高校デビューできずに異世界デビュー

バイブルさん

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4章 500年待ち続けた約束

72話 シリアスだけど、ちょっと違う

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 村長宅に乗り込んできた少女に連れられて、ミント、ロキ、そして終始困った顔をしながら汗を拭く素振りを見せる村長と一緒に村の中心にある少し拓けた場所、ミント曰く、広場に到着した。

 ミントとロキの視界に爽やかな笑みを浮かべる馬鹿2人を見つける。

 それを見たロキは片方が徹である事を認識し、もう片方の線の細そうな男前の顔を知らなかったので隣にいるミントに問う。

「ウチの馬鹿の隣に居る奴は誰だぁ?」
「あれはジャフと言いまして、私の婚や……幼馴染です……」

 何やら言い直したのか分かった気がしたロキであったが、徹とまったく似てないのに魂の双子のようにソックリに見える男を少しでも他人にしたい気持ちを汲んで聞き逃した事にする。

「あのクソガキの双子より似てる気がするなぁ~」

 おそらく、ミランダの食堂で食事時で忙しい思いをしているだろうな、と思うロキは自分の腹を摩る。

 1つ頷くとミントに言う。

「飯がまだでよぉ? 一緒にどうよ?」
「そう……ですね。ご相伴に預かります。オゴってくださるのですよね?」

 ロキがミントに苦々しい表情を浮かべ、「しっかりしてやがるなぁ」と、ぼやきながら対応に困る村長を無視してミントの肩を押すようにしてこの場から離れようとすると背後から声が響く。

「まい すぃーと はにー ミント!! フィアンセのジャフはここだよぉ!?」
「ロキ君! 君の大親友の徹君もここですよぉ!!」

 その声にロキとミントは本当に嫌そうに振り返った。







 本当に嫌そうな顔を見せるロキとミントの2人に信じられない思いを強くするマイブラザーこと、ジャフと顔を見合わせて被り振る。


 ロキがいつもと違う!?

 いつもなら大親友の俺を見つけたら、肩に腕を廻して「何してんだぁ?」とか言ってきそうなのに……何があった!?


 過去の記録を漁ってもそんな事実は確認されないとか聞く気は俺にはない。

 ジャフも俺と似たような事を考えているようで事情が分からないらしい。

 それでも俺達は嫌そうに近寄る2人に親愛の情が溢れる笑みを浮かべる。

 面倒そうに頭を掻くロキがある種の感心をして見上げて言ってくる。

「なんかエレー余裕じゃねぇーか?」
「余裕? 分からないな、友達を出迎えるのに緊張するような俺じゃないのは良く知ってるだろ?」

 俺はロキを見下ろしながら爽やかな笑みを浮かべ、頬に一滴の汗を流す。

 そんな事、知らねぇけどな? と言うロキと同じように俺を見ていたミントが隣にいるマイフレンドのジャフを半眼で見上げる。

「ここまで至る経緯は分かりませんが、発端と結果は痛いほど伝わりますね」
「バレちゃったか? 君への愛をポエムにしていたんだ。愛してるぅ、ミント!」

 腹の底からシャウトする男前のジャフが熱いハートを届けようとするがミントには届いていないようだ。

 戸惑う俺達をくだらなさそうに見るロキが嘆息しながら言ってくる。

「もう1度だけ聞くぞ? 魔女裁判の火刑みたいになってるけどよぉ、エレ―余裕だな、おめぇ等?」
「「……」」

 思わず黙る俺とジャフを見て被り振るロキが、再びミントの肩を押すようにして広場を後にしようとする。

「ちょっとしたお茶目な悪戯だったのに笑えない展開になってるんだ、助けて、ミント!!」
「ルナと美紅がマジで本気なんだ!? 止めて、ロキ様ぁ!!」

 形振り構わず、泣き叫ぶ俺達の足下に村の少女達が暗い目をしながら薪を一本一本置いて行くのを見ずにロキとミントに助けを求める。

 ミントが村の少女達の本気ぶりにどう声をかけたらいいか悩む素振りを見せる。

 ロキが見つめる先にはサラダ油を片手に傾けようとしているルナに「ルナさん、サラダ油は思ってるより燃えません。鍛冶用のこの油で……」と油を差し替えているのを見て頷く。

「やっぱりメンドークセー」

 欠伸を噛み締めて、この場を去ろうとするロキに慌てて呼び止める。

「メンドークセーって何!? 今、尊い命が失われようとしてるんだぜぇ!!」


 そう、男の夢と書いてロマンを実践し続ける俺とジェフという尊い命をなんだと思ってるんだぁ!!


 叫びながらも縄を解けたらいいな? ぐらいに暴れるがさすがミランダから色々習っている美紅、縄の縛り方も完璧だった。

「だってなぁ?」

 同意を得るようにミントに言うが困った顔をされるだけで要領を得れなかったロキは嘆息すると近くで松明を持っていた村人から引っ手繰ると油を撒かれた辺りに放る。

「うわぁぁ!! 君は頭がおかしいのかっ!!」
「ギャ――ス!! キャンプファイアー!!!」

 ルナが撒いてた油に引火して一気に燃え上がるのを首を鳴らしながら見守るロキに俺とジャフが悪態と悲鳴を上げる。

 それに慌てたミントがロキに掴みかかると遠慮なくビンタをくれる。

 ニヤけた笑みを浮かべたまま受けるロキに怒鳴る。

「貴方は頭が良い方だと思ってました……すぐに消してください!」
「心配いらねぇーよ。俺がメンドークセーと言った意味がすぐ分かるぜぇ?」

 ほれ、見ろと後ろを顎をしゃくるロキに釣られて前を見ると慌てた様子のルナと美紅が魔法で水を生むと俺とジャフを中心に大量の水を落とす。

 その水でしこたま俺達は水を飲んでしまったが火が鎮火してホッと胸を撫で下ろす。


 助かった……


「ルナ、美紅、ありがとう……もう胸がないって口にしないようにするな?」
「そんな事を考える事自体が失礼なのっ! それより……」

 そう言ったルナがネコのような目をしたと思ったロキに飛び蹴りを仕掛ける。

「にゃぁぁ!!」


 本当にニャーって言ったぞっ!?


 飛んでくるルナの足を片手で掴むロキは面倒そうに首を廻しながら言う。

「やっぱりな、俺が介入して止めたらこうなると思ったんだぜぇ……」
「分かってたのなら口で止めるの!」

 掴まれたままでロキに連続蹴りを放つがロキに空いてる片手で文字通り、あしらわれる。

 だるそうな顔をするロキがルナと後方で睨んでる美紅を交互に見て文句を言う。

「本気でやる気ねぇーのに止めたらヤル、ヤラないでメンドークセー事になっただろうが? こっちも大概メンドークセーがな」

 ロキにそう言われて悔しそうにするルナと美紅を見て俺の胸の内が震える。


 ルナ、美紅、俺の為にそこまで……


「つまり、後2~3回は許されそうって事だな?」
「おい! トール、頭で考える事と口にしようとしてる事が逆転してないかっ!?」

 ジャフにそう言われて、ハッとした俺はルナと美紅を見つめると絶対零度の視線に震える。


 やってもーた、いつものイージーミスですやん!?


「やってもーた、いつものイージーミスですやん!?」
「トール……頭の中身と言動が同じになってないか……」

 ルナの表情が消え、美紅が微笑を浮かべる。


 めっさ怖いですよ! ロキ兄やん助けてぇ!


 そう思ってロキがいる方向を見るとそそくさと去ろうとしてる姿に驚愕するが美紅がその背に声をかける。

「ロキさん、今日は禁酒ですからね?」
「げっ……はぁ、了解だぁ」

 げんなりとしたロキが肩を落として去っていくのを見て、助けは期待できない事を知る。

 再び、俺を見つめる美紅が言ってくる。

「トオル君は今日は寝かせませんよ? 朝までお説教です……」
「お嬢さん、それはこちらの用が終わってからにしてくれるかな?」

 美紅の言葉に被せるように言ってくる30代後半の精力的な雰囲気を漂わす男が取り巻きを連れて現れる。

 その男を見たジャフとミントが眉を顰める。

「お説教もいいが、村の方の罰も受けて貰わないとね。2~3日、懲罰室でおとなしくして貰おう。それで良いですよね、村長?」
「む、むぅ、致し方がないな」

 美紅もさすがにそう言われると引き下がらない、と思ったようで渋々頷く。

 ゲッ、と思う気持ちもあるが終始30代の男を睨むように見るジャフが気になり、小声で声をかける。

「なぁ、あのオッサンと何かあったのか?」
「名はパテル……ミントを人身御供に、と声高に言ってる代表格で次期村長に名乗り上げてる」

 これはタダでは済まない予感がヒシヒシさせる情報に本格的にゲンナリする俺の耳に

「ちぃ、ジャフを燃やし損ねた……」

 と舌打ちする村の少女達の声が届き、隣でオッサン、パテルと決戦直前の睨み合いをするようにするジャフを見つめる。


 ねぇ、ジャフ、お前、村の子にどこまで恨まれるような事したの?


 ミントに見捨てられたら、この村で結婚相手を捜すのは絶望的な予感しかしない俺はシリアスするジャフの隣で違う意味でもミントの人身御供を阻止しなければならないと誓いを新たにした。
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