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その葛藤に意味はないの

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「…………あっ……えっ………………?腕…………えっ……?あっ…………あぁ……!」

驚愕と恐怖で腰が抜けてへたり込んで、後退る。余りの恐怖に、悲鳴さえ出ない。
ぼとりと落ちた右腕は服ごと、ごぽごぽと音を立てながらあの日見たごちゃ混ぜの化物へと変わっていく。
情けないくらいがたがたと全身が震える。さっきの蜘蛛と百足が僕の肩にそっと触れてきた。それのお陰で、ほんの少しだけ冷静さが戻ってくる。
周りを見てみると他の化物達さえ、あの化物を恐れて後退って近付こうとしない。それだけ、化物さえ恐れる恐ろしい化物なのかあれは……。

【何を恐れる?何故恐れる?】

左手から声がして、恐る恐る左手の甲を見る。小さい猫の顔と彼岸花が、浮かんでる。猫の顔が消えると、インコの顔が。

【ワタシ達は何もしない、お前には】

「うわあああああああああっ!喋るなっ!僕の中から出て行け!」

彼岸花とインコの顔を鷲掴みにして引き千切って、地面に投げつける。引き千切ったのに、血も出なければ痛みもない。それどころか傷さえない。
引き千切った部分は、右腕の化物と同化した。

【アホかお前らはーー!!その子を怖がらせてどうすんだよ!その子に拒絶されたら一番困るのはお前らだろーが!】

鴉が化物の前に降りて怒鳴った。

【それだ、何故恐れるのだ?】

【普通怪我でもないのに、いきなり右腕もげたら怖いに決まってんだろ!オレらでもいきなり腕もげねーよ!】

【我らは身体を分離出来るぞ】

【んなもん特定の奴くらいしか出来る訳ねーだろが!オレだって腕もげたら普通に死ぬわ!そもそも分離能力なんざ、弱いオレらが持ってる訳ねーよ!てかお前ら、その子と同化して賢くなったんじゃねーのかよ!?】

【ふむ、確かにそうだが、獲得と理解は違う】

【そりゃそーだな。お前ら見てたらつくづくそう思うわ。兎に角、その子と完璧に同化したければ、怖がらせるな。理解してやれ】

【理解出来るよう努力しよう】
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