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黒尽くめは言った。言う事きかないと祓っちゃうぞ、と

ご!

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「分かった。……仕方ない事だもんなぁ。電話くらいはしていい?」

「電話は大丈夫。後ね、僕の許可がないとこの部屋から出られないように結界を張らせてもらったからね。人間の匂いも遮断する結界だから、君にとっても周りの人にとっても安心でしょ?結界を張っても、匂いで血を刺激しちゃうからね。もし暴走を起こされて結界を破られたら大変だから」

「……うん」

「今は辛いだろうけど、制御出来るまでの間だから。早く制御出来る様になるまで、僕もサポートしてあげる。だから、泣かないで欲しいなぁ」

「泣いてねぇし!見んな馬鹿!」

とか言いつつ、次から次へと出る涙を袖で拭く。

「泣いたっていいんじゃない?辛い時は素直に泣いた方がいい事もあるよ。なんなら僕が抱きしめてあげようか?」

…………一気に涙が引っ込んだわ。

「いらねぇし。何が悲しくて野郎の胸で泣かなきゃいけないんだよ」

「そんな冷めた目で見なくても」

「ところで一つ相談したい事があんだけど」

「なぁに?」

「俺って大学生な訳じゃん?」

「うん」

「大学行かなかったら、祓い師に殺されなくても母ちゃんに殺される」

今まで出してもらった金をパァにしようもんなら、半殺しにされるに決まってる。どの家庭も母ちゃん怖いだろうけど、俺の母ちゃんは更に怖い。人間じゃないんじゃないかと思う時あるわ。

「それは大丈夫!安心して。ちゃーんと手は打ってあるから。そろそろ帰って来る頃じゃないかな」
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