自然に口無し されど罰の花束を

六月 鵺

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その葛藤に意味はないの

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【いや、オレに言ってどうすんだよ。あの子に言えあの子に】

無数にある顔が振り返る事なく僕を見る。じっと見つめられてぞわっと総毛立つ。頭の中で沢山の声が響く。

【怖がらせてすまない。だが我らに悪気はなかった事は分かって欲しい】

【我らはただ、うぬと一つになりたいだけなのだ】

一つになりたいだって?僕とこの化物が?もう一つになってるじゃないか。あの日僕を取り込んだんじゃないか。
はっとして右手を見る。さっき根本から落ちたのに、何事もなかったみたいに生えてる。はは……なんだよこれ。もげた右腕が生えるって本当に化物じゃんか。

【身体も精神も、完全には同化しておらぬのだよ。うぬに我らを受け入れてもらわねば、完全に同化する事は叶わぬ】

「う……受け入れろだって…?無理に決まってるだろ!僕は無理矢理お前らに化物にされたんだぞ!どうせそんな事言って僕に暴力を振るうんだろ……もう嫌だ……僕の中から出て行ってくれよ……」

【胸を貫いたのは悪かったが、あれは同化する為に必要な事だったのだ。これ以上我らはうぬに暴力は振るわぬ。痛みも恐怖も拭ってやろうぞ】

こいつら、僕の記憶を見たのか?見たから痛みも恐怖も拭ってやろうなんて言ってるのか?

【そうだ、我らはうぬの記憶を見た。何故そんな事をするのか我らには理解出来ぬが】

そりゃあ化物には分からないだろうな。僕にさえ分からないんだから。違う、そうじゃなくて。

「なんで、僕なんだよ……」

【うぬの負の念に惹かれたのじゃ。うぬの抱える孤独、恐怖、憎悪。我らと一つとなるに相応しいモノじゃ】

頭の中で我らと一つにと、沢山の声が僕に囁きかける。沢山の意識が僕の頭の中に流れ込んできて、頭がパンクしそうだ。余りの痛みに、頭を抱えて蹲る。

【おい、大事なお話中に悪いけどな、その子苦しがってるぞ。どうせ一斉に話しかけてんだろ?そんな事したら人間の意識なんて簡単に壊れるぞ。人間は個であり、お前らみたいな集合体じゃねぇんだからな。お前らとは違うんだよ。オレらだって、お前らみたいな桁違いの意識が流れてきたらパンクする】

鴉がそう言った途端、あれだけ沢山流れ込んできてた意識が消えた。化物が鴉をじっと見る。

【人間とは難しい生き物だな。要は受け入れられるまで時間をかけねばならないのか】

【そーいうこった。色々教えてやったんだから、オレの頼みを聴け】
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