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その葛藤に意味はないの

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「本当……僕の目と頭がおかしくなってる方がマシだよな。こいつらが存在する事を認めるより」

鴉が指定した場所で、ただひたすらしゃがんで待つ。その間相も変わらず、僕をじっと眺める化物達。眺められ過ぎて、なんか慣れてきた。…………慣れって怖いな。
スマホを取り出して時間を見る。十時二十二分。日付が変わるまでまだまだ時間がある。早く来すぎたな、でも帰るのも嫌だし。まだ化物達に眺められまくる方がマシだ。
興味津々といった感じで見てくるかべたべた触ってくるだけで、何かしてくる事はないし。今のところ。

【ДỦ₩ẅ@$§仝ΣゞΣ〒?】

【*々&@@♯∞ỏωД】

うん、人間大のでっかい蜘蛛と百足むかでが話しかけてきてるっぽいけど、何言ってるかやっぱり全然分からん。てか、あの鴉の言葉はなんで分かったんだ?うん、考えるのはよそう。考えたところで分かんないんだ。あの鴉に聴いたら分かるだろ。
あー……さっきからこんな事ばっか頭ぐるぐるしてるな。早く来てくれよ鴉。

【おいおい、日付が変わる頃って言ったのに随分お早い到着だな。親にはバレずに出て来たか?】

空から悠々と降りてきた三つ目三つ足の鴉。

「親は僕の事なんて心配しない。そもそもあんなの親とは言わない……そんな事どうでもいいな」

【深い事は聴かねぇよ、オレは人じゃねぇしな。まぁ、奴らが気に入る訳だな。よっしゃ、行きますか!】

テンション高めな感じで首を伸ばしながら、翼を広げる鴉。飛んで木の枝に止まる。

【来てくれ。歩いてる間にお前の疑問に答えてやる】

立ち上がって鴉の方を向いて、山に一歩足を踏み入れる。それを見て、鴉は一つ先の木の枝に止まる。化物達まで付いて来た。

「じゃあ早速だけど朝言ってた、奴らと混ざったってどういう意味?」

【そのまんまの意味だよ。お前見たんだろ?色んな生き物がごちゃ混ぜになったバケモン。そのバケモンがお前と一つになって、お前もそのバケモンになったんだよ】

「…………はは、やっぱ頭おかしくなってた方がマシだな。夢じゃないんだよな、これ」

【残念ながら、現実だねぇ。なんなら、目を突いてやろうか?】

「いや……それはいい。あの化物はなんなんだ?」

【んー……実を言うとな、オレ達も奴らの事を詳しく知ってる訳じゃないんだよ。名前もなく、本当に突然現れた正体不明の何か。オレ達妖からしても、異質な存在だ。分かってるのは夜にだけ現れ、様々な生き物を呑み込みながら、人間に害を成すくらいだ】

【その言い方はいただけぬの。この者が我々を誤解したらどうするのだ】

右腕から声がしたと思ったら、そのまま右腕がぼとりと落ちた。
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