あやまちてはあらたまるにはばかることなかれ

習うより慣れろ 実戦はそれが一番だ

三

「そうそう、昨日零君寝ちゃってたから、伝えてなかった事あったんだ」

わざとらしく手を合わせて笑顔で言う。嫌な予感しかしねぇわ。

「…………何？」

「訓練、今日の夜からするからね」

「…………はっ？」

「訓練、今日の夜からするからね」

俺が素っ頓狂な声を出したからか、同じ言葉を二度繰り返す。

「え？マジかよ今日から？急すぎじゃね？」

「そう？どちらにしろ早くやった方がいいでしょ？その分早く一人で活動出来る日が来る訳だし」

「いや……まぁ、そうだけど……」

そりゃあ、早く一人でこの部屋から出れるに越したことはないけど、なぁ……。

「あ、分かった。夜が怖いんだ？」

「うっせー！！悪かったなビビリで！」

俺だってなりたくてビビリになってねぇ！

「ビビリ克服も兼ねて、今日の夜から訓練だからね？拒否権はないよ？」

マジ無理……なんだよ夜に訓練って。どうせあれだろ、オニ退治だろ。実戦が霊力のコントロールとか覚えんの一番手っ取り早いもん！

「だーい丈夫だって、一人で行かせる訳じゃないから」

へらっと笑いながら手をひらひらと振る巫。そのお前が一番信用ならんわ。いやホント、こいつが主人って。白銀よくこいつの式やってるよな。ちょっと話しただけで胡散臭さ満載な奴なのに。
ああー！でも俺が食人鬼であいつが祓い師な事には違いない。拾われたのが巫だった不運を笑うしかないわ。

「夜まで巫はどうすんだよ？」

「ちゃちゃっと依頼を片付けてくるよ。雨ちゃん借りてくね。六時になったら迎えに来るから」

「分かった」

六時……か。逢魔が時とも呼ばれる、魔に逢う時間。夜はオニの領域。俺にとっても夜は動きやすい時になった。
でも、夜怖い。夜にオニ退治とか超怖い。

【夜が怖いのかーい？ビビり君？】

いつの間に起きたかのか突然、俺の目の前に落ちてくるかのような体勢で逆さまに浮いてる。

「ひんぎゃああああああああああっ！？」

驚き過ぎて涙目になりながら凄い勢いで後退って悲鳴を上げた。何考えてんだよこいつ！俺がビビりなの知っててやってんだろ！

【あははははっ！なぁにそれビビりすぎっしょ！】

驚き過ぎて声が出ずにぱくぱくと口が動くだけ。本当なんだよこのチキンハート……。

【ウ～ン……何…？ア、起キタンダ。ボク頑張ッタ甲斐アッタッテモンダヨ】

俺の叫び声で起きたのか、白銀が目を擦りながら表情の乏しい顔で見てくる。