながら家に出ていく。
何があったか、分からないが……こえぇ!!
こういう時の俺が取るべき行動は1つだ。
「いってらっしゃい、ごゆっくり」
「てめぇ! トオル、助けようとか思わねぇのかよ!!」
「うん、全然」
笑顔でロキを見捨てるナイスガイな俺は爽やかに手を振って連行されるロキを見送る。
ライラは状況が分からないようだが俺とロキを交互に見つめて、俺の真似をするのが良いと判断したようで笑顔でロキを手を振って見送る。
「さて、戯れはこれぐらいで……」
「いや、ロキにとったら戯れじゃ済まないと思うが……」
俺の真横でいつもの半眼で無表情な顔で見つめていたマイラの言葉に一応、ロキの為に突っ込みを入れておく。
ボーとした顔をこちらに向けるマイラが姉、マリーの部屋に手を向けて口を開く。
「こちらです」
な、流しただと……!!
酷い子、と思うが当然のようにロキを助けに行く気のない俺も酷い子!
七面相のようにコロコロと表情を変える俺を見上げて首を傾げるライラが裾を引っ張ってくる。
「えっと、結局、あの大きいお兄さんはどうしたの?」
どうやら、この場で純粋と言えるのはライラ1人のようだ。
▼
マイラの先導でマリーさんの部屋に連れてこられると大泣きしてたと思われる男と先日は寝ていたマリーさんがベットの上で困り、苦笑いする姿があった。
ライラ達と一緒に入ってきた俺を見て、少し驚いた様子のマリーさんと婚約者の男は揃って首を傾げる。
「「どなた?」」
綺麗にハモるあたり、お似合いの2人なのかもしれない。
「お兄さんは、お兄さんは……あれ? 何て名前だっけ?」
マリーさんと婚約者は同時に首をカクッと曲げる。
この2人にフュー○ョンさせたら1発で成功させるかもな。
それはそうと名前を忘れられるとは……あれ? 正式に名乗ったっけ?
「姉さん、前に冒険者ギルドで調べた時に他の方から聞いてたでしょ?」
マイラがそう言うと「ああっ!」と思い出したかのように手を叩くライラ。
「思い出した! クラウドの勇者の……なんだっけ?」
「思い出さないで良い方を思い出して、肝心な方を忘れるとか、どうなんよ!!」
俺が軽く鼻を抓んでやると「痛い、痛い!」と騒ぎだすライラ。
それを頬を染めて見つめるマイラが呟く。
「姉さん、とても良い顔ですよ?」
あかん、この子、自分の姉が困る姿に興奮するタイプだ!!
しかも自分で手を下さずに誰かにされているのを喜ぶタイプのようだ。
すると、婚約者が再び涙と鼻水を流しながら俺に抱き付いてくる。
「君が助けてくれたらしいね! ありがとうぅ、僕はベンと言うんだ。僕で出来る事なら何でも言ってきて、クラウドの勇者さん!」
「誰がクラウドの勇者と呼ばれ、礼を言われて喜ぶよ!」
付けられそうな鼻水に恐れ慄いた事もあり、咄嗟に殴ってしまう。
はぅぅ~、と情けない声と共に豊かなマリーさんの胸に顔から飛び込むベン。
おいおい、そこはこれから俺が飛び込む予定地だろうがぁぁ!!
ベンを見つめて、黒い炎に身を任せるか揺れているとマリーさんが苦笑しながら目を廻してるベンを抱えながら礼を言ってくる。
「貴方がマイラが言ってた冒険者のトールさんですね? 今回は本当に有難うございました……ゴホゴホ、ごめんなさいね、どうやら寝たきりだったみたいで長く話すと咳き込むの」
「お気になさらず。今日は無事、呪いが解けたか見に来ただけなんで?」
そういって手を振ると背を向けながら「お大事に」と言って部屋を後にする。
一緒に付いてきた双子が玄関を出た所で話しかけてくる。
「お兄さんに依頼したのは私達だから、時間がかかっても支払うからね!」
「ああ、気長に待ってるからあせんなよ?」
「ほら、ライラ姉さん、お兄さんに教えてあげたらいい情報があると言ったでしょ?」
ん? 情報?
首を傾げる俺と思い出して手を叩くライラ。
ライラが悪戯っ子のように笑うと俺にしゃがむように言いながら裾を引っ張ってくる。
素直にしゃがむと「耳を貸して」と言われるので素直に貸すと素晴らしい情報を貰う。
「んとね、お姉ちゃんの胸の谷間にはホクロが2つあるんだよ? そこは私達が覗いても凄く照れるの」
俺は雷に打たれたように固まる。
なんだと!! そんな素晴らしい場所にホクロ様ができるのか!?
そんな訳がないだろう、一度確認の必要を感じるな……2人にはお風呂とか水浴びする場所と時間帯の情報を聞き出す必要がある!
男前の顔で考え込む俺から言ったった、とドヤ顔するライラが離れようとしたところを「えい」と起伏のない掛け声でライラの背をマイラが押す。
ゴンッ!
「イタタ、何を……」
「あああああああっ! 何するのマイラ!! わ、私のファーストキスがぁぁ!!」
俺の言葉を飲み込む勢いで叫んだライラがマイラの襟首を掴んで激しく揺さぶるのを眺める。
ファーストキスって、俺には頭突きとしか分からんかったが……
揺さぶられるマイラは平然な顔をしながら言う。
「大丈夫、頬はファーストキスにはカウントされない。親愛の情だから!」
「えっ? そうなの? セーフなの?」
相変わらず、あっさり丸込められるライラは頭が残念な子であった。
まあ、ファーストキスはいつしたかは自分が考える基準だからな……
親戚のおばちゃんが「アンタのファーストキスもセカンドキスも私が頂いたわ!」とのたまうのはカウントしなくて良いはずである!
しゃがんだ格好のままで呆れる俺の前にやってきたマイラが礼儀正しくペコリと頭を下げてくる。
「本当にありがとう、お兄さん。こちらが支払える対価はできる限りさせて貰う。それでも多分、足らない」
「気にすんな。気持ちだけでいいさ」
笑う俺に被り振るマイラは苦しそうに言ってくる。
「私はお兄さんが早い段階で知っておけば苦しまずに済む事を知っていながら話す事ができない。これは大きな裏切り、本来、私はお兄さんに殺されても文句が言えない」
「おいおい、穏やかじゃないぞ? どういうことだ……」
問いかけようとした俺の口は封じられる。
マイラが俺の首に腕を廻してきて、その小さな唇で塞がれる。
驚く俺と無表情な事が多いマイラのレア表情、はにかむように照れた顔して俯く。
姉のライラは事態が飲み込めなくて変な踊りを始めている。
「きっと、事実を知ってもお兄さんは私を殺すどころか許すと思う。でも、それでは私の気が済まない。だから、せめて、私のファーストキスを貰って欲しい」
「お前のように肝の太いヤツがそこまで思いつめる理由って……」
その先を聞きたそうにする俺に被り振るマイラ。
「ごめんなさい。その先は今は答えられない。答えられる時は、お兄さんも知っている。それに私も女の子、感情も打算もある」
「感情? 打算? 何か良く分からんが?」
首を傾げる俺にマイラが笑みを浮かべて言ってくる。
「私がこうしたら、お兄さんが違う意味で大変な目に遭うと分かってた。私は大好きな人を困らせるのが好き」
「はぁぁ?」
本当に嬉しそうに笑うマイラに詳しく聞こうとした時、俺の両肩にそれぞれ違う手が置かれる。
思わず、ビクッとさせる俺はおそるおそる振り返ると目からビームでも出てるのではないかと思わせるルナと美紅がそこにいた。
「えっ、ナニ? 徹は大きな胸にしか興味がないと思ってたら、小さい子も好きだったの?」
「トオル君、心が病んでます。健全な体には清い心が宿ります。走りましょう!」
これ、アカンヤツだ……俺の生存本能がこの場から遠くに離れろ、と警報を鳴らす。
煩い、警報を鳴らされずとも、この状況で分からんヤツは戦場から帰って来れない!
というか警報遅過ぎだ!
ルナと美紅の手から距離を取る俺の目の前では魔法を唱え出す2人の姿を確認する。
「ま、マイラ! 覚えてろよぉ!!!」
俺は捨て台詞を吐くとルナと美紅から背を向けると脱兎の如く逃亡を図る。
後ろから襲いかかる魔法の数々を避け続けて俺はクラウドの街中を駆け巡る事になった。
「俺はロリコンじゃねぇ!!」
ルナと美紅に追いかけられているところをダンさんとペイさんに見られる。
逃げ回る俺を楽しげに笑う2人。
「あんちゃん、楽しそうだな?」
「そう思うなら代わって!!」
「駄目よ。ダンの今日の予定は私が決めるから?」
このラブラブぷりを見せつけやがって!!
襲いかかる魔法が掠るようになってくる。
ヤバい! 魔法の精度が上がり出してる!
こうなったら、ダンさんも巻き込んでやる!
急に方向転換してダンさん目掛けて走り出すとダンさんも俺の狙いに気付いたようで焦った顔をするとペイさんの安全の為に俺から逃げ出す。
「あんちゃん! ペイとのデートを邪魔するな!」
「他人の不幸は蜜の味、他人の幸福はヒ素の味、という名言を知らんのか!?」
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3章 了
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