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習うより慣れろ 実戦はそれが一番だ

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【ハァ……ヨク寝タ。寝起キノ珈琲ノ匂イハ格別ダネ】

相変わらずの仏頂面で珈琲の匂いを美味そうに嗅ぎながら飲む。確か華鬼は香りしか栄養にならないはずだから、食べる飲むは娯楽みたいなもんか。

「お気に召したようでよかった」

「私も気に入ったわ!珈琲淹れるの上手いもんねぇ」

自分の姿をした式神を作ってもらってそれに入ってる奏は、嬉しそうに珈琲を飲む。まぁ当たり前だけど、死んだら幽体になって実体を失くすからな。触ったり食べたりなんて出来なくなる事を想像すると、かなり辛いよな。

【マァ改メマシテ、ボクハ白銀。本当、君ノ相手ハ骨ガ折レタヨ】

「それについては本当、ごめん。でもありがとう」

【イイヨソレハ。膨レ上ガル力と不安定ナ精神、安定サセルノ大変ダッタケド、君ノ見テタ悪夢ヲ半分引キ受ケルノモ大変ダッタヨ】

「悪夢?」

【ソレハモウヒッドイ悪夢ダッタヨ。聴キタイ?】

「いや……やめとくわ」

暴れてる時の悪夢なんて、絶対ろくなもんじゃねぇだろ。そもそも悪夢の時点でおっかないし。

【ソウ。アアソウダ、長年巫ノ式ヲヤッテルボクカラノアドバイス。アイツニ怒リヲ感ジテモ流ス事。怒ルダケ疲レルヨ】

なんちゅー為にならないアドバイス……。まぁでも、分かる気はする。

【本当アイツ、オニ使イガ荒イカラネ。殺ス気カッテ思ッタ事ハ数知レズ】

「えー、巫ってそんなに人使い荒いのー?まぁー、胡散臭くはあるけどね」

【ボクデサエ、何ヲ考エテルノカ分カラナイ事多イカラネ。掴ミ所ガナイッテ言ウカ】

「どっちにしろ、俺にはあいつの言う事きくしかないけどな。死にたくないし」

【マ、オ互イ運ナカッタネ】

目を瞑りながら香りを楽しむ白銀。めっちゃ余裕がある感じだけど、どれくらい生きてんだろ。華鬼は長命なオニだから、姿は子供でも二百歳は超えてるんだろうな。

「ま、何はともあれ式仲間同士協力すればいいじゃない」

【ソウダネ。トリアエズ抱キ枕代ワリガ零ニナッテヨカッタヨ】

え?あいつ今まで白銀を抱き枕にして寝てたの?これには奏共々ドン引いた。
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