女になった俺と、

六月 鵺

文字の大きさ
4 / 23
魔法回路と代償

しおりを挟む
「よし、綺麗になった。やっぱ綺麗にしてやると物達も、持ち主に尽くしてくれるもんだぞ?ひとつだけ勘違いしてるけど、魔法使いの全員が全員、物の声を聴ける訳じゃなかったりするんだよな」

「え?そうなのか?」

ずっと魔法使いなら誰しも聴けるものだと思ってた。
言われてみれば確かに、物と会話する魔法使いってあまり見ないかも。

「魔力が込められた物なら聴けて当然だけど、長年人間に使われてきて自我が宿った物の声は、感受性が豊かじゃないと聴けないんだよ。今のルーゲルみたいに、機嫌しか感じ取れない奴は意外と多いんだ」

「へぇ……」

「ま、話はお前が魔法回路を開いてからだな。無事に帰ってきたら、リッシェンリーダンに入れるようにしてやるよ」

「いつも思うんだけど、ハイズは堕天使だろ?よくリッシェンリーダンのトップに口利き出来るよな」

「はっ、リッシェンリーダンなんざ餓鬼だよ。いざとなればこの国のトップを動かせるんだぞ?けどここまで来るには苦労したけどな。こちとら天より悪を取った堕天使だからな。信用と権力を勝ち取るのは骨が折れた」

「……なんで堕天したんだ?」

「天は息が詰まる。だからだよ」

にっと笑うハイズ。堕天使の証の赤い髪と赤い瞳は、ハイズによく似合う。

ハイズが帰った後、湖に向かうために着替える。
姉の、恋人のアマネが危険を承知で用意してくれた木造の家。一階建てのシンプルな家だ。魔の森と呼ばれる、魔が溢れる森。天に通じるリアゲートが唯一介入出来ない、悪の森。そこにこの家はある。
食料には困らない。アマネの侍女が定期的に届けてくれるし、果物や山菜は豊富だ。
ただひとつ不思議なのは、この森に棲む魔物に襲われないことだ。ハイズが何かしてくれたのかもしれないけど、やっぱり不思議になる。
まぁとりあえず、湖に行こう。


♢♢♢♢♢♢♢♢


「おーいワンリア~、いるか~?」

湖を覗き込みながら、いつものように呼びかける。返事がないってことは、別の湖にいるのか。でもまぁ、俺の声は聴こえただろうし、すぐ来るだろ。
靴と靴下を脱いで、水に足を浸ける。冷たすぎず適度にひんやりしてて、気持ちいい。
巨大な湖。城のようなリアゲートの屋敷がすっぽり入るくらい巨大だ。
足の裏に、僅かな振動が伝わってきた。すぐさま水面に、大きな波紋が生じる。そして盛大な水飛沫と共に、五メートル以上ある巨大な鮫が現れた。

【よおルーゲル。いよいよ今日だな】

「ああ、やっと待ちに待った日が来た」

魔獣であるワンリアの言葉は本来分からないはずだけど、リアゲートの血のおかげだろう。ワンリアの言葉が分かる。喜んでいいことだ。
本来なら魔獣と契約しない限り、魔獣と言葉を交わすことは出来ないからな。
ワンリアは見た目は恐ろしく厳つい人喰い鮫に見えるけど、人間も他の魔獣も襲わない優しい鮫だ。
だけど見た目だけで判断されるから、人前に出ることはない。

【なぁルーゲル。ひとつ頼みがあるんだ】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。 追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。 しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。 港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。 イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。 犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。 被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。 追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と側室母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

処理中です...