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黒尽くめは言った。言う事きかないと祓っちゃうぞ、と

ろく!

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巫が時計を見るから、俺もつられて時計を見る。午後四時五十二分。……何もなかったら学校終わって家に着く頃だな。
そんな事を考えてたら噂をすればというやつで、勢いよくドアが開いたと思ったら俺が帰って来た。

「たっだいまー!いや~、勉強し直せるっていいわぁ!」

正確には俺の姿をした奴が帰って来た。なんか、この声…聞いた事ある様な…。

「うっそ!?零ちゃん目ぇ覚めたの!?これで明日あの子達にいい報告出来るわ!あんたの友達すっごく心配してたんだからね!」

靴を脱いでズカズカ入って来て、俺の隣に座って俺の背中をバンバン叩いてくる。

「えっと……誰?」

「ひっど!私の事忘れたの!?あんなに私の事怖がってたくせに」

「え?いや…まさか、尻触ってきたビッチな霊?」

「ビッチは余計。これから私も巫の式仲間として世話になるから、よろしくね狩眞 零ちゃん」

俺の姿のまま滅茶苦茶楽しそうに笑いながら手を握られた。

「え?ちょ、まっ……え?どゆこと?」

「つまりね、大学に行けない零ちゃんの代わりに、しばらく零ちゃんのフリして大学行く事になった訳。零ちゃんは単位落とさずに済むし、私は地縛霊から式に格上げ。これぞ一石二鳥」

「そうそう。僕から頼んだんだよ。式紙に入れる偽魂ぎこんを丁度切らしてたからさ。偽魂って作るの結構めんどいし時間かかるんだよね。だからその子に僕の式になって偽魂の代わりをしてもらう事にしたんだよ。突然学校に行かなくなったりしたら怪しまれるしね」

「それは分かったけど、喋り方も声も行動もまるで違うしバレるんじゃ…」

「僕の作った式紙嘗めないでよ。入ってる魂が違かろうが本人にしか見えない様になってるんだよ。化かすのは得意中の得意なんだから。まぁ、零君の友達には事情を話してるから安心して」

むしろそこは隠して欲しかったわ……。俺の姿でこの喋り方、絶対あいつらにイジられる。

「なぁに落ち込んでんのよ。あ、そうそう、私の名前圓笙奏えんしょうかなで。二十歳で車に轢かれて死んじゃって、あの廃墟に縛られちゃったのよね。もっと勉強しとけば良かったって後悔したわ~。まぁ、結果オーライになったけど」

いや、死んだままなんだから結果オーライじゃないだろ。
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