高校デビューできずに異世界デビュー

バイブルさん

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4章 500年待ち続けた約束

75話 男、魅せるジャフ

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 茶髪の少年がショートソードを両手で握り、全長10mはあろうかという大蛇と対峙していた。

 噴き出す汗と体中にある擦り傷、打撲した痕と思われる黒くなった場所が至る場所に見られる。


 シャァ――!!


 大蛇が鎌首を上げて威嚇すると茶髪の少年を噛み付こうと襲い掛かる。

 それを茶髪の少年はショートソードを盾にするようにして歯を食い縛るが吹き飛ばされて転がる。

 震える体を叱咤して立ち上がる茶髪の少年は鼻血を垂らし、それを拭うと自嘲する笑みを浮かべる。

「ワンチャンあれば、と思ってたけど傷一つ付けれられる気がしない……スマン、ミント」

 茶髪の少年、ジャフの幼馴染であり、婚約者という立場のミントを思い、歯を食い縛る。

 パテルに連れ出されて話を聞かされ、交渉してやってきた。

 祭壇に着いた頃には空は薄っすらと白みだした頃で蛇と対峙して数十分経っているがこうして立っているだけでも褒めてられた結果である。

 唯の村人で、普通の生活をするだけのジャフにとって戦う機会などないし、せいぜい獣、ゴブリン程度の相手だ。
 しかも、それですら逃げ帰って村人総出で倒しに行くか、冒険者に依頼するという方法で対応してきたのだ。

 そのジャフが大蛇相手に凌ぐ事しか出来てないとはいえ、数十分という時間を耐えれているのはジャフの身体能力の高さと戦う意思の強さがここまで持たせていた。

 大蛇を睨みながら負けん気を発揮するように口の端を上げる笑みを浮かべる。

「俺って意外とこういう方向に適正があったのかな……トールと一緒に冒険者とかやれたのかな?」

 会ってからまだ1日も経ってない徹なのに、物心がついた頃からの付き合いのような錯覚を覚えるジャフはおかしくてお腹を抱えて笑いたい衝動と戦う。

 疲れからか、血を失い過ぎからくる貧血か分からないがふらつく。

 ショートソードを杖のようにして、こちらを見つめる大蛇から目を逸らさずに睨む。

「トールに村の女の子が昼間に水浴びするポイントを紹介したかったな……月明かりもいいけど、お日様の下で見る健康的なのも捨てがたい」
「何を馬鹿なことを言ってるの!」

 覚悟を決め始めたジャフは夜と昼の良さを徹と語り合いたかったと目を瞑りそうになった時、聞き覚えがある少女の声に目に活力が戻る。

 大蛇を無視して振り返るとそこには守ろうとした幼馴染のミントの姿を見つける。

「何故、ここに!?」
「私もパテルさんに聞いたの。そしたら、アンタが大蛇を倒すと飛び出したって聞いたら……」

 ミントにそう聞かされた瞬間、パテルの思惑に気づくジャフ。

「くそう、何かを企んでるとは思ってたけどこういうことかよ!!」

 まんまとパテルの掌の上で踊らされた事を理解したジャフは手が白くなるほど握り締める。

 ミントですら、あの書物を読まされてもすぐに決断できたかどうかという話になればできたとは思えない。

 苦悩するようにするミントを見た自分、そして、父であるクラスタが見たら、何とか他の手がないかと模索しながらミントがいらない事を考え、行動しようとするのを邪魔したであろう。

 そこで、父、クラスタより若く感情的に動きがちのジャフにミントより先に見せたらどうなるか、自分で解決しようとする。

 それを見送った後、ミントに事実を話し、ジャフが先走ったと言えば、責任感の強いミントは迷わずにやってくる。

 全てはパテルの計画通りに進んでしまった。

 おそらく、徹を懲罰室に閉じ込めたのもジャフの助けにならないようにするのと、他の冒険者、ルナ達を追い出す口実も含まれるのであろう。

 村で奉仕作業させてから開放するから関係ない人は帰ってくれ、などと言ってルナ達を遠ざけるのであろう。

 その間にミントを人身御供にして村の安全を手に入れる。

「くそったれ! アイツの思い通りになんかにさせない!!」

 折れかけてた心を叱咤するジャフであったが、既に体力の限界を迎えていたが男の矜持か歯を食い縛ってミントの盾になるべく前に立つ。

「ジャフ、もういいの。私が人身御供になれば全てがうまく……」
「上手くいったりしない! 父さんが悲しむ。何より……」

 振り返るジャフは場にそぐわない程、優しい笑みを浮かべる。

「俺、一生、結婚できないよ。俺の嫁をやれるのはミント、お前だけだ」
「ジャフ……」

 ジャフの思わぬ場所でのプロポーズと普段見せない男らしさに胸を打たれたミントは口を押さえて泣くのを耐えるようにする。

 そのミントにもう一度、笑いかけると前を強く睨み、ショートソードを構える。

「ミント! 生きるも死ぬも一緒だ。俺はお前に花嫁衣裳を着せるぞ!」
「はい」

 ミントもジャフを支えるように寄り添う。

 ジャフの気合に反応したのか大蛇が鎌首を上げて襲い掛かってくる。

 それを迎い打つようにする2人の視界に黒い影が飛び込んでくる。

 飛び込んできた黒い影は襲い掛かる大蛇の顎下から黒い刀身の刀を掬い上げるようにして弾き飛ばす。

 弾き飛ばすと同時に振り返る黒い影が2人に笑いかけてくる。

「待たせたな、友達!」
「トール!?」







 再び、前を向くと弾き飛ばされて怒ったのか威嚇する大蛇に鼻で笑うようにする。

「つくづく、お前とは縁があるよな? 前は逃げるしかなかったし、戦う意味もなかった。今回は引けねぇ理由がてんこ盛りでな、決着を着けよう!」

 アオツキも抜き放ち、後ろの2人を守るように構える俺の様子に気づいたミントが短い悲鳴を上げる。

「と、トールさん、腕の傷は……ああ、すいません。すぐに回復魔法を……」
「今はそんなことしてる場合じゃない。大丈夫、自然治癒を早めて、だいぶ傷口は塞がってる」

 俺がそう言うが未だに血が流れ落ちるのに顔を顰めるミントと真面目な顔をするジャフが話しかけてくる。

「本当に大丈夫なんだな?」
「当然」

 大蛇を睨み、牽制しながら返事する俺にジャフが言ってくる。

「情けない話だが、俺ではミントを守れない。カッコ悪かろうが、俺は言う。トール、俺の女を助けてくれ。俺で出来る事なら何でもする」
「任せろ! 結婚式に俺を呼べよ?」

 少し振り返り、友達同士の悪ふざけをする時に浮かべるような笑みをする俺達。

「特等席、最前列を空けておく」
「馬鹿野郎、特等席というのは、胸の豊かな美人とオッパイの大きな美少女に挟まれる席の事だろう!? 席の場所なんてどうでもいいよ!!」

 魂の叫びを発する俺に「そんな席、俺が座る!」と、のたまうジャフの耳を顔を真っ赤にしたミントが引っ張り、痛がるジャフ。

 そんなジャフに俺は笑いかける。

「俺が来る直前のお前等、本当の夫婦みたいに見えた。絶対、本物にしてやる」

 そう言って俺は大蛇に向かって飛び出す。

 飛び出した俺はカラスで大蛇の頭を真っ二つにするつもりで斬りつけるが鈍い感触と共に弾かれる。


 なんだと!? カラスの刃がまったく通らない?


 それでも痛かったのか、怒ったようで口を大きく開いて俺の飲み込もうという勢いで突っ込んでくる。

「チッ」

 舌打ちした俺が襲い来る大蛇の顎を閉じさせるように蹴り上げる。

 それで吹き飛ぶ大蛇を見て疑問を覚える。


 えっ? カラスで斬りつけるより効果が高い? そんな馬鹿な……


 俺は自分が感じる違和感を確かめるようにカラスに念じるようにして剣戟を衝撃波にして飛ばす。

 放たれた衝撃波を受けた大蛇が押しやられるように後ろにずり下がるが、たいして効いているように見えない。

 戦ってる最中に考え込んでしまった俺は動きを止めてしまい、大蛇の尻尾を振るようにしてくるのに慌てて飛び上がると追撃をかけられて地面に叩きつけられる。

 すぐに立ち上がる俺にジャフとミントが安堵のため息を漏らす。

「大丈夫か、トール?」
「俺は大丈夫なんだけど、格好をつけたのに、いきなり格好悪い話なんだが、俺では決定打が打てない。こいつは剣戟の効果が薄い、いや、無効化というレベルだと思う。剣なのに鈍器と変わらない」

 いきなり泣き言を言う俺に絶句するジャフに気楽に「スマン」と笑う。

 俺がそれでもまだ余裕があるのに気づいたミントが問いかける。

「何か手があるのですか?」
「ああ、アイツは感触からいって打撃に弱い。俺は知ってるんだ。拳で戦える奴をな」


 そう、アイツ、ルナなら俺が思うような効果的な攻撃ができる。


 俺が自信ありげの笑みを浮かべるのを見てミントが気づいたようで言ってくる。

「もしかして、ルナさんの事を言ってるのですか? ここにいないし、どうやって知らせるのです!」
「大丈夫、あいつ等ならきっと俺のこれに気づいてくれる」

 そう言う俺の周りで火の粉がチラチラと舞い始めた。
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