高校デビューできずに異世界デビュー

バイブルさん

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4章 500年待ち続けた約束

69話 また会えたね!

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 Bランクパーティやりあった次の日、俺達は馬車に揺られてクラウドを出発していた。

 前日、行方を眩ましたロキはルナと美紅の2人が歓楽街で酒を浴びるように飲むヤツを発見して同行するという言質を得たのでロキも乗って、ミントを合わせて5人が馬車に乗っていた。

 時を同じく『マッチョの集い亭』

 ルナ達がロキを捜している時、俺はロキを探す口実に歓楽街デビューを果たそうとしたが、その思惑を見抜かれてルナと美紅に監視を依頼されたミランダと高度な駆け引きを繰り広げていた。

「ちょっとトイレに行ってくるかな?」
「いってらっしゃい」

 笑顔で見つめ合う俺達を怖そうに双子の姉のライラが妹のマイラの影に隠れながら呟く。

「トールが凄い怖い気合いみたいのが溢れてるのも大変だけどぉ、ミランダが平然に受け止めてるのも怖いよぉ!!」
「お兄さんは必死。でも私の占いではその願いは叶わないと出てる」

 チラッと水晶を覗いたマイラであったが「占わなくても結果は分かり切ってた」と小さな肩を落としながら溜息を吐く。

 そんな2人のやり取りが聞こえていたが当然のように聞き流し、俺はトイレに入っていく。

「くっくく、俺はおとなしく座する男ではないのだ! まだ見ぬお姉様に出会う為に……美人、可愛い子、大好物です!」


 まだ見ぬ、オッパイの為に……アレ? さっきと何か違う気がするが……うん、きっと微差!


 含み笑いする俺はトイレの小窓を開けると目に映るモノに首を傾げる。

「何故に鉄格子?」

 握って見ると冷たい感覚が掌に伝わる。


 うん、本物!

 いやいや、これはないでしょ? 昨日はこんなのなかったぞ!?

 じゃ、これはナシでぇ!


 トイレで両手で×をしているヤツがいる気がするがきっと俺じゃないはず……

 色々、考えたり、現実逃避してみたが目の前の光景は変わらない。

 舌打ちした俺はコッソリとトイレのドアを僅かに開けて覗き込む。

 覗き込んだ先のカウンターではミランダが鼻歌を歌いながらコップを磨き、双子は入口から離れた場所のテーブルを拭いたり、注文を受けている姿が見える。

「……良し、状況は出来上がっている。こうなったら作戦Zだ」


 作戦Zとは、形振り構わず、入口に特攻して外に飛び出すという最終手段である。


「なんか、ナレーションのような声が聞こえた気がするがそう言う事だ!」

 肉体強化を活性化させ、ノブに手を添える俺が呟く。

「肉体強化ダブル!」

 その言葉と共に飛び出すと予想通り、客は勿論、双子も反応する間ない速度で出口へと疾走する俺。

 だが、その時、俺の疑似未来予測が警報を訴えてきた。

 俺の脳裏に訴えるイメージ、厚い肉感、汗、そして、恐怖!

 殺気に似た何かを感じた俺は出口に向かうのは危険と判断して生存本能に従って横飛びをする。

 飛ぶ俺の耳元に声がする。

「まだまだ甘いわ」
「な、なんだとぉ!!」

 俺と並走するように飛ぶ剃髪のマッチョが振り返った俺の視界で両手を広げていた。

 肉体強化が思考を高速化させているのかスローモーションになる中、考える。


 おかしい! 俺が最後にカウンターを通り過ぎる時にはまだコップを磨いていたはず……ミランダがどうして俺に追い付ける!!


 理由は分からないが徐々に狭まる両手の主を涙目で見つめる俺が呟く。

「ゆ、ゆるちて……」
「うふふ……だ・め♪」

 俺はイヤイヤするように首を振る。


 目を瞑って頬をほんのり染めてるぅ!!!


 抱きしめられる直前に俺は思う。

 ミントには俺がオッパイに悪戯した事をなかった事にする為、依頼を受ける事で許されたが、どうやら神様はそれだけでは許してはくれなかったようだ、と。

 最高に男前な顔をする俺はニヒルに笑みを浮かべて呟く。

「ふっ、これが俺の罪か……」

 そして、『マッチョの集い亭』の食堂に少年の叫び声と客の笑い声が響き渡った。


 などという事があり、俺達はミランダ達に見送られてクラウドを後にした訳であるが、早朝から心に傷を残し、疲弊している俺がいた。

 ちなみにミランダは、いつもに増して肌がつやつやしていたと言っておこう。

 そんな疲弊している俺なのに何故か御者をさせられている。

 代わって貰おうとロキに言うと「ねみぃ」の一言で一蹴されて。現在、高いびきを掻いてる最中である。

 当然、依頼人のミントにさせる訳にはいかないので、助けを求めるようにルナと美紅を見つめると半眼で見返される。

「昨日の事はトオル君が気絶してる間にミランダさんから伺いました」

 それだけで状況を覆すのは無理と判断した俺は諦めて御者をする事になった。

 溜息を吐きながら最近、覚えたばかりの馬車の操縦に苦労しながら走らせていると背後から少女3人の会話が聞こえる。

「それで邪蛇とはどんなの?」
「邪蛇とは言いましたが正確に言うなら神側の存在だったのです。一番近い言葉で言うなら神の使いのようなものでしょうか?」
「どうして、そんな神聖なモノとされる蛇が邪蛇と呼ばれるようになったのですか?」

 ルナの質問に答えたミントの返事にも疑問を覚えたらしい美紅が質問し返す。

 ミントは綺麗な眉を寄せて考え込むようにした後、話す決心が着いたのか口を開き始める。

「私はこれでも巫女の血統の一族の生き残りなのです。今はもう仕えた神の名も分からなくなっていますが……」
「ん?? どうして神の名が分からなくなってるの?」

 そう聞き返すルナの言葉に俺も頷く。

 頷いている事を向こうに気付かれてないが……

 ちょっと切なくなっている俺を当然のように無視して話は進む。

「仕えた神がこのアローラを去る時に自分がいた痕跡を消したと口伝で残っています。その消す為に生み出されたのが……」
「もしかして、今、問題になっている蛇ですか?」

 美紅の言葉にミントがコクリと頷いてみせる。

 どことなく悔しさを滲ませるミントが苦々しい声音で洩らす。

「神が消えてから、私の一族はほとんど動かない蛇を見守る日々を過ごしました。無為としか思えない500年という時を費やして……」

 ミントがそう言うと一瞬だがロキのイビキが止まるが、すぐに高いびきを掻き始める。

 ルナも美紅もミントの心情を察する所があるのか、なんて声をかけたらいいか悩んでいるように見えた。


 しかし、ロキの野郎、本当は起きてるんじゃねぇーか?


 そう思う俺だが、被り振ってそんな事より気になる事を考え始める。


 また500年前の出来事か……

 魔神の出現から、初代勇者との戦いがあり、神が去ったのも500年前と重なりまくるよな?

 さすがに同じ年の事の話ではないだろうけど固まり過ぎだよな?


 俺は腰にあるカラスとアオツキを見つめる。


 こいつ等が作られたのも同じ頃だし、初代勇者の事を知れば少しは謎が解けるのだろうか?


 早くミランダの紹介してくれる人に会いたいな、と思っているとルナが思い切って話を切り出した。

「聞いてる限り、その蛇はシステムのようなモノだから倒す必要がないように思うの。でも、倒して欲しいのは何故なの?」
「500年という月日の間、ほとんど動かず、人が近寄ろうが何もしてこない蛇だったのですが、ここ一か月程でしょうか? 突然、暴れるようになり、なんとか閉じ込める事には成功したのですが……」

 ミントの言葉にルナと美紅が顔を見合わせて難しい顔をするのを見て、俺も同じ考えに行き着いていると思う。

 閉じ込めたはいいが、いつまでも留めるのは難しく、外に飛び出してくるのが分かるのであろう。

 しかし、ミントの嫌悪感が滲む表情を見る限り、それだけではないようであった。

「その暴れる蛇は怒っていて静める為に人身御供を、巫女を捧げれば鎮まると本気で信じる村人が存在するのです」

 その言葉に息を飲み込むルナ達。


 おいおい、アローラって、そんな不確かな思い込みで人身御供とかやらかす文明なのかよ?

 クラウドで生活してる感じだとそこまで酷い事はないと思ってたんだけどな……


 ミントの言葉が本当であれば、そんな方法で落ち着くはずがないのは分かり切ってるが、口伝しか残らない事実を信じられるかどうかは当人次第であった。

 溜息を吐くミントが続ける。

「勿論、無駄だとは伝えましたが命惜しさに嘘を言っているという声も大きく、なんとか冒険者を雇って1度だけは静観するという話に持って行きました」


 なるほどね、そう繋がるのね。そして、俺達に白羽の矢が当たったのか。

 1度しかチャンスがないとなれば、実力を見る為にと酷い事だと思ってもやらせるだろうな。


 苦悩するミントはルナ、美紅を見た後、寝ているロキと俺にも視線を向けて頭を下げる。

「無茶を言ってるのは承知です。実際に戦う戦わないは後廻しにして一度、現物の蛇を見にだけでも着て頂けませんか?」

 そう言われたルナと美紅は何故か俺を見つめ、ロキは高イビキを掻いたままである。

 釣られるようにミントも俺を見てくる。


 えっ!? ちょっと待って? なんか俺が決断するような感じになってない?

 さっきまで放置プレイされてたんですけどぉ!


 動揺する俺は一応考える素振りを見せた後に答える。

「まあ、見ない事には話も進まなそうだから見に行くか」
「そうですね、一度、受けた以上、目にしてからでも良いでしょう」
「有難う!!」

 感激したらしいミントが目の前にいたルナと美紅に抱き着くを見た俺は馬車を停めて男前な顔を披露して両手を広げ、ミントが飛び込むのを待つ。

 しかし、いくら待てども飛び込む様子を見せないミントを見つめると半眼で俺を見つめていた。

「何してるんですか? 気持ち悪い」
「え、えええっ!? 今の流れだとこうなるでしょ?」

 なっ! とルナと美紅に同意を得ようとしたが2人にも半眼で見つめられる。


 あれれ? 俺がおかしいの?


 どうにも、いつもおかしいのは俺という流れが生まれつつある気がするので、その内に改善を求めようと心のノートに書き殴っているとミントに前方を指差される。

「このまま真っ直ぐ行くと少し丘だった場所に出ます。そこの傍に入口がありますので、そこを目指してください」
「へーい」

 不貞腐れる声で返事する俺に馬車を出すように指示すると後ろに戻り、俺をネタにして騒ぎだす3人。


 女3人寄れば姦しい


 その言葉を思い出した俺は自分の心の平安の為に耳を塞ぐようにして馬車の運転に集中する事にした。







 しばらく走らせて、ミントの案内で蛇がいる場所に向かう。

 中は石造りの壁に石畳といったモノを見る俺はデジャブを感じていた。


 あれ? どこかで見た事があるような?


 首を傾げる俺の尻を蹴っ飛ばすロキ。

「後が支えてるだぜぇ? さっさと歩け」
「分かったよ。蹴る前に口で言ってくれよ!」

 文句を言う俺に「いいから、さっさと歩け」ともう一度蹴られる。

 ブツブツ文句を言う俺はミントの後を追うと少し拓けた場所にある扉の窓を指差される。

「あそこから蛇を見れますので覗いてみてください」

 そう言われると一斉にみんなが俺を見つめる。


 なんで、そういう役割は俺に振るの!?

 こういうのイジメじゃねぇ?

 イジメいくない! 絶対!


 口をへの字にする俺が『嫌だ!』とばかりに被り振ると背中をロキに蹴られる所から連携のように、ふらつく俺の両腕をルナと美紅が掴むと放るように窓がある場所に飛ばされる。

 顔面が石造りの壁に叩き付けれる。

 その痛みにもがく俺は誓う。

 アイツ等にピーマンをたらふく食わせてやる! と……


 泣いても許さないからなっ!


 暗く情けない笑みを浮かべる可愛い俺。(徹がピーマンが嫌いなだけです)

 渋々、窓を覗き込むと小さく声を洩らして固まる。

 人の倍はありそうな胴周りで10mを超す巨大な蛇がこちらを睨み、威嚇していた。

 確かに、その蛇が怖いというのもあるが、俺が固まっている理由はそれではなかった。

 ゆっくりと窓から離れた俺は後ろで「どうだった?」と言いたげな顔をするルナ達に引き攣った笑みを浮かべながら言う。

「俺、あの蛇を前に見た事あるわ……」
「「「えええっ!!!」」」

 3人の少女が素っ頓狂な声を上げて驚き、ロキはニヤニヤと面白い事になってきたと言わんばかりに獰猛な笑みを浮かべた。
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