女になった俺と、

六月 鵺

文字の大きさ
3 / 23
魔法回路と代償

しおりを挟む
〈リーガル・ランドベア〉。一度だけ行ったことのあるリアゲートの屋敷の書庫で見つけた、埃を被って機嫌を損ねてた魔導書。
物にも自我はある。魔法使いじゃないと、声を聴くことは出来ないけど。
半分だけ魔法使いの血が流れてる俺は、物の機嫌を感じ取るくらいは出来る。
ハイズが持ち出したおかげで外に出れたからなのか、今は機嫌がいいみたいだ。

「アマネに言ってないよな?」

「そりゃあうまく誤魔化しといたよ。しっかし、ホントにいいのかい?せっかく愛しのアマネちゃんが家も身の安全も、危険を承知で確保してくれたんだぞ?」

「…………」

それは分かってるよ。あいつが俺のために苦しんだことは。

「けど、あいつも俺も今のままなんて無理じゃないか。あいつは歴としたリアゲートの人間だ。いつか、政略結婚の餌食にされる。価値のない安全の中にいるくらいなら、危険でもあいつの側にいる」

「簡単なことじゃないぞ?姉弟間の結婚は認められてるとは言え、実力だけで全てをはねのけなくちゃならない。敵はあのリアゲート。勝てる見込みは、はっきり言って零に近い」

そんなの分かってるよ。俺みたいな馬鹿でも、分かりきってる。

「だからこそやるんだよ。俺の全てを賭けて、リアゲートに戦争をふっかけてやるんだ」

リアゲートから見たら、虫螻むしけらが無様に醜く足掻いてるようにしか見えないんだろうな。
それでいい。虫螻だって生きてるんだよ。
虫螻だって噛みつくことを、忘れるな。

「まぁ、お前が覚悟を決めてるんなら、私は反対しないけどよ。ただ、代償のリスクだけは覚悟しとけよ」

代償か。内臓のどれかか、視力か聴力か味覚か声か記憶か。

「……分かってる」

「ホントかねぇ?もしも声を取られたら?魔法使いになるなら致命的だぞ?記憶を取られたら?アマネちゃんのことすら分からなくなるんだぞ?」

分かってるよ。そういうリスクがあることは。

「全く、頑固だねぇ。頭の固い奴は苦手だよ。しっかし、相変わらずきったねぇ部屋だな」

部屋くらいほっとけ。

「物だって自我を持ってんだから、大切にしてやれよ」

ハイズが指をすいっと動かす。それだけで、散らかってた物が綺麗に元の位置に戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。 追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。 しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。 港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。 イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。 犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。 被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。 追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と側室母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

処理中です...